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楽しいエレクトロニクス工作

第51回 コードレスキー その2

JA3FMP 櫻井紀佳

以前の連載「第41回 コードレスキー」で、CWキーと無線機を繋ぐ線のコードレス化を検討しましたが、接続に無線を使うと複雑な割には不安定で、皆様にお勧めできるものにはなりませんでした。

そこで今回は超音波センサーによる接続を検討してみました。40kHzの超音波送受信センサーはインターネットでも見つけることができたので、それを購入しました。


(左)超音波センサー、(右)完成したコードレスキー

今回はキーと無線機を接続する通信に超音波を使いますが、基本的には以前に検討した無線によるコードレスと同様な構成になっています。送るべき信号はドットとダッシュですが、無線コードレスとは信号を逆にして、ドットは連続波、ダッシュは断続波にしました。超音波の周波数はよく使われていて、使用できる素子も多い40kHzにしました。

送信の回路は、ちょうど手元に発振用の40kHzの水晶発振子がありましたのでこれを使うことにしました。この素子は時計用の32.768kHzと同様なもので、内部は多分音叉型の水晶片だと思います。超音波センサーは周波数精度が厳しいのでCRによる発振器では周波数変動により、うまく動作しない可能性があるので水晶発振回路が必要です。

この水晶発振回路は、以前にも検討したように高い周波数の発振回路とは異なり、自己バイアス用の抵抗が水晶発振子と並列になると素子のQが低下して発振しないので、バイアス用の帰還抵抗はできるだけ高く4.7MΩにしています。

送信側(キー側)はDC電源器からコードを使って電源を供給したのではコードレスの意味がないので電池を使います。また超音波センサーは高い電圧でドライブしないと十分な出力が取れないようなので電圧が9Vの006Pの電池を使うことにしました。もう少し高い電圧の方が良いようですが電源に昇圧回路など使うと複雑になるので9V動作としました。


送信回路

電源電圧を9Vにしたので、標準の74HCシリーズのCMOS ICでは絶対最大定格を超えるために使用できず、18Vまで使える4000シリーズのCMOSを使用しました。

ダッシュ側の信号はIC1B~IC1Dの発振回路の矩形波で40kHzの信号をスイッチして断続したバースト信号を作ります。このスイッチング周波数は信号の応答をよくするために高い方が良いのですが、後で説明するセンサーの共振で尾を引いてしまうためあまり高くはできません。最初は1.7kHz位にしていたのですが、センサーの共振で信号が尾を引き波形がつながってスイッチできなかったため540Hzまで落としました。ドットとダッシュの切替えにはNORかNANDのICを使いたかったのですがSOPタイプのICが手元になく、4066のスイッチを使って回路を構成しました。

超音波センサーのドライブにはドライブ能力の高いCMOSの4049を使いました。超音波センサーの内部容量は2400pFと大きく4049をパラレルで素子の+側と-側を交互にドライブします。

送信側は19mm x 44mmの穴あき基板に組み立てました。超音波センサーは外部から振動が伝わらない方が良いようなので、スポンジの板に両面テープのついた接着版で取り付け配線も細い線にして振動の伝達に考慮しました。


送信基板

超音波信号の受信回路は次のようになりました。


受信回路

超音波センサーで受けた信号をIC4のAとBの2段のOPアンプで増幅します。このセンサーは結構感度が良く、30cm離しても受信素子の端子で200mVp-p程度電圧が出てきます。当初は、ゲインを初段が40dB、後段が20dBのトータル60dBのアンプにしていましたが、それ程のゲインは必要なく回路はそのままにしてゲインを5倍程の14dB程度に抑えました。

IC4Bの出力はD3とD4のダイオードで検波し、ダッシュ側はパルス列で、ドット側は直流で出力され、IC5のコンパレーターに入力されて波形成形後出力されます。

その波形はパルス列と直流なので簡単に見えましたが、実はこのドットとダッシュの信号の識別に相当苦労しました。この信号波形の処理は次の図のように行いました。ドットの信号処理中はダッシュ側からなにも出力されず、ダッシュの信号処理中はドット側から何も出力されないことがポイントです。もし反対側に出力があれば誤動作となっていまいます。

出力側Q10とQ11は昔のFETでBS170ですが、電流が最大300mAまでスイッチできます。なお、このFETにこだわる必要はなく相当品ならなんでもOKです。

受信側はできるだけ薄くして無線機の底と机の間に入るように考えました。センサーの直径が少し大きいのでその部品だけは外に出ても仕方がありません。受信側はコードレスでなくても良いので電源および無線機のキー入力へ配線します。電源入力は内部に定電圧ICがあるので7V以上あればOKで、電流容量はわずかで済みます。

基板は47mm x 72mmの大きさで超音波センサー以外の部品を取り付けます。超音波センサーは基板の端に送信基板と同様に両面テープ付スポンジで貼り付けました。


受信基板

組み立て完成後、送受の波形を測定したところ、送信側の超音波センサー端子でのドライブ波形は次のようになりました。


ダッシュ側送信波形

また、受信側の超音波センサーの出力波形は次のようになりました。この波形は送受信ユニットの間を約30cm離した時のものです。超音波センサーは共振器のため共振エネルギーが残りバースト状の信号の入力では尾を引いてしまい、あまり早い繰返し信号には追従できません。応答時間の許す限りドット信号の周波数を下げ、確実なオフ時間を長くした方がより安定に動作すると思います。


受信センサーの波形

今回、基板の形を小さくするため特に送信部でSOPのICを使いましたが、大きさにさえこだわらなければDIPのICを使っても問題はなく、この方が入手しやすいと思います。

全体の波形は、最高速度200文字/分でも1,000ドット/分程度で周波数にすると15Hz位になり、540Hzのパルスが36個以上入り十分間に合うことになります。また、1パルスの中には40kHzの波形が740個程度詰まっていて問題ないと思われます。

実際に使ってみると一応予定していた結果となり、これなら皆さんにお勧めできるように思います。


購入した素子に添付の資料

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