2016年8月号

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JA5BGA 鈴木信一さん

アマチュア無線用ログソフト「BGALOG(←クリック)」の作者JA5BGA鈴木さん。鈴木さんが初めてBGALOGを開発したのは、1985年。その後30年以上にわたって、絶えずメンテナンスやバージョンアップを重ねてきた。その間、大きなバージョンアップを2回行い、ユーザーの意見も取り入れて様々な機能も追加してきた。現在のVer.3.7は、インターネットと融合させることで、非常に効率的なDXハンティングを実現できるソフトウェアとして完成度を高めている。


BGALOG Ver3のオープニング画面

小さい頃から工作が好きだった鈴木さんは、鉱石ラジオを作ったことから電波に興味を持った。中学卒業後は新設された高校の電子科に入学し、たまたま同級生にハムがいたことと、ハムである先生に巡り会うことができたことから、電話級アマチュア無線技士のライセンスを取得し、1964年に愛媛県伊予市でJA5BGAを開局した。その時の落成検査は四国電波監理局(現在の四国総合通信局)への持ち込みだった。高校生時代は、主に7MHz AMを運用し、鈴木さんは全国各地との交信を楽しんだ。

高校卒業後の就職先は、地元愛媛ではなく、電子部品の調達に日本一便利な東京秋葉原に近いという理由で、関東の電電公社(現在のNTT)を選んだ。全国規模の組織である電電公社なら、いつかは地元に帰ってこられるだろうと、関東への就職に対して両親も反対しなかったという。千葉県に転居し独身寮に入った鈴木さんは、寮にアンテナを立てて引き続き無線を楽しんだ。

1975年、28才になった鈴木さんは地元愛媛県に転勤となった。それに伴い、伊予市の自宅にタワーを建て、再び自宅からオンエアするようになった。また、その頃からDX通信に興味を持ちDXCCを追いかけるようになっていった。1980年代になり、ある日、ローカル局からRTTYの運用を勧められた。その頃は国内でもRTTYを運用する局が少なかったことから、「RTTYを運用すれば、海外からSASEが来るぞ」、と聞いたのがきっかけだったという。


鈴木さんの現在のアンテナ群


アンテナメンテナンスのために自作した作業ステージ

当時RTTYを運用するのに2つの選択肢があった。ひとつは専用の装置を入手して運用する方法、もうひとつはパソコンとプログラムで運用する方法だった。鈴木さんは後者を選び、パソコンとしてシャープのMZ-80Bを購入した。このときはRTTY用プログラムも市販のものを購入して運用を始めたが、このパソコンの購入が、鈴木さんがプログラミングを始めるきっかけとなった。当時の記憶装置は5インチのフロッピーディスクの時代だった。趣味で始めたプログラミングだったが、結果として仕事の方にも活かすことができ、鈴木さんは、「社内で人事システムの構築などを担当することになりました」と話す。

1984年、鈴木さんは、それまで紙のログブックで管理していた交信記録(ログ)を電子化することに決め、MS-DOS版の初代BGALOGの開発をスタートした。当初は交信記録の保存と、DXCCの交信エンティティの管理程度であったが、電子ログの導入により、ワッチで見つけた局との過去の交信記録がすぐに閲覧できたり、未交信のエンティティかどうかの判断が瞬時にできたりするメリットは大きかった。

その後も鈴木さんは、BGALOGの開発を続けた。開発環境は、MS-DOS⇒C言語⇒クイックシルバー⇒VB4⇒VB5と変えていきながら、いろいろな機能を追加して完成度を高めていった。同時に、松山市周辺のDX’erにもプロクラムを配布し、利用者が徐々に増えていった。この頃のBGALOGはVer.1と呼ばれ、1997年まで開発を続けた。

1997年、鈴木さんはWindows XPで使用できるようにVB6を使い、オフィス97用のデータベース形式でVer.2の開発に着手した。インターネットから情報を取り込めるようにしたり、リグコントロールをできるようにしたりして、ネットワークを活用できるプログラムへと進化させた。2000年頃のBGALOGの利用者の多くは、すでにDXCCオナーロールメンバーになっており、DXCCミックスニューとの交信を目指す局より、DXCCチャレンジのポイントアップを目指す局の方が多くなった。そのためBGALOGも効率よくDXCCチャレンジのポイントをアップできる仕様へと変化していった。具体的には、DXクラスターから入った情報を、自局の過去のログとつきあわせてバンドニューかどうかを判断し、ニューの場合はマウスクリックでリグの周波数とモードを設定できる機能などを追加した。

2013年、マイクロソフト社によるWindows XPのサポート終了を見据え、鈴木さんはBGALOG Ver.2の開発を終了し、Ver.3の開発に着手した。Ver.3はNETフレームワークス4.5を基にしたビジュアルスタジオ2013(現2016)にて開発し、DXハンティングのさらなる効率化を実現するために、ネットワークの活用をさらに進めた。そして2014年1月にVer.3.0をリリースし、その後もユーザーからの様々な要望を取り入れて高機能化を進め、2016年6月現在でVer.3.7まで進んでいる。


