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広げよう“IOTA”の輪 ~ONE PIECE of IOTA~

その2 私のIOTAチェイシング(JA1QXY花崎氏より)

JP3AYQ 眞田真由美

こんにちは。JP3AYQ眞田真由美(Mami)です。ご縁あって月刊FBニュースにIOTA関連の記事を連載させて頂きまして、今回は第二回目になります。少しでも多くの方に、IOTAの魅力や楽しみ方を知って頂けるように、私Mamiがキー局となりまして、古くからIOTAを楽しまれている局長さんから新人IOTAチェイサーの方までリレー方式による連載で、IOTAチェイシングのノウハウから、体験談や苦労話・移動レポートなどで繋げて行きたいと思います。


主なハムフェアにはIOTAブースが設けられています。ぜひお立ち寄り下さい。
左よりJA3AER JI3DST JP3AYQ JA3UCO JA9IFF 関ハム2012のIOTAブース

さて、前回はJA9IFF中嶋さんよりIOTAアワード紹介と申請方法をレポート頂きました。今回はIOTAを古くから楽しまれています先輩IOTAチェイサーのJA1QXY花崎さんより、IOTAの世界へ入ったきっかけから、IOTAを長く続ける為のヒント、そしてIOTAにまつわる昔懐かしいお話などをレポート頂きました。長くIOTAを続けていらっしゃる方には、昔を思い出すお話や長い間のIOTAチェイシングの変化、現代との違いに驚くお話。そして我々ニューカマーIOTAチェイサーへのアドバイス。花崎さんの回想録仕立ての素敵なレポートとなっております。どうぞお楽しみ下さい。

私のIOTAチェイシング

JA1QXY 花崎 豪

“もう何時間ノイズと微かな信号を聞いているのだろう?”、朝の5時を過ぎると少しずつSは上がって来た。やっと聞こえるようになった信号もEUの壁でパイルを抜けない。それでも呼ばなければアンサーバックはもらえない。“なぜVladは得意なCWをやらないのか?”、“アップと言うが一体どこを聞いているのだろう?”、疑問とイライラする気持ちで呼び続ける。そのうちJAの局に返答があったが、そのあとが続かない。“一体あの局はどのくらいのパワーが入っていのだろう?、アンテナは?、疑問と不満を感じながら呼ぶ。”こんな呼び方はひんしゅくを買うだろうな?“、と思いながら呼び続ける。やっと”XY“との返答があった。フルコールを二回繰り返す。KXY?ネガティブ。QXY? Roger Roger! You are 59。ある日のアフリカのRare IOTA局との7MHz SSBでの交信風景です。

私がIOTAのプログラムを知ったのは、かれこれ50年以上前のことになります。当時ISWLのメンバーだったので、毎月送ってくるガリ版刷りの「The DX News Sheet」のエディターのGeoff Wattsが、“今度Island Awardを作ることにしたが、お前も参加しないか”、とサイン入りの手紙をくれました。その頃はDXCCに夢中だったので、“いや、興味はあるが・・”、とつれない返事を書きましたが、それから40年後に、このプログラムに夢中になるとは当時は思いもよりませんでした。


Mr. Geoff Watts (G3KMA Rogerから頂いた写真)

1996年、仕事で五年間住んだメキシコから日本に戻って無線を再開し“DXCCも上がっているし、これからはコンテストでもやるか”、と目の前の目標がなかった時、思い出したのはIOTAです。すでにIOTAはRSGBのアワードになっており、CQ出版社から「IOTA Directory」の日本語版が荒川氏の翻訳で出版された年に、早速手元のQSLをチェックし200枚のIOTA対象カードを選び出し、申請したのが1997年でした。EUの局などは、カードからは島かどうかわからず、ドイツ版の世界地図を買って、住所から島と判断し申請しました。G3ALI Rayからアワードが送られてきて、申請に使ったYM0AA Geyser Reef(AF-071現在消滅)のQSLを初めて見た、とのコメントを今でも覚えています。

それ以後はIOTAの島やペディションを意識的に追い求め、主にEU中心に交信してきました。QSLの請求時に、感謝の言葉と共に、聴いた信号の質や、JAが開けたバンド・時間、感想などを書いた手紙を入れると、写真や次のペディションの予定などの連絡をくれるようになりました。特に喜ばれたのは録音したテープです。テープはその後、ネットの発達と共にメール添付が出来るようになって送るのが楽になりました。VE3LYC Cezarなど、今ではペディション後には毎回催促してくるようになっています。

中には写真と共にペディションの様子を詳しく手紙で書いてくる局も出て来て、これは他のIOTAチェイサーにも見せた方が良いと思い、拙いホームページ(*1)を立ち上げ閲覧できるようにしました。こちらからお願いして写真や文章を送ってもらったこともあります。IOTA情報も425DXとOPDXBのエディターにメールを入れ転載の許可をもらい、RSGBにも連絡したらG3KMA RogerがGeoff Wattsの写真を送ってくれました。

