2014年11月号

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連載記事

移動運用のオペレーションテクニック

JO2ASQ 清水祐樹

第8回 悪天候への対策

移動運用の範囲が広がってくると、悪天候の中でも移動運用をしたくなることがあります。しかし、悪天候時の移動運用では、強風によるアンテナの破損など、さまざまなトラブルが発生しやすくなります。その場合でも、軽量のアンテナを用いる、ステー(支線)を増強するなどの対策を取ることにより、運用が可能になる場合があります。

悪天候の場合は、移動中の事故も考えられます。安全第一で移動することが何よりも大切です。本稿ではそれについては取り上げません。

以下、悪天候での移動運用における、強風、雨、雪などの対策について解説します。

天気予報を知る

インターネットで天気予報を検索すると、市町村単位で3時間おきのピンポイント天気予報を見られます。また、雨雲の移動の詳しい予想もあります。

降水量は、雨雲の移動から、かなり高い精度で予測が可能です。しかし、風速に関しては、市町村ごとの基準点だけを対象とした予報が多いため、現場の状況と一致しないことがあります。予報の基準点から大きく離れた場所や、山の上など地形的な影響を受ける場所では、予報値以上の風を受ける場合があり、注意が必要です。

強風時におけるアンテナの設置方法

強風時に重いアンテナを高く上げると、風圧でアンテナが傾き、バランスを崩した時に復元できなくなります。強風時には、軽いアンテナを必要最小限の高さで上げます。ビームアンテナなど重いアンテナをどうしても使用したい場合は、地上高を低くして(例えば2m)設置します。

強風時に使えるHFのアンテナとしては、逆L型アンテナ(2013年10月号で紹介)がベストです。構造上、伸縮ポールの上端が軽くできます。アンテナが地面から舞い上がらないようにロープで支えれば、強風でもビクともしません。

その次に適するアンテナがダイポールアンテナです。「風向きと平行に」張ることで、風の影響を防げます(図1上段)。横風を受ける方向にアンテナを展開する場合は、風上側にステーを1本追加して、伸縮ポールが傾くことを防ぎます(図1下段)。

長い釣竿アンテナは、強風では簡単に折れます。強風時に長時間使用する場合にはステーが必要です。なお、ステーとしては、直径5mm程度のロープで十分です。両端がほどけてバラバラにならないように、接着剤で固めておくか、溶着しておくと便利です。


図1 強風時における逆L型アンテナ、ダイポールアンテナの設置方法。
アンテナを風向きと平行に張るか、伸縮ポールの風上側にステーを追加する。

強風下で伸縮ポールを縮めようとする時、強風で横方向からの力を受けていると、伸縮ポールが伸びたまま縮められなくなることがあります。この場合、できるだけ真っ直ぐな状態を保ちながら、伸縮ポールの下端を地面に叩き付けると、衝撃で引っ込むことがあります。


図2 伸縮ポールが強風で縮められない時の対応。できるだけ真っ直ぐな状態を保ちながら、下端を地面に叩き付けると、衝撃で引っ込むことがある。

大雨での運用の注意点

大雨の場合、アンテナの設置に関しては注意する点は少ないです。ただし、電子回路を内蔵したアンテナチューナーや、精密に作られたトラップコイルなどは、防水処理が必要です。むしろ、大雨の場合は、「地盤が弱い場所に立ち入らないこと」、「撤収後にアンテナを必ず乾燥させる」の2点が重要です。

雨が降り続いた後、(あるいは、設営時に雨が降っていなくても、撤収時に雨が降っている場合も含む)、地盤が弱い土や砂の上に自動車で乗り入れると、タイヤが地面に埋まって身動きが取れなくなります。こうなると、他の車に「けん引」を頼んで脱出するしかありません。

地盤が弱い道路で引き返す場合、前輪駆動車の場合は、前輪が路肩に突っ込む方向で転回してはいけません。路肩がぬかるんでいると、駆動輪が地面に埋まって身動きが取れなくなる危険があります(図3)。必ず、後輪側から路肩に突っ込むようにして、前輪が地面の固い部分に乗っている状態を保ちながら転回します。


図3 路肩がぬかるんでいる場所での四輪車の方向転換の方法(前輪駆動の場合)。
前輪側から路肩に突っ込んではいけない(図左)。
後輪側から路肩に突っ込み、前輪は地面の固い部分に乗った状態で方向転換する(図右)。

アンテナが濡れた後は、必ずきれいな水で洗うか、拭き取るかの処置をして、完全に乾燥させて保管します。水で濡れたままにしておくと、異臭が発生したり、異種の金属が接触している部分に錆が進行したりすることがあります。

大雪での運用

大雪での運用の場合、自動車の運転に装備・技術を要すること、運用場所の確保自体が難しくなることを除くと、最大の問題は凍結です。伸縮ポールやアンテナの差し込み部分に水が入って凍結すると、そのままでは縮めたり分解したりすることができません。ガスバーナーで加熱することが有効です。ただし、ガスボンベは航空便で輸送できないため、冬季の寒冷地移動でレンタカーを使って移動する際、ガスボンベを持っていけない可能性があります。

雪の日の運用では、スノーノイズも大敵です。近くに強力な雪雲があるとHF全体にノイズを発生します。強力なスノーノイズは、無線機のノイズブランカー機能でも減衰しないので、収まるのを待つしかありません。雪が帯電し、同軸ケーブル等に触れるとビリッとくることもあります。

その他、寒冷地では電池の性能が低下します。無線機の電源としてバッテリーを使う場合に影響しますし、アンテナアナライザやデジタルカメラなど、普段通りの動作をしないことがあります。筆者はアンテナアナライザの電源として、通常はニッケル水素蓄電池を使用しています。ニッケル水素蓄電池は乾電池よりも公称電圧が低い(1個1.2V)ため、低温の影響で電圧が低下すると、動作しない機器があります。これはアルカリ乾電池(1個1.5V)を使用することで改善されました。

冬季はローバンドの伝搬が安定していること、雪上反射と思われる現象で電波の飛びが良くなることから、雪道運転の装備と技術があれば、冬季独特の楽しみ方もあります。

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