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FBのトレビア

第四十五回 カウンターICとラダー抵抗による
D/A変換回路でのこぎり波を作る実験

2024年4月15日掲載


Dr. FB

前号の記事ではR-2R型ラダー抵抗に4ビットのデジタル信号を手動入力し、そのときの入力信号に対する出力電圧をテスターで測定しました(図1)。0000から始まり1111で終わる4ビットの信号をラダー抵抗を通すことで、そのデジタル信号が振幅の信号に置き換わり、デジタル・アナログ変換(D/A変換)が行われることを実験で確認しました。

今号では、4ビットの信号を手動ではなくICを使い連続的に入力し、出力には図1の階段状の信号が連続して現れることをオシロスコープで確認する実験を行います。

図1のグラフで説明すると、入力信号が0000→0001→0010 ・・・ 1110→1111まで順番に増加すると出力電圧も0Vから4.68Vまで階段上に増加します。1111まで達した入力信号は、次の瞬間また0000から始まり1111まで同様に変化することで、出力電圧も0Vから4.68Vまで増加する現象が繰り返されます。出力電圧は、部分的には階段状ですが近似的には直線的に増加していると言えます。


図1 4ビットR-2R型ラダー抵抗の入出力特性

この連続的に繰り返される出力電圧は図2のように“のこぎりの歯”のように見えることから“のこぎり波(Sawtooth waves)”と呼ばれています。


図2 理想的なのこぎり波の波形

4ビットバイナリーアップカウンター

今回使用の4ビットのバイナリーカウンター(74HC161)では、ICの入力端子(CK)にクロック信号が入ると4本の出力端子QA~QDのレベルがクロック信号の入力個数に応じて0→1、0→1に変化します。例えば1個目のクロック信号が入るとQA=1、QB=0、QC=0、QD=0、そして2個目の信号が入るとQA=0、QB=1、QC=0、QD=0、最後の15個目の信号が入力されるとQA=1、QB=1、QC=1、QD=1といった出力の変化となります。つまり0000→0001→0010 ・・・ 1111といった信号です。このようにクロック信号の入力個数を4ビットの出力で表現するICを4ビットカウンターICと呼んでいます。(ここでは1=Hレベル、0=Lレベルを表現しています。)

図3に示す74HC161は4ビットのカウンターのICです。この74HC161の中にはD-FF(Dフリップフロップ)が4個組み込まれています。出力端子の最小桁がQAで最大桁がQDです。クロック(Clock)信号入力されるごとにQAから順番にQDまで桁上がりが行われ、0000→1111に変化します。D-FFの動作についてはFBのトレビア第三十七回でも説明していますので参考にしてください。


図3 74HC161の概要

74HC161とR-2R型ラダー抵抗を使った“のこぎり波”発生回路

図4にのこぎり波をカウンターICで発生させる回路図を示します。IC1は、4ビットバイナリ―アップカウンターです。ここでは、74HC161を使います。IC2aとIC2bはインバーターを使ったクロック信号の発生回路です。インバーターには74HC04を使います。実験では74HC04を使っています。VR1の可変で発振周波数を可変できるようにしています。クロック信号がIC1のCK端子に入力されるごとにQA~QD端子が0001~1111までの4ビットの信号を出力します。1111になればまた0000から始まります。

3番ピン~6番ピンはプリセットの端子ですが、今回の実験では使いませんので、全てGNDに接続して0(L)レベルにしておきます。

これらQA~QDの4ビットの信号をR1~R8で構成されたR-2R型D/A変換回路に入力することで、図1に示したR-2R型ラダー抵抗の入出力特性に沿ってこのOutput端子にはのこぎり波が現れます。


図4 4ビットバイナリーアップカウンターとR-2R型ラダー抵抗を使った“のこぎり波”発生回路

実験回路

図4に示した回路をユニバーサル基板に組み込んだものが図5(左)です。D/A変換回路の出力端子にオシロスコープを接続してその波形を観測したものが図5(右)です。のこぎり波が出力されているのが分かります。


図5 のこぎり波発生回路をユニバーサル基板に組み込み、その出力をオシロスコープで観測

出力波形の考察

図5(右)の出力波形の時間軸(横軸)を拡大したものが図6(右)です。前号で行った手動による4ビット信号の入出力特性をグラフにしたものが図6(左)です。両者を比較すると結果は同じであることが確認できます。


図6 D/A変換回路の画像の横軸を広げて観測

まとめ

今回は、4ビットのアップカウンターを使ってのこぎり波を発生させる実験を行いました。デジタル信号で処理されている多くの電子機器の中にもこのようなD/A変換回路が組み込まれています。D/A変換回路の原理を知る上で今回の実験は部品点数もそれほど多くないため簡単に実験ができると思います。

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