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新・エレクトロニクス工作室

第53回 自作DBMの実験

JE1UCI 冨川寿夫(ふかわ としお)

2026年10月15日掲載

測定

作ったDBMの組み合わせを第33回で作った「DBMチェッカ2」で試しました。写真5のようにSMAコネクタで接続して測りました。LOに39MHz、IFに11.275MHzを入力し、50MHzをつくるというパターンです。11.275MHzを使ったのは、11.272MHzに比べてクリスタルが余っているためです。他の意味はありません。DBMとしてはダイオードの方向を逆(180度回転する)にしても良いのですが、ここではND487C1-3Rに合わせて全て同じ方向にしました。DBM自体も180度回転させても良いのですが、全て基本の回路どおりにしています。この試した結果を表1に示します。この番号のところをクリックすると出てきます。


写真5 このようにしてテストを行った

コイル・ダイオード組み合わせ表
ND487C1-3R 1SS106 1SS97 OA90 1N60P 1S1588
T-25#10
10t
11 12 13 14 15 16
T-25#2
9t
21 22 23 24 25 26
FCZ25
コア上
31 32 33 34 35 36
FCZ26
コア下
41 42 43 44 45 46
FB801
4t
51 52 53 54 55 56
FT-23#43
10t
61 62 63 64 65 66

表1 測定した結果 (番号をクリックすると結果を表示します)

トランスは5個ですが、FCZ25の場合はコアを奥の方に入れたコア下と、写真6のように目一杯に抜いたコア上の2つのパターンを試しました。つまりインダクタンスの最大と最小を狙っています。もっとも最大の位置はほとんどカンですので定かではありません。下げ過ぎるとコアをシールドケース内に落とす危険もあります。これで6×6の36通りを効率良く実験しました。


写真6 FCZ25はこのようにコアを一番上にした時と最大値付近で測りました

基準という意味ではないのですが、比較のためにR&KのM-1を測ったのが測定結果1になります。


測定結果1 R&KのM-1を測定

試しに個々の信号についてスパンを広げて周波数を確認し、その由来を確かめました。これが図3になります。本来は39MHzがLOになりますが、実際には13MHzを3逓倍しています。そこで13MHzをLOとして39MHzはLOx3と表現しました。こうしないとLOx4などの表現が困難になるからです。


図3 測定結果1の周波数由来を分析した

最初は自作DBMもM-1と大きな相違は無いと思っていたのですが、まとめてみてM-1の特性の良い事に気が付きました。良く見ると細かいスプリアスが少ないのです。やはり簡単に作った自作DBMとは一味は違うようです。このようなテストで細かい部分は解らないと思ったのですが、その中で解る事もありました。

・クワッドダイオードのND487C1-3R(×1)

ダイオードの中では一番良いと考えるのが普通でしょう。500MHz以上で測れば更に差が出るように思います。恐らく、この程度の周波数では大きな差が付き難いのだと思います。

・ショットキーの1SS106と1SS97(×2と×3)

同様に良さそうです。LOの漏れではND487C1-3Rの方が上です。やはりバランスなのでしょう。しかし、高次のスプリアスどうしによる、合成スプリアスはND487C1-3Rよりも良さそうです。

・ゲルマのOA60(×4)

ややロスは大きくなるようです。また、39MHzのLOの漏れと、その2倍の漏れが少し多いようです。ダイオードにバラつきがあるのかもしれません。ゲルマのバラつきは良くあります。

・ショットキーの1N60P(×5)

これはゲルマではなくショットキーで、安く多量に購入してあったものです。多量にあるので測ったようなもので、全く期待していませんでした。しかし、思ったよりもずっと良さそうです。もしかするとND487C1-3Rよりも良いかもしれません。ただ、あまり高い周波数では無理とは思うのですが・・・。50MHz程度では積極的に使っても良さそうです。

・1S1588(×6)

