2016年12月号

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連載記事

日本全国・移動運用記

JO2ASQ 清水祐樹

第15回 徳島県移動

秋の夜長は、アマチュア無線ではローバンド(1.9、3.5MHz)のシーズンです。この周波数帯は夜間に遠方まで到達するため、日没が早い時期には、夕方から夜にかけて長時間の運用を楽しむことができます。11月は冷え込みも厳しくなく、ローバンドの移動運用には最適です。

そこで、ローバンドのリクエストが多い、徳島県での移動運用を行いました。11月には祝日が2回あるものの、2016年はいずれも土日に続かないため3連休ではなく、土曜日の早朝に現地入りし、日曜日の午後に帰路に就く日程で移動運用を行いました。

ローバンドのリクエストが多い徳島県

徳島県の地形を一言で表すと、西側が山、東側が海です。移動運用の場所として、この地形を眺めると、海に面した地域では広い場所があり、運用は容易と思われます。では、西側の山ではどうでしょうか。柑橘類の栽培が盛んであることからも推測される通り、山間部は急斜面が多く、周囲が開けた広い場所を見つけることは困難です。また、道路網も限られており、山間部の町村間を行き来するには時間がかかります。

徳島県は、以前からローバンドのリクエストが多くありました。その要因として、山間部で長いアンテナを設置する場所が見つけにくいことと、移動に時間がかかり1日に運用できる場所の数が限られることが考えられます。今回の移動運用は祝日に重ならない通常の土日で、日曜日の午後には帰路に就いてしまうため、ローバンドをメインとした運用は土曜日の夜だけです。リクエストが多かった郡として、板野郡、名西郡、名東郡、美馬郡などがあり、どこで運用するか直前まで迷いました。

板野郡は徳島市に面した5町で構成されており、市街地に近いために運用場所が見つけにくい町があります。名西郡は石井町と神山町の2町で、石井町は河川敷で場所がありそうですが、神山町は山間部で、地図を眺めていても運用場所探しが難しそうです。名東郡は平成の大合併以前から1郡1村(佐那河内村)を継続している珍しい郡で、山頂に近い場所での運用をしばしば聞きます。それ以外は急斜面が多く、運用可能な場所に到達するには時間を要します。徳島市に近い地域では今後も運用する機会があると考え、徳島市から離れている美馬郡つるぎ町をローバンドのメインの目的地に設定しました。

1日目・土曜日の運用

土曜日早朝の現地入りは、1エリアの某局から1.9MHzのリクエストがあった吉野川市から開始しました。短時間で多くの場所から運用するため、釣竿を利用した自作の短縮アンテナを使用しました。午前4時台、周囲はまだ真っ暗でした。堤防上で1エリア向けに開けた場所を探し、アンテナを設置すると、1.9MHzで1エリア、さらには7エリアの信号が聞こえてきました。ノイズも無く伝搬は安定しているようで、この調子なら短縮アンテナでも複数の場所から運用ができそうです。

隣接する名西郡石井町でも運用したかったのですが、別の局から板野郡3.5MHzのリクエストがあり、板野郡上板町に移動しました。3.5MHzは市販のモービルアンテナです。午前6時台に周囲が明るくなってくると、遠方の信号が次第に聞こえなくなってくる様子がはっきりと分かります。1.9MHz、3.5MHzの信号が弱くなると、7MHzが遠方から順に聞こえるようになってきました。板野郡はこれに続いて板野町、藍住町で運用し、午前9時台に運用した藍住町7MHzは長時間のパイルになりました。

この時期のHFの伝搬の特徴として、9時から10時頃に一旦良くなり、11時から14時頃はあまり聞こえなくなった後、14時から16時頃に7~28MHzまで全てのバンドの伝搬が良くなるケースがあります。この日も正午前後はあまり聞こえなくなり、14時以降のコンディション上昇を狙って美馬市に移動しました。

美馬市は西から東に吉野川が流れており、北側と南側は高い山に囲まれています。堤防上で、局数が多い1エリア方向にできるだけ開けた場所を探しました。10MHzから上のバンドはあまり良くなかったものの、15時頃から7MHzの近距離が強く聞こえるようになりました。そして16時過ぎに日が傾いてからはローバンドを投入。短縮アンテナ・モービルアンテナでもバッチリ聞こえており、作戦は成功しました。

日没後に美馬郡つるぎ町に移動。暗くなっており、目視で運用場所を見つけることは困難でした。地図上で運用可能と予想した場所に手頃な駐車スペースがあり、長さ40m近いロングワイヤーアンテナ(2013年10月号参照)を展開できました。長いアンテナを展開できれば、ローバンドの運用はお手の物です。

ここで驚いたことは、ロングワイヤーアンテナと手動アンテナチューナーで試しに10MHzに整合させてみたところ、日没後にもかかわらず1エリアと交信できたことです。通常、日没後の10MHzは近距離がスキップしており、四国から北海道・東北以外と交信することは困難です。アンテナが長いため、利得が高いのかもしれません。

2日目・日曜日の運用

2日目は山間部で運用が難しい、勝浦郡勝浦町と那賀郡那賀町を目指しました。徳島市で朝食を摂り、勝浦町に到着すると午前8時近くになっていました。山間部で広い場所はなかなか見当たりません。何とか河川敷で駐車スペースを見つけ、雨がパラつく中でロングワイヤーアンテナを設置しました(図1)。この時間の1.9MHzは信号が弱いため、少しでも利得の高いアンテナを使おうという作戦です。

午前8時台の1.9MHzはQSBが激しく、また近くにノイズ発生源があるようで、信号が浮いた瞬間を捕らえられず、そのままフェードアウトしてしまいました。日中のローバンドの遠距離はさすがに無理がありそうです。3.5MHzはこの時間でも良好に入感していました。

那賀町はさらに山間部に入り、谷底に近い場所です。勝浦町から那賀町に移動する道はかなりの急斜面、急カーブで、運転には細心の注意を払いました。午前11時頃から同様にロングワイヤーを展開し、3.5MHzにチャレンジしたものの、1エリアにギリギリで届く程度で、徳島県のローバンドを大サービス、とまでは至りませんでした。


勝浦町での運用の様子

頭の体操 詰将棋

Masacoの「むせんのせかい」~アイボールの旅~

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