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無線をせんとや生まれけむ。

第二話 IC-7851に2種類のアンテナをつないで聴き比べる

無線(CQ)をせんとや生まれけむ。
短波(ラジオ)聞かんとや生まれけん。
呼ぶ、かの局の信号(こえ)聞けば
我が身さえこそゆるがるれ。

JF3SFU 永野正和

皆さま、お正月はいかがお過ごしでしたでしょうか? この原稿を書いていますのは、実は新年1月なんです。昨年末は所用で、中国に3週間程出かけており、年の瀬の29日に帰国しまして、なんだかわからない間にお正月が終わってしまいました。そして、今年は1月末から、英国に出かけることになっています。海外に出かけるとき、私はポータブルの短波ラジオと巻取り式のアンテナを持って出かけ、NHKを聴くことにしています。Radio Japan、NHKの国際短波放送は海外からの受信報告書に対して、「受信確認証」、通称、ベリカードを発行してくれます。(国内での受信報告書に対しては、残念ながらベリカードの発行はありません)


Radio Japanのベリカード

海外で受信した証明については、あるBCLの方は、航空券のコピーを受信報告書に同封するとおっしゃっていました。私は窓辺にラジオを置いて、風景と一緒に写真を撮り、宿泊しているホテルの部屋にあるレターヘッド付きの便せんを持って帰り、それに現地で書いたログを書き写し、撮った写真と共に、送付することにしています。このようにして取得したベリカードには、受信日時や受信場所が記載されていますので、後々良い記念になります。BCL的にはこれでOKなのですが、考えてみますと、海外からQRVしたことが一度もありません。嗚呼、夢のDXバケーション!! いつか、オン・ジ・エアしてみたいと思っています。

今月も、マクラが長くなりました。(スミマセン)
では、本題に入りたいと思います。

今月は、IC-7851に2種類のアンテナを繋いで、短波の主要放送バンド(国際放送バンド)を聞き比べてみました。お話しの中で、SINPOコードが出てきますので、念のために、再び掲載いたします。


SINPOコードは、放送の受信状態を評価する指標であって、アマチュア無線のRS/Tにあたるものです。SINPOの記述において、最後の総合評価Oの数値はその前のSINPの一番低い数値以下でないといけないというルールがあると第一話でお話しいたしました。

IC-7851の場合、ある局面においてこのルールが適当ではないことがあるということも前回お話しした通りです。今回はこのルールに基づいて、SINPO表記をおこないましたが、受信シーンにおいて、総合評価のOがSINPの最低数値を上回る状況があったことを明記いたします。

今回は、IC-7851のメインVFO側にアマチュア無線で使っているナガラ社製4エレトライバンダー・TA-341(以下、341)を、サブVFO側にBCLに使っている受信専用のアクティブ型スモールループアンテナ・ALA-1530LN(以下、1530)を接続しています。

TA-341については、拙文をお読みいただいている皆さんはよくご存じだと思いますので、このALA-1530LNについて、少しおさらいをさせてください。1530は英国にあるWellbrook Communications社の製品で、使用可能周波は150kHz~30MHzで、直径1mほどのノン・シールドタイプのループ・エレメントを備えています。

1530は主に次の3つのユニットで構成されています。
①屋外ループアンテナエレメント+ヘッドアンプ
②屋内セカンドアンプ
③ACアダプタ

下の写真をご覧ください。これが送られてきたもの全てです。但し、左にあるマスト取り付け用Lアングルは付属しません。ループアンテナのエレメントにねじで取り付けるヘッドアンプと室内のセカンドアンプは50オームの同軸ケーブルで接続します。そして、セカンドアンプからは受信機と接続する同軸ケーブルが直出しされています。電源は、セカンドアンプに対して付属のACアダプタでDC12Vを給電、ヘッドアンプへは、セカンドアンプを経由して、同軸に重畳され供給されます。アンプのゲインは、感覚的に25dB~30dBほどありそうな感じです。

