2015年1月号

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連載記事

移動運用のオペレーションテクニック

JO2ASQ 清水祐樹

第10回 移動局を追いかける側の心得

今回は趣向を変えて、移動局を「追いかける側」の心得について、移動局として考えていることを解説します。

呼ばれる側として、どのような「呼び方」が好都合かは、運用者の好みによる部分が大きく、一概に言えません。しかし、多数の信号が混ざった中から特定の信号を認識する際に要求される感覚的な要因や、無線機の特性に起因する要因は、運用者が違っても共通する部分があると思います。

いち早くQSOするには

移動局が一度に多くの局から呼ばれてパイルアップになっており、その局と交信しようと何度も呼んでみるけれど、なかなか順番が回ってこない場面をよく見かけます。そんな時、パイルアップを受ける側として考えた、いち早くQSOすることができる工夫を紹介します。

周波数のクセを見抜く

CWで呼びに回る場合、相手の送信周波数と自分の送信周波数を一致させるには、受信音を無線機のCW PITCHで設定した周波数(例えば700Hz)に合わせます。しかし、相手局がピッタリ一致した周波数で符号を解読するとは限らず、状況によっては低い音、あるいは高い音を優先的に解読することがあります。SSBでも、もともとの声と同じ周波数の音を拾っているとは限らず、周波数が少し外れた音を聞き取っている場合があります。

運用者のクセなどで、解読する音の高さが通常よりも上下にずれる傾向がある場合、自分の送信周波数を相手局の受信しやすい音に合わせれば、パイルアップの中で信号を拾ってもらえる確率が高くなります。

基本的に、呼ばれる側、呼ぶ側とも同じモード設定(CWの初期設定ではLSB受信)の場合、自局の送信周波数を例えば100Hz高くすると、相手局が受信する受信音は100Hz低くなります。この時の周波数の関係を図1に示します。相手局が低めの音を優先して拾っている場合、自局の送信周波数を少しだけ高くすると、相手局には低めの音で聞こえて拾われやすくなります。ただし、あまりに外れた周波数で送信すると、相手局の受信フィルタの帯域外になり、相手局には聞こえません。


図1 呼ばれる側と呼ぶ側の周波数の関係。呼ばれる側、呼ぶ側ともCWの初期設定モード(LSB)で受信する場合を示す。CW-Rに設定した場合は周波数の上下が逆になる。

私がCWを運用する時は、基本的には1kHzステップ(混雑している周波数帯では500Hz)で送信周波数を設定しています。その場合、呼ぶ側も1kHzステップの切りの良い周波数でピッタリ合わせて呼ぶと、複数の信号が重なった場合に、同じ高さの音が重なってピーという連続音になり、符号を解読できないことが多くあります。特に、クラスタに1kHz刻みの切りの良い周波数でスポットされた直後に、その傾向があります。相手局といち早くQSOするには、周波数を100~200Hz程度ずらして呼ぶことが効果的です。

低めの受信音が好まれる理由として、年齢とともに高音が聞き取りにくくなる聴覚の特性も関係すると思われます。筆者の推測として、移動運用の場合は周囲の騒音が影響し、低い音に注意が向きやすくなると考えています。

呼ぶタイミング

パイルアップの中でいち早くQSOするためには、呼ぶタイミングも重要です。
重要な点は「相手が送信している途中にこちらが送信しても、相手には聞こえない」ことです。相手局(呼ぼうとする局)の送信パターンが一定であれば、相手局の送信が終わり、受信が始まったタイミングに合わせてコールサインを送信すると、相手局に拾ってもらえる可能性が高くなります。このタイミングが大きく外れていると、相手局がコールサインを拾う優先順位が下がります。

送信のタイミングは、相手局が送信を終了してから受信を始めるまでのディレイタイム(時間遅れ)を考慮する必要があります。特に、CWのセミブレークインの場合は、送信が終了してから受信が始まるまで数100ミリ秒のディレイタイムがあります。相手局のディレイタイムが長い場合、相手局の送信が終了してすぐにこちらが送信すると、相手局には信号の先頭部分が聞こえません(図2)。一般的には、ディレイタイムが終了した直後のタイミングでコールサインが始まるように送信すると、呼ばれる側にとってはコールサインを認識しやすくなります。

実際は信号強度の違いや符号の特徴があるため、必ずしもこの通りになりません。しかし、図2の呼ぶ局③のような、極端なフライングは不利と思われます。


図2 呼ばれる局の送信終了から受信が始まるまでのディレイタイムの関係。信号強度等の条件が同じ場合、①>②>③の順でコールサインを認識しやすい。

SSBの場合、相手局が送信を終了してからPTTボタンを離すまでの時間がディレイタイムに相当します。よく聞いていると、中にはPTTボタンを離すまでの時間が長めの局もいるので、状況に応じた判断が重要です。

QSBへの対応

相手局の信号が弱い場合や、強いQSB(フェージング、信号強度の変動)を伴っている場合、コールサインを何回も送信してお互いに確認が取れたけれど、その後の信号を見失ってしまい、交信が成立しないことがあります。極端な場合は、レポートを交換した瞬間は599なのに、信号の存在が辛うじて確認できる程度に信号強度が低下することもあります。

その場合の私の対応として、弱い信号で交信する場合、交信中は「文字間を詰めて」、交信の成立が確認できたら「文字間を空けて短めに」送信しています。文字間を詰めることで、送信と受信の切り替えのタイミングが相手局に伝わりやすくなります。また、信号が弱く符号として認識が難しい場合でも、TU E Eと間隔を空けて打つことで、交信終了の意思が相手に伝わりやすいと考えています。

信号が弱い場合、送信はできるだけ短くして、相手がそれに合わせて返信を送ってくるかを頻繁に受信しながら確認することが有効です。相手局がコールサインを確実にコピーしていることが分かっているのに、自局のコールサインを必要以上に反復すると、交信の「流れ」が分かりにくくなり、弱い信号を見失う可能性が高くなります。

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