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第九回 ハンディー機のアンテナSWRの測定(その1)


Dr. FB

我々アマチュアがアンテナを設置すると気になるのがSWR。「この間、取り付けたアンテナ、イマイチ飛び悪いんだよね」といったことをローカル局に報告すると、すかさず「SWR、チェックした?」と返ってきます。屋外に取りつけたアンテナのSWRは図1のようにSWR計を無線機とアンテナの間に接続するとSWRが分かります。最近では送信機なしでもアンテナアナライザーがあれば簡単にSWRが測れるのでたいへん便利です。では「ハンディー機のアンテナのSWRはどのように測るの?」と問われると、「ふむ…」と少し考え込んでしまいます。今回は、ハンディー機とそのアンテナのマッチングについてお話しします。


図1 通過型電力計によるSWRの測定例

1. 進行波電力と反射波電力の比

アンテナアナライザーがアマチュアの間に広がったのはここ20数年の間です。それまでSWR測定といえば、図1に示したSWRを測定できる通過型のパワー計を使うのが一般的で、筆者Dr. FBもその方法が唯一SWRを測定する方法だと思っていました。SWRの測定は、通過型パワー計でも、アンテナアナライザーでも原理は同じです。トランシーバーからアンテナ方向に向かう進行波の電圧とアンテナからトランシーバーに向かって戻ってくる反射波の電圧の比をメーターやデジタルで表示しているのです。

ハンディー機の場合、アンテナはトランシーバーに直結です。下の図2のように接続すると測定できるのではと思ってしまいますが、残念ながらこれではアンテナのSWRは測定できません。


図2 ハンディー機のアンテナのSWR測定(悪い例)

2. ハンディー機のアンテナは1/4λ接地アンテナとして動作している

ハンディー機に付属しているフレキシブルアンテナの多くは、1/4λ接地アンテナとして動作しています。1/4λの接地アンテナといえば接地面はとても重要な働きをします。ハンディートランシーバーの場合、その接地面、つまりアースはシャーシーであり、またトランシーバーは手で握って使いますから、アース面はとても不安定な状態となります。

ここで基本の1/4λ接地アンテナを少しだけ復習してみましょう。2013年(平成25年)4月期の1アマの試験に次のような問題が出題されています。


図3 2013年(平成25年)4月期の1アマ試験問題(日本無線協会のサイトから抜粋)

解答を先に言いますと、間違っているのは4番の放射抵抗です。1/4λ接地アンテナの放射抵抗は36Ωが正解です。

さて本題に戻ります。アンテナはトランシーバーから1本針金が突き出ているだけですが、実際アンテナに供給する信号は144MHz帯や430MHz帯といった非常に高い周波数であるため、アンテナのエレメント自体にもコイル分(インダクタンス)を持つようになり、またエレメントとトランシーバー内部のシャーシー部分にも静電容量(キャパシタンス)を持つようになります。これらが合わさり、アンテナとトランシーバーのシャーシーとは図4(右)に示すような等価回路が構成されているとみなすことができます。このRLCの回路が運用周波数に共振しておれば、トランシーバーから出力される高周波信号がすべてアンテナに供給され、戻る信号がないSWRが1の理想のアンテナとなるわけです。

ところが、図2に示したSWRの測定ではアンテナはトランシーバーに直結していないため、アンテナエレメントとトランシーバー間の静電容量は極端に低いことが分かります。つまり、図4で示したCの値はゼロに近く、そのため等価回路の共振周波数は144MHzや430MHzよりずっと上の周波数に共振することになると予測できます。


図4 (左) 1/4λ接地アンテナ。 (右) 1/4λ接地アンテナの等価回路

そこで登場するのがアース面を無視することができる1/2λのアンテナです。このDr. FBシリーズの第七回でも紹介していますので参照してください。

3. Dr. FBが考えたハンディー機のアンテナのSWR測定方法

アイコムの144/430MHz Dual Band Transceiver ID-51一台を壊して図5のようなJIGを製作しました。要は、同軸ケーブルをアンテナコネクターに直結させています。付属のハンディー機のフレキシブルアンテナは、1/4λの接地アンテナとして動作していますので、トランシーバーの筐体はアースの働きをします。図4に示したアースの部分がトランシーバーのシャーシーの部分です。アンテナコネクターに同軸ケーブルを直結した後は、改造時に外したシールド板は元通りに取り付けることが重要です。これもアースの働きをするからです。


図5 アンテナコネクターに同軸ケーブルを取り付ける改造(ID-51使用)

改造したID-51にお好みのアンテナを取り付け、同軸ケーブルの先端をアンテナアナライザーに接続すると、アンテナのSWRを測定することができます。ただし、実運用ではトランシーバーを手にもって運用するため、図6のようにトランシーバーにアンテナを取り付けて測定しただけでは正確な測定はできないかも知れません。図7に示したようにトランシーバーを手で握るとSWRは変化しますので、こういったJIGがあるとどの位置で持ったときSWRが低下するのか確かめることができますので興味津々です。


図6 測定例            図7 トランシーバーを手で握るとSWRが変化する

1/4λアンテナは短くて使い勝手がよい反面アースが重要、1/2λアンテナはアースを無視することができるメリットはありますが、エレメントは長いといったことで一長一短です。


図8 400mm(市販のV/Uホイップアンテナ)と177mm(付属のフレキシブルアンテナ)

図8のエレメント長が400mmのアンテナはVHF(1/4λ)、UHF(1/2λ)の構成となっています、測定結果は次号でレポートします。お楽しみに。

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