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Masacoの「むせんのせかい」 ~アイボールの旅~

第25回 総務省 東海総合通信局の皆さん

Masacoの「むせんのせかい」 ~アイボールの旅~

無線通信部 陸上課のお仕事

続いては、アマチュア局の免許について、無線通信部陸上課の皆さんに伺いました。


左から陸上課の大内さん、菅さん、課長の星野さん、そして企画広報室長の山本さんと竹下さん

--アマチュア局の申請や届出件数は1年間でどれぐらいあるでしょうか。

「昨年11月の時点で、東海総合通信局管内のアマチュア局は57,400局ぐらいです。これは全国の人口比で見ると高い方です。申請や届出件数の件数は年平均14,700件程度で、そのうち開局申請は約3,000件です」

--200Wを超える局の落成検査や変更検査は多いですか?

「200Wを超える局の申請自体はたくさんあるのですが、変更検査を要しない内容のものが相当数あるので、実際に行う臨局検査は年間で7、8件ぐらいです。ただ昨年度は19件と、ここ5~6年では一番多かったですね」

--検査を受けられる方の、最近の特徴があれば教えてください。

「皆さんアマチュア無線に対してとても熱心です(笑)。また、比較的時間にゆとりのある方が多いのか、最近は検査日のスケジュール調整もスムーズに進むことが多いです。ただ、中には予備免許や変更許可後の調査によって確認されたインターフェアの対策に時間を費やす方もいらっしゃいます。早く免許を取得したい気持ちはよくわかりますが、ここは十分に対策していただきたいですね。最近は登録検査等事業者を利用される方も増えてきました」

--申請や届出について、アマチュア無線家から質問や相談が来ることはありますか?

「はい、毎日たくさんの問い合わせを電話でいただきます。最近は“昔やっていたアマチュア無線を再開したい”というご相談が目立ちますが、そうした方は情報のアップデートができていないケースがあるようです。そうした場合は、旧スプリアス規格で作られた昔の無線機で申請する場合の注意点なども説明しています」

--そうそう、旧スプリアス規格機の「駆け込み手続き」は多かったでしょうか?

「東海総合通信局では、特に駆け込み申請が集中ということはありませんでした。ただ、12月になってから旧スプリアス規格の無線機でそのまま申請した方がいらっしゃるなど、この件をご存じない方、“技適番号がある無線機なら古くても大丈夫だ”と勘違いする方もいらっしゃいました」

--電子申請と書面による申請、どちらが多いでしょうか。

「アマチュア無線は徐々に電子申請が増えて、現在は変更関係で5割に達しています。5年前は3割程度でした」

--申請や届出で、アマチュア無線家に呼びかけたいことはありますか?

「申請手続きなどのちょっとした疑問は、各総合通信局や関係機関のホームページの“よくある質問”や“Q&A”に解決への情報が多く掲載されています。電話での問い合わせ前にチェックしていただけると案外解決できると思います。特に電子申請はトップページ右下のQ&Aをぜひ事前にご確認ください。また申請後のステータスには注意して、申請手数料の納付や返信用封筒の送付は忘れずにお願いします」


「総務省 電波利用 電子申請・届出システム Lite」のトップページ右下には「よくある質問」のコーナーがあり、とても詳しく説明されています

陸上課の皆さん、ありがとうございました!! ちなみに200Wを超える局の検査では、最後に「総合試験」として、実際に交信をお願いするのだそうですが、検査官の前での交信に“緊張した~”と感想を話す方がときどきいらっしゃるそうです。わかるなあ~。私も面接試験とか実技試験とかは超苦手。ぜったいキンチョーしますね(笑)。

「南極観測」を経験された職員の皆さんとお話!!

東海総合通信局には「日本南極地域観測隊(南極観測隊)」に加わって、南極・昭和基地での越冬経験や、アマチュア局の8J1RLを運用された経験がある職員の方が3名いらっしゃいます。ふだんはなかなか聞くことができない、南極と昭和基地のお話を伺いましたよ~。


東海総合通信局から南極観測隊(越冬隊)に参加した経験のある皆さんに集まっていただきました。写真で私の左は影山さん。右が野口さん、そのお隣は川﨑さんです!

電波利用環境課の影山さんは、1991年12月から1993年2月まで(第33次隊)参加。
調査課の野口さんは2007年11月から2009年2月まで(第49次隊)参加。
監視課の川﨑さんは、2012年11月から2014年3月まで(第54次隊)参加。
皆さん、南極では設営部門の通信として、基地での通信や無線設備の保守に当たられたそうです。

--皆さん、南極へは希望して参加されたのですか?

