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無線をせんとや生まれけむ。

第四話 モノポールアンテナとIC-7851

無線(CQ)をせんとや生まれけむ。
短波(ラジオ)聞かんとや生まれけん。
呼ぶ、かの局の信号(こえ)聞けば
我が身さえこそゆるがるれ。

JF3SFU 永野正和

皆さま、いかがお過ごしですか? いよいよ春がやってきました。BCLもアマチュア無線もハイバンドのシーズンです。ひょっとするとサイクル25の幕開けの春かもしれません。嬉しいじゃありませんか!! と言いましても、まだしばらくはローバンドなのかなという気もします。たびたび申し上げておりますが、昨今、短波放送は、聴いて楽しい放送が、本当に少なくなりました。

そこで今月は、BCLは少し後回し。聴くところがなければ電波を出そう。IC-7851はトランシーバだ! そうだ! ローバンドにQRVしよう。そのためには、、というところからお話を始めたいと思います。

以前、自宅外周の地上からCushcraftのR8Jや、クリエートデザインのCV-48をあげていました。設置場所は自宅や周辺の住宅、マンションの谷間にあり、条件は最悪の部類で、BCL用としても使っていましたが、アマチュア無線のアンテナとしては、性能を発揮することなく、諸事情により撤去してしまいました。

しかし、最近は、高性能な屋外型アンテナチューナユニット(以降、ATU)の出現により、30mバンドや40mバンドくらいまでなら、大型アンテナを準備せずとも、適度な長さのアンテナエレメントを準備するだけで、比較的簡便にアンテナシステムを構築でき、CWやFT8モードならば、DX局とも交信できるようになってきました。そんなことで、新しいアンテナについて、再び考え始めました。

今回のアンテナは、
① 2階のベランダにある設置済の支柱に取り付けること。
② 台風を気にしなくてもよいサイズで、更には手軽に取り外せること。
③ マルチバンドで使用でき、そこそこ、電波が飛ぶこと。
④ 200Wの連続運用ができること。
⑤ BCLにも使えること。(おまけ)
を条件としました。

材料調達を始める

まず、2階のベランダに設置できるものということで、アンテナのタイプは、垂直型のモノポールアンテナとカウンターポイズの構成に決めました。また、工作の時間がとれないこともあり、手っ取り早く、市販品を使うことにしました。

次にアンテナエレメントです。ネット検索で、数種類の製品を見つけました。そのなかで、一番長く、比較的軽量な、CQオームの6.5mのモノポールアンテナエレメント(製造はナガラ電子工業)を選択しました。このアンテナはステンレス製のボルトと蝶ナットで、組み立てられます。とても簡単な構造ですが、しっかりとしたつくりです。

ATUは、連続200Wの運用が可能な米国LDG製のRT-600/RC-600を選択しました。いずれの場合もそうなのですが、特にモノポールアンテナ+ATUでの運用は、インタフェア対策が重要ポイントになります。そのため、LPF(ローパスフィルタ)とCMF(コモンモードフィルタ)、それから多数のスナップオンタイプのフェライトコア(別名: パッチンコア)を準備しました。また、アンテナ側のレンジを広げられるよう、4:1のUN-UNバランも準備しました。

調達部材:
① アンテナエレメント (OHM6501ATE) 6.5m長
② UN-UNバラン(4:1) (BALUN DESIGNS 4132-4:1 UN-UN)
③ ATU (LDG ELECTRONICS RC-600/RT-600)
④ LPF (コメット CF-50MR)
⑤ CMF (ダイヤモンド CMF-2000)
⑥ スナップオンチョーク 多数 (主にTDK製)
⑦ カウンターポイズ用ケーブル (10m×2、5m×5)
⑧ 同軸ケーブル+コネクタ


調達した部材


ATU/屋外ユニット(RT-600)/屋内コントローラ(RC-600)


フィルタ類(LPF, CMF, スナップオンタイプ・フェライトコア)

モノポールアンテナのエレメントを組み立てる

導電グリスを塗り、エレメント回転させグリスをなじませながら1本が約1.2mのポールを6本継いでいきます。しっかり蝶ねじで固定し、接続部から水やほこりが入らないように、自己融着テープで封止します。


エレメントの接続は、導電グリスを塗って馴染ませ固定し、自己融着テープで防水

ベランダの支柱に設置する

支柱に取り付けるものは、上から、モノポールエレメント、UN-UNバラン、ATUの順です。UN-UNバランのグランド側には、5m×5本、10m×2本のカウンターポイズを取り付けます。もう一方の端子は、モノポールからの接続ケーブルを取り付け、やはり自己融着テープでしっかり防水をします。


ベース部分(左)、屋外コントロールユニット(右)


フェライトコアでI対策(左)、全景(右)

カウンターポイズを屋根に貼りつける

バランに取り付けたカウンターポイズのケーブルの束を、耐候性の優れている屋外用フックで、屋根の上に放射状に張り付けます。今回のアンテナ工事で一番怖いところです。(なんといっても、屋根の端まで行かないといけません。ルーフタワーに登るより怖いです。)

