2016年11月号

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日本全国・移動運用記

JO2ASQ 清水祐樹

第14回 宮城県富谷市移動

2016年10月10日に、約2年10か月ぶりに新しい市「富谷市」が誕生(図1)し、アマチュア無線では、新しい市との交信を狙ったパイルアップで賑わいました。また、多くの移動局が富谷市に集結しました。10日が祝日、その前日の9日が日曜日に当たり、消滅する富谷町で運用するにも絶好の条件でした。今回は、現地で実際に体験した、富谷市での移動運用の様子をご紹介します。


図1 富谷市役所に設置されていたのぼり

事前の準備

市制施行される市では、急激に住宅地が増えており、移動運用に適した場所が見当たらないこともあります。富谷市は南西側が仙台市に接していて住宅地が広がっており、この付近での移動運用は困難と予想しました。市の東側を占める山林か、北側の農地で運用することが考えられます。

今回の市制施行は「体育の日」であることも運用場所を決める重要なポイントです。何らかの行事が行われ、スポーツ施設が大混雑するためです。そのためスポーツ施設の周辺は候補地から外しました。

また、富谷市の場合、V/UHFをロケの良い場所から本格的な設備で運用すれば、1エリアの多くの局と交信できる可能性があります。このことも考慮して運用場所の候補地をいくつかに絞り込みました。

早速、前々日の8日に富谷町の各地を視察したところ、山林は起伏が大きく、自動車で進入できる場所も限られている感じでした。町役場では記念局8N7Tが運用されるため、この近辺での運用は遠慮したいところです。そこで町の北端、大和町との境界付近を探したところ、周囲に建物が無い場所を見つけました。

その後、町役場周辺や主要な公園を見回り、移動局がどこで運用しているか、運用しそうかを可能な限り確認しました。8日から9日は全市全郡コンテストが行われており、黒川郡富谷町移動、JCG06006でコンテストに参加している局もいました。

富谷町最後の日

9日は富谷町の最後の日でした。HFの移動局が思ったよりも少なかったため、朝8時台から運用を開始しました。当初、釣竿アンテナで7MHz CWを運用していたところ、予想以上のパイルになり、より強い電波を飛ばせるよう、ダイポールアンテナを設置しました。9日はHFのコンディションが比較的良く、昼過ぎには28MHzまで多くの局と交信できました。

しかし、風雨が強く、時には台風のような車が揺れるくらいの強風が吹き、昼間は大型のアンテナが展開できませんでした。夕方に風が弱まったことを確認した後、1.9MHzと3.5MHzのダイポールアンテナ、さらには50MHzの5エレ八木アンテナを設置しました(図2)。


図2 富谷市での運用の様子。

夜になると1.9MHzと3.5MHzでは富谷町最後の交信で賑わいました。もう一つ、今回の市制施行の特徴は、市制施行の午前0時をまたいだ9日23:05と10日00:50に、衛星のFO-29がやってきたことです。富谷町最後の衛星通信と、富谷市最初の衛星通信が短時間のうちに楽しめるというものです。

22時を過ぎるとバンド内には独特の緊張感が漂ってきました。ワッチしている局数は明らかに多いのに、CQを出してもそれほど多くの局からは呼ばれない状態です。午前0時からの富谷市のパイルアップに備えて、23:30過ぎから3.5MHz CWの周波数を確保しました。午前0時が近づくと、既に交信済みの局が再びご挨拶コールをされたり、/QRPを付けて呼ばれたりしました。そして0時の時報とともに、JCC 0316 富谷市のCQを開始しました。

午前0時の時報とともに

猛烈なパイルアップが始まりました。最初の印象は「1エリアが弱い…」。コンディションが悪く、近距離はスキップ気味のようでした。しかし4エリア、6エリアの強力な局と、7エリアの近距離の局の信号がパイルの中から浮かび上がってくるため、パイルアップの規模が大きい割には、重なった信号の識別は容易でした。30分を過ぎてもパイルアップが続き、00:46に衛星のFO-29で運用するため3.5MHzの運用を中断しました。

衛星のFO-29は、北から南下するパスだったため、北に位置する局から順番に呼ばれてパイルアップが分散し、交信はスムーズに進みました。深夜にもかかわらず、SSBでのかなり厚いパイルアップも印象的でした。その後、1.9MHzにQSY、ここも1分間に2局を超えるペースで交信を続け、7MHzから上の周波数へ。深夜にもかかわらず7MHzで1エリアの一部が聞こえていました。

深夜は各バンドを断続的に運用し、午前5時台は、夜明けとともに聞こえなくなる1.9MHzを中心に運用。夜明けとともに7MHzの近距離オープンを待ちました。今回の新市では7MHzのオープンが予想より早く、午前5時半には近距離が安定して聞こえていました。2014年1月の滝沢市では7MHzが午前7時近くにようやく聞こえ始めたことが記憶にあったので、これは嬉しい誤算でした。

午前6時から9時近くまでは、衛星通信の時間を除いては7MHz CWで連続して呼ばれ続けました。この間、休憩はありません。そして10MHzから順に高い周波数へ。10日の午前中はハイバンドのコンディションが非常に良かったようで、朝から運用を始めた移動局は各バンドで精力的にサービスをされたようです。私は7MHzと10MHzで長時間呼ばれ続けていたため、この時点ではハイバンドの運用ができませんでした。

前日の風雨は収まり、風も弱くて穏やかな天気になりました。午前9時半過ぎに50MHzにQSYしてみました。アンテナを南南西に向けてCQを出すと、1エリアから続けて呼ばれ、局数の多い1エリアまで電波を飛ばすと良く呼ばれることを実感。続いて144MHzと430MHzも運用しました。144MHzは新潟方面が強力だったものの、430MHzは山岳にブロックされているようで、あまり聞こえませんでした。

その後はHFの各バンドを巡回。HFのハイバンドはこの時期としては相変わらず好調で、12時近くになっても28MHzで安定して交信できました。午後からはコンディションが下降線をたどり、富谷市移動局も増えてきて各バンドに誰かが出ている状態になったので、14時台に3.5MHzにQSY。昼間にもかかわらず多くの局から呼ばれました。夕方は多くの局からQSYリクエストを頂いたものの、14MHzか18MHz止まりで、それより高い周波数はほとんど聞こえませんでした。

18時頃、日没を過ぎると1.9MHzと3.5MHzでパイルアップが再び始まりました。前日の夜や当日の朝から移動運用している局は、さすがにこの時間帯には出足が鈍っており、日没後の私のCQには多くの局からコールがありました。富谷市最初の日は不眠不休で運用を続け、20:30をもって運用を終了しました。運用終了時、CWでCL(閉局します)と打つと、多くの局からTU(ありがとう)と返答がありました。

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