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テクニカルコーナー

My Project/第9回 【丈夫でスタイリッシュ】 ハンディー機用アンテナの製作

JP3DOI 正木潤一

ハンディー機のアンテナは、運用中やカバンから出し入れする時に引っかかって無理な力が加わることがあります。たいていのハンディー機はMILスペック相当の頑丈な造りですから、アンテナにも強度が求められるのも納得できます。アンテナを自作する際には電気的性能を出すことだけを考えがちですが、実は機械的強度も実用上の重要な要素です。また、ハンディー機は外に持ち出して使う物ですから、見た目もできるだけ良くしたいものです。

My Project 2017年2月号では、144MHz帯のアンテナ製作を例に、ユニバーサル基板を使ってエレメントをSMA端子に固定する方法を紹介しました。今回は別の部材を使って強度と見た目を高めたアンテナの製作を紹介します。例として4種類のアンテナを紹介しますが、基本構造は他の周波数にも応用できます。

アンテナに求められる強度:
上の写真で示したようなハンディー機用の144/430MHzのデュアルバンドアンテナと、430MHzのモノバンドホイップアンテナを製作します。このようなホイップアンテナでは、エレメントが曲げられたり引っ張られたりしたときに加わる力は、すべてアンテナ基部に伝わります。そこで、機械的強度はエレメントに被せた被覆(熱収縮チューブ)に担わせることにしました。ケーブルの内部断線を防ぐための“ケーブルグランド”という部材でエレメントの被覆を強く挟んで固定します。エレメントが引っ張られる力は、熱収縮チューブ→ ケーブルグランド→ SMA端子へと伝わります。被覆と内部の導体は分離しているため、導体であるピアノ線やSMA端子の芯線にはストレスがかかりません。


ケーブルグランドでエレメントの被覆を強く挟む

<参考:失敗談>
SMA端子の芯線にビニール線をハンダ付けして、熱収縮チューブを被せたアンテナを作ったことがありますが、程なく被覆が取れてしまいました。次にSMA端子の芯線にピアノ線をハンダ付けしたアンテナを作りましたが、それほど使わないうちに端子の芯線ごと抜けてしまいました。アンテナの強度は、実用性を決定付ける要素だと実感しました。

SWRの測定方法:
実際の運用時には、無線機の筐体とそれを持つ手で容量結合した人体により放射アースが構成されます。そこで、ハンディー機と同じくらいの表面積の金属ケースにSMA端子を取り付け。同軸ケーブルでアンテナアナライザと繋いで無線機のグラウンドを再現しました。このケースを手に持った状態、つまり人体アース込みでSWRを測定します。


測定するアンテナを取り付ける金属ケース

市販アンテナのSWR:
自作したアンテナと比較するため、手持ちのアンテナのSWRをいくつか測定してみました。
無線機に付属しているアンテナや市販のデュアルバンドアンテナは、マッチングコイルを内蔵しています。このくらいの特性が自作アンテナの性能の目安となりそうです。


市販アンテナA(左)、市販アンテナB(中)、無線機付属アンテナ(右)

<参考:アンテナアナライザの威力>
SWRだけでなく、インピーダンスの実数部と虚数部も測れるので、アンテナの整合状態を正確に把握できます。趣味で使う機械としては高価な部類に入りますが、これが1台あればアンテナ設計の精度と効率が飛躍的に高まります。

4種類のアンテナ:
周波数や型式は違っても、基本構造はそのまま他の周波数にも応用できます。 作り方については、下にある動画を参照してください。また、インピーダンスからマッチング素子の値を求める方法については、My Project 2017年2月号を参照してください。 なお、熱収縮チューブには、「ツヤあり」と「ツヤなし」の2種類があります。今回は、エレメントが引っかかりにくい滑らかな「ツヤあり」を使用しています。被覆をキレイに仕上げるには、熱収縮チューブを加熱する際に熱ムラが生じないように気を付けます。

430MHz 1/4λアンテナ

1/4λ(約17cm)のエレメントをSMA端子の芯線に直結しただけのアンテナです。

もっとも簡単なアンテナですが、430MHz帯でのSWRはほぼ1.5です。


430MHzバンド内におけるSWR

144/430MHzデュアルバンドアンテナ

エレメントの途中にトラップを設けて、エレメント下部で430MHz帯、エレメント全体で144MHz帯に共振するようにしています。

トラップ部はジュラコン製スペーサーにすずメッキ線を巻いてコイルを形成し、エレメントにM3サイズのネジと金属製スペーサーを介して取り付けます。必要に応じてトラップを付け替えることができます。 本来、トラップには並列にコイルを接続して共振させますが、共振周波数が430MHzと高いため、浮遊容量により共振しているものと思われます。


ジュラコンスペーサーの両端に金属スペーサーを取り付けてコイルを巻く
(トラップにも熱収縮チューブを被せたほうがよい)

SWRを測定すると、144MHzと430MHz付近で下がっていることが分かります。


1~600MHzのSWR

144MHz帯では2以下になりませんが、これは波長に対して筐体が小さいためだと思われます。(50cm程度のラジアルを1本付けると1.5以下に下がりました)


アマチュアバンドにおけるSWR

430MHz 5/8λアンテナ

5/8λのエレメントと、コネクター部に内蔵したマッチング回路で構成されます。基本的には430MHzバンドアンテナですが、5/8λ(43cm)よりもエレメントを長め(約50cm)に取ることで、144MHz帯におけるSWRも低くなるようにしました。

接着箇所が無いので、分解して再調整や部品交換が可能です。


マッチング素子の交換も比較的カンタン

430MHz帯でSWR 1.5、144MHz付近でも比較的低くなっており、デュアルバンドアンテナのように動作しているようです。(ただし、最低点は180MHzとなっています)


1~600MHzのSWR


アマチュアバンド内におけるSWR

430MHzノンラジアルアンテナ

1/2λ(約35cm)のエレメントとコネクター部に内蔵したマッチング回路で構成し、電圧給電動作させています。My Project 2017年2月号で紹介したのは144MHz帯用でしたが、今回は430MHz帯用を作ってみました。 UHF帯では無線機の筐体がグランドとして十分機能するので1/4λアンテナで十分かもしれませんが、1/2λアンテナはグランドを必要しないので、同軸ケーブルを介して高いところなどに据えられます。


コネクター内部に収めたマッチング素子(コイルとトリマーコンデンサ)


キャップを外してトリマーコンデンサを調整可能


1~600MHzにおけるSWR


430MHzバンド内におけるSWR

各アンテナの作りかたと調整:

使用について:
今回紹介したアンテナのすべてを実際の移動運用で使ったわけではないのですが、室内から最寄りのD-STARレピーターへのアクセス性、また室内のパソコンのノイズを拾い易くなったことから、無線機付属のアンテナよりもゲインは高いようです。どのメーカーのハンディー機もコンパクトサイズなので、アンテナもフルサイズよりも短縮したものをよく見かけます。しかし、短縮アンテナよりもフルサイズのほうが利得は高くなるはずです。

最後に:
機械的強度というのは、モノの実用性を決める大きな要素だと思います。電気特性と強度、見栄えを満たすために試行錯誤を重ねるなかで、アンテナ作りは本当に奥が深いと実感しました。これはアンテナに限ったことではありませんが、何かを造ろうとしたときに最も難しいことは「適した部材を見つけられるか」だと思います。ホームセンターやパーツショップに何度も通い、試しに買ってみて上手くいかなければまた別のモノを探す・・・。そうして費やしたムダな時間や費用と引き換えにノウハウが得られます。

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