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第16回 アンテナチューナーとタコ(たこ焼き?)の話(下)

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こんにちは皆さん、新人編集員のアキラです。さて今回はトムさんのアンテナチューナーCG-3000修理の後半です。ドキドキしますねえ、はたしてアンテナチューナーの修理はうまくいくのでしょうか? 今日は前回より約1週間が経過していまして、それは主には部品調達のための時間でした。

トム: Jピ3△◇◎、こちらはJエ3〇☆□、アキラくん、アンテナチューナーの部品類や資料もそろったけれど、本日修理パート2をお願いできますか、どうぞ。

アキラ: Jエ3〇☆□、こちらはJピ3△◇◎、トムさん、こんにちは! はいOKですよ。今、昼前ですねえ午後一番より今日も“工房アキラ(無線機部屋)”をオープンしたいと思いますけど、準備してお待ちしますよ、どうぞ。

トム:アキラ君、了解! たこ焼き持っていくわなあって言いたいけど、修理が済んだらねー。じゃあ午後から工房へお邪魔しますからよろしくねー、どうぞ。

というわけで、春が待ち遠しい寒い日ですが、少しだけ気温が上昇した午後にトムさんがSDカードにはいった資料や、3端子レギュレータ、抵抗、CR・トランジスタ/ダイオード類、そして樹脂板/銅板、エポキシ接着剤などを持って工房アキラに到着されました。

いやー、ごめんなーバタバタさせてしまってと言いながらトムさんはSDカードを渡してくれました。その中には確か半年、いや1年近く前だったと思いますが、CG-3000の弐号機のリレーをオリジナル中華製からパナソニック製のものに交換するお手伝いをしたときのプリント基板の写真がばっちりと残っていました。それは今回の故障で基板のパターンが焼損して無くなった部分がしっかりと写っていて、鬼に金棒となる写真でした。あートムさんこんなことを予想していませんでしたけれど、修理の記録写真って撮っておくものですね、と思わず声が出てしまいました。


写真の黄色〇部分のパターンが今回焼失したので、銅板テープで再生する計画です。

さて1年近く前に実施したリレーの信頼性UPについてですが、オリジナル中華製/JZC-36F(ロットによって違うものもある)という10A定格のものを形状/ピン配置互換のあるパナソニック社/LKG1aF-12V-16-1という16A定格品に交換されましたね。このアンテナチューナーのユーザーは多く、修理レポートがいくつかネットに上がっていて、このリレー交換とπマッチ同調回路のコンデンサも日本製の高耐圧品に交換する記載があり、それに倣ったリレー交換をトムさんがされていました。私が「電タコ」をがんばってエイヤーで購入しましたよーっていったらすかさず、おーありがたいねえ、ちょっとだけ使わせてーという話が以前にあって今回の流れになっています。

CG-3000はMax Input Power 200W PEPと銘板に記載があります。100W運用の方でも今回のようなリレー焼損の修理記事を出したりされている事例がありますが、トムさんは状況・理由を承知での200W運用です。FT8とかでは覚悟があっての今回の対応/修理ですね。今回リレーほかを焼損させてしまったのは2台保有のうちの初号機ですが、ほぼオリジナル仕様で使っていたとのことです。より高耐圧なリレーのパナソニック社/LKG1aF-12V-16-1交換は、日本の製品ですが国内に流通していないらしく、海外よりネット販売での入手とのことです。トムさんが前回に入手できたのは15個で、CG-3000では13個使いなので、後で購入した方の弐号機のみを交換をしたようです。おや、弐号機の写真の赤丸あたりにプリント基板番号が書かれています。「1701」と書いてあります(ちなみに初号機では「1001」)。あー弐号機のこれはアスカのエバン弐号機ではなくて、USSエンタープライズ号だったのですね。カークからスポック!どうぞ。

長い前置きでしたが、トムさんとふたりで本日の作業を進めます。まずはプリント基板の炭化した部分をリーマーとヤスリで取りのぞきます。できるだけパターンを残したいので慎重に進めますが、けっこう焼けていますねえ。


次の工程は、あいた穴をふさぐ土地をつくるための基板を加工して埋め込みます。今回はジャノメ基板を加工使用します。プリント基板に残っているスルーホールに抵抗器を差し込んで、基板の位置決めをしてマジックインキでかたどりをします。なぜジャノメ基板を使ったのかの理由は後で少し説明します。