このサイトのおかげでJA/WWのIOTAチェイサーとの知り合いが増え、特にIOTAペディショナーとメールのやり取りをするようになりました。当時IOTAペディションは規模も小さかったし、こうしたフレンドリーな関係になれることがIOTAの特徴で、いまだに世界中に多くの友達がいることに感謝しています。私は仕事がら海外出張があり、出張時にEyeball QSOをした局も多く、彼らはまるで昔からの友達のように家に迎え入れてくれました。

マルペロ島にペディションに行ったHK3DDD Betoはスペイン語で“Mi Casa es su Casa (私の家はあなたの家)”、と歓迎してくれ夜遅くまでペディションの詳細を聞いたものです。Aves島へのペディションの写真をくれたYV5EN Edwinとは、今でもYVのIOTAの情報を交換しています。MM0NDX Colとの付き合いもEU-189のロッカル岩礁のペディション計画の以前からですがONのチームに後れをとって計画は中止となりましたが、それからのちも付き合いは続き、彼にはあちこちのペディションでお世話になっています。彼が、まさか後に「DX World Net」を興すなどとは当時は思いもよりませんでした。


EU-189 Rockall Rock からの運用(ON4HILが送って来た写真)

DXCCもそうですがIOTAも楽しみ方は人によって異なります。IOTAペディションは個人主体が多かったので、アンテナはバーチカルとかホイップとかでQRP運用ですから、とにかく信号が弱い(最近は大型ペディションが流行りですが)。そのため、その弱い信号をキャッチして交信に至るのは甚だ難しく、やはりある程度の設備のグレードアップや運用の工夫が必要となります。太平洋やアジア地区のペディションなら、簡単な設備でもコンデションを旨く捉えればQSOは容易です。

しかし、カリブやアフリカの珍しい島などとは、ある程度の設備と工夫が必要です。IOTAチェイサーの中にはベランダアンテナで頑張っている局も多いですが、SSNが落ちてきている昨今では、例えばAFのペディション局と交信するのは増々難しくなってくるでしょう。私の知っている局で、こうした時は見晴らしの良い山に車で上って、簡単なビームアンテナを設置し交信すると言っていました。土、日と頑張れば大抵出来るそうです。なるほどと思います。私も少しずつ設備をグレードアップし上級ライセンスを取るなどして努力はしてきました。特にCWでの運用はIOTAに限らずDXingには必須条件でしょう。

冒頭の例でも、これが7MHzのSSBでなければ、交信はより容易だったでしょう。実際あとでこの局は14MHzのCWで出て来て多くのJAが交信していました。「待てば海路の日和かな」のたとえもある通りですが、相手の運用時間や癖、コンデションの開ける時間等をじっくり事前に研究することが必要です。ただ島での運用ですから天候に左右され、いつQRTするか判りません。私も2000年にQRVしたW5BOS/C6A (NA-219)を狙っていた時、やっと交信できる程度に信号に上がってき、呼ぼうと思った時、“ハリケーンが来るとのことなのでこれでQRTする”、と目の前でアナウンスされた苦い経験があります。(その後7年待ってC6ARIとQSO出来ましたが)。ですから早め早めにQSOしなければと思って冒頭のように、聞いている局のひんしゅくをかいそうな交信となります。

それでも私のような老ハムは別として、これから参加する人は、焦らないでマイペースでIOTAを楽しんだ方が良いと思います。IOTAが一つ増えることを夢見て努力する過程は楽しいものです。たとえ珍局を逃がしても10年待てばまた出て来ます。DXCCと違って全IOTAの上がり(完遂)は、今世紀中はまずないでしょう。それなら一つ逃しても楽しみを先送りしたと考えましょう。IOTAもDXCCもランキングにこだわらす、自分なりのスタイルを見つけて楽しむことだと思っています。DXingは、“もしかしたら出来るかもしれない”と、わくわくしながらワッチしている時が一番楽しい時かもしれません。

以上、今月はJA1QXY 花崎さんに懐かしいお話から現在までのIOTAチェイサーの道のりを交えて長くIOTAチェイサーを続けるヒントなどをレポート頂きました。素敵なお話をありがとうございました。
来月も、IOTAチェイシングの楽しさやおもしろさのお話を紹介させて頂く予定です。どうぞお楽しみに!

JA1QXY 花崎さんのIOTA HPです。IOTAぺディション情報からQSLカード情報まで細かく記載されています。
http://www7b.biglobe.ne.jp/~ja1qxy/ (*1)

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次号は 12月 1日(木) に公開予定

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