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Masaco、大人の社会科見学!

第3話 【IC-705瓦せんべい】亀井堂総本店

みなさまこんにちは。筆者のエリーです。楽しみにしていた取材が次々にキャンセルとなるなど、月刊FB NEWS編集部にも、新型コロナウイルス感染拡大の影響が及んでいます。日本中、世界中が辛く苦しい局面を迎えていますが、当ウェブサイトが少しでも皆様のお力になれますように…楽しい記事をたくさんお届けできるよう、編集部一同、より一層の努力をしてまいります!

さて、そんなわけで前回から少し間が空いてしまいましたが、第3話では亀井堂総本店に突撃取材をしてきましたよ~!
※アルコール消毒、マスクの着用等、細心の注意を払い取材を行いました。

―6月上旬、編集部にて。

エリー:次の取材先、本当にどうしましょう。緊急事態宣言が解除されたとはいえ、コロナ禍でどの企業さんにもこちらからお願いしにくい状況ですよね…困りました。

Masaco:ほんとやねぇ。いろいろピックアップしてるところ、ちょっと今は交渉が難しそうだよね。

スタッフK:Masacoさん、エリーさん。僕、えぇネタ持ってまっせ~。アイコムさんから情報もらったんやけど、近々発売されるあのIC-705のオリジナル瓦せんべいを作ってる老舗菓子店が神戸・元町にあるらしいわ。亀井堂総本店っていうんですけどね。

エリー:IC-705瓦せんべいって亀井堂総本店さんで作ってるんですか…!? 昨日ちょうどツイッターでリツイートして、アマビエ瓦せんべいの懸賞に応募したばっかりですよ。めっちゃバズってました!

スタッフK:神戸にはいくつか亀井堂ってあるけど、僕の秘密のコネクションは総本店やで、頼んだろか~? 高くつきまっせ~。

Masaco:ぜひお願いします! 兵庫県は、私の地元なので嬉しいなぁ~♪

亀井堂総本店さんのご厚意により、なんと! IC-705瓦せんべいをまさに作っているところを見学できるとのことで、Masacoさんと私は阪神電鉄の「西元町駅」で待ち合わせをして、亀井堂総本店さんにお邪魔しました。神戸の元町といえば、「南京町」で知られる中華街が有名ですが、そこから山側に一本入ると、全長約1.2kmにもわたる大きな「神戸元町商店街」があります。140年以上の歴史があるこの商店街には、昔ながらのお店が軒を連ねています。


Twitter写真の答え合わせ。社会科見学の取材日に南京町に寄った、ということだったのです!

案内してくださったのは、広報の松井さんと営業の池田さんです。


左から、松井さん、Masacoさん、池田さん。
※撮影時のみマスクを外しました。

亀井堂総本店の歴史

今から遡ること147年。明治6年に松井佐助氏が亀井堂総本店を創業しました。現在の社長である松井佐一郎氏は4代目で、案内をしてくださった広報の松井さんは5代目になられる予定だそうです。


亀井堂総本店創業者の松井佐助氏(亀井堂総本店公式Twitterより引用)

明治維新を経て、日本中が様々な“変化”に溢れていた当時。神戸港は開港を迎えたばかりで、日本人に馴染みのない外国のものが輸入され始めた頃でした。神戸には居留地と呼ばれる、外国人が居住するために政府が指定した特別なエリアがありました。しかし居留地の用地不足のため、神戸では日本人の暮らすエリアにも居留外国人が住むことが認められたそうです。北野異人館街など、今でも外国人が居住していた住宅が多く残されています。そういえば、Masacoさんが以前ロケで訪れていましたね。その結果、外国からの刺激をたくさん受けた神戸ではゴルフ場や、水族館、ジャズバンドなどなど、“日本初”のものが多く誕生することとなりました。

