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IC-705のDVレピータモニター機能解説

JK3AZL 高岡奈瑞

dmonitor同様に遠くのレピータをモニターできるDVレピータモニター機能に対応したIC-705のファームウェアが公開されました。今回の記事では、DVレピータモニター機能の操作方法だけではなく、機能の成り立ちやFAQまでを詳しく解説します。


ハムフェア2022で公開されたIC-705のDVレピータモニター機能。

《目次》
・DVレピータモニター機能とは
・IC-705をファームアップする
・IC-705を無線LAN(WLAN)に接続する
・DVレピータモニター機能を使う
・こんな使い方もできる
・FAQ

DVレピータモニター機能とは

dmonitorと同様にインターネットを介してエリアCQ先のレピータをモニターする機能で、エリアCQ時に「RPT?」が返ってきた時は、相手先レピータをモニターしておくことでレピータの空くタイミングが掴みやすくなります。もちろんレピータのモニター中も最寄りレピータ(FROM側のレピータ)のダウンリンクを優先するため、別のレピータから自局宛の呼び出しがあった時も逃さずに受信できます。


DVレピータモニターのイメージ(「IC-705仕様変更のお知らせ」より)

D-STARシステムは、システム誕生後もJARLのD-STAR委員会によってさまざまな改良が進められてきましたが、そのひとつが、離れた場所にあるレピータのモニターを可能にするdmonitorです。

dmonitorはグローバルIPを持たない回線からも各レピータへの接続が可能で、無線機ではできない相手先レピータのモニターが可能なことから、D-STAR運用者の間でたいへん人気がありました。しかしながら、世界的な半導体不足の影響でdmonitorに欠かせないRaspberry Piの入手が困難になったことや、dmonitor製作やアップデートにある程度の知識が必要なことから、「使いたくても使えない」と嘆くユーザが増えていました。

しかし2022年7月、「試験運用が問題ない段階まで来た」として仕様書が公開され、D-STAR委員会に接続申請書を提出して承認を得ることで、各レピータのmulti_forwardおよびhole_punchdサーバへ接続ができるようになりました。この仕様書公開を受けて生まれたのがIC-705のDVレピータモニター機能です。8月に開催されるハムフェア2022に展示できるよう急ピッチでソフト設計が進められ、10月に待望のファームウェアが公開されました。

IC-705をファームアップする

アイコムのWEBサイトから、IC-705のファームウェアを入手します。


アイコムのWEBサイトから、IC-705のファームウェアを入手する。


「同意する」にチェックをするとダウンロードできるようになる。

なおファームアップ方法は、上で開いたファームウェアダウンロードページの『補足説明、注意』の中の「1) お客様ご自身でファームウェアを更新する場合」に詳しく説明されていますので、参照しながら進めてください。

IC-705を無線LAN(WLAN)に接続する

IC-705のWLAN機能には「子機」と「親機」2種類の接続方法がありますが、モデムやルーター、テザリングなどに接続する場合は「子機(初期値)」として接続します。

[MENU]ボタンを押して[SET]をタッチし、[セット]画面の[WLAN設定]をタッチして無線LANの設定を行います。


セット画面の[WLAN]から無線LANの設定を行う。

[WLAN設定]画面で[WLAN]をタッチし、「OFF(初期値)」から「ON」に変更します。


WLANを「ON」にした状態。

次に[接続設定(子機)]から[アクセスポイント一覧]をタッチし、接続するアクセスポイント(SSID)を選択します。ただし「SSIDステルス機能」などでSSIDを表示しないアクセスポイントの場合は[手動接続]で接続設定をしてください。


接続したいアクセスポイント(SSID)をタッチして、パスワードを設定する。


パスワード入力画面。

パスワードを入力して《接続》をタッチするとWLAN接続を開始します。アクセスポイント名の下に「接続済み」と表示されたら、無線LANへの接続が完了です。


「接続済み」が表示されたら無線LAN接続完了。

これでDVレピータモニター機能を使う準備が整いました。次は、実際にモニターしてみましょう。

DVレピータモニター機能を使う

DVレピータモニター機能は、DR機能およびターミナルモード(内蔵)で動作します。

DR画面の[TO]に「エリアCQ」でレピータを選択した時、右上に「MONI」アイコンが表示されるレピータは、接続可能なレピータです。


レピータ名称の右上に「MONI」が表示されている場合は接続が可能。


アイコン表示。

マルチファンクションダイヤルを押し、マルチファンクションメニュを表示します。


[RPT MONI]がOFFの状態。

[RPT MONI]をタッチすると、OFFからONに変わってレピータに接続し、モニター可能になります。


[RPT MONI]がONの状態。

接続先レピータで交信(山かけ、ゲート越えを問わず)があると、アイコンが変わりモニター音がスピーカーから聞こえます。


[TO]側の接続先レピータをモニターしている様子。

DVレピータモニター機能には、接続に時間制限があります。各レピータは管理団体の方々がボランティアで維持をされており、従量制の回線を利用しているケースもあるようです。回線状態によってはパケットロスが発生することもあるため、DVレピータモニター機能では各レピータへの負荷に配慮して、接続に時間制限が設けられています。


接続時間が切れるとOFFになるが、再接続は可能。

接続時間の初期値は10分ですが、変更することもできます。10分(初期値)/20分/30分で設定変更が可能です。


接続時間[DVレピータモニタータイマー]で変更が可能。

こんな使い方もできる

DVレピータモニター機能は、次のような使い方もできます。

◎[TO]側レピータを変更しても、[RPT MONI]ON状態を継続。


[TO]側を切り替えても[RPT MONI]ONは継続。

◎[RPT MONI]ONの状態でDRスキャン。
相手先レピータの空きを待ちながら、DRスキャンをかけることも可能です。

[FROM]がGW接続できないDVレピータやシンプレックスchに切り替わった場合は、[RPT MONI]は切替前の状態をキープしますが、以下のいずれかになった場合は[RPT MONI]の接続が切断されます。
・DRスキャンがビジーストップした
・GW接続できないレピータまたはシンプレックスのまま2秒以上が経過した


[RPT MONI]ONの状態でDRスキャンも可能。

◎[RPT MONI]でミュートをかけないようにする。
[RPT MONI]でモニター中、[FROM]側レピータを受信するとモニター音はミュートされます。ミュートさせずモニターを継続させたい場合は、[FROM]側に受信できないDVレピータを設定しておきます。ただしFMレピータやGW接続できないレピータ、シンプレックスを設定すると、モニターはできません。


最寄りレピータのダウンリンクを受信すると、モニター音がミュートされる。


[FROM]側に受信できないDVレピータを設定しておくと、ミュートされない。

FAQ

Q: DVレピータモニター機能とはなんですか?
A: エリアCQ先のレピータを受信(モニター)できる機能です。

Q: DVレピータモニター機能を使うのに、インターネット接続は必要ですか?
A: 必要です。IC-705はWLAN設定でネットワークに接続します。

Q: スマートフォンのテザリングでも使えますか?
A: IPv4に対応したキャリアであれば、基本的に使えます。

Q: ルーターのポート設定は必要ですか?
A: DVレピータモニター機能を使うだけであれば、ポート設定は不要です。

Q: グローバルIPアドレスは必要ですか?
A: DVレピータモニター機能を使うだけであれば、グローバルIPアドレスではなくてもモニターできます。

Q: dmonitorのように、IC-705も頻繁にファームアップが必要ですか?
A: 各レピータのmulti_forwardおよびhole_punchdサーバに接続してデータを取得しているだけなので、dmonitorほど頻繁なファームアップはありません。

Q: 接続先レピータの山かけの交信はモニターできますか?
Q: アシストリンク先のレピータはモニターできますか?
Q: 接続先レピータにゲート越えで入ってきた交信はモニターできますか?
A: できます。

Q: 海外のレピータもモニターできますか?
Q: FMレピータもモニターできますか?
A: モニターