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ものづくりやろう!

第三十六回(最終回) 気になる頒布ラジオの回路
― 部品を集めて組み立ててみた ―

JH3RGD 葭谷安正

2024年5月1日掲載

はじめに

前回までズルズルとソフトウェア定義ラジオ(Software Defined Radioの日本語訳ですが、日本語にするとかっこよくないですね)の回路をいじったり、ソフトウェアで遊んだりしていました。SDRのハードウェアの製作にあたってはいつものように日本橋へ買いに行ったり、秋月電子通商の通販で部品を買ったりしていました。その中で、ダブルバランスドミキサ(DBM)のSA612Aを1個調達していました。

製作したSDRのフロントエンド部分ではミキサー部にアナログスイッチのTC74HC4066を使用しているので、4066を買うついでにSA612Aを1個だけ、ポチっとしました。特に何に使うというあてもなかったのですが、いろいろな記事でこのミキサーを使った回路をみかけるので買ってみた次第です。

このところSDRを飽きもせずにさわっていましたが、そろそろ信号処理のソフトウェアが分からなくなってきましたので少し冷却時間を置いてからまたSDRを触ることにしました。

さて、1個だけ買ったSA612Aですが、これを使ったダイレクトコンバージョン受信機の回路をhttps://jl1kra.sakura.ne.jp/DC40.htmlでみつけました。少ない部品で、増幅器もないのにミキサーとオーディオアンプで大きなゲインを得ているとあって、「気になるな」と思って回路をながめていました。

回路は図1のような非常にシンプルなダイレクトコンバージョン受信機です。


図1 DC40受信機回路図(https://jl1kra.sakura.ne.jp/DC40.htmlより)

ダイレクトコンバージョン受信機(以下「DC受信機」と略記します)については、「ものづくりやろう! 第23回」で少し記載したことがあるのですが、我が家近くにはABC放送の送信所があり、そこから7kWのパワーで電波がでているので、DC受信機ではその信号をもろに受けてしまって他の信号を受信できないだろうと聞きかじった知識で判断していました(ABC放送生駒山送信所 周波数93.3MHz 出力7kW)。

実際、知人に借りたLA1600を使ったDC受信機を私の自宅で聞いてみるとローカルのハイパワーABC放送が邪魔だなと感じました。しかし、回路部品を別の物にしたら受信できるのではないかと妙な信頼感を図1の回路に抱き、気になって仕方ありません。で、「考えている間に作ってしまえ!」となりました。

頒布品を購入するという事も考えましたが、手元にSA612もあり、またLM386もヘッドフォンジャックを接続するだけで動くゲインが高い(200倍)、でも価格が安い(220円)オーディオアンプモジュールもあります。頒布元から回路図だけをお借りし申し訳ないとは思いましたが、図1の回路を基に手持ちの部品にあわせてちょこっと回路を変更して「自作」することにしました。ほぼ図1のLM386周辺の回路をモジュールに置き換えただけですので、回路図は特に記載しません。

プロトタイプ製作編

例によって、ブレッドボードで回路を構成することにしました。図1の回路図をほぼこの通りにつくりました。

図1の回路で持っていない部品は、①15μHのコイル、②1N4004ダイオード、③7010kHz水晶発振子、の3つの部品でした。15μHのコイルの代わりに20μHの物がありました。また、ダイオードは1N4007がありましたので規格を確認して交換可能だろうと判断して使用することにしました。7010kHzの水晶発振子が無いのは痛いですね。手元には7000kHzしかありませんので、周波数を可変すると普通低い周波数を発振しますのでアマチュア無線の帯域外の低い周波数(だれも出ていないところ)を拾ってしまいます。「まあ、回路がうまく動いたときに7010kHzを買ってこよう」ということで7010kHzの代わりに手元にある7000kHzを使うことにしました。

ブレッドボードで組み立てたものが写真2です。フロントパネルは加工の容易なプラバンを使いました(10年ほど前に日本橋のダイセン電子工業の蝉社長さんと仕事をご一緒することがありましたが、その時に蝉社長さんから「プラバンは加工が容易で扱いやすいですよ」と教えていただき、それ以降愛用しています)。


写真2 ブレッドボードに組み立てたDC受信機

配線にミスが無いことを十分確認して電源を入れました。ミスが無いとか言いながら実際に電源を入れたら動かなかったので、丁寧に調べてみると2か所も誤配線を見つけてしまいました。単に私がいい加減なだけかもしれませんが、十分確認したというのも危ないものです。

さて、動作させてみた結果ですが、発振が不安定です。部品をあちこちたたくと発振したり、止まったり。発振しているときは7000kHzぴったりでますが、ボリュームまわしても周波数可変ができません。仕方がないので図1のダイオード(1N4004)に並列に170pFのバリコンをつなぎました。バリコンを回すと1kHz程度周波数が動きました。ブレッドボードだと接触不良や浮遊容量でうまくうごかないのではないかと思い、基板上に組み立てる事にしました(写真3左)。いつものように「エイヤー」とばかりにアバウトに基板上に展開してしまいました。ただ、LM386の音声増幅部は、日本橋の共立電子さんで購入した「ゲイン200倍固定」(価格は220円)と書かれた「実験用にピッタリ! 配線簡単オーディオアンプモジュール」に置き換えました(写真3右)。

出来上がったのが写真4です(オーディオアンプモジュールは写っていません)。


写真3 基板とオーディオアンプモジュール


写真4 DC受信機プロトタイプNo.2


写真5 パネルと合体

動作チェック

回路に間違いないか確認のうえ、電源投入しました。今度は大丈夫です。まだアンテナをつないでいなかったので、スピーカからノイズ音が聞こえます。周波数変換用のボリュームを回しても同じです。プロトタイプと同じようにダイオード(1N4004)と並列にAMラジオ用のバリコンを接続しました。

局部発振部が発振しているのかを確認するためにIC-7300の電源をONにしました。IC-7300のアンテナをDC受信機の近くに持っていくとウォーターフォール画面にスペクトルがあらわれます。写真6のようなスペクトルがみえますので発振が確認されました(オシロスコープでも確認できますが、私は無線機のウォーターフォールで確認することが多いです)。周波数の可変はバリコンで可能です。


写真6 発振周波数の確認

受信マーカを移動させて発振周波数を確認しました。写真6から6.997MHzあたりであることがわかります。7MHzの水晶発振子を使っていますので7MHzより低い周波数が発振しています。

ここでアンテナ端子にアンテナをつなぎました。聞こえて来たのは、ABC放送。そうです、自宅のすぐ近くの生駒山から送信されている、周波数93.3MHz、出力7kWの放送局です。
「7MHzを受信してるのに何で93.3MHz?? ダイヤル回してもきこえるのはABCだけ」
これがその時の受信音です。

DC受信機は近隣に強力な局があるとその電波をがっちり拾ってしまうと言いますが、その通りです。LA1600で回路を組もうが、SA612Aで組もうがDC受信機はDC受信機です。素直にうまくいかなかったと認めるしかありません。残念ですが。

せっかく組み立てたのですから部品を少し触ってみました。LM386のPin3に接続されているパスコン103を外してみました。ABC放送の音声が消えて何か別の信号と思しき音が聞こえます。「間欠発信音かな? 別の放送局かな?」。かなり小さい音なのでなにかはわかりません。周波数可変範囲を広くしてから確認したいと思います。

製作したDC受信機では周波数可変範囲がわずか1kHzです。何が問題なのか。暇なときに原因を調べていきたいと思います。

気になるSDR

またSDRネタです。SDRのフロントエンドを数回連載しましたが、まだ気になっているもの(ソフト)があります。

連載で使用したSDRフロントエンドを少し改修すれば、Raspberry Pi PicoだけでSDRラジオの制御、ウォーターフォール表示、復調ほかができるソフト(ソフト名かプロジェクト名かわからないのですが)があります。それがPicoRXです。次のURLにアクセスしてみてください。
https://hackaday.io/project/192311-pi-pico-rx

このページにあるpicorx.uf2というソフトをRaspberry Pi PicoにインストールするとSDRのコントローラになります。またソースプログラムがすべて公開されていますので、デジタル信号処理の勉強やユーザインターフェースのプログラムもすべてわかります。ソフトウェアにマッチしたハードウェアが図面で提供されています。

私が連載で説明したものより少し込み入っていますが、そのハードウェアを使えばRaspberry Pi Pico(PC不必要)でフロントエンドを制御できます。ちなみに私が連載で使用したフロントエンドを少し改造(部品を減らした程度)して、それにRaspberry Pi Picoを接続して上のpicorx.uf2でコントロールしてみました。まだ信号を復調できる段階まで行きませんが、ユーザインターフェースが準備されているので、ソフトウェアに合わせてフロントエンドを作り変える(またはソフトウェア内にPDFファイルで書かれているハードウェアに置き換えれば)ことでSDRがつくれそうです。

いま非常に気になっており、よくソースプログラムを眺めています。まだまだ完全理解とSDRの完成までには時間がかかりそうです。


写真7 PicoRXのUIとハードウェア接続イメージ

 写真7
 写真左: PicoRXのユーザインターフェース例です。
 写真右: 連載で使用したフロントエンドとRaspberry Pi Picoをつないでみました。まだ復調まで
 いたっていません。音声が出ていますが、ハードウェアと整合していません。まだまだソフトウェ
 アの中身もわからず、ソフトウェアをそのまま生かすためにはハードウェアをいじくる(またはソ
 フト添付の図面をみて作る)必要があります。

最後に

「ものづくりやろう!」、今月号で連載回数が36回になります。3年の長きにわたり連載させていただきましたが、もう製作という点で私の持ちネタも尽きてきました。つきましては、今回をもちまして連載を終了させていただくことになりました。

もともと電子回路やプログラムを触るのが好きですので、この3年間、楽しみながら製作・執筆をさせていただきました。連載が終わっても、これからも老眼で見えにくい目で毎日はんだごてをにぎりながら、「動かないな。お、動いた」等、ものづくりの喜びをいつまでも味わっていきます。これからも半田ごてを握り続けます。

皆さんとは月刊FB News上でお会いできなくなりますが、アマチュア無線を通じてお空でお会いしましょう。

CU AGN de JH3RGD 73 GL

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