日本で初めて洋菓子が作られたのも神戸だそうで、よく「神戸スイーツ」と言いますがその名の所以はここにあるようです。筆者は大学時代を神戸で過ごしましたが、たくさんの洋菓子店が並んでいる激戦区だったことを覚えています。そんな洋菓子も、日本人に広く食べられるようになったのは大正時代に入ってからでした。古来和菓子を好んだ日本人の舌には、生クリームやバターなどは合わなかったようです。河内地方から丁稚奉公で神戸に出てきて、菓子屋で煎餅職人の修行をしていた佐助氏は「何か今までにない新しいお菓子を考案したい」という思いから、神戸の居留地に世界から集まってきた洋菓子の材料を使用した新しい「おせんべい」を作ることにしました。材料は日本人の口に合うように、400年前から存在していたカステラと同じ、卵、小麦粉、砂糖を使用。いわば、“バター不使用のクッキー”が完成しました。

この「おせんべい」の新しく、素朴で優しい味は、佐助氏の狙い通り日本人にたいへん好まれ、瞬く間に神戸中に広がり全国へと普及していきました。神戸名物として広まった瓦せんべいは、「神戸に訪れた際に買って帰るお土産」として定着。焼き菓子なので日持ちもしますし、さらに軽くて運びやすいため、お土産に最適でした。

瓦せんべいを販売するお店は数多くありますが、これは、この亀井堂総本店が職人を独立させたり、親戚にのれん分けをしたり、知り合いに作り方を教えたりしたことによります。創業者松井佐助氏の「独り占めすることなく、皆で瓦せんべいの味を楽しもう」という信念から、商標や特許などは取得しなかったそうです(現在は協会で商標を管理)。亀井堂総本店が大きな瓦せんべい市場を作り出したことで、日本人の洋菓子に対する苦手意識を克服するきっかけを生み出し、日本のお菓子文化を変えていった、というわけなのです。

瓦の形と焼き印

Masaco:なんで丸とか四角とかじゃなく、瓦の形にしたんですか?

エリー:今まったく同じ質問をしようとしてました(笑)

松井さん(以下敬称略):おっしゃるとおり、おせんべいというと通常丸いものを想像しますよね。明治時代は卵一個が700円ぐらいの価値があり、瓦せんべいはとても高級な食べ物だったんです。「高級せんべい」、「ハイカラせんべい」と言われていたらしいですよ。創業者は、高級品として売り出すためにはひと工夫が必要だと考えたようです。

瓦の形の由来には諸説あるそうですが、ひとつは佐助氏の趣味が瓦収集だったこと。淡路島を含めた兵庫県はかつて瓦の生産量が日本一だったそうで、瓦職人がたくさんいたそうです。職人たちがめいめいに創意工夫を凝らしたユニークな瓦が溢れていたそうですよ。そしてもうひとつの説は、瓦が贈答品であったこと。その昔、家を建てる際の新築祝として、瓦に文字入れをして贈答するという習慣がありました。これにちなんで、神戸に出向いた際に持ち帰る贈答品として瓦の形が相応しいと考えられたようです。

焼き印にも深いエピソードがありました。楠木正成の焼き印を施しているのも創業当時から。幕末から明治にかけて行われた大政奉還の一環で、日本政府は歴代天皇陛下に尽くした武将を神社に祀りました。これには、政権が朝廷に戻ったということを国民に認知させるといった意図があったそうです。こうして、神戸に湊川神社を創建し、天皇陛下への忠義を称えられた楠木正成を祀るようになりました。湊川神社は「楠公(なんこう)さん」と呼ばれ、地元の人からは大人気。当時話題となっていた楠木正成を瓦せんべいに焼き付けることで、瓦せんべいにより一層の親しみを持ってもらえるようにしたというわけです。


楠公さんの焼き印がほどこされた瓦せんべい。(亀井堂総本店HPより引用)

Masaco:そうだったんですねぇ。私、実は楠公さんで歌ったことあるんです♪祖父は陶芸家だったんですけどその昔、大楠公座像の置物を湊川神社に奉納してるので私にとってもご縁を感じる身近な存在なんです。


楠公祭にて。Masacoさんはお歌を奉納されたことがあるそうです!
亀井堂総本店さんとの不思議なご縁にびっくり♪

亀井堂総本店、という名前の由来

Masaco:お名前、松井さんですよね? どこから亀井さんが出てきたんでしょうか?

