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Topics from Around the World

CW用ラウドスピーカー設計上の注意点

著者: スティーブ ディック (Steve Dick, K1RF) 抄訳: 月刊FB NEWS編集部


この記事は、The CW Operators Clubのニュースレター「Solid Copy」に掲載されたものです。著者であるK1RFと編集者であるK9WX,Timの許可を得てここにその抄訳を掲載します。翻訳は、FB NEWS編集部が行いました。

この記事を書くきっかけとなったのは、大手3社が販売するスピーカーの価格が高く、最低限のスペックしかなく、レビューや口コミでしか「良い」スピーカーを見つけることができないことでした。幸い、私の息子の一人が音響エンジニアであることから息子から多くのことを教えてもらい、音響研究所でいくつかのスピーカーを作ったり、テストしたりしました。これからスピーカーを購入しようと計画されている方、また自作しようとされる方に興味深いことをお伝えできればと思います。

フィールドデーのような長時間のCWコンテストで運用したことがある人なら、「リスナー疲労(Listener fatigue,聴覚疲労)」と呼ばれる疲れのことはよくご存じでしょう。聴覚的な刺激に長時間さらされると、疲労感や不快感、痛み、感受性の低下などが起こる症状です。アマチュア無線におけるリスナー疲労の原因には、以下のようなものがあります。

- オーディオ歪みに対する受信機の性能。(発振器位相雑音、復調プロセス、AFアンプ)
- 弱い信号やノイズの多い信号を長時間聴くこと。
- 繰り返し発生するノイズ。(プラズマテレビなどの家電製品、パソコンのスイッチング電源、CFL(省エネ電球)やLED電球などからのノイズ)
- 音声モードにおいてナローバンドフィルタリングによる重要な音声成分が欠落した通信品位の受信。
- 不自然な音による音声の圧縮。
- 近傍の信号によるキークリックの中でのCWの受信。
- 主に古いリグで問題となるCWリンギングを発生させる狭いフィルタの使用。
- 多くのトランシーバーでみられる内蔵スピーカーの性能の低さ。

ここでは、リスナー疲労を最小限に抑えるために、アマチュア無線のスピーカーに関する基本的な性能を確かめてみることにしましょう。CWだけでなく音声に対応したスピーカーであることを前提にしています。また、アンプなどを通さないパッシブスピーカーであることも前提としています。

アマチュア無線用のスピーカーが良いとされる必要な帯域はどれくらいでしょうか。音声による通信では、使用可能な周波数帯域は約300Hzから3400Hzです。一般的な成人男性の有声音声は85~180Hz、また同様の成人女性の有声音声はそれより高く165~255Hzの基本周波数を持っています。したがって、ほとんどの音声の基本周波数は、上記で定義した「音声周波数」帯域の下限を下回ります。しかし、足りない基音は脳が補うために、十分な倍音列が存在することになりますが、正確には自然な音にはならず、疲労感が増してしまいます。


「Hi-Fi」の音声エネルギーは、100Hzから約7kHzの領域に含まれるので、これを基準として考えてみましょう。この範囲より上や下の信号がもつエネルギーは、不要なノイズを含み、疲労を助長するため取り除く必要があります。

自作スピーカーを製作する最も簡単な方法は、いわゆるフルレンジスピーカーを使うことです。フルレンジスピーカーは、音声帯域のほとんどの周波数に対応しているため多くのハム用のスピーカーに使用されています。ウーファーとツイーターのような複数のスピーカーは、それぞれのスピーカーの持つ一番よい周波数特性の部分を使用しますが、これにはコストがかかる上に、クロスオーバーネットワークが必要となり、複雑さと損失が増加します。また、それぞれのスピーカーの感度を合わせるのが難しく、クロスオーバーネットワークは信号の遅延と位相のずれを発生させる要因にもなります。

フルレンジスピーカーの主な制限事項は何でしょうか。高い周波数では、より指向性が強くなり、スピーカーのコーンは「ブレークアップ」と呼ばれる曲げモードを発生し始めます。受信機にイコライザーが備わっている場合は、指定された周波数レンジ以下に収まるように上限を調整します。

