2013年4月号

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連載記事

海外運用の先駆者達 ~20世紀に海外でアマチュア無線を運用した日本人達~

JA3AER 荒川泰蔵

その1 プロローグ

はじめに

少々大げさなタイトルで恐縮であるが、日常的に日本人が海外からアマチュア無線を運用する現在の状況を、10数年前ごろまではあまり考えられなかったので、20世紀の海外運用者達を先駆者達と呼ばせて頂き、その時代の海外運用の状況を連載で紹介したいと考えている。海外運用と言っても、アマチュア無線の運用を目的として出かける「DXペディション」もあれば、観光や休暇で海外に出かけたついでに運用する「DXバケーション」もあり、また、仕事や学業で海外に駐在して、あるいは居住権を得て長期に滞在している日本人が、趣味としてのアマチュア無線をその地で行うものの他、海外の友人を訪ねてのゲストオペや、海外のコンベンションなどに参加して特別局を運用するものなど、その動機や目的は色々である。

しかし、アマチュア無線に限らず先駆的な行動には種々の制約や困難があるもので、国際的な条約を含むその国の法規や政治的問題、免許制度やその資格試験の言語の壁、安全情報が不足する僻地への移動など、さまざまな困難を乗り越えて、現地の人達と草の根での国際交流を果たしながら、また、発展途上国へは無線設備の寄贈や通信技術の指導など、国際貢献を果たしながら海外で運用する道を開き、実績を積み上げてきた先駆者達には敬意を表したい。

筆者が海外に初めて出たのは1967年の香港であり、タイ、シンガポール、マレーシアなど東南アジアに足かけ3年駐在したが、その後1978年から米国に約10年、1990年から英国に約8年駐在し、延べ約20年間海外で生活する中でアマチュア無線の運用を経験した。これを時間軸にして、CQ ham radio誌に「日本人による海外アマチュア無線局運用の記録」と題する記事のため、海外運用の経験者に1985年から1999年までに送って頂いた900件余りの報告を改めて紐とき、今回は運用の年度別に時代背景も含めて紹介したいと思う。いや、各地から寄せられた海外での運用報告から逆に時代背景が見えてくるものと思う。

20世紀と言っても、日本でアマチュア無線が始まったのは1927年であり、また、戦後の再開は1951年(予備免許は1952年)と20世紀後半で、更に海外からの運用となると1960年代後半からであるので、せいぜい35年間程度の歴史である。「日本人の海外運用 - 最初の35年間」というタイトルの方が良いかもしれないし、内容の多くは「筆者の回顧録」的なものになるかも知れないことを前もってお許し願いたい。

しかし、先に紹介したCQ ham radio誌の「日本人による海外ママチュア無線局運用の記録」の記事を見て、海外での運用にあこがれ、それを果たした日本人ハムも少なくなく、今回の連載を通じても、読者にその思いをつのらせて頂ければ幸いである。また、多くの年配者には、その時代にこれらの局と交信したことを思い出して頂ければ幸いである。

今回の記事も連載であるが、書き溜めた原稿を投稿するのではなくその都度書き進めていくので、読者のご意見や更なる情報の提供も歓迎であり、記事に反映させていきたいと思っている。また、間違いのご指摘があればその時点で編集部に依頼して修正することをはばからないつもりである。読者の皆さんと共にアマチュア無線の歴史の一端を、出来るだけ正確に記録にとどめて行ければと願っている。

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