ルーフタワーのトップに上がっているものは、2代目です。初代は20年近く前に個人輸入し、2019年の台風でダメになるまで長期間稼働していました。当時としては、めずらしい、「製品としての受信専用ループアンテナ」でした。このループアンテナは周辺ノイズ(電界ノイズ)の影響を受けにくく、しかも高感度で、今まで聞きえなかった信号を拾える性能を有しており、導入当初は、その威力に、衝撃を受けました。現在のモデルは更に改良が施され、性能が上がっているようです。


やってきた新型ALA-1530LN (2代目)


ルーフタワー上のALA-1530LN

それでは、主要放送バンドで、341と1530の聞き比べをしてみたいと思います。聴き比べにはIC-7851のDUALWATCH機能を使います。

下の、スクリーンをご覧ください。左側の周波数表示がメインVFO側です。こちらには、341を接続しています。対応するスペクトラムスコープ+ウォータフォール表示は、黄色の枠で囲んでいます。

右側の周波数表示がサブVFO側で、1530を接続しています。対応するスペクトラムスコープ+ウォータフォール表示を水色の枠で囲んでいます。

今回の比較では、IC-7851のメイン側のプリアンプの設定は、サブ側の信号と比較してフェアになるように選択しました。設定するプリアンプの値は2段階あり、画面左端中段のP.AMPの数字で表示されています。P.AMP=OFFの表示の場合は、プリアンプはオフです。P.AMP=1の場合は、12dBのゲインのプリアンプ1がONとなり、P.AMP=2の場合は、20dBのゲインのプリアンプ2が選択されます。サブ側の1530にはアンテナに既に2段のアンプが実装されていますので、IC-7851内蔵のプリアンプは使用しません。


IC-7851のスクリーン

しかし、このスペクトラムスコープという機能、SDRなどBCLで使う受信機では標準装備になって久しいのですが、バンドの状態が一目でわかりますし、本当に便利です。それでは、おすすめの放送を聴きながら、聴き比べを始めましょう。

トランシーバで聴くおすすめの放送局① (19mb)


HCJB日本語放送 (19mb)

HCJB 日本語放送
毎週土曜日と日曜日 07:30-08:00(JST) 15410kHz
再放送 20:00-20:30(JST) 11905kHz

メイン(アンテナ:341): SINPO=35343(P.AMP=1)
サブ(アンテナ:1530): SINPO=35543(P.AMP=OFF)

概況:
冬の朝、このバンドは比較的静かです。(今回受信した日は、特に静かでした) メイン側のスペクトラムスコープに周期的なノイズが乗っているのが見えますが、サブ側にはありません。これはローカルノイズだと思われ、メイン側はややノイジーです。強い信号をとらえる場合は気になりませんが、微弱な信号を受信する場合、1530の方がノイズを受けにくく静粛です。

このスクリーンショットは、間もなく始まるオーストラリアからのHCJB日本語放送の受信シーンです。既にステーションIDのアナウンスが流れています。同局はキリスト教の放送局ですが、リスナーからのお便り紹介や、アメリカや南米の名物料理の紹介、探訪記、民族楽器の演奏やコンサートのアーカイブなど、プログラムは多岐にわたります。聞いていて大変楽しい日本語の放送局です。

通常は、SINPO=45544位で入感する強力局です。(Sメータは、平均的に9+10dBくらい振ります。) モニタした日は、あいにく、コンディションが良くありませんでした。

トランシーバで聴くおすすめの放送局② (25mb)


Radio New Zealand (25mb)

Radio New Zealand 英語放送
毎日 22:00-01:50 6115kHz
17:00-20:00 9765kHz
15:00-17:00 11725kHz
08:00-15:00 15720kHz
*他にも周波数は複数あり、放送をしています。

メイン(アンテナ:341): SINPO=34343(P.AMP=2)
サブ(アンテナ:1530): SINPO=44544(P.AMP=OFF)

概況:
25mbはバンド中賑やかです。今の季節ですと、早朝は、北米、中南米や中東の放送局、などが聞こえます。しかし、朝夕のグレーゾーンの時間以外は、中国語の放送だらけになります。早朝、夕刻のDXタイム、北米、中南米の放送を楽しもうと思いますと、それなりの受信環境と設備が必要です。私の場合、ノイズの中から放送を聴きとるといった感じになることが多いです。そんなことで、最近は、キビシイ状態の放送を聴き分けて楽しむというより、放送の内容そのものを楽しむBCLスタイルになっています。