これは絶対NGだろうと思ったのですが、案外といけるという意外な結果になりました。ロスもあまり変わりません。LOの漏れは一番大きいのですが、フィルタでカットできる範囲であれば使えそうです。これは驚きでした。どの程度NGなのかを見ようとしたのですが、そのような意味では期待外れでした。

一応は「使えるDBM」を目指しましたのでLEDは実験しませんでしたが、レベルを上げればある程度は動作するのではと思います。恐らく、DBMチェッカ2の出力レベルでは無理と思います。

次はトランスの結果です。

・T-25#10(1×)

出力は50MHzと27.7MHzで同じレベルになるはずです。しかし、27.7MHzが必ず低くなりました。50MHzで使うには良いのですが、周波数が低くなると気になります。恐らくトランスのインピーダンスが27.7MHzでは足りないのでしょう。50MHzでは良いのですが・・・。

・T-25#2(2×)

T-25#10が低い周波数で上手く動かないため試したものです。そのためT-25#2を使ってみたのですが、これはひどい結果でした。元々同調させて使うコアですので、このような使い方には向いていないようです。しかし、T-25#10よりも問題があるとは思いませんでした。

・FCZ25(3×と4×)

7Sで後期のコイルですのでFCZ21,28ではなくFCZ25になっています。コアを入れる方向の4×の方が、少しですがレベルが高くなっています。また、50MHzよりも27.7MHzのレベルが少しだけ低くなっています。T-25#10と同様に少しインピーダンスが不足するのでしょう。ただ、使えないという事ではありません。

・FB801 4t(5×)

どのダイオードと組み合わせても40MHz付近の細かいスプリアスがありません。逆に言えば高次のスプリアスはトランスが関係しているという事になります。その理由は良く解りません。手巻きのトリファイラ巻きトランスのバランスが良いとは思えませんし・・・。

・FT-23#43(6×)

FB801と大きな相違はありません。一番良い結果だと思います。

T-25#2とND487C1-3Rを使った21のひどい結果を見て、思わずスプリアスの分析をしたくなりました。これが図4になります。細かすぎて周波数は書き込めませんでした。赤字がIFの基本波と高調波ですが、8倍まで見えます。LOは緑字で6倍までしか見えませんが、もっと上まであるのでしょう。結果としては、トランスで高調波を作っている事になります。そのため、このようにスプリアスが多くなっているようです。しかしT-25#10がまあまあ良いのですが、T-25#2がこのようになる理由が良く解りません。中間にあるT-25#6を飛ばしたのは失敗だったようです。しかし、T-25#10でもこのようなスプリアスが少し見えている事に気が付きました。これがほとんど見えないのがFT-23#43とFB801です。このような結果ですので、トランスはFT-23#43とFB801が一番良いという事になります。


図4 T-25#2とND487C1-3Rを使った21のスプリアス分析

50MHzが目的のチェッカを使っていますので、試験できる範囲が狭いのは仕方ありません。これ以上は解りません。この結果としては、多少の差はあるものの不向きと判断されたのはT-25#2だけでした。他はメーカ製のR&K M-1を測ったものと同程度か、多少は劣るという事になります。レベルや周波数の条件が広げられるチェッカであれば、別の結果があるのでしょう。

まとめ

これで安心してDBMを作る事ができるようになりました。DBMは下手に作ると内部で高調波を作るという事が良く解りました。今まで気が付きませんでしたが、少しだけ賢くなりました。

第47回で周波数が低い場合はT-25#6かT-25#2を使うのが良さそうと書きましたが、これは間違いだったようです。FT-23#43の10回巻きを使う方が良さそうです。このT-25#10を試したのは、昔々の某社のDBMキットで使っていたと思っていたのですが、T-25#12の9回巻きでした。更に50~100MHz用となっていました。T-25#12は入手難ですので試験のしようもないのですが、いずれにしてもFT-23#43の方が良さそうです。もちろん50MHz用であれば問題はありません。

このT-25#2が良くない原因について、また考える事が増えてしまいました。考える事が増えるのは楽しみではあるのですが、一向に減る気配はありません。

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