Hi-Fiアンプとは異なり、一般的な受信機では歪みが発生するまで約2~3Wしか出力しないため、効率の良いスピーカーを搭載することが重要です。効率はSPL(Sound Pressure Level)、すなわち1W/1mでの音圧レベルで測定されます。私の経験では、通信機用のスピーカーは、少なくとも85dBのSPLが必要と思っています。もし読者の皆さんが自分で製作されるなら、1970年代に初めて一般的に使われた“Thiele-Small Parameters”を規定したほうがよいと思います。このパラメータは、低周波における電気的、機械的特性を定義し、最適なセッティング時間と低周波レスポンスを得るために適切なスピーカーボックス(エンクロージャー)の容積を提供します。

また、これらのパラメータから体積を計算するオンラインアプリもあります。では、密閉型エンクロージャーとポート付きエンクロージャーはどう違うのでしょうか。アマチュア無線で使用する場合は、密閉型エンクロージャーにこだわった方がよいと思います。密閉型エンクロージャーは、少ない容積でよりシンプルなエンクロージャー設計ができ、およそ1/3の時間で周波数応答が落ち着きます。また、ローエンドではよりスムーズなロールオフ、スムーズな位相特性、よりコントロールされたコーンエクスカーション(cone excursion)が必要とされます。

歪みが発生する前にスピーカーへのパワーを最大にするにはどうすればよいでしょうか。
- 受信機の低周波増幅器の性能が許すのであるなら8Ωのスピーカーの代わりに4Ωのスピーカーを使用してみてください。そうすれば、入力電圧に対して、2倍のパワーがスピーカーに供給されます。
- 自作受信機の場合、シングルエンド出力ステージの代わりにブリッジ接続のロード出力ステージを使用します(下図参照)。このように接続すれば実質的には2倍の電圧振幅がスピーカーに供給されます。つまり、供給電圧は12Vではなく24Vのように見えるのです。


著者の自作スピーカーの1つを写真に示します。既製品のスピーカーを購入する場合は、音声用の密閉型センターチャンネルスピーカーをお勧めします。私も使ったことがあり、何人かのハムも良い評価をしているのが、BIC Venturi DV32CLRです。約US46ドルで90dB SPLの密閉型スピーカーです。


CWの愛好家の中には、共振型スピーカーにこだわる人もいます。これは基本的には、PVC(ポリ塩化ビニル: 塩ビ)チューブや缶、特別に設計されたキャビネットなど、共振する空洞にドライバーを取り付けたスピーカーです。標準的なスピーカーと比較して、弱い信号の受信を改善し、近傍の干渉信号を除去し、共振周波数の上下のノイズを低減します。共振周波数での効率が非常に高く、受信機の比較的低い出力段からの歪みを低減するのに役立ちます。このスピーカーは比較的狭い音響ビーム幅を持つため、設置を考える必要があるかもしれません。

共振スピーカーの例をいくつかご紹介します。
- Resonant speaker(共振スピーカー) Steve Ellington, N4LQ著
- 同じくN4LQによる、IC-7300のスピーカーに共鳴音管(Resonant sound tube)を追加したもの。
- もう一つ、David E Hassell Sr.,N5IWによる共振スピーカー(Resonant speaker)。
- Phil VK6GXのQRZ.comのWebページを下にスクロールすると、缶スピーカーの例があります。

<引用>
この記事は、米国のCW愛好家で作るThe CW Operators Club(CWops)のニュースレター「Solid Copy」の2021年12月号に掲載されたものです。著者であるK1RFと編集者であるK9WX,Timの許可を得てここにその抄訳を掲載します。翻訳は、月刊FB NEWS編集部が行いました。この場をお借りしてThe CW Operators ClubとK1RFに厚くお礼申し上げます。
https://cwops.org/newsletters/

<Quote>
"The original version of this story appeared in the December 2021 issue of Solid Copy, the newsletter of the CW Operators Club" and includes a link to the Original at
https://cwops.org/wp-content/uploads/2021/12/solid-copy-2021.12.1.pdf

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