2013年6月号

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テクニカルコーナー

HF帯で極めて弱い局と交信するためのJT65の運用テクニック

編集部

最新版Call3.txtの入手方法

「WSJT」をインストールすると、インストールしたフォルダに、自動的にcall3.txtファイルが組み込まれる。しかし、このcall3.txtは最新のものではなく、インストールしたWSJTのバージョンが公開された時点のものになっている。一方、call3.txtの更新は、MMM on VHFのチームによって随時更新管理されており、最新版のcall3.txtが必要な場合は、MMM on VHFのホームページからダウンロードが可能である。(ただし、ユーザー登録しないとログインできない)

ただし、前述のようにcall3.txtは、VHF帯以上にアクティブな局が大半なので、EMEやMSを始めるのでは無い場合は、必ずしも最新版を入手する必要はなく、実際にデコードできた局などを自分でどんどん追加登録していけばよい。

アベレージデコード

「WSJT」はさらにアベレージデコード機能も備えており、「Include Average in Aggressive Deep Search」にチェックを入れておくことで、この機能が有効になる。アベレージデコード機能とは、受信信号を1回(1シーケンス)で解読できなった場合に、複数シーケンスの受信信号を平均化して解析するという機能で、その結果は、デコード結果表示窓のすぐ下に表示される。


(画像11) アベレージデコード例。14:10と14:12はそれぞれデコードできなかったが、2回のアベレージでデコードでき、QSOに至った。(EMEでの例)

ディープサーチデコーダー使っても解読できない場合でも、数シーケンスを連続して受信することで、アベレージデコードに成功し、上段のデコード結果表示窓には何も表示されない場合でも、下段のアベレージ表示窓にいきなり相手局のCQなどが表示される(こともある)。これは「WSJT」ならではの非常に強力な機能で、特に相手局と1対1のスケジュールQSOで有効である。

結論として、HF帯でJT65の運用を手軽に楽しむのには、「JT65-HF」を使用するのがベストではあるが、究極を目指して-30dB前後の極めて微弱な相手とのQSOを達成しようとする場合は、「WSJT」のディープサーチを試してみることをお勧めする。ディープサーチには
・Normal Deep Search
・Aggressive Deep Search
・Include Average in Aggressive Deep Search
の3種類があるが、上記のアベレージデコードも使用できるInclude Average in Aggressive Deep Searchを選択(画像12)することをお勧めする。


(画像12) Decode→JT65と進み、Include Average in Aggressive Deep Search をチェック

最後に、残念ながらJT65Aは占有周波数帯域幅が100Hz以上あるので日本では1.9MHz帯で許可にならないが、3.5MHz帯などでDX局とスケジュールを組み、お互いにディープサーチデコーダーを使ってQSOにトライすることで、CWでのQSOが極めて困難な地域ともQSOできることがある(画像13)。ぜひ超微弱信号でのQSOにトライしてみてはいかがでしょうか。


(画像13) 米国東海岸ロードアイランド州のNG1Gと3.5MHzでスケジュールを組んでQSOした例。

11:38にS/N-28dBでデコード。先方からはS/NレポートではなくTMOレポートのOOOを送ってきた。その後信号は-30dBまで落ちたがショートハンドでQSOに完了した。NG1Gとは2年がかりで3.5MHzでのQSOに成功したが、前年はCWとRTTYで数回トライしたもののすべて失敗に終わっていた。このQSOによって5バンドWASに向け一歩前進した。

参考資料
Joe Taylor, K1JT著 WSJT6 User’s Guide and Reference Manual
同日本語翻訳版 Toshihisa Takahashi JH1OQW訳

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