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海外運用の先駆者達 ~20世紀に海外でアマチュア無線を運用した日本人達~

その109 DJ7KJ岩崎美恵子さんのジブラルタル 1997年(5)

JA3AER 荒川泰蔵

DJ7KJ岩崎美恵子さんのジブラルタル

今回は1997年の第5回目でヨーロッパですが、最初にドイツ在住のDJ7KJ岩崎美恵子さん(1997年当時はDD5KJ)に、ご主人DJ9WHベルティンさんとの、ジブラルタルでの運用を紹介して頂きます。1997年以降も今日に至るまでほぼ毎年訪れて、ZBをサービスしておられます。尚、「あの人は今(第34回)」では、DJ7KJ岩崎美恵子さんに、近況を紹介して頂きます。

1997年 (ジブラルタル ZB0/DD5KJ)

JN1UUJ岩崎美恵子さんは、ドイツ在住でDJ7KJ(2002年にCW試験に合格、アップグレードされたコールサイン)としてアクティブですが、ご主人と共にジブラルタルからの運用について、レポートしてくれました(写真1~3)。「1997年3月中旬、主人DJ9WHと一緒にジブラルタルに無線旅行しました。主人は14回目で、1972年からZB2CNを運用、私は3回目でZB2CNのセカンドオペレーターとして運用できますが、今回はゲストライセンスZB0/DD5KJを郵便局で即日受けることができました。ジブラルタルはCEPT外なので、ドイツの免許で相互免許をお願いしました。ここはパイルアップを受けやすい所ですが、コンディションは今一で、2,3年後は更に期待できるとは主人の話、私は美味しい魚(EA7ではもっと美味しい)が魅力でした。泊まったホテルは地中海側東海岸にあり、アンテナはエレベーターのツインタワーの上、6階からダイポールとTS-50を使っての6日間の運用でした。ジブラルタルはスペインの一番南、幅1km、長さ5kmの半島、南北の岩山は426mで、1713年からイギリスの直轄地、岩山の頂上にはイギリス海空軍の基地があります(岩山の内部トンネルは長さ50kmにも及びます)。もう一つの山頂には昔アラブ船に乗せられて来たアラブ猿が住み着いています。人々はバイリンガルで英語とスペイン語を話し、人口は約25,000人、ローカル・ハムは約20人で、5人ほどがアクティブだそうです。GARS(Gibraltar Amateur Radio Society)のクラブ局は岩山から離れた港の中にあり、ZB2BUのコールサインです。ローカル・ハムの殆どは岩山の西側の町に住んでおり、JAへはロングパスのみが可能です。また、軍隊基地がある為かなりのQRNがあります。(1997年5月記)」


写真1. (左)ZB0/DD5KJ岩崎美恵子さんの免許状。(右)ジブラルタルの観光案内書の一部。


写真2. (左)ご主人のZB2CNと共同のZB0/DD5KJ岩崎美恵子さんのQSLカード。(右)ジブラルタルの観光絵はがき。


写真3. ジブラルタルでの運用の後、ドイツで開催されたHAM RADIOに参加されたZB0/DD5KJ岩崎美恵子さんご夫妻と乾杯。左からDF2CW(JA7HM)壱岐邦彦さん、DJ9WH(ZB2CN)ベルティン・ブッツさん、GW0RTA(JA3AER)筆者、ZB0/DD5KJ(JN1UUJ)岩崎美恵子さん(1997年)。

1997年 (ドイツ DH2NBK)

JP1HIS奈良圭之輔氏は、DH2NBKのコールサインで、ドイツの長期免許を1997年1月に取得し、ヴュルツブルク市で、5ヶ月間に144MHzのFMと、3.5MHzのSSB及びCWで約200局とQSOしたと、ドイツの短期免許と長期免許の申請方法を知らせてくれた(写真4)。「(一部抜粋)日本人が申請出来るドイツのアマチュア無線免許には2つのタイプがあります。1) 3ヶ月の短期免許: 希望する運用開始日の6週間前までにDARCに申請します。必要な物は、申請書、日本の無線局免許状のコピー、無線従事者免許証のコピー、申請料15DMです。運用許可は3ヶ月限定で、運用を希望する月初めの1日からになります。コールサインは、日本の資格別に1アマ及び2アマはDL/日本のコール、3アマはDH/日本のコール、4アマはDC/日本のコールになります。2) 1年以上の長期免許: 基本的にドイツの滞在許可証を1年以上有効なものを所持している事が条件です。この長期免許の場合はDL?xxxというドイツ人と同じコールサインがいただけます。手続きに必要な書類は開局申請書(JARLのFAXサービスにて取得可能)、VISAのコピー2通、無犯罪証明書1通(日本の警察から証明書をとり、現地の市庁舎または警察本部に申請すれば、ベルリンの法務局から送られてくる)、日本の局免と従免のコピー2通にその英訳または独訳のコピー2通です。申請先は地元のBAPT(Bundesamt tuer Post und Telekommunikation)です。(1997年5月記)」


写真4. DH2NBK奈良圭之輔氏の長期免許状。

1997年 (フランス F/DH2NBK)

JP1HIS奈良圭之輔氏は、CEPT免許で南フランスのカンヌとニースからの運用経験をアンケートで寄せてくれた。「ドイツで取得したCEPT A Klasse 免許、F/DH2NBKのコールサインで1997年6月21日から3日間、144MHz帯FMで運用しました。運用都市はフランスCannes市並びにNice市。仕事の関係で当地を訪問する機会があり、免許証と144MHzハンディー機を持参して運用しました。旧式のリグの為、スキャン機能がなく、サムホイールをカチャカチャさせてのスキャンだったのでレピーターを探すことができず、レピーター運用をと考えたができなかった。あらかじめ周波数を調べて行くべきだった。Cannes市のホテルからSimplexで通信中のフランス局を見つけ、ブレイクするが、相手は英語も独語も解さず、私の方はフランス語を解さない為、変なおしゃべりはするも、コンプリケートなQSOは成立せず。フランスでHF以外でオンエアーする場合は、ある程度のフランス語を話す能力が必要であると考えられる。しかしながらCEPTの免許の利点を利用して南仏にて運用したぞという満足感は得られた。(1997年6月記)」

