2013年4月号

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連載記事

アマチュア無線への思い

JA1CIN 三木哲也
(公益財団法人 日本無線協会)

第1回 科学技術人材を育てるアマチュア無線

4.中学・高校生のアマチュア無線への導き

日本のアマチュア無線家の多くが会員となっている一般社団法人日本アマチュア無線連盟(JARL)では、青少年の科学・技術へ関心を持って貰うための工作教室などの取り組みを長く続けている。全国に500以上ある地域のアマチュア無線クラブでは、小中学生への科学実験や電子工作などの教室を開いたり、地元の小中学校の理科実験を支援するなどの取り組みを行っている所が多い。JARL主催の東京ビックサイトで行われるハムフェアや、関西アマチュア無線フェスティバルなどでも、毎年子供達に向けて工作教室が行われている(図3)。また、アマチュア無線従事者免許を持っていれば自由に操作できる特別記念局を開設して、青少年が無線交信を楽しめるようにしている。図4は熊本で開催された西日本ハムフェアでの特別記念局の運用風景である。


図3 ハムフェア2012での工作教室〔提供:JARL〕


図4 西日本ハムフェア2013での特別記念局運用〔提供:JARL〕

このような取り組みと共に重要なのは、中学・高校での教育現場でのクラブ活動である。現在では中学校でのクラブ局は少ないと思われるが、高校ではずっと多くの学校でクラブ局が健在であり、アマチュア無線を含む科学部や物理部などのクラブ活動が熱心なところが多い。このような高等学校でのアマチュア無線の全国的な体制として全国高等学校文化連盟アマチュア無線専門部設立準備会が精力的に活動している〔4〕。2003年3月に全国の高校のアマチュア無線部の顧問の先生方が集まってこの準備会を発足させたとのこと。若い層の理科離れ、科学離れが進んでいるなかで、アマチュア無線に興味を持つ生徒たちは全国に少なからずいるが、自分の学校で熱心なアマチュア無線指導者に巡り会えれば幸いであるものの現実にはなかなかそうはならない。逆に、自分が教師で「熱心にアマチュア無線を指導したい」と考えても、なかなか生徒達がアマチュア無線の部活動に入ってくれない現状がある。そこで、高等学校文化部の全国組織である「全国高等学校文化連盟」にアマチュア無線専門部を設立することで、少しでも横のつながりを作り、孤立化して活動している高校生たちの活動を全国的なものにし彼らに夢と希望を与えたい、という趣旨で活動しているそうだ。ハムフェアでも、毎年の欠かさず図5のようなブースを出してアピールしている。


図5 ハムフェアでの全国高等学校文化連盟アマチュア無線専門部設立準備会のブース
〔提供:神奈川県立横浜平沼高等学校・石谷優行氏(JI1TJJ)〕

これは、前述したように日本の青少年にとって非常に貴重な活動である。組織的には高等学校を対象にしてはいるが、中学校においても同様に重要であり、中学・高校の多くの教師がこの活動に賛同して、自分たちの学校の関連するクラブ活動を再活性化したり、クラブ局を開設したりして、多くの生徒達をアマチュア無線へ導く活動が展開されることを強く願う。また、地域のアマチュア無線クラブの活動として、地元の中学・高校の教師を支援していくことが望まれる。
この準備会にも参画している茗溪学園(つくば市)は、中学・高校の一貫校であるが、ここの科学部無線工学班は多くの部員がいて活発にアマチュア無線活動をしていることで、良い事例である。日頃の活動に加えて、アマチュア無線の交信コンテストにも熱心に参加したり、ARISSスクールコンタクトという国際宇宙ステーションの宇宙飛行士と無線交信をするイベントも行った実績がある(図6)。因みに、このときの相手を勤めた星出彰彦宇宙飛行士は、茗溪学園の出身なのだそうだ。


図6 茗溪学園中学校・高等学校の科学部無線工学班クラブ局JJ1YAFの活動模様
〔提供:同校・中村泰輔氏(JI1RGZ)〕

5.あとがき

アマチュア無線の社会貢献には防災・非常通信への支援も重要であり、東日本大震災でのアマチュア無線の活躍は記憶に新しいが、やはり最も重要な貢献は人材育成に果たす役割であると思われる。理科離れを食い止め、理系人材の層を厚くすることが極めて重要であることを認識して、多くのアマチュア無線家がこれに取り組んでいるが、これまで以上にこの面での貢献が強化されることが期待される。

参考資料
〔1〕“小学生白書Web版”, 学研教育総合研究所, 2012年7月
http://www.gakken.co.jp/kyouikusouken/whitepaper/201207/chapter0/01.html
〔2〕「理学のたのしさ」リガクル01-東京大学理学部の今がわかる本
http://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/story/rigakuru/01/tanoshisa/index.html
〔3〕新妻弘明名誉教授自己紹介
http://niweb.kankyo.tohoku.ac.jp/ni/introduction.html
〔4〕全国高等学校文化連盟アマチュア無線専門部設立準備会
http://www.ishitani.com/zenkok-ama/
〔5〕茗溪学園科学部無線工学班 JJ1YAF
http://www.meikei.ac.jp/cl/science/jj1yaf/wiki.cgi?page=JJ1YAF

 


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