おかっぱ頭の“へのへの基板”をおおまかなサイズにカットしてからヤスリを使って、あいた基板の穴にぴったりと収まるように細心の注意を払って削っていきます(ふう)。 ジャノメ基板の加工が終わったら、100均ショップで買った瞬間接着剤で仮止めしてから、A+B液式のエポキシ接着剤をねってしっかりと固定します。固まるまでの約30分でコーヒーブレークですね(アキラ君、シュークリーム買ってきてるよう! おお感謝)。


さて、コーヒーを飲み終わり、接着剤も固まったようなので、ジャノメ基板の穴を微修正してオリジナル基板の状況に少しでも似るように加工をしました。リレーの足がうまく入るように穴も少し広げたりして、次の作業がスムースに進むように手間をかけました。

次の工程に行きましょう。銅板で焼けた部分のプリントパターンを作ります。このプリントパターンを何で作るかは、トムさんがホームセンターでいろいろチェックし銅テープが欲しかったけれど入手できなかったようです。そこでホームセンターコーナンにあった久宝金属製作所というところの150mmx150mmx0.1mmサイズの裏面に粘着剤加工してある銅板を購入したとのこと。この銅板は2枚組で¥448(税抜き)だったので、今回使う量(面積)は少ないけどOK! と決定して本日のこれからの作業で使用します。


リレーの足の位置をチェックして、銅板で作るプリントパターンの下書き/型紙を描いてから、銅板に重ねてハサミやデザインナイフ(100均ショップ商品)でカットしていきます。この作業はトムさん担当でしたが器用な腕前を披露してニコニコとカットしていました(うまい!)。さて粘着剤テープなので基板に張り付けていきます。リレーの足がはいる部分の穴をしっかりとあけて、オリジナルのプリントパターンとの接合部分は半田付けでしっかりつなぎます。B面のリレー電源ラインは細いので半田付けにテクニックを要します(これもうまくできました!)。となりどうしのパターンに触れていないかも十二分にチェックしました。


CG-3000のプリント基板は両面基板で表と裏にプリントパターンがあり、表と裏はスルーホールという導通のある穴で電気接続されています。今回の銅板によるプリントパターンの再生ではスルーホールをつくることは出来ません。すなわち、基板A面のリレーの下を通っているプリントパターンはスルーホールが作れないので再生できません。よってこの部分は後ほどに線材で配線します。今回ジャノメ基板を使った理由は、特に高周波が通るパターンの部分でジャノメの上下を貫通させるジャンパー線を半田付けすれば、スルーホールと同じ具合いに上下パターンの接続ができるからです。今回はリレーなどの部品が干渉(邪魔)しない追加銅パターン部分でオリジナル基板より多めにジャンパー線で上下スルーの半田付けをしました。

さあここまできましたら、リレー2個をのせて半田付けをした後工程で線材での配線も行います。リレーの電源ラインは基板A面の下にあり、うまくパターン再生ができない部分なので線材で配線しました。仕上げとして、銅板が錆びないように塗料(今回はプラカラーを使いました)を塗っておきます。これで高周波整合回路の再生が終了しました。


今回焼損/再生した部位は大きいコイル、すなわち周波数の低いマッチング回路の部材ですので、トムさんは弐号機改造の残り2つとなったリレーのパナソニック社製16A定格のLKG1aF-12V-16-1を交換投入して少し強化しました。さて、この段階でダブルチェックして各配線が正しいか、接触がないか、リレーや基板再生部分の強度はOKかなどを調べて次の作業(電気回路の最終)に移ります。


電気回路の修復はこれで一段落しました。目視でダメージのあった部位の修理は終わったのですが、他に壊れていなければよいですがねえ。さて、エイリアンが出入りしたケースの穴修理ですが、今回これはトムさんが自宅で作業されて対応が済んでいました。穴をふさぐ材料は熟考の結果、100均の台所用品の樹脂製の物入れケースを切り出し加工して、エポキシ接着剤で取り付けたということです。


もうこれでエイリアンは来れませんね。おや、ちょうどCG-3000の銘板の定格部分にお月さまが現れてきましたね。これは消費電流が0.8Aである(残って見えている数値)以外は、今回の作業で無限大定格になった(1kWでもOK?) ということですかね??

アキラ君! ありがとう、なんとか修理できましたよ。目視で見つけた壊れた場所は修復できたけれど今回の故障はかなりのレベルまでいったから、今一度整理してアンテナチューナーの勉強をかねて最終確認したいですね。了解です、ぜひやりましょう!