1997年 (英国 M0BJJ, GB4SUK)

JA6EGL三宅正司氏は、英国のCEPT免許を得たと、アンケートを寄せてくれた(写真5)。「1997年5月英領香港(当時)でRAEを受験し合格しました。同年9月日本から郵便でUKの電監へ直接申請してみた所M0BJJというFBなコールサインをもらいました。常置場所をUK, ESSEXの友人宅の住所を借用し、メーリングアドレスは日本の住所を書いてみた所、ライセンスは日本の住所へ送られてきました。さすが大英帝国ですね。海外領土からの申請も時々あるのかもしれませんね。電監の担当官も非常に親切に対応してくれました。今のところまだペーパーライセンスで一度も運用していません。来年にでもUKへ出かけてみたいです。(1998年1月記)」

その後、CWの試験を受けにUKまで出かけたと、連絡を頂いた。「私は香港でRAEを受験、香港では開局申請を受付けてくれなかったので、英国本国へ申請しました。その際、米国免許を添付して、CW試験免除を願い出ました。その結果、変則フルクラス免許M0BJJをもらいました。その後、ロンドンのマーティンリンチ・ハムショップ(兼バイク屋)へ、CW試験を受ける為に、わざわざ日本から出かけました。(2020年4月記)」


写真5. (左)M0BJJ三宅正司氏のCEPT免許状。(中、右2枚)M0BJJ三宅正司氏のアマチュア無線資格を証明するCity and Guildの証書。

JA3AER筆者は、勤務先のシャープ英国生産会社(SUKM)のオープンデーに、再度特別コールサインGB4SUKの運用許可を得て、運用した記録を残していた(写真6~9)。「1997年6月7日に開催された、シャープ株式会社の英国生産会社のオープンデーの行事の一つとして、GB4SUKの特別コールサインで、アマチュア無線の公開運用を行った。このオープンデーは従業員の家族だけでなく、地域の人達を工場に招き、生産工場を見学して頂くと共に、日系企業であることから駐在員やその家族が日本の文化を伝え、地域社会の人々と交流を図る為のもので、公開運用にはローカルのアマチュア無線家、GW3UOO, DerekとGW4HER, Sylvia夫妻、GW0MVL, Ian、MW0ATP, Sidney、GW1AXT, Philip 達が協力してくれ、当地レクサム市のMr. Broderick市長ご夫妻にも、その運用を見学頂いた。無線機はアイコムのIC-760、アンテナはR-7000で、14MHzと18MHzの SSBで、ヨーロッパ各国の21局とのQSOを見学者に披露することが出来た。(1997年7月記)」


写真6. (左)シャープ英国生産会社(SUKM)のオープンデーのポスター。(右)RSGBが発行したGB4SUKの臨時運用許可証。


写真7. (左)GB4SUKを運用するGW0RTA(JA3AER)筆者。(右)GB4SUKのQSLカード。


写真8. 地元レクサム市の市長ご夫妻に、GB4SUKの運用をデモンストレーションしながらアマチュア無線について説明するGW0MVL, Ianさん。


写真9. SUKMのオープンデーで、来客に日本の文化を紹介する日本人駐在員の家族達。

「あの人は今 (第34回)」DJ7KJ(JN1UUJ)岩崎美恵子さん

今月号のジブラルタルの項で紹介させて頂いた、DJ7KJ(JN1UUJ)岩崎美恵子さんから、その後のジブラルタルでの運用について、近況をお知らせ頂きましたので紹介させて頂きます(写真10~11)。「ジブラルタルへ昨年2021年11月18日から25日に行って来ました。私美惠子にとっては35回目、主人DJ9WHベルティンにとっては46回目の訪問で、今の無線機は10年ほど前からK3を使っています。世界でコロナウイルス感染拡大パンデミックの中、ジブラルタルに出かけたのには理由がありました。私たちが長年滞在していたホテルが営業を止め、まもなく建物を取り壊すと知らされたからです。2022年は主人ベルティンがQRVを始めた1972年から50年になりますので、そのお祝いを考えていましたし、このホテルのように建物や屋上に72mのローバンドアンテナの設置を許されるところは他にありません、本当に残念としか思えません。一応無線機は友人に預けてきましたが、これから無線ができる環境を見つけられるかは疑問です。


写真10. DJ7KJ岩崎美恵子さんとご主人のDJ9WHベルティンさんが、72mのローバンドアンテナを張らせて貰え、定宿にしてこられたジブラルタルのホテル。記入されたaslは、above sea levelの略称で、海抜の意味です。

昨年の運用結果は、秋はコンディションに恵まれず、主人ベルティンZB2CNは、JAが40mと17mの13局だけで、それ以外はEUへの160mのサービスをしました。私ZB2/DJ7KJは、ZB2CNのセカンドオペレーターとして、DLに住んでいる日本人と唯一交信しただけで、あとはドイツの寒さから開放される温かな陽光を受けてのびのびと、そして美味しい魚を楽しんだのは勿論です。(2022年2月記)」


写真11. ZB2/DJ7KJ岩崎美恵子さんと、ご主人ZB2CNベルティンさんのQSLカード。

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次号は 12月 1日(木) に公開予定

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