上のスクリーンショットは、午後の25mbです。全体をウォータフォールで見る限り、アンテナによる受信波強度の差は大きくはなさそうです。受信しているのは11725kHzで放送されているRadio New Zealand Internationalです。100kWの送信機で強力な信号を届けてくれます。ちょうど中波のローカル局を聴いている感じです。

SINPO評価に差はありますが、メイン、サブ、どちらのアンテナでものんびり放送を楽しむことが出来ます。比較的ゆっくりした英語でのトークですので、リスニングにはもってこいです。また、週末にはPOPSやロックなどの音楽を、新旧取り混ぜて流してくれます。今となっては放送を楽しめる貴重な短波局のひとつと言えます。

トランシーバで聴くおすすめの放送局③ (31mb)


BBC (31mb)

BBC 英語放送
毎日 19:00-21:00 9580kHz

メイン(アンテナ:341): SINPO=43333(P.AMP=1)
サブ(アンテナ:1530): SINPO=44433 (P.AMP=OFF)

概況:
国際バンドである31mbの様子です。沢山の大出力の放送局がバンド中で放送していますが、夜のこの時間も中国語局が大変多いです。その中で、シンガポールからBBCの英語放送が聞こえます。ダイアルを合わせたときは、ワールドニュースを放送中でした。なんといっても、BBCのワールドニュースですから、オーストラリアのテニスマッチの結果から、イラン問題まで情報は多岐に渡ります。こころもちゆっくり話してくれているように思えます。(アナウンサーの「クセ」かもしれません) 受信状態も良いですし、日本のTVや新聞で取り上げられるニュースなども話されていますので、少しの予備知識を持って放送を聴きますと、良いリスニングのトレーニングになるのではないかと思います。語り口はBBCらしくストレートで聴きやすいです。昔は、日本語放送が大変有名でした。もう一度、BBC、それから、Radio Australiaの日本語放送が始まらないかなと強く願っています。

トランシーバで聴くおすすめの放送局④ (31mb)


Radio Taiwan International (31mb)

Radio Taiwan International 日本語放送
毎日 20:00-21:00 9740kHz

メイン(アンテナ:341): SINPO=45444(P.AMP=OFF)
サブ(アンテナ:1530): SINPO=55544 (P.AMP=OFF)

概況:
前述のBBCと合わせてご紹介したい放送局がRadio Taiwan Internationalの日本語放送です。中華人民共和国の国際放送の日本語番組とも少し違った雰囲気があります。ワッチしたこの日は、間もなく春節がやってくる時節だからでしょうか、なんとなくウキウキした雰囲気でした。この放送は毎日大変良好に入感しています。 日本語放送はやっぱり良いですね。(笑)

トランシーバで聴くおすすめの放送局⑤ (41mb)


Radio Romania International (41mb)

Radio Romania International 英語放送
毎日 08:00-24:00 7325kHz

メイン(アンテナ:341): SINPO=44433(P.AMP=OFF)
サブ(アンテナ:1530): SINPO=44544(P.AMP=OFF)

概況:
色々な局が入感していますが、このバンドも中国語局が多いです。そのなかで、Radio Romania Internationalが大変強力で、わかりやすい英語放送を行っています。信号(Sメータ読み)はメイン側の341の方が強いように見えますが、S/N比的には、1530の方が良いと言えます。このあたりからの低い周波数帯ではループアンテナが威力を発揮するように思います。この放送の周波数で使用されているアンテナのビーム方向はアジアです。HPを見ますと日本向け放送と記述されています。世界の中で、影が薄くなりつつある日本に対しての放送を維持していただいているのはありがたいことです。番組は、国内ニュース、海外ニュース(主にヨーロッパ各国のニュース)から始まり、ルーマニアの観光地の話題や、ルーマニアで行われるイベントの紹介など、後半は音楽番組が組まれています。国内のオーケストラによる演奏や、流行のPOPSなども流れます。リスナーを大切にされている放送局で、放送を受信しているBCLファンからのお便りが読まれていました。番組は大変興味深いものです。私は番組を聴いていて、ルーマニアに行ってみたくなりました。(笑)