CG-3000のきちっとした資料や見やすい回路図はありませんが、ブロックを描くと下の図のような感じになると思います。コイル/コンデンサ/リレーによる「高周波整合回路」は修理で大丈夫みたいです。過去の使用経験からCPUやRAMといったロジック周りもこのCG-3000はわりと丈夫でしたから一応電源を入れてからの確認としましょう。リレーのドライブ回路関係も同様ですね。電源回路は電源IC類を念のために交換済です。


整合検出は、位相/SWR/インピーダンスと3回路あるようですが、ここは電圧が掛るところなので少し心配ですね。でも回路図/パターン図が正確なものがないのでどうしましょうかね? うーんできることは「1N4148」と思われる小信号スイッチング・ダイオードがいっぱい(約10個は確認しやすい場所に)使われていますが、テスターで導通を確認してみましょう。テスターのオームレンジを使って片っ端から調べられるスイッチング・ダイオードを見てみました。おやー「D6」とシルク印刷されたダイオードの導通がありません、要交換です。続けて確認できるダイオードはすべて見ましたが、「D6」以外はOKのようでした。このダイオードは耐圧を越えた電圧が掛ったのかどうか不明ですが検出回路の1つなので、アキラのパーツボックスにあったダイオードと交換しました。プリント基板をケースに組み付ける前に見つけられてよかったです。これも「電タコ」を再度電源ONして、ズズッーと抜いて入れ替えました。

さてと、ていねいに作業してきたので、後は神様お願いしますというところまで来ましたね。今一度、プリント基板やケースをきれいにしてから仮組み立てをしましょう。


アンテナチューナーにかかわらず、きれいに掃除しておくことは大切です。そうしておけば故障の場合などは目視で発見できることが多くあるからです。自動車のボンネットの中も同じですね、もっとも最近の自動車はエンジンをはじめにすごくコンパクトにぎゅっと部品類が納められていて、ユーザーは掃除くらいしかできませんけど。無線機や電気製品などでチップ部品が多くなってユーザーがさわれなくなってきているのと同じ流れですね。もうしたくはないのですが次回修理があったときのために今回も記録写真を撮っておきましょう!

2人力で修理するのは早くて効率もよいですね。今回の修理はのべ2日で一段落しまた。夕飯前の時間に、トムさんが「寒いけど今晩にベランダにセットアップして最終確認します、ありがとう、ありがとう、ありがとう」と言って帰宅されました。

19時半ころに50MHzのいつもの周波数で「あー、あー試験中」とトムさんの声が聞こえます。

アキラ:: Jエ3〇☆□、こちらはJピ3△◇◎、トムさん、どうですか、どうぞ。

トム: Jピ3△◇◎、こちらはJエ3〇☆□、アキラくん、きょうは、、 もかなあ、ありがとうね。家に帰ってから超寒かったけれどベランダに取付けて、50MHzから3.5MHzまで最初は50Wで順番にテストしてねOKでしたよ。それから14MHzフルパワー出力で、フィンランドの局と交信したよ、どうぞ。

アキラ:おお、よかったですー、どうぞ。

トム:アキラ君、こんどね! たこ焼きとビールをご馳走しますよ、おいしい店に行きましょう。あー熱燗がいいかな? あれからチューナーセットアップして、ついでにベランダの掃除も寒いけどしていたから、晩のチャージ(ハム用語で晩御飯)はこれからやねん、どうぞ。

アキラ:たこ焼きいいですねえ、はやく晩御飯チャージされてください。今の時期は風邪ひいたらあきませんからね、暖かくしてくださいね、どうぞ。

あとがき

あーーーよかったですー! なんとかお世話になっているトムさんに“アキラの恩返し”的に修理完了できました。「タコ」にも感謝ですね。電動式半田吸取器「電タコ」の私の使用頻度は年間を通じてもそんなは高くないです。でも今回のように“いざ鎌倉”ってときはとっても重宝します。まず修理時間が短縮されます。そしてここがポイントなのですが、プリント基板を壊すことがないということです。プリント基板は熱が掛かりすぎますと銅箔パターンが外れたりして、高価な機器が修理不能になったりすることがあったりします。もちろん「電タコ」を使っていても銅箔パターンが外れたりすることはたまにはありますが、そのような場合(例えば同一箇所の複数回修理時)でもダメージは小さいです。今回も約\40kしますアンテナチューナーの修理がスムースに進んだ立役者の工具ですね。最近の無線機や電気製品で「電タコ」のみならず、半田ごての先が入らないようなプリント基板は手に負えないですけれど、アマチュア無線家の私たちには、あれば便利な「タコ」ですね。

そうそうトムさんが「たこ焼き」をご馳走してくれるっていってましたよね。たぶん3丁目の角のたこ焼き屋さんと思うけど、この季節はいいですね。ではまた次回もお楽しみに。

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