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特集5

アイコムフェアで見えてきたIC-905のスペック

月刊FBニュース編集部

年末も押し迫った2022年12月18日、奈良市にあるアイコム株式会社のならやま研究所で「アイコムフェアinならやま2号館」が開催された。新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言が解除され、感染拡大に一定の落ち着きが見られていることから、感染予防対策を徹底した状態での実施となった。北風が吹く寒空ではあったが晴天に恵まれ、500名を超える入場者(公式発表)となり同社が催すイベントで、アマチュア無線に関係した他社の展示も行われた中では過去最大となった。

アイコムフェアで見たIC-905の概要


IC-905は2022年のハムフェアやマイクロウェーブミーティング等ですでに公開されているが、直接見ていない方やその後のアップデートされた情報をゲットしようと多くの来場者でにぎわった。その中で、気になるのが価格と発売時期。現場の説明員によると、本体が約40万円、10GHzトランスバータが約15万円ということで、暫定価格であるもののだいたいの感じが見えてきた。発売は、春ごろとのことであった。

IC-905の特長

IC-905といえば144MHz帯や430MHz帯での送受信も可能だが、なんといっても特長は1200MHz以上のギガヘルツ帯と呼ばれる周波数帯だ。これくらいの高い周波数となると同軸ケーブルによるロスが大きく、これが送受信に大きく影響を及ぼすことはすでに周知の事実である。業務の世界では、マイクロ波と呼ばれるこのような高い周波数では、無線機とアンテナ間は同軸ケーブルの代わりに導波管を用いた伝送が行われているが、そこはアマチュア無線ということもあり、IC-905はこの部分に関しては同社の無線LAN機器で用いられている技術を応用したシステムとなっている。


情報提供: アイコム株式会社

要は、無線機の送受信に関わるRF回路はRFユニットとしてアンテナ直下に設置し、そのRFユニットとそれを制御するコントロール部とはLANケーブルで接続される仕組みだ。RFによるロスを発生するアンテナとRFユニット間は同軸ケーブルで接続されているが、わずか数十センチの長さであることからロスは最小限に抑えられ、さらにRFユニットの電源はLANケーブルで給電されるため電源ケーブルも不要となっている。

IC-905のコントローラ部

IC-905のコントローラ部の筐体は、IC-705がベースとなっており外形寸法は同一。コントローラ部とアンテナ直下に設置したRFユニットとの接続には先に述べたようにLANケーブルが使われることからコントローラ部にはRFユニット用のコネクタ、また通常のネットワークは無線LANではなく有線LANを用いるためのポートが装備されている。その他入出力の端子は、UHF、SHF特有の運用モードに合わせたAV入出力端子も備えられている。IC-705ではマイクロSDカードであったが普通サイズのSDカードに変更された。基本的な操作はIC-705と同等。


写真: アイコム株式会社プリ・リリースインフォメーションより抜粋


情報提供: アイコム株式会社

IC-905のRFユニット

RFユニットはアンテナ直下に取付けることで、アンテナとRFユニット間の同軸ケーブルで発生するRFのロスを極力抑えられる構造になっている。RFユニットの天面と底面には数個のコネクタが取り付けられている。それぞれのコネクタの用途を下の図に記載した。RFユニットそのものは、アルミダイキャストでできており、見た感じは堅牢構造そのものだ。また、屋外に設置することから全天候型防水となっており、雨風にも全く心配ないような構造となっている。


IC-905 RFユニット

周波数の安定度

周波数の安定度は例えば1ppmであってもHF帯とUHF帯あるいはSHF帯では周波数のズレる絶対量に大きな差がある。10MHzの1ppmは10Hz。10MHzのCW運用で周波数が10Hzズレると、多少受信音の違いが感じられるが、QSOが不可能という状態にはならない。UHF帯の無線機で1ppmの周波数精度といった極端な例はそれほどないが、例えば1ppmとすると1200MHzでは1200Hzもずれることになる。仮に0.1ppmとしても120Hzのズレとなり、CWでのQSOは困難になる。周波数の安定度は高い周波数になればなるほど重要になってくる。ましてや10GHzともなるとその影響は膨大だ。

今回のアイコムフェアでは、IC-905の周波数の安定度について特別セミナーで言及され、とても興味深い情報を得た。下のグラフは同社のIC-9700と、これから発売される予定のIC-905の温度差による周波数のズレをグラフに表わしたものである。-10℃~+50℃までの温度変化に対してグラフで表現すると大きな差を感じるがIC-9700も決して安定度は悪くない。IC-905では、5750MHzに対してわずか1Hz台の周波数のズレだけでその精度は素晴らしいとしか言いようがない。これは、内部の周波数を生成する回路にはOCXO化に加えてGPSの信号が基準周波数として使われているということにその特長がある。


情報提供: アイコム株式会社

受信系の構成

受信系の基本的なハードウエア構成は、144/430/1200MHz帯をカバーするIC-9700がベースとなっている。従って144/430MHz帯は、受信はRFダイレクトサンプリング方式、送信がDAC(Digital-Analog Converter)直接出力方式が採用されている。


情報提供: アイコム株式会社

1200MHz帯はIC-9700と同様、RFミキサーを介しIF=350MHz帯としたシングルコンバージョンの構成となっている。このIFを処理するための信号処理は、144/430MHz帯と同様に受信がダイレクトサンプリング方式、送信がDAC直接出力方式だ。また、2400/5600MHz帯以上のバンドは、1200MHz帯の送受信系の回路を活かし、IFは1200MHz帯となっている。これら周波数構成の回路ブロックが堅牢構造のRFユニット内に収められている。

10GHz帯は、オプションとなる別筐体のユニット(CX-10G)をIC-905の2400MHz帯のANT端子に接続することで動作する。これでIFを2400MHzとしたトランスバータの回路を構成している。


IC-905用10GHzトランスバータ(オプション)

展示されていたアンテナ

IC-905が展示されていた横には、10GHz用のパラボラアンテナと2400MHz 5600MHz 10GHz用のコーリニアアンテナが展示されていた。各アンテナのスペックを入手したが、発売前ということですべての数値は暫定値である。


情報提供: アイコム株式会社 (注)数値は暫定値

補足説明

IC-905の特別セミナーでは、普段あまり気にも留めていない1200MHz帯以上のアマチュア業務についての説明があった。IC-905がカバーする2400MHz帯以上のアマチュア周波数帯も、1200MHz帯同様、二次業務である。無線局は、各国の主管庁(日本では総務省)が定める「国内周波数分配表」に従って使用する周波数を決めなければならないと記されており、この分配表では周波数帯ごとに一次業務、二次業務として何に使うのかが決められている。ここで二次業務とは、「一次業務の無線局に有害な混信を生じさせ又は一次業務の無線局からの有害な混信に対して保護を要求してはならない」と記されており、我々アマチュアはそのことを十分留意しながら運用することが求められる。

我々は普段から電波法を順守し、バンドプランを守り、自局の発射する電波が他の無線局の運用または放送の受信に支障を与えないよう慎重に運用している。これから新たに運用を行おうとする周波数帯は正に二次業務であることから、万が一の障害も発生させることがないよう、アイコムではIC-905に一次業務に影響を及ぼさない機能を搭載するように進めている、とのコメントもあった。

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