エリー:Masacoさん、良い質問ありがとうございます!

松井:大丸神戸店の北側にある三宮神社をご存知でしょうか。実は屋号のエピソードは三宮神社に深く関係するんです。

創業当時は店舗を構えることができなかったそうで、作業場でおせんべいを焼いた後リヤカーで販売するというスタイルを取っていたそうです。売り歩く途中、三宮神社で休憩を取っていた佐助氏は、ある日宮司さんに声をかけられます。瓦せんべいについて説明すると、宮司さんは「この池の亀のように、ゆっくりと確実に歩んでいってください。それが成功への近道ですよ」と説いてくれました。その説法に感銘を受けた佐助氏は、「亀」の一文字を屋号に取り入れ、「亀井堂総本店」と名付けました。結果、瓦せんべい事業は大成功。お礼として、鳥居と狛犬を寄贈したそうです。残念ながら阪神大震災で鳥居は壊れてしまいましたが、狛犬は今でも残っています。


帰り道に三宮神社でMasacoさんが狛犬を発見! 宮司さんの駐車場にありました。
亀井堂という文字が刻印されています。

企業の広告ツールとしての瓦せんべい

今回のIC-705瓦せんべいだけでなく、様々な企業のノベルティを作っている亀井堂総本店さん。実は企業名入りオリジナル瓦せんべいのサービスは、昭和20年代頃もう既に行われていたそうです。その頃からノベルティおせんべいが存在していたとは…! 通常のお中元やお歳暮等で受け取る贈答品では、企業の名が入った熨斗はすぐに剥がされてしまい、誰からの贈り物だったかわからなくなってしまいがちですよね。しかしこの瓦せんべいの場合、食べる直前まで企業名を意識することができます。またお菓子という特性上、末端の社員にも広く配られることが多く、より多くの人に広告することができます。「様々な企業の広報活動に瓦せんべいが役立つことを嬉しく思っています。取引先の会社とも瓦せんべいをきっかけにちょっとしたお話ができると思いますし、一種のコミュニケーションツールになれば…と思っています。」と、松井さんが語ってくれました。


これが噂のIC-705瓦せんべい…! パッケージはアイコムさんがオリジナルでデザインされたそうです。

冒頭で少し触れましたが、亀井堂総本店さんはアマビエ瓦せんべいも製造されています。新型コロナウイルスの感染拡大で大変な日常の中、何か子どもたちに楽しみを提供できれば…と“亀井堂総本店さんにできること”を考えたときに、アマビエを焼き印にすることを思いついたそうです。売り上げの一部は神戸市の子どもたちの支援活動に役立てられています。素晴らしい取り組みですね!


疫病退散! アマビエ瓦せんべい(亀井堂総本店公式Twitterより引用)

いよいよ瓦せんべい製造現場に潜入!

製造現場はお店の上の階にあるということで、案内をしていただきました。マスクに加えて髪の毛が落ちないように帽子も装着し、手をしっかりとアルコール消毒しました。中に入ると、おせんべいが焼ける香ばしく優しい香りに包みこまれます。

Masaco:すっごくおいしそうな香り♪ こんにちは~お邪魔します!


わぁ♡めっちゃおいしそう♡

1人につき1つの機械が割り当てられ、瓦せんべいの製造を担当するそうです。なんと日に1人あたり8000枚も焼くんだとか。すごい数ですね!

生地は自動的に鉄板の上に流し込まれ、その後職人さんによって瓦の形に焼き上げられます。焼き加減には亀井堂総本店さんの強いこだわりがあり、小麦粉の甘さがじんわりと口の中に広がるように工夫されています。今やお菓子作りは自動でできるのが当たり前の世の中ですが、人の手を加えることで味の微調整ができるとのこと。また、焼き印も一枚一枚手作業で押していきますが、押すタイミングもかなり重要で、焼き印を均一に押すためには熟練の技が必要だということです。

この日は5、6名の職人さんがそれぞれ異なる種類の瓦せんべいを製造されていました。人にもよるそうですが、商品としての瓦せんべいを焼けるようになるまで1年くらい修行が必要だそうです。シンプルに見えますがその製造技術はかなり高度なものなんですね。この日うかがった際には瓦せんべい製造歴半世紀以上の大ベテラン職人さんもいらっしゃいました。その焼き姿から漂うオーラは圧倒的でした。

エリー:Masacoさん見てください! 早速IC-705瓦せんべいを見つけちゃいました!!


