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FBのトレビア

第五回 アナログメーターのちょっと変わったスペック


Dr. FB

1. アナログテスターのちょっと変わったスペック

読者の多くの方々は、テスターをお持ちと思います。そのテスター、最近ではデジタル式が多いようですが、私のようなおおざっぱな技術屋は、電子機器の修理や電子工作で電圧の1の位まで正確に読む必要もないことから未だに図1に示したようなアナログテスターを使っています。


図1 SANWA EM-300

アナログテスターにそれほど高い精度は期待していませんが、テスターの取扱説明書で表示精度を確認してみました。図2にその取扱説明書のコピーを貼り付けましたので参照してください。ちょっと変わった表現、以前どこかで見たような気がしました。


図2 SANWA EM-300取扱説明書 3頁より抜粋

図2の備考の項目には「誤差 最大目盛値の±4%但し900V以上±6% 25kVは除く」との記載があります。今回はこの意味について説明します。以前、どこかでみたような気がすると記しましたが、これは最終ページに貼り付けました1アマの国家試験問題にも出題されている問題でした。解答を見て「ほう~、そうだったのか」と思われる方は1アマ受験の一助になるかもしれません。

2. メーターのCLASS 2.5の持つ意味(その1)

図3に示した二つのメーターの文字盤にCLASS 2.5あるいは~2.5の表記を見ることができます。この「2.5」とは2.5級のメーターで最大目盛値で±2.5%の誤差(許容限度)を生ずる可能性があることを示しています。アナログ計器の「級」(階級指数)については、JIS(日本工業規格)C 1102-1~9で説明されていますので参考にしてください。


図3 メーターの等級(CLASS 2.5)の持つ意味

左側のメーターはフルスケール(最大目盛値)300mAの電流計です。このメーターが300mAを指したとき、指示値は最大で±2.5%の誤差を生じる可能性があります。これを計算すると、

300mA + 300mA × (±0.025) = 292.5~307.5mA

となります。

図3の右側のメーターではどうか。同じく2.5との印字があります。最大目盛値は300Vです。300Vの±2.5%ですから、

300 × (±0.025) = ±7.5V

となります。つまり300Vの指示値でも292.5~307.5Vの誤差範囲を考えておく必要があるということです。

ここまでの理解は、指示値がフルスケールのときを考えました。次に指示値がフルスケールでないときの誤差を考えますが、これは納得いかないという方がおられるかも知れません。でも、このように決められたことですから理解するしかありません。

3. メーターのCLASS 2.5の持つ意味(その2)

その1の説明は、「まあ、そうであろう」と常識の範囲で想像はつきました。ところがメーターがフルスケールを示していないときの誤差はどう考えるか、これが今回のポイントです。

最大値300mAあるいは300Vを示しているときの±2.5%は、±7.5mAあるいは±7.5Vでした。仮にフルスケールが300mAのメーターが100mAを示していたとしましょう。指示値の誤差は、100mA × (±0.025) = ±2.5mAとしてしまいがちですが、実はこれはアウトなのです。

最大値で算出した誤差の±7.5mAがそのまま100mAにも適応されます。つまり、100mA ± 7.5mA = 92.5~107.5mAとなります。100mAの指示値がひょっとして107.5mAかもしれないといわれると、その誤差は7.5%もあるではないかといいたくなりますが、メーターの誤差はこのように考えることになっています。

4. テスターの取説に記載された「誤差 最大目盛値の±4%」

私が使っているSANWA EM-300のテスターの取扱説明書には誤差は、最大目盛値の±4%との記載があります。仮にDC 10Vレンジで計測したとすると、その誤差の許容限度は、±0.4Vとなりテスターの10Vレンジの最大目盛値は10Vであるので、その誤差範囲は9.6~10.4Vであることがわかります。

この10Vレンジを使って、ラジオの修理をしたとしましょう。基板上のトランジスタがONあるいはOFFしていることを確かめるためにB-E間の接合電位差VBEを計測します。トランジスタがON状態のときのVBEは概ね0.7Vです。ところが、10Vレンジで0.7Vの電圧を測っていますから最大目盛値±4%の±0.4Vを指示値の0.7Vに加味すると、最低の電圧は0.7-0.4 = 0.3Vとなってしまいます。VBEが0.7Vのところを0.3Vと表示するといくらなんでもトランジスタはONするとは思われません。これでは、トランジスタの不具合は見つけられません。それでもこの誤差の考えは正しいのです。要は、電圧計の使い方を誤っているといったほうが正解です。

5. 正しい使い方を理解する

上のような使い方は極端ですが、電圧や電流の測定ではできるだけ正確な値を掴むために、最大値の7~8割ぐらい振れるレンジで測定することが望ましく、そうしなければ正確な測定値は得られないことになります。

6. 1アマの国家試験に出題されるメーターの誤差の問題

2013年(平成25年)12月期の1アマ国家試験に図4で示した問題が出題されています。まさに先に説明したことが問われています。。


図4 2013年(平成25年)12月の1アマ国家試験の問題(日本無線協会のサイトから引用)

<上記A-25の解答>
精度階級が1.0級の誤差は、最大目盛値の±1.0%ですから、その誤差値は計算で下に示したように計算できます。

200V × (±0.01) = ±2V

題意より指示値100Vの真の電圧の指示値は、

100V ±2V = 98~102V

となります。

よって、正解は2番 98~102 [V] となります。

英語版はこちら

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次号は 12月 1日(木) に公開予定

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