Monthly FB NEWS 月刊FBニュース 月刊FBニュースはアマチュア無線の電子WEBマガジン。ベテランから入門まで、楽しく役立つ情報が満載です。

テクニカルコーナー

IC-705クーリング実験

月刊FB NEWS編集長 JS3CTQ 稲葉浩之

最近入手したIC-705(以下705)を使って、車の中から13.8V、10WにてRTTYモードで移動運用中、筐体が高温になりサーマルプロテクターが動作し、送信出力10Wが5Wに強制低減される現象が発生しました。この動作は、ファイナルトランジスタが高温によって壊れることを未然に防ぐというものですので、もちろん不具合などではなく、ユーザーにとってありがたい機能といえます。現象が発生した際に、705の画面表示をマルチメーターにし、TEMPメーターを確認したところ、レッドゾーンに入っていました。

そのため一旦運用を中断し、しばらく放置することでTEMPメーターが下がりましたので運用を再開しました。同じ様にRTTYモードで10W運用を継続すれば、また同様の現象が発生することは容易に想像できますので、車載扇風機を高速回転で回し直接705の筐体に風をあてる対策を取りました。さらに、車内運用では車載の鉛バッテリーを電源として使用しており、付属のバッテリーパック(BP-272)は実質使用していないため、BP-272を705の背面から取り外し、705背面のアルミダイキャスト部分を露出させて、ここに直接風が当たるようにしました。その結果、その日はもう強制的にパワーダウンされることがなくなりました。

しかし、RTTY運用やFM運用のたびに扇風機を回して705に風を当て続けるというのはスマートではないため、705にクーリングファンを取り付けることにしました。さっそく次の休みの日に大阪日本橋で部材を購入してきました。主たる部材はBP-273(乾電池ケース)と30mm角のブックファン、それにDCプラグ/ジャックです。


乾電池ケースBP-273
(注意: 本BP-273はIC-705のオプション品ではないので、BP-273に乾電池を入れた状態でIC-705には装着しないでください)

このBP-273は705のオプションではありませんが、ID-51系やID-31系のハンディ機のオプションとして販売されているものです。30mm角のブックファンは12V動作のもので、8枚羽と5枚羽の2種類を購入しましたが、工作中に8枚羽の方を壊してしまったので、最終的に残った5枚羽を使用しました。

BP-273裏蓋にファンを取り付け

705背面のアルミダイキャストに少しでも近い方にファンを設置したほうがベターだろうと考えて、当初は、BP-273の裏蓋にファン(8枚羽)を取り付けました。ところが、ファンを裏蓋に取り付けるネジが邪魔をして、BP-273が705に装着できませんでした。

そのため、ネジを外して代わりに両面テープで接着してみました。しかし、両面テープでの接着は耐久性や高温時の粘着力に疑問があることから、一旦両面テープとファンを取り外した際に、8枚羽のファンの骨格を破損してしまいました。というわけでまずは失敗しました。

BP-273背中側にファンを取り付け

次に、BP-273の背中側にファン(5枚羽)を取り付けてみました。今回は筐体にネジが当たることなく、705にスムーズに装着できました。なお、裏蓋はできるだけアルミダイキャストの広い範囲に風が当たるように、手持ちのリーマーであけられる最大の穴をあけました。もちろん金属ヤスリなどを使ってもっと穴の面積を広げることは可能でますが、これ以上広げると裏蓋が構造的に弱くなり、脱着時に破損しそうなので、写真にあるような穴の大きさのところでやめておきました。


BP-273裏蓋の穴の様子

クーリングファンは705にうまく装着できたので、ファンの横にDCジャックを取り付けました。これには705の外部電源入力ジャックと同じ2.5φのジャックを採用しました。さらに、2.5φのプラグ2個とジャックを組み合わせた二股も製作し、1本の純正DC電源ケーブル(OPC-2421)で、705本体とクーリングファンの両方に電源を供給できるようにしました。ちなみにファンの回転方向は吸い込み(アルミダイキャストに風が当たる)です。


DCジャックを取り付け、空気抜き穴を4個空けた状態

これで「脱着型クーリングファン」がとりあえず完成したので、さっそく冷却テストを行ってみました。

●1回目測定条件
・外部から13.8Vを供給。(705、ファンとも)
・7MHz RTTYモードにて10Wで連続送信。(送信タイムアウトタイマーはオフ設定)
・負荷はダミーロード。(SWR=約1.0)
・室温はエアコンで25度に設定。

705本体のサーマルプロテクターが動作して、出力が5Wに強制的にパワーダウンされるまでの時間を測定しました。
・IC-705の背面にBP-272(付属バッテリー)装着時 → 31分20秒
・IC-705の背面に脱着型クリーリングファンを装着して冷却時 → 34分30秒※
 ※この測定は一回目の測定が終了し、TEMPメーターが十分に下がったことを確認した後に実施。