ありました~! IC-705瓦せんべい!
焼き印を押す瞬間に立ち会ってしまいました!


出来上がった瓦せんべい。箱の中に綺麗に並べられています

職人さん:Masacoさん、よかったら味見してみませんか? 焼きたての瓦せんべいの貴重な食感を楽しめるのは、焼き上がり後1分だけなんです。1分後には店舗で売っているものと同じかたさになってしまいます。

Masaco:貴重な食感だということですね。嬉しいです! ぜひいただきます! もぐもぐ…あ、ほんと! しっとりしてて、完全に堅くなる一歩手前の食感やわ~めっちゃおいしい!

エリー:より素材の味を感じられますね。う~んおいしい! (笑)

筆者もちゃっかりいただきました。実は、瓦せんべいは焼きあがった直後はまだ柔らかいんです! 賞味期限1分の特別なお味は残念ながらお伝えすることはできないのですが、代わりにMasacoさんの笑顔をどうぞ♡感動が伝わると思います。亀井堂総本店さん、貴重な機会をありがとうございました。


焼きたてのIC-705瓦せんべいを食べたハムは、もしかしてMasacoさん(と筆者)だけ!?


焼き上がり直後は、こんな風に曲がります。かなり熱いです

Masaco:え! この瓦せんべいの鉄板、めっちゃ大きくない!?

エリー:これ焼き加減めっちゃ難しそう…

松井:はい。こちらは生地を置くところから手作業で、熟練の職人にしか上手く焼けません。焼き印を押すのもすごく難しいです。

Masacoさんが見つけたのは、巨大な瓦せんべいの鉄板です。本物の瓦と同じサイズだそうで、特別な日の贈り物に最適。盛り上がること間違いなしですね! この特大瓦が手に入るのは本店のみということで、神戸に行かれた際にゲットしてみるのはいかがでしょうか。この他にも中瓦、大瓦、といった大きさがあるそうですよ。


特大瓦せんべいの大きさにびっくり!

亀井堂総本店の思い

最後に、5代目予定の松井さんに“亀井堂総本店のこれから”についてお聞きしました。

「創業者が開発し、147年続いたこの瓦せんべいを100年後にも残したいと強く思っています。昨今、多くのものがデジタル化され人と人との繋がりが希薄になってきていますが、こんな世の中だからこそ企業の広告ツールとして活躍できる瓦せんべいのようなアナログなものも必要なのではないか、と思っています。また、瓦せんべいには神戸の歴史や文化が詰まっていますし、各時代の人々から愛されてきたという事実があります。“企業の広告ツール”のように次の世代に即した形を考えなくてはなりませんが、その事実を誇りに思い、創業当時から変わらない瓦の形と味を守っていきたいですね。」

なるほど、147年前とまったく同じものが存在しているという事実は驚きですね。明治、大正、昭和、平成を経て令和の今。ひいひいおじいちゃん、ひいひいおばあちゃんと同じものを現代で食べることができるなんて! 瓦せんべいのこだわりの詰まった優しい味は、きっと次の世代でも楽しまれることと思います。

最後になりましたが、松井さん、池田さん、瓦せんべい職人さん、その他快くご協力いただきました亀井堂総本店のスタッフの皆様、お忙しいところ貴重な体験をありがとうございました!


神戸に遊びに行かれた際には、ぜひ亀井堂総本店さんへ足をお運びくださいね。

※製造現場見学は、一般公開されていません。ご理解、ご了承ください。

■亀井堂総本店
〒650-0022 神戸市中央区元町通六丁目3番17号
TEL. 078-351-0001 FAX. 078-351-2977
メール info@kameido.co.jp
営業時間 9:00〜19:00
定休日 無休

その他詳細については下記URL参照。
https://www.kameido.co.jp/index.html

(第3話 おわり)

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