2016年6月号

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テクニカルコーナー

マイクのUP/DNキーで送信用ボイスメモリー送出する

JN4JGK 難波正憲

今春、コンテストマシンとしてIC-7300を購入しました。

移動運用でのコンテスト参加が中心の私としてはちょうど良いサイズであり、小さいながらも高級機にも迫る送受信性能を持ち合わせている点が決め手となりました。それだけでなく、バンド内を高分解能で広帯域に見渡すことのできる高性能リアルタイムスペクトラムスコープと、送信ボイスメモリー(CQマシーン)が内蔵されている点は、コンテストで使用するにあたり重要なポイントであります。

しかしながら、小型であるがために操作性や表示の見やすさが幾分犠牲になっていることは否めません。送信ボイスメモリーを呼び出す画面を開くとスコープ画面は上下方向が約半分のサイズの表示となってしまい、元々小さい画面ですのでかなり小さな表示となってしまいます。


スペクトラムスコープと送信ボイスメモリーの同時表示画面

外部キーパッドをマイク端子に接続することでスコープ画面を大きく表示したまま送信ボイスメモリーを呼び出すことができるようになりますが、外部キーパッドは自作する必要があります。

外部キーパッドの回路図は取扱説明書に掲載されており、抵抗とスイッチのみの非常に簡素な回路ですが、実際に作るとなるとスイッチをケースに取り付けたり、ケースからケーブルを引き出したりするような工作が必要で少し億劫になってしまいます。

また、外部キーパッドとマイクとを同時にマイクコネクターに接続することも考える必要があり、マイクとの同時接続のためにマイクコネクターの隙間から分岐のケーブルを引き出したりするなどの工夫も必要になりそうです。見た目のすっきり感もなくなるような気がします。


外部キーパッドに関する説明書き(IC-7300の取扱説明書より抜粋)

掲載されている外部キーパッドの回路図を良く見ると外部キーパッドの接続先はマイクの「周波数アップ/ダウン」キーの制御ラインであることに気づきます。そこでマイク自体を改造して、この「周波数アップ/ダウン」キーを外部キーパッドとして使う方法を考えました。ただしマイクに付いているキーは2つだけですので、制御できる送信ボイスメモリーは2CHのみとなってしまいます。しかし、これで外部キーパッド機能を使いながら、大きなスクリーンでスコープを表示することもできます。

HM-219(IC-7300に付属するハンドマイク)上部にあるUP/DNキー

外部キーパッドとマイクの回路を比較

IC-7300付属のハンドマイク(HM-219)を分解して回路を追うと、上図の右側のような回路になっていることがわかりました。

つまり、マイクのUPキーを外部キーパッドのS1に、DOWNキーをS2に当てはめて、マイクの470Ωの抵抗が付いている場所を1.5kΩに置き換え、UPキーと3ピンとの間に1.5kΩを追加することで外部キーパッドのS1、S2相当として動作するものと考えられます。

実際の改造

まずマイク(MH-219)を分解します。
裏側にある3つのネジを外します。

ケーブルの付け根が少し硬くなっていますが無理な力を加えないようゆっくりとカバーを外します。

次に470Ωの抵抗を外します。

小さなチップ抵抗ですので難しそうですが、事前に追いはんだをしておき、はんだごてを2本使って挟むようにすれば簡単に取り外すことができます。はんだごてが2本ない場合、抵抗の両端を交互に加熱すれば外すことができますが、加減が少し難しいです。もし、どうしても難しいと感じる場合は、抵抗はそのままにしておきプリント基板上のパターンをカッターナイフで切っても良いでしょう。

次に抵抗を取り付けます。
先ほど取り外した抵抗の両端に相当する場所に1.5kΩの抵抗を取り付けます。

2つめの抵抗は、「UP/DN」の文字のあるところに繋がる線材を一旦外して、線材と基板の間に取り付けます。

片側が線材であるためしっかりと固定できませんので、プリント基板上に両面テープを貼りつけてその上に抵抗を置いて固定すると良いです。

そして最後にカバーを閉めると完成です。樹脂のボディーに対してセルフタップのネジとなっていますので、無理な力を加えないようにそっと閉めます。

本体の設定

外部キーパッドを使用するために、IC-7300本体の設定を有効にする必要があります。
メニュー画面「SET」→「外部端子」→「外部キーパッド」

VOICEをONにすれば外部キーパッドが有効になります。さらにVOICE(送信ボイスメモリー)の他にKEYER(CWメモリーキーヤー)、RTTY(RTTY送信メモリー)についてもONにすれば、今回改造した外部キーパッド仕様のマイクを使うことができます。

おわりに

いざ実用的な外部キーパッドを作るとなると、なかなか腰が重いものです。既製品の内部に手を加えるのは気持ちに若干の抵抗があるかもしれませんが、マイクであれば構造もシンプルですし、無線機本体に改造を加えるのとは異なり、改造によって技適が無効になってしまうこともありませんので、少し気軽にチャレンジできるのではないでしょうか。

この改造では、マイクの周波数アップ/ダウンキーは無効となってしまいますが、HF帯でCWやSSBの運用、特にコンテストにおいてはマイクの周波数アップ/ダウンキーを使う場面がほとんどありませんが、このように外部キーパッドとして使用すれば有効に活用できるものと思います。

(ご注意)
本改造を行いますと、マイクについてはメーカー保証が受けられなくなります。そのため、必ず自己責任での実施をお願いします。

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