この結果、クーリングファン取付の一応の効果は認められたものの、効果は僅か(10W運用時間が1割程度伸びる)であり、実運用においては大差なしと思われる結果となりました。


期待した効果が得られなかった脱着型クーリングファン

クーリングファンを改良

先のテストで十分な効果が確認できなかったため、原因を考えてみました。
1. アルミダイキャストに十分な風量があたっていない。
2. 空気抜き穴が少なく、空気が十分に循環していない。
3. 前回、2番目の測定に入る際に、TEMPメーターが十分に下がったことを確認したが、「完全に」同一温度まで下がっていない状態でスタートしてしまった (測定ミスの)可能性。

これらを改善するために下記の対策を施してみました。
1. BP-273の内蓋を撤去した状態で、脱着型クリーリングファンを705に装着する。
2. 空気抜き穴の増加。(背面4個→7個、底面0個→4個)
3. 測定開始時の筐体温度を同条件とするため1番目の測定と2番目の測定は別の日に行う。


内蓋を撤去、ついでにファンを固定するネジの方向も逆にした。


背面の空気抜き穴を増加した様子


底面にも小穴を4個増設した

●2回目測定条件
・外部から13.8Vを供給。(IC-705、ファンとも)
・7MHz RTTYモードにて10Wで連続送信。(送信タイムアウトタイマーはオフ設定)
・負荷はダミーロード。(SWR=約1.0)
・室温はエアコンで25度に設定。次の測定は別の日に行った。(これだけ前回と異なる)


改良した脱着型クーリングファンを装着した様子

前回同様、サーマルプロテクターが動作して、出力が5Wに強制パワーダウンされるまでの時間を測定しました。1回目と比べてTEMPメーターが上昇していくスピードが明らかに遅くなりました。
・IC-705の背面にBP-272(付属バッテリー)装着時 → 30分50秒
・IC-705の背面に脱着型クリーリングファンを装着して冷却時 → 60分20秒

結論

改良した脱着型クーリングファンの装着により、約2倍の時間、10W連続送信が可能という結果になりました。RTTY 10W連続送信でサーマルプロテクターが動作するまでの時間が約1時間ということで、デューティ比が送信1 : 受信1の通常運用であれば、運用中にサーマルプロテクターが動作する可能性は低いと予想されます。

今回の製作の別のメリットとして、IC-705の本体に加工や改造は一切施していないため、IC-705のメーカー保証が無効にならないことがあります。またバッテリーで5W運用する際は、脱着型クーリングファンとバッテリーパック(BP-272)を取り替えることで、即座の対応が可能です。逆にデメリットは、余計な電気を消費することと、ファンの回転音がすることくらいでしょうか。

もちろん、さらに効率の良い冷やし方もあるかとは思いますが、この実験が多少でもヘビーユーザーの参考になれば幸いです。当然ながら、大穴を空けてしまった乾電池ケースBP-273は、たとえ有償でも修理は効きませんので、もし同様の工作をされる場合は、その旨をご承知の上、実施されてください。

GL

■■■追試■■■

本稿掲載直前に、沖電線株式会社の「クールスタッフ」をという名称の放熱フィルムが入手できたので、さっそく追試を行ってみました。

追試1
クールスタッフ(チューブタイプ)を、取説どおり丸めてアルミダイキャストに貼り付け、7MHz RTTYで、これまで同様の10W連続送信で測定。


クールスタッフを貼り付けた様子

追試1結果 → 43分30秒

BP-272装着状態(30分50秒)より13分ほど伸び、相応の効果が確認できました。しかし、ここの部分にクールスタッフを貼ってしまうと705にBP-272を装着できず、そのため705が外部DC専用機となってしまう、というデメリットもあります。

追試2
クールスタッフを下記写真のようにアルミダイキャストに貼り付け、その上から改良した脱着型クーリングファンを装着して測定。この状態であればファンで風を送りながら、同時にクールスタッフでも放熱できます。


クールスタッフをダイキャストに貼り付けた状態


改良した脱着型クーリングファンを装着した状態。クールスタッフの両端がはみ出している。
(この「はみ出し」による放熱効果が期待できる)

追試2結果 → 120分経過してもサーマルプロテクターは動作せず

10W連続送信を2時間行いましたが送信出力は低減せず、2時間経過した状態でも、TEMPメーターは、まだ2目盛り余裕がありました。


2時間経過後のTEMPメーター(レッドゾーンまで余裕あり)

この結果から、クールスタッフ+改良した脱着型クーリングファンで705を冷やすことで、RTTYやFMモードでの送信1 : 受信1の通常運用であれば、運用中にサーマルプロテクターが動作することはほぼないと考えられます。

以上

テクニカルコーナー バックナンバー

2020年8月号トップへ戻る

次号は 10月1日(木) に公開予定

サイトのご利用について

©2020 月刊FBニュース編集部 All Rights Reserved. 発行元: 月刊FBニュース編集部