「はい、希望して参加しました。郵政省の頃から電離層観測や通信関連で参画してきた長い歴史があり、総務省となった現在も募集が行われます」(影山さん)

「子供の頃から南極は憧れの地でもあったので、“通信士としてぜひ行ってみたい”と考えていました」(野口さん)

--競争率は高いのですか?

「総務省ではだいたい毎年、3~5人ぐらいが希望するので競争率が高いです。私は3回目でようやく希望が叶いました。選考はまず各地方総合通信局で募集し、もし複数の希望者がいた場合は局内での選考を経て1人に絞ります。そして総務省の本省で希望者の面接を行って1名が内定されます」(野口さん)

--ご家族に「南極に行く」と伝えたときの反応はいかがでしたか?

「喜んでくれました(笑)。…というか、最終的に南極行きが決まるのは、夏の合宿訓練が終わってからなんです。それまではあくまで“候補”として、訓練を受けたり、健康状態のチェックなどが行われたりします。そして最終的に文部科学省から隊員として決定されるので、家族も1年前から少しずつ“南極行き”に馴らされていく感じです」(野口さん)

あ~! 野口さんのお話を伺って、私も上京する1年前から、両親に「来年は東京に行くから!」と馴らすかのように言い続けていたことを思い出しました(汗)。


昭和基地とアマチュア無線用の4エレトライバンダー(野口さんのブログより)

--南極に行って一番ビックリしたこと、大変だったことは何でしょうか。

「日本でレクチャーを受けてから行くのですが、見ると聞くのでは大違いでした。広大な南極大陸はもちろん巨大な氷山とか、ペンギンのルッカリー(営巣地)とか、南極オオトウゾクカモメがペンギンの卵を盗みに来るところとかはあまりにもリアルで、自然の中でしか見られない日本にいては体験できないことを沢山経験しました」(野口さん)

「天気が良い日の夜は、星がメチャクチャきれいでした! 日本とは比べものにならないほどです」(川﨑さん)

「私は“ドームふじ”を設置するために、内陸の標高4,000mの場所まで雪上車で行きましたが、気温は氷点下50度になることもあって、朝起きると自分の息でツララができていたり、同軸ケーブルは折れてしまうしで大変でした。それと南極では肌に金属が触れると危険なんです。メガネはセルロイド製の枠のものに取り替えてから行きましたよ」(影山さん)

--ひえ~!! マイナス50度って、もう想像もつきません。昭和基地もそんな気温なんですか?

「それは氷に覆われた内陸のほうの話で、もちろん昭和基地も冬は極寒ではあるのですが、マイナス35度くらいですね。夏にあたる12月頃だとプラス5度まで上がり、まれに10度まで上がることもあったりして東京よりも暖かいことがあるんですよ。昭和基地の中は暖房が入っているので軽装で過ごせます。それと、南極って雨量計がないんです。砂漠と同じで雨はほとんど降りません。滞在中に11年ぶりに雨が降ってびっくりしたこともありました」(川﨑さん)


南極観測の経験者でないと知らないようなエピソードが次々と!! お話にどんどん引き込まれていきましたよ(笑)

お話を聞いていると、私が抱いていた“南極”のイメージが間違っていた感じがします(笑)。ところでアマチュア無線家の皆さんが気になるのは、昭和基地のJARL局「8J1RL」のことですよね! 滞在中の交信局数を教えてくださーい!!


第49次隊当時の8J1RLシャック(野口さんのブログより)

「私の交信局数はとても少なかったです。どうしても交信したいという知人と電報をやり取りして、スケジュールを組みましたが、うまく交信できませんでした」(影山さん)

「私のときはCW・SSBで2,000局ぐらい。同じ隊だった近藤さん(JG3PLH)と合わせて1年間で10,000局ぐらい交信しました。私の越冬した2008年は太陽黒点が低い時期で、21MHz帯などはいまひとつでしたから、14MHz帯や10MHz帯で出ることが多かったですね。アフリカやヨーロッパが近くて、南アフリカやイタリアなどからはガンガンに呼ばれましたが、コンディションが上がって日本の皆さんと交信できるのがやっぱり嬉しかったです」(野口さん)

「私は200~300局ぐらいです」(川﨑さん)

そして、通信担当ならではのこんなエピソードも!!