BGALOG Ver.3のメイン画面

BGA LOG ver 3.7の主な機能

・ログ入力が極めて簡単。最短ではマウスの2クリックで入力完了。
・登録項目の豊富さと、多彩な検索機能。DXCCだけでなく、IOTA、JCC/JCG、道の駅、湯けむりアワードなどにも対応。取得したQSLカードの画像ファイルもログに連携して管理可能。


DXCC管理画面

・インターネットから得たDX局のスポット情報と自局ログを瞬時につきあわせ、当該局とのQSO状況、および当該エンティティとのQSO状況をマトリックスで一覧表示。さらにあらかじめ設定したターゲット局が出現したらアラーム音を鳴らすことも可能。またスポットされた局を周波数順に並び替えるバンドスコープ機能も装備。


DXCCマトリックス表示
(カラー表示は検索局との交信状況を示す)


バンドスコープ機能
(周波数の左のC、P表示はDXペディション局を示す)

・QRZ.COM、HAMQTHからの自動データ取得機能。CluglogやDXペディション局のサイトとの連携。特にQRZ.COMとは利用者がXML契約をすることで、豊富なデータを瞬時に取得して活用できる。
・多彩なリグコントロール機能。周波数、モードの自動設定はもちろん、スプリットも自動設定。さらにアイコム機については、BGALOGからCWの手打ち送信、メモリー送信に対応。内蔵メッセージメモリーのリストも一瞬で切り替えることが可能。
・アンテナローテーターを自動で回転させ、目的局の方向に設定。ロングパス、ショートパス切り替えにも対応。ローテーターは最大4台まで接続可能。


RTC(ローテーターコントロール)画面

・ADIF、TXTを始め多彩なデータフォーマットのエクスポート/インポートに対応し、LoTW、Clublog、eQSL、Global QSLなどへのデータ送付は至って簡単。さらに本年、CQ出版社が実施している「創刊70周年記念ワード」の電子申請フォーマットにも対応。
・画像、罫線も印刷可能な多彩なQSLカード印刷機能。簡単な定型フォーマットも用意。さらにダイレクト発送用封筒の宛先印刷にも対応。(宛先データはQRZ.COM等から自動取得)


QSLカード印刷設定画面

鈴木さんは、苦労話として、過去に何度もマイクロソフトに振り回されたことを挙げる。それは、マイクロソフト以外のメーカーの言語やライブラリを使用すると、マイクロソフトがシステムソフトをバージョンアップする度に、それらが使用できなくなってしまうことだ。そのため、現在では、できるだけマイクロソフトのツールのみで作ることを心がけている。

その他の苦労として、VB6からドットネットに移行する際、互換性がなかったためにゼロから作成せざるを得なかったこと。しかし、そのおかげで旧バージョンの欠点を改善でき、その後のバージョンアップは容易になったという。他には、旧バージョンのユーザーのログデータのコンバートを引き受けざるを得ず、今でも時々依頼があって、その都度対応していることを挙げる。

一方、鈴木さんはBGALOG開発のポリシーを下記の様に説明する。
・BGALOGからの各種データの提供を通したQSOの手助けにより、トップDxerに満足してもらうこと。
・ネットワークをフル活用して利用者へ最大限の情報を提供すること。それにより、DXCCが上がってしまった後も、利用者のやる気の継続を図り、ひいてはアマチュア無線の活性化に寄与すること。
・リグ、アンテナをできるだけ自動コントロールし、瞬時にターゲット局を呼べる体制を提供することで、オペレーターの負担を軽減すること。また、ログ入力時に、できるだけ多くの情報を自動入力として人が入力する項目を減らし、時間短縮を図ること。

鈴木さんは、BGALOGの開発の傍ら、本来の目的であるDXCCハンティングにも精を出し、2015年カリブ海に浮かぶナバサ島から運用されたK1Nとの交信を以て、DXCC現存全エンティティとのQSOを完了した。「ローパワーなので53年かかりましたが、これで一段落つきました。次はDXCCチャレンジに本格的に取り組みたいと思っています」と話す。


鈴木さんが獲得したアワードとプラーク

現在、100名前後のDX’erに愛用されているBGALOGだが、鈴木さんにはひとつ大きな心配事がある。それはBGALOGの開発後継者がいないことだ。BGALOGはネットワークをフル活用することで真価を発揮するが、「将来、自分がメンテナンスできなくなった時、このソフトの価値が一気にダウンしてしまいます。そのため、BGALOGはプログラムのソースをすべて公開しています。ぜひBGALOGの手法や考え方を他のソフトにも取り入れてくれることを願っています。ご不明な点へのアドバイスは惜しみませんので、お気軽にご連絡下さい」、と話す。

「将来は、オペレーターは見ているだけの自動QSO、またオペレーターの音声によるCWやRTTYの送信、さらにはBGALOGを使ったリモート運用機能も開発したいです」と、鈴木さんはまだまだBGALOGの開発に意欲を燃やしている。

このコーナーでは、アマチュア無線の様々な楽しみ方に挑戦するハム(アマチュア無線家)を紹介します。
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