自宅の屋根は、金属建材でカバーされています。この金属建材は磁石が引っ付きますので、何かの磁性体金属です。カウンターポイズは現在のところ、屋根に密着させていますが、浮かせた方が良いかもしれません。これは、折を見て実験したいと思います。


カウンターポイズを敷設

動作確認をする

アンテナからトランシーバまでの接続を下図に示します。


今回調達したATUの屋外ユニットであるRT-600にはコントローラユニットRC-600を介してDC12Vが同軸ケーブルに重畳、供給されます。電源は別途12VDC(1000mA)を準備する必要があります。ATUの動作ですが、最初に電源を入れて各バンドのチューニングポイントを見つけます。

ATUはトランシーバのパワーを絞った状態で送信にして、RC-600のボタンを押すと、チューニング動作を開始します。各バンドでの最良点を見つけるために最初は数秒を必要としますが、一旦見つけた同調点は、システム内のメモリーに格納され、その後は瞬時にチューニングが完了します。

チューニング結果のVSWRの測定結果は以下の通りでした。


80mバンドでは、同調点が見つかりませんでした。また、17mバンドと10mバンドでVSWR値は下がりきりませんでした。カウンターポイズの引き回しを変えてみましたが、大きな改善はなく、更なる工夫が必要なようです。17mバンドについては、当面、マニュアル・アンテナチューナで調整して使用しようと思います。(トランシーバ内蔵のアンテナチューナは、ATUとシーソーゲームになってしまうことが考えられるため使用しません。)

ところで、今回設置したモノポールアンテナのすぐそばには4エレトライバンダTA-341があります。モノポールエレメントのトップは、TA-341のエレメントとほぼ同じ高さにあり、最接近する場合は2mくらいの距離になります。TA-341への影響はありませんでした。モノポールアンテナは少し影響を受けていましたが、TA-341を回転させると、ある位置関係で気にならなくなります。

モノポールアンテナで交信してみる

VSWR測定が終了し、いよいよ電波を発射します。新しく準備したアンテナでの最初の運用は、いつもドキドキします。しばらくは周辺にTVIなど電波障害が発生していないかなど、ご近所さんの様子をうかがいながらの、スロースタートです。まずは自宅ですが、TVやラジオ、その他、電子機器に妨害は与えていないようです。また、無線機の横にあるコンピュータへの回り込みなどもありません。200W出力でも問題は無い様子ですが、しばらくは100Wで運用したいと思います。では、実際の運用記録として、数日間のログとPSKREPORTERの画面を示します。

<40mバンド>



https://pskreporter.info/pskmap.html

40mバンドでは、アジア全域、欧州、北米、南米、アフリカにまで、弱いながらも電波は到達しています。嬉しいことに、ザンビアとコンタクトが出来ました。

<30mバンド>



30mバンドでは、アジア、欧州、北米西海岸、南米、オセアニアとQSOが出来ています。また、アフリカ北部にも電波は到達しているようです。

<17mバンド>



17mバンドでは、PSKREPORTERには信号が上がっていませんが、欧州とコンタクトが成立しています。オーストラリア方面、北米、西海岸や東海岸にも電波は到達しているようです。南米、アフリカは不明です。QSOの実績もまだありません。QRVしてまだ、数日ですので、これから確かめてみたいと思います。

<12mバンド>


コンディションが芳しくなく、聞こえません。もう少し季節がすすめばオープンする日も増えるでしょう。しかし、そのような中でもNorfolk島からの信号をとらえることができ、QSOが出来ました。このバンドは、春から秋にかけて良いコンディションの日を見つけ、運用したいと思います。

<総評>

今回の新アンテナは、40mバンドや30mバンドなど、ローバンドにQRVすることを目的に設置しました。以前の経験によるものなのですが、街中で使用するバーチカルアンテナの印象は「聞こえない」、「飛ばない」といった、あまり良いものではありませんでした。

ところが、今回上げたATUとの組み合わせのモノポールアンテナは、100Wでも結構飛んでいるようですし、聞こえます。ここ数日の運用で、バーチカルアンテナに対する印象が変わってしまいました。2階のベランダから、ひょいと上げた、わずか6.5m長のモノポールアンテナとATUで、40mバンドや30mバンドなど、マルチバンドでの運用が可能で、FT8モードとはいえ、送信した電波が地球の裏側まで飛んでいくということに驚きました。ビームアンテナとはまた違った面白味があり、遠距離の国内局や、海外局とQSOができますと、「ムフフ。」と、こみ上げてくるものがあります。これがあるから無線趣味はやめられません。CQを出してコールをいただいたときなどは、もう、気絶しそうです。シンプルなアンテナでのマルチバンド運用は本当に楽しいです。

まぁ、その、なんです。新しいリグ(ラジオや、受信機、トランシーバーなど)やアンテナは、いくつになってもテンションをあげてくれます。しばらくの間、ハッピーが続きそうです。もう、たまりません。(笑)

受信してみる(v.s. ALA-1530LNアクティブループアンテナ)

折角、設置したアンテナです。BCLに使うとどんな感じなのか、受信専用のアクティブループアンテナであるALA-1530LNと比べてみます。

<31mバンド>


モノポールアンテナ(ATUで30mバンドに同調)


ALA-1530LN

画面のWaterfall Displayからも見て取れますが、モノポールアンテナはノイズフロアのレベルが全体的に高く、ALA-1530LNの方が静粛です。しかし、S/N的には大きな差はなさそうに見えます。実際の受信では、どちらか片方のアンテナで聞き取れるレベルの放送は、もう一方のアンテナでも受信することが出来ました。31mバンドより高い放送帯では、受信する放送バンドに近いアマチュア無線バンドでチューニングすれば、充分性能を発揮します。

<41mバンド>


モノポールアンテナ(ATUで40mバンドに同調)


ALA-1530LN

次に、もう少し低いバンドである41mバンドで聴き比べをしてみます。41mバンドのように少し低い周波数になりますと、S/N比的にループアンテナの方に軍配があがります。CWを聴く分にはあまり変わらないと思うのですが、「放送を受信すること」では、ALA-1530LNの方が周辺のノイズを拾わず、了解度が高いです。41mバンドより低い周波数では、垂直系のアンテナはループアンテナと比較して、都市(町)特有のノイズを受けやすいのかもしれません。この傾向は、受信周波数が低くなるに従いより顕著に現れます。アマチュア無線的にも、受信時はALA-1530LNが有効です。送信はモノポールで、受信はALA-1530LNで、スイッチして使えば良いかもしれません。幸い、IC-7851には、送信と受信のアンテナを切り替える機能が付いていますので、簡単に操作が可能です。

アンテナの経済学

今月は、モノポール型のマルチバンドアンテナを準備しました。より具体的な性能の確認はまだこれからですが、設置にかかった費用についてまとめてみます。同様のアンテナを設置したいとお考えの方の参考になればと存じます。


うーん、結構かかっていますね。今回は、もともとあったポールとベースを流用することで、少し節約になっていると思います。小型の設置ベース(取り付け機材)を別途買うとすれば、更に数万円オンされます。それでも、3.5MHzを除く8バンドにQRVすることが出来るとするならば、1バンドあたり17,000円余りになりますので、まぁまぁかなぁと思います。

今回は200Wの連続運用に対応する機材を選択しましたので、やや高くなりましたが、出力の上限を100Wまでとするのであれば総額は10万円以下になるのではないか思います。200Wの固定局を考えた時に、OMから、ハイパワーはそれなりにお金がかかりますよと助言をいただきましたが、本当にそう思います。(汗) これらのコストパフォーマンスをどう考えるかはそれぞれですが、私は、長く使うことが出来れば、安いかなと思うことにしました。(言い訳です。) どうであれ、ラジオ・無線趣味は、少々お金がかかります。はい。(笑)

アンテナ工事あるある

幾度となく経験したアンテナ工事ですが、「やってしもーた! あるある」を、自戒を込めて書いておこうと思います。本当に学習能力のないことで。。

① 同軸コネクタのネジ部を同軸に通し忘れてハンダ付け。(確認したのに。。)
② アンテナからの同軸ケーブルの引き回しで、もうあと少し長さがが足りない。(計ったはずなのに。。)
③ どういうワケか、何かの部品が足りなくなる。(さっきまで、あったのに。。)
④ 屋根に持って上がってきたレンチのサイズが違う。(何回往復していることやら。。)
⑤ そんなことで、想定したスピードで作業が進まない。(アンテナ工事、何回目?)
⑥ その結果、あともう少しのところで天気が悪くなり焦る。(あーっ!、降ってきちゃったよ。。)
⑦ 工事の翌日は腰痛で動けない。(思いたくはないですが、寄る年波。。)
⑧ そんなときに限って家人に用事(肉体労働)を頼まれる。(容赦無用のXYL。。)
⑨ いい感じの性能と思える幸せの2週間。(幸せなときはいつも短い(笑))
⑩ 次のアンテナのアイデアがむくむくと沸き起こる。(無線趣味は終わりなき探求なり。。)

では、いつものように、7851で一句。

BCLから見た、ここが惜しいぞ! 7851⑤

「デジセルは、どんな時に使うのよ? 取説見ても、わからない機能。」
中波帯に近い短波帯でデジセルをONにしますと、中波からの抑圧を排除できていることは顕著にわかるのですが、例えば31mbで、短波放送を聴いているときに、サイドからのかぶりこみを抑えるような目的、用途の装備ではないようです。

デジセル=デジタルプリセレクタだと思うのですが、すでにルーフィングフィルタや、IFフィルタでいらぬものをそぎ落としているせいか、ON/OFFの差がよくわかりません。どういうときに有効なのでしょうか?どちらか、こんな時いいよ~と教えてください。(汗)

来月のお題ですが、今月のモノポールアンテナを使って春の放送を聴くか、アマチュア無線で使ってみるか、それとも中波を探ってみるか、ちょっと考え中です。ご期待ください。

では、来月までごきげんよう。73&88。

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次号は 12月 1日(木) に公開予定

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