「8J1RLは、昼休みや仕事が終わった後などに余暇として運用してました。実は、8J1RLは昭和基地の地下の乾物庫にあって、とっても寒いんです。プロ局のJGXの通信室は最上階の日当たりが良い場所にありますが、8J1RLの卓では防寒着を着て震えながらオペレートしてました」

「アンテナも8J1RLは4エレトライバンダーですが、JGXは大型のログペリやロンビックアンテナを専用の場所(島や丘の上)に建てられているので、日本との通信状況はアマチュア無線の比ではありません。ちなみにアマチュア用のアンテナは、昭和基地の設備や観測の妨げにならないよう設置場所にも制限がありますから、好き勝手にアンテナを立ててやることはできないんです」


昭和基地にあるプロ用の無線局「JGX」のアンテナ(ロンビック、ログペリなど)は基地から離れた山や島に設置されています(野口さんのブログより)

「怖いのはブリザードで、短波用の4エレは根元から飛んでいったことがありますし、JGX用ではロンビックアンテナの線やケーブルが切れたり、ログペリのエレメントが折れて吹き飛んでなくなったことも…。ブリザードの後のメンテナンスが大変でした」

「毎年5月5日に、日本の子供たちと行う交信(子供の日特別運用)はとても重要なイベントで、毎年、隊を上げて協力しています。ちょっとでも多くの局が聞こえるように、受信にはJGXの業務用アンテナと受信機を使って、送信は地下からアマチュア機で行うという方法を取ったこともありますよ」

--へえ~、そんなことがあったんですね!! 南極に行く前にアマチュア無線の免許を取る隊員の方は多いんですか?

「興味のある人は7月から11月の訓練期間にアマチュア無線技士の資格を取るようです。プロ用の資格を持っている隊員もいるので、アマチュア無線の操作範囲が包含される資格であれば、その資格でクラブ構成員として名簿に登録し届け出ます」

「越冬隊では“理髪クラブ”とか“ソフトクリームクラブ”“けん玉クラブ”など、基地の生活に関連したさまざまなクラブが組織され、必ず3つ以上に加わるルールになっています。その中で“アマチュア無線クラブ”は重要性が高く、ステータスのあるクラブなんですよ」ユニークなクラブの数々ですね!!!

「8J1RLのOBは結束力が高いですね。第1次隊の作間さん(JA1JG)もまだお元気で、ハムフェア会場にお越しになったこともあります」


第49次隊のアマチュア無線クラブ(8J1RL)メンバー(野口さん提供)

--皆さん、南極から戻ってから生活が変わったことはありますか?

「JARLの支部大会やハムの祭典、出身校などで、講演を依頼されるようになりました。国立極地研究所が提供してくれる南極の氷を持っていくと、子供たちは目を輝かせて見てくれます」

「現在の昭和基地はインテルサット衛星のおかげで南極と国内を結ぶデータネットワークが構築され、極地研を経由して常時接続となっています。インターネットやメールはいつでも使えるので、情報環境は日本にいるのと変わりが無いですから、そういう点では日本に帰ってきてもギャップを感じませんでした」

「昔は南極の石を持ち帰ることもあったのですが、今は南極条約(「環境保護に関する南極条約議定書」)で、できなくなりましたね。南極から持って帰れるのは、“南極の氷と思い出だけ”です」

そして最後に「また南極に行きたいですか!?」と伺ったら、皆さん「行けるなら行きたいです!」と!!! ちなみに南極観測隊員に年齢制限はないそうです(笑)


昭和基地周辺の道路(極道=「きょくどう」と言うそうです)にはこんな標識もあるそうです!(野口さんのブログより)

東海総合通信局の皆さん、今日は本当にありがとうございました!! “電波のお巡りさん”というイメージで、お堅い人たちかな・・と思っていたのですが、とっても優しくて、お仕事の内容を情熱的にわかりやすく説明してくださったのが嬉しかったです。今は電波のことで頭の中、パンパンです(笑)。

大変なお仕事の一端を知り、お人柄にも触れ、ますます「電波は正しく使わなくちゃ」という気持ちになりました。みなさん、コールサインはしっかりアナウンスして、楽しく健全に楽しみましょうね♪

(JH1CBX Masaco)

★Masacoプロフィール

兵庫県生まれ。シンガーソングライター。
学生時代は陸上競技ランナー、全日本インカレ出場。公務員となったが「歌い手になりたい」を実現すべく退職し上京。

NHK朝の連続ドラマ小説出演などを経て、IBS茨城放送のレギュラーラジオ番組パーソナリティーを6年、ラジオNIKKEI第一でもパーソナリティーとして活躍。全国高校統一模擬試験「英語リスニングテスト」の 日本語出題ナレーターなども務める。

オリジナル「あなたとともに咲かせましょう/むせんのせかい」はバックに流れるモールス信号も話題となり無線愛好家からの支持も得る。ファン1人1人からのエールを受け出来上がった最新作「むこう岸」はMasacoの新たな世界が広がっている。

コールサインはJH1CBX(第3級アマチュア無線技士)

・公式サイト:http://www.19box.net/masaco/
・オフィシャルブログ(Masaco Diary):http://blog.goo.ne.jp/33masaco/
・Twitter:https://twitter.com/Masaco3
・Facebookページ:https://www.facebook.com/Masacosama

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