トランシーバで聴くおすすめの放送局⑥ (49mb)


Voice of America Botswana (49mb)

Voice of America Botswana フランス語放送
毎日 06:00-06:30 5885kHz

メイン(アンテナ:341): SINPO=34222(P.AMP=OFF)
サブ(アンテナ:1530): SINPO=35433(P.AMP=OFF)

概況:
SSNが低い期間、特に冬季は国際バンドとして、多くの局が放送をしています。その中でアフリカからの聞きやすい放送局をひとつご紹介します。Voice of America、ボツワナ、セレビ・ピクウェというところからの放送です。100kWの送信機を使っています。アンテナビームもこちら方向なのでしょうか、なかなか良好に受信できます。フランス語のプログラムですが、聴いていますと、英語を教える番組が始まりました。
「アナタノ、シゴトハ、ナニデスカ?」
「ワタシハ、エイゴノ、センセイデス。」とやっています。
聴いている私にはフランス語のレッスンになります。(笑)

フランス語は全然わかりませんが、時々、アフリカのパーカッシブな音楽が流れたりしますのでなかなか楽しいです。前述の49mb同様、メインの341とサブの1530で聴き比べますと、Sメータ的には変わりませんが、低いバンドでは、ハイバンド用の水平アンテナより、ループアンテナが随分有利になってくるように思います。サブ側の受信に使用したALA-1530LNは、40mbのアマチュア無線の受信アンテナとして、送信アンテナと組み合わせて使っても面白いかもしれません。

今月は、比較的容易に受信可能で、放送内容も楽しい放送局をご紹介いたしました。アマチュア無線の装備で、どれくらい短波放送局を受信できるのか、ALA-1530LNなど受信専用のアンテナと、アマチュア無線用のアンテナを比較するとどうなのかというあたりは、興味のあるところではないでしょうか?

アマチュア無線はもちろん楽しいですが、BCLもなかなかどうしてイケますね。今回ご案内した放送局はお持ちの装備で良好に受信できます。遠きかの地から、日本に向けて放送してくれている人たちがいると思うと、なにやら嬉しい気持ちになります。お持ちのトランシーバの受信モードをSSBやCWに固定せず、AMに設定をして、アマチュア無線以外でも、トランシーバを使って、「短波」を楽しみましょう。

ところで、IC-7851を導入後、BCL受信機としても活用しているのですが、使っている中で「ここ何とかなりませんか?」というところが、ちょくちょくあったりします。因みに今月は、2題ほど。(ICOMさんの開発の方、怒らないでね)なんとかなると、嬉しいなぁ。。。

BCLから見た、ここが惜しいぞ! 7851①

「タイマーの、ON/OFFの機能があるのにね、つけてちょうだい、留守録モード」
留守録機能を達成するすべてのハード要件を満たしていると思うのですが、どうしてないんでしょうねぇ。タイマーにSDカードへの録音機能を連動させるだけなんですが、難しいのかなぁ?

BCLから見た、ここが惜しいぞ! 7851②

「沢山の、つまみや機能、あるくせに、どうして無いのだ、同期検波」
余りある機能と装備満載なので、そこまではいらないかもしれませんが、これがあるとBCL受信機としてはカンペキです。あっ、同期検波は、USBとLSBそれからできればDSBの3モードがあると嬉しかったりします。それから、一旦ロックしたら外れないことは、とても大事です。これもなんとなく、出来そうな気がするのですが、難しいのでしょうか?

さて、次月号では、今月に引き続き、トランシーバで聴くおすすめの放送局のご案内とIC-7851とTENTEC社のRX340の聴感上の受信性能比較などの報告をさせていただこうと思っています。ご期待ください。

では、来月までごきげんよう。73&88。

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次号は 12月 1日(木) に公開予定

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