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Japan Castles On The Air (JACOTA)

Castle 7 糸数城(沖縄県南城市)からマグループでQRV

JS6TMW スティーブ ファブリカント(Steve Fabricant) 月刊FB NEWS編集部訳

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こんにちは、初めまして、私の名前はスティーブ、コールサインはJS6TMWです。沖縄県那覇市に住んでいます。私はアマチュア無線の中でも屋外で運用するSOTA(Summits On The Air Japan)やPOTA(Parks On The Air)を楽しんでいます。以前、このFB NEWSにJACOTAのことを書いていたグレッグ クック(Greg Cook)、JO3SLKからJACOTAについて教えてもらい、たいへん興味を持ちました。今回それでグレッグから依頼されてJACOTAの沖縄編を紹介します。ところで沖縄には少なくとも14の保存状態の良い城跡があります。そのほとんどは遺跡になっていますが琉球王国の重要な遺産です。

私は数年前からSOTAを楽しんでいます。リストアップされたSOTAサミットのほとんどは沖縄本島の北部にあります。また離島にも多くあります。そのうちの一つが我が家からわずか9kmのところにある糸数城と呼ばれる古城跡です。今回は、その糸数城址で自作のマグループアンテナを使って運用したことをご紹介します。

糸数城の沿革

糸数城(いとかずぐすく・いとかずじょう)について少しお話します。城は南山王国南山の琉球史のグスク(沖縄の城)時代に建てられました。 ここは、玉城按司の三男の糸数按司の居城であったと伝えられています。1429年に尚巴志(しょうはし)王に征服された後、南山と他の中山王国と北山王国は琉球王国として統一され、明治時代に日本に編入されるまで独立していました。


糸数城の石垣は14世紀半ばに作られました。日本の主要な城の石垣とは異なり琉球石灰岩からできています。今となっては残念ながら長い年月を経て石垣は荒れ果てています。

私の運用設備

私が屋外のポータブル運用で使用するのは7/14/18/21MHz帯をカバーするCW、5Wのキット無線機です。その無線機に自作アンテナを接続して運用しています。私の気に入っているアンテナは、14/18/21MHzをカバーする平行垂直アンテナです。ラジアル部分が高く、アンテナそのものは、キャンプのときに使うような椅子で支えています。私はこのアンテナのことを椅子のチェア(Chair)とアンテナ(Antenna)とを組み合わせたチェアテナ(Chairtenna)と呼んでいます。小さな7MHz用のトラップと傾斜したワイヤーで、切り替えや調整なしに4バンドすべてでオンエアーできます。欠点は、セットアップに約15分かかることで、また時々ワイヤーが絡まることです。重量は椅子を含めて約7kgです。操作が非常に簡単であることは言うまでもなく、これは本当のDXキラーのアンテナだと思います。


離島でSOTA運用を行った後訪問してくれたJH0WMN OMがチェアテナに座る

小型マルチバンドマグループの製作

昨年の春、カリフォルニア在住のアマチュア局K6ARKがネットにアップしたYouTubeビデオを見つけました。K6ARK、アダム(Adam R Kimmerly)は、HFおよびVHFのポータブルアンテナを発明したことでSOTAの世界では有名です。彼は、簡単に持ち運びできるように折りたたみ式の小型マルチバンドループ(STL; Small Transmitting Loopまたはマグループ)アンテナを接続し、わずか5WのQRPでJA局と7MHz、CWでQSOをしています。私は以前にマグループを作ったことがありましたが、それほどうまくいきませんでした。ところが彼の製作した軽量のループは非常にうまく動作しているようで興味深く、自分のニーズに合わせて作れるのではないかと思いました。今回私の作ったループは、何本かの平らなアルミの平板(15mm x 2mm)を使用しましたが、接触点の数を減らすために、1メートルの長さのものを4本としました。また、アルミの平板の重なる接触面積を大きくし、アルミの表面の酸化防止剤のアルマイト加工を削り取り、導電性グリースを塗りました。


2本のアンテナアームを接続するジョイント部。黒ずんでいる部分は導電性グリースです。

ナットを締めた後のループの直流抵抗は測定することはできませんでした。それでもエレメント部は簡単に折りたたむことができました。接合部分を地面に広げ、4個の蝶ナットを締めるだけでアンテナ全体を組み立てることができます。また、オプションでループの円周を6メートルに拡大できるように、さらに2本のエレメント部を追加しました。これにより、7MHzの理論上の効率が半波ダイポールに対して13%から34%にアップし、信号強度が約4dBアップします。

すべての帯域でループを共振させるために、ジャンクボックスにあった50pFのエアバリコンを使用しました。必要に応じて追加で50pFシルバーマイカコンデンサを並列に接続しました。100pF~150pFの範囲は7MHzの調整に使用します。50pF~100pFは14MHz、0~50pFは18MHzと21MHzの調整に使用します。共通の二次結合ループには、巻線にいくつかのタップを付けたトロイダルコイルを使用しました。タップは、同軸ケーブルにはんだ付けしたワニ口クリップを使います。試行錯誤しながら、バンドごとに最適なターン数を見つけました。


調整用のバリコンとトロイダルコイル

4メートルの伸縮ポール、追加のループ材、同軸ケーブル、および支柱含むアンテナ全体の重量は、わずか1.35kgです。


(左から右へ) 2本の延長用の1メートルの長さの追加エレメント、取り付け支柱杭、4メートルのグラスファイバー釣り竿、メインの4メートルのループパーツ、チューニングロッド

小型マルチバンドマグループの調整方法

STL(Small Transmitting Loop)アンテナがうまく設計され組み立てられているのであればQは非常に高く、帯域幅は非常に狭いため、SWRを下げるのにはかなり困難を要します。バリコンの調整は微妙で、正確に調整するにはバリコンをバーニアダイヤルのような減速ドライブシャフトで調整する必要があります。だいたいの調整であれば、受信機の信号やノイズのレベルを聞きながら一番レベルの大きくなるところにバリコンをセットすることで調整はできますが、完全に一致させるにはSWRインジケーターが必要です。私のQRPリグにはSWRメーターが組み込まれていないため、LED電圧インジケーターによるSWRブリッジを組み込みました。


LEDインジケーター付きのSWRブリッジと2台の無線機

小型マルチバンドマグループのフィールドテスト

アンテナの製作は実際には今年の5月に完成し、すでに庭でテストしました。マストを取り付ける杭を地面に打ち込み、釣り竿を伸ばし5分以内にループを組み立てることができました。 チューニングには数秒しかかかりませんでした。アンテナを設置した場所が悪いためか、QRPで多くの局とQSOすることができませんでした。その後、沖縄の天気は高温多湿が続き、蚊はいなくなりましたが秋分の日の週末までそれをテストするエネルギーが湧きませんでした。

まだ蒸し暑いですが、このアンテナの大きな利点は、炎天下でチェアテナを設置する場所が見つからないようなときは、涼しい木陰に設置できることです。


ループアンテナの組み立て

娘とXYLが一緒に糸数城に来て昼下がりの景色を楽しみました。娘が写真を撮っている間、近くに住んでいる家族の友人がたまたま電話で私たちがここにいることを知り、顔見せにきてくれ、世間話に花が咲きました。



アンテナを試しているところ。

まずは14MHzにてKD1JVトライバンダーを接続して運用を開始しました。すぐに台湾と本州のJA局が私のCQに応答してくれました。次にキットで作ったQRPトランシーバーを使って7MHzで電波を出しました。チューニングは素早くでき簡単です。さらに本州のJA局2局と交信できました。私がCWで交信中、観光客が通り過ぎにモールス信号を聞き、アマチュア無線がまだ存在していることに驚いていました。屋外での運用であったため家に帰るのを少し急ぎ、じっくりとQSOできませんでしたがそれでも最初のJACOTAの運用がうまくいったことをとても嬉しく思います。他のJACOTAサイトでもまたお会いできることを楽しみにしています。

私は特にリサイクル部品や特売品で買った部品を使った電子工作を楽しんでいます。将来的には、FB NEWSに私のDIYプロジェクトに関する記事を書いてみたいと思っています。

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