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第十回 ハンディー機のアンテナSWRの測定(その2)


Dr. FB

ハンディー機に取り付けたアンテナのSWRはどのように測定すればよいのかといった疑問から、ハンディー機1台を犠牲にしてジグを製作しました。これでSWRの測定はできるようになりました。せっかくですから今回は、そのジグを使って何種類かのハンディー機用アンテナの性能を測定した結果を紹介します。

測定したアンテナは、ハンディー機用のVHF/UHF用、2バンドアンテナです。それぞれのアンテナの長さや形状は若干異なりますがVHF(144MHz帯)は1/4λ、UHF(430MHz帯)は1/2λとして動作していることがパッケージに印刷されています。測定は屋外の障害物の影響の少ないところを選び行いました。末尾には、各アンテナのベース部分の珍しいX-Ray写真を掲載しましたのでご覧ください。

1. 実験に使ったアンテナ

図1に示す4種類のアンテナのSWRを測定しました。これらは、2月号でも紹介したアンテナで、筆者が台湾に旅行に行った際に購入したものです。台湾製か中国製と思いますが「Country of origin」を示す印刷はありませんでした。


図1 SWRを測定した4種類のハンディー機用アンテナ

2. 測定1_VHF(144MHz帯)のSWR特性

図2の接続で、4種類のアンテナのSWRを測定しました。測定にはSWRとインピーダンスの分かるCOMETのアンテナアナライザーCAA-500を使いました。SWRとアンテナのインピーダンスが接続するだけで測定できるので、アンテナの自作ハムには必需品ともいえる測定器です。


図2 ハンディー機に取り付けたアンテナのSWR測定

4種類のアンテナのSWRを測定し、周波数ごとにそのSWR値をプロットしたものが図3です。VHF帯は1/4λの垂直接地アンテナと同じ動作のため、アースは無線機のシャーシとなります。シャーシは、波長に対してアースの面積はかなり小さいですから1/4λ垂直接地アンテナとして十分な性能は得られず、案の定SWRは5~6となりました。参考ですがSWR=5.5とは、入力が5Wとすると、約2.4Wの電力が反射として戻ってくる計算です。

測定中にハンディー機を手で握るとSWRはさらに低下しました。フレキシブルアンテナのSWRは図3のグラフから分かるように145 MHzでは4.5です。ハンディー機を手で握るとSWRは3ぐらいまで低下しました。人体と無線機のシャーシとがC結合で人体もアースの役目をしていることが考えられます。このことからハンディー機のアンテナは、実運用に近い形で設計されていると想像できます。

ここでハンディー機のアンテナを車のルーフに取り付けたマグネット基台に接続してみました。1/4λ垂直接地アンテナでは、アース面はほんとうに重要かどうかを確かめるためです。車のルーフの面積は、ハンディー機のシャーシのそれと比較すると格段の差があるので、十分な特性が得られるはずです。図4がその結果となり、SWRはハンディー機に接続したときの5.5から3以下になり、アース面が重要な働きをしていることが分かります。(ただし、マグネット基台のため、基台とルーフとの直流結合はなく、容量結合になっています)


図3 ハンディー機のアンテナを、ID-51を使ったジグに取り付けたときのSWR特性


図4 ハンディー機のアンテナをモービル基台に取り付けたときのSWR特性

3. 測定2_UHF(430MHz帯)のSWR特性

UHF(430MHz帯)は、1/2λのアンテナとして動作しているため、アース面の大小はSWRには影響しないと予想しながら測定を行いました。測定方法はVHFの時と同様です。各アンテナを、ID-51を使ったジグに取り付け、そのSWRを同様にCOMETのアンテナアナライザーで測定します。その結果をグラフに表したものが下の図5です。


図5 ハンディー機のアンテナを、ID-51を使ったジグに取り付けたときのSWR特性

各アンテナとも結構よい結果が出ているのが分かります。バンド内のSWRは3以下です。欲を言えばもっと低くならないかと思いますが、SWRが低い、イコール「飛びが良い」とは限りません。例えばアンテナ端子に50Ωのダミーロードを接続するとSWRは1です。では、飛びは? というと、電力は全部ダミーロード内の抵抗で消費されるため電波としてほとんど外に出ませんから、飛びとしては最悪です。

4. アンテナのX-RAY撮影

フレキシブルアンテナを除き、他の3種類は同じような長さ、形状のアンテナです。にもかかわらずSWRに差が出るのは、アンテナのベース部分やセンターローディング部分が何か影響していることが予測できます。このモールドされている内部には何が入っているか気になるところです。壊して中を徹底的に見たいところですが、実験終了後はまたアマチュア無線で使いたいので、ここは文明の利器を使って内部をレントゲン(X-RAY)撮影することにしました。撮影はアイコムの生産工場、和歌山アイコムに協力を依頼しました。図6がそのレントゲン写真です。

どれもアンテナのベース部分には、2種類のコイルが直列に接続されているのが分かります。NA-771には直列の2つのコイルに加え、セラミックコンデンサのようなものがさらに直列に接続されているようなレントゲン写真が写っています。


図6 アンテナの内部レントゲン写真(縮尺は無視しています)

5. まとめ

(1) ハンディー機に1/4λタイプのアンテナ取り付けたとしてもSWRが十分低下しない。
(2) ハンディー機を握りしめると、SWRは低下する。
(3) ハンディー機用のアンテナをモービルで使用するとそれなりの性能が期待できる。
(4) 1/2λタイプのアンテナは、アースの大きさにあまり影響しない。

次回は、「ハンディー機のアンテナSWRの測定(その3)」を最終回として、SWRと電波の飛び具合を検証したいと思います。お楽しみに。
FBDX

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