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ものづくりやろう!

第二十回 ローテータのワイヤレスリモート制御化実験2
(作ったものが不調のため作り直しました編)

JH3RGD 葭谷安正

1. 全体像の説明


図1 全体像の説明

2. はじめに

昨年2022年11月26日、27日に“CQ WW DX Contest CW”に参加しました。コンテストに参加はしても成績はいつも二の次で、呼び回りの方で100局くらいを目途に、ながらコンテストをたのしみました。コンテストではわたしのアンテナの主役は、全方位から信号を拾えるホイップアンテナです。しかし、ちょっと信号の弱い局が聞こえた時は短縮ダイポールが活躍するように、切り替えて使っています。そこで活躍する予定だったのがワイヤレスリモート化したローテーター(2022年11月号)でした。11月号で紹介した無線化したローテーターですが、うまく機能してくれる予定だったのが肝心な時にローテーターが回りませんでした。記事に記載していましたが、どうも動作が不安定(全然トラブルが無い日があったり、また、回転途中に制御が効かなくなってローテーターがストップしてしまうなど)だなと思ったのですがそのままの状態にしてました。

12月になってやっと修理する時間が持てたので対応策を考えることにしました。

3. 対応策

ローテーターのリモート化のために付加した装置類は、
①制御装置側: 無線通信と制御用のマイコン(micro:bit)
②ローテーター側: 無線通信と制御用のマイコンとローテーター制御器をマイコンで動かすためのリレーユニット

ほかにマイコン用のソフトも作成しました。

この構成で不具合が発生したということは、原因は無線通信にかかわる部分だと想像しています。先般、職場の知り合いからもmicro:bitの無線通信の不具合(混信)を教えていただきましたので、想像と言うよりは確信しているという状態です。

無線通信部分ならば、同じような無線モジュールを積んだマイコンを使えばいいのですが、ソフトをまた作っていかなければいけません。このため、無線通信とリレー制御とを簡単にできる装置は無いかと思いネットを徘徊することにしました。検索のキーワードは、「無線スイッチ」で探してみました。そして見つけたのが図1左下にある「無線スイッチ」です。

以前にも見たことあるなと思いながら、仕様を確認しました(表2)。


表2 主な仕様

仕様を見て動作モードが気になりましたが、付加回路(自己保持回路)が必要かもしれないが使えそうだと思いましたので、即ポチリました。金額的にも故障した装置が通信機能付きマイコン2個とリレーユニット1個を1つのセットとして使っていましたが、それよりも安価に購入することができました。

ポチリの翌日に到着しましたので、外観チェックと動作チェックのため12Vを供給してリレー動作を確認しました。

さっそく外観を見てみます(写真3)。


写真3 無線スイッチ外観図(左から、送信部、受信部、テスター)

キーフォルダー状のものがトランスミッタです。また四角の基板上にリレーが4個載っているのがレシーバです。

動作チェックですが、静止時電流とリレー起動時の電流も見てみました。受信側の静止時電流は約6mAで、ほぼ仕様通りでした。また、いずれかのボタンを押したときの電流も計測しました(写真4)が、いずれかのリレーが動作すると58mA程度の電流が流れることが分かりました。


写真4 リレー動作時電流

無線スイッチが到着してからポチッたサイトのカスタマーレビューを見ておりましたら気になることが何点か出てきましたが、そのうち一番気になったのが到達距離のレビューでした。

曰く、「10m以上離れシャッター越しでも点灯してくれます」とのレビューがある一方、「リモコンの送受信距離が10~50mと謳っていますがとんでもないです。良いとこ5mくらいですね。」や「動作は全く問題無いですけど、1m位でないと反応しません。」という通信距離に関する不評もありました。そこで、到達距離だけはチェックしておくことにしました。

4. 無線スイッチの到達距離確認

到達距離に不安を残したまま回路を組むのはいただけません。前のmicro:bit構成のシステムでは到達距離が思ったほどなかったのに通信不良を起こしていたわけですから。

そこで、室内で20mほどの距離の通信可否を確認するため、職場の廊下を使いました(写真5)。


写真5 到達距離確認実験(奥の人影が筆者)

私のいつもの作業場所の扉の前に机を置き、そこから3m、9m、14m、18m、25mの位置に印をつけました。机の上でスマートフォンのビデオ録画をスタートさせて、その場所から上記の場所に到達すると、スイッチを各4回ゆっくり押して次の場所に移動し、端(25m地点)にたどりついたら、同じ要領で指定の場所でスイッチ音を4回鳴らして戻ってくることを行いました。ですから1か所で往復合計8回スイッチ音を鳴らしました。その後でビデオを再生して、「カチ」と鳴るスイッチ音から通信漏れの回数をカウントしました。

結果ですが、14mまでは8回すべてスイッチ音が聞こえましたが、18mのところで通信が不安定になり、8回中3回通信ができていませんでした。また25メートルの所では8回中3回ほどしか到達していないことがわかりました。

また、机を廊下から事務所の中に移送させ、コンクリート壁を隔てて同様に8回のスイッチングをおこないました。事務所内の位置は元の場所から横方向に2mほど移動していますので上記より少し距離が伸びており、さらにコンクリート壁を越えてくるという悪条件ですが、9mまでは8回のスイッチ音が確認されました。9mは我が家の無線機の前からローテーターのコントローラ間までの距離よりは長い距離ですので、運用上は問題なさそうです。(カタログには、20mから50mと記載されてましたが、50mは無理でしょうね。)

またこの無線スイッチの受信機にはアンテナが見えていましたので、そのアンテナにさらに延長した形で導線をつけたら到達個数がどこまで増えるのか確認してみました(写真6)。単なる導線をつけただけですので、アンテナの役割をしているのかはわかりませんが、スイッチ音の結果からは性能アップは無いようです。351 MHzのデジタル簡易無線用のアンテナをつければ、少しは改善できるかは分かりませんが、今回はその検証は致しませんでした。


写真6 受信ユニットへのアンテナ付加

以上の結果から距離的な問題は解決されるのではないかと思いました。

5. 回路構成

以前使用していたリレーボックスと異なり、今回の受信ユニットのリレー操作モードは複数モードを指定可能でした。マニュアルを見ると、つぎのようにイミディエイトモードやトグルモード、ラッチモードの切り替えができます。

作動方法について: 作動方法はピンのジャンパーによって変えることができます。
・イミディエイトモード: ジャンパーをピンに接続しない
           リレーは、押している間「オン」、離すと「オフ」
・トグルモード:    ジャンパーをピンTとピンSに接続します
           リレーは、押すと「オン」、同じボタンをもう一度押すと「オフ」
・ラッチモード:    ジャンパーをピンLとピンSに接続します
           リレーは、押すと「オン」、他のボタンを押すと「オフ」

しかしモード設定は、全ボタンが対象になっています。Aボタンはトグル、Bボタンはラッチというわけにはいきませんので負荷回路が必要になりました。

モータのCW/CCWの回転は独立に制御したいので、イミディエイトモード、また100Vの電源ON/OFFのためにはトグルモードが必要になります。このため、全部のボタンをイミディエイトモードに設定して、電源ON/OFFボタンについては、対応する受信部のリレーに自己保持回路を持たせ、また、自己保持回路のリセットのために別のボタンを割り当てました。整理すると、各ボタンに次の役割を割り当てました。
 Aボタン: ローテーターCW回転用
 Bボタン: ローテーターCCW回転用
 Cボタン: ローテーター100V主電源OFF用
 Dボタン: ローテーター100V主電源ON用

動作でみると、
 100Vの電源をONにするためにDボタンを押すと、イミディエイトモードで動き、自己保持回路(追加する回路)により100Vリレーが固定される。
 100Vの電源をOFFにするためにCボタンを押すと、自己保持回路をリセットする。
 Aボタンを押している間、ローテーターはCW方向に回転する。
 Bボタンを押している間、ローテーターはCCW方向に回転する。

以上を勘案して、受信ユニットに追加する自己保持回路を含めて、これをローテーターの回路図に追記すると、図7(b)のような回路になります。比較のため、以前の回路図(図7(a))も併記しました。


(a) micro:bitによる以前の回路図


(b) 無線スイッチによる回路図
図7 ローテーター無線制御のための付加回路

6. 組み立て・動作チェック

部品としては無線スイッチとリレー2個ですので、はんだ付け箇所も僅かで大部分は配線です。

リレーは、手持ちの12Vで駆動するものが4個ほどありましたので、それに配線用端子をアロンアルファで接着して無線スイッチやローテーターと接続しました。このリレーは自己保持回路に使用したものです(写真8)。


写真8 自己保持回路用リレー

端子への配線はほぼドライバーのみで済みますから、1時間程度で組み上がりました。


写真9 組み上げ後のローテーター制御器と無線スイッチ

うまく動いたので、無線スイッチとリレーを固定するための底板を3Dプリンタで製作しました。無線スイッチとリレーの寸法を測って3ミリ程度の溝を作り、その中に両面テープで固定するようにしました。3D CADで作成するときに寸法をまちがえて入力したようで、少し大きめでかつ、溝とリレーの間に隙間があいてしまいました。製品ではありませんのでこのままこの状態で固定して運用することにしました(写真10)。


(a)無線スイッチとリレー固定用底板


(b)固定用底板への無線スイッチの取り付け

写真10 最終組み立て状態

設置のためにふたをしてベランダに置きました(写真11)。写真のようにベランダの端に置き、すぐ横にあるコンセントから電源を取っています。写真では手前にローテーターが、右にアンテナモニター用のカメラが写っています。 ベランダに出入りするときによくカメラを蹴飛ばしますが今のところ移動は考えていません。


写真11 ベランダに設置した装置(ローテーター・無線スイッチとローテーター制御器・アンテナモニターカメラ)

7. こぼれ話

本文中には何も無かったかのごとくボタンの役割割り当てを記載しておりますが、こんなことがありました。

今回使用した無線スイッチには1枚(両面印刷)のマニュアルが同封されていました。動作モードなどが書かれていましたが丁寧に書かれているとは言えない紙切れでした。送信側ボタンと受信側リレーの対応関係も記載がありません。送信側のボタンはA,B,C,Dの4つのボタンがついており、受信側のリレーユニットにはリレーに番号がNo1,No2,No3,No4と印字されていました。マニュアルに説明がありませんので、ボタン番号ABCDとリレー番号1234が対応しているんだろうと思ってしまい、

 Aボタン(100V電源のON動作用)   =  No1リレーが動作
 Bボタン(100V電源のOFF動作用)  =  No2リレーが動作
 Cボタン(ローテーターCCW回転用)  =  No3リレーが動作
 Dボタン(ローテーターCW回転用)   =  No4リレーが動作
と割り当てて回路を考え、配線を行いました。

配線を終え、動作試験に移りました。「100Vの電源、うまく入るかな?」と思いながらAボタンを押すと、カチッとリレー音がしますが100Vのパイロットランプが点灯しません。どこで配線間違えたのかなと思いめぐらしながらB,Cのボタンを順番に押していくといずれもカチッとリレー音がします。ところがDボタンを押すと100Vのパイロットランプが点灯しました。

「あれっ? 配線無茶苦茶まちがってるやん!」と思いながらCボタンを押すとパイロットランプが消えました。

ひょっとしてと思い、再度Dボタンを押し、そのあとAボタンを押してみるとアンテナがCW方向にまわり始めました。また、Bボタンを押すとCCW方向に・・・

配線確認しましたが、まちがっていません。「マニュアルに記載すべきだろう!!!」と、心の声(怒)。

この無線スイッチの送信側ボタンと受信側リレーの対応関係は、
 Aボタン = No4リレー
 Bボタン = No3リレー
 Cボタン = No2リレー
 Dボタン = No1リレー
のようです。配線を変更する気持ちは消えてしまいました。

というわけで、当初の私の思惑とは異なり「Dボタンで100VをON」することになり、C、B、Aボタンについても同様な理由で割り当てられました。

「印刷を間違ったのをそのまま売っているのだろうか? やられたな」と、また心の声(笑)。
「怒 after 笑」な気持ちで装置をベランダに据え置きました。

教訓を一つ:
「マニュアルに記載がない場合は、テスターなどを使って対応関係を把握してから配線すべし!」

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