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ラジオ少年

第13回 シーケンシャルウインカーの製作

2024年5月1日掲載


車で走行中、前の車が右折のウインカーを点灯しました。ウインカーは流れるように点灯するシーケンシャルウインカーです。カッコいいですね。汎用部品でそのシーケンシャルウインカーを製作したのでご紹介します。


図1 シーケンシャルウインカーを装備した車 (クリックで動画再生します)

LEDが順次点灯するシーケンシャルウインカーの仕組み

車に装備されているシーケンシャルウインカーは、おそらくマイコンで制御されていると思います。今回の製作は、新たにマイコンの勉強をせず、またすぐに手に入る部品で製作できるウインカーです。

以前この「ラジオ少年」のコーナーで、第10回~12回まで3回にわたり「LED表示簡易電界強度計の製作」を掲載しました。今回のシーケンシャルウインカーの製作は、この記事で用いた回路やアイデアを応用しています。


図2 「ラジオ少年」バックナンバーの紹介 (クリックで各記事にジャンプします)        

全体の回路構成を図3のブロックダイヤグラムに示します。今回のシーケンシャルウインカーのもととなった回路は、ブロック図の一番右端、LEDドライバーです。LEDドライバーとは、「LED表示簡易電界強度計の製作」でも示したように、入力電圧の大きさに応じてLEDの点灯する個数が変化する回路です。ここで使っているLM3914の機能を用いるため、その前段にD/A変換回路、4ビットカウンター、クロック信号発生回路の3つの回路を配置しています。各ブロックの説明を簡単に行います。


図3 シーケンシャルウインカーのブロックダイヤグラム

クロック信号発生回路

LEDドライバーにのこぎり波の信号を加えるには、逆算すると最初にクロック信号が必要になります。図4にそのクロック信号発生回路を示します。よく見かけるインバーター2個を用いた簡単なものです。可変抵抗器(VR1)を付加してクロックの発振周波数を可変できるようにしています。可変することでシーケンシャルウインカーの流れる速度を変えることができます。この回路に用いた定数では発振周波数はVR1の最大値で約4.6Hz、最小値で約490Hzとなりました。


図4 インバーターを用いたクロック信号発生回路

4ビットバイナリ―カウンター回路

のこぎり波を得る方法の一つとして、4ビットのカウンターと抵抗で構成したD/A変換回路があります。カウンターには74HC161を使います。このICのCK端子に図4で示したクロック信号を入力すると、クロック信号の入力に応じてQA~QDのOUTPUT端子には0001、0010、0011といった4ビットの信号が順次出力されます。4ビットですから最大値は1111です。1111まで進むと、また0000から始まり1111までを繰り返します。


図5 4ビットカウンター回路

デジタル・アナログ変換回路 (D/A変換回路)

4ビットの出力(QA~QD)を図6で示すD/A変換回路に入力するとOUTPUT端子からのこぎり波の信号が出力されます。不思議といえば不思議ですが、当たり前といえば当たり前の現象です。実によく考えられた回路だと思います。

この抵抗で構成された回路をラダー抵抗と呼んでいます。デジタル・アナログ変換に用いられます。特に図6に示したラダー抵抗は、5kΩと10kΩとする1:2の定数で構成されていることからR-2R型ラダー抵抗と呼ばれています。1:2の割合ですから1kΩと2kΩの組み合わせでもOKです。

4ビットのカウンター出力QA~QD端子から出力された0000~1111のデジタル信号をこのラダー抵抗に入力することでOUTPUT端子にはのこぎり波の信号が出力されます。ここでデジタル信号が振幅のアナログ信号に変換されたことになります。一般的にのこぎり波の信号とは、電圧が最小値から最大値に達するまで徐々に上昇し、次の瞬間また最小値から最大値まで徐々に上昇、それを繰り返す信号のことです。ここでは、そののこぎり波の最低値を0V、最大値を5Vとしています。


図6 D/A変換を行うR-2R型ラダー抵抗

LEDドライバー

LM3914は、レベルメーターICとも呼ばれています。5番ピンに入力される電圧に応じて、その電圧に応じた個数だけLEDが点灯する機能を持ったICです。例えば、5番ピンに入力する電圧の範囲が0~5Vとすると、0VではLEDは何も点灯しませんが、最大電圧の1/2、つまり2.5VになるとDS1~DS5までの5個が点灯し、最大の5VになるとDS1~DS10まで10個が全灯します。この電圧の変化が0~5Vまでを連続的に繰り返し入力することでDS1~DS10のLEDが連続的にかつ流れるように点灯します。


図7 LEDドライバー

LEDシーケンシャルウインカーの全回路図

図4~7まで、それぞれ4つのブロックに分けて説明した回路を組み合わせたものが図8です。一度に全部のブロックを製作するとたいへんですが、ブロックごとに分けて製作すると簡単にできます。また、ブロックごとの動作も確認することができます。


図8 シーケンシャルウインカーの全回路図

調整

各ブロックの配線を確認したのち5Vを印加します。VR1を回してLEDの点灯スピードが変化するようであれば問題なしです。VR2は、IC3の5番ピンに入力される最大電圧で10個のLEDが全部点灯するように調整します。VR2を回すことで点灯するLEDの個数が変化します。詳しい調整やVR2の値の求め方は第10回LED表示簡易電界強度計の製作を参照願います。VR1、VR2が正常に機能していればシーケンシャルウインカーは完成です。

万が一動作が不良である場合は、次のようにしてブロックごとにチェックします。まずは、クロック発振回路です。オシロスコープ、あるいは周波数カウンターがあればIC1の4番ピンに接続することで、クロック信号が出力されているか否かを確認できます。またVR1の調整で発振周波数の可変を確認することができます。計測器がなければ図9のように4番ピンにLEDを接続することで、発振周波数の変化を確認することができます。このLEDの点滅がVR1の可変で変化すれば回路は正常動作しています。


図9 クロック信号の発振を確認する方法

流れるような点灯をしないということであれば、D/A変換回路の出力端子の確認も必要です。D/A変換回路のOUTPUT端子からのこぎり波の信号が出ているかどうかもオシロスコープを接続すれば一目瞭然ですが、なければクロック発振回路の確認で使用したLEDと330Ωの抵抗の組み合わせと同じものをD/A変換回路のOUTPUT端子とGND間に接続することで確認できます。LEDの輝度に変化があればのこぎり波は正常に出力されていることが分かります。

まとめ

完成した基板に5Vを印加することで街で走行している車のシーケンシャルウインカーと同等の点滅を基板上で見ることができます。


図10 シーケンシャルウインカーの動作 (クリックで動画再生します)

製作はここまでです。完成したシーケンシャルウインカーの使い道は読者の方々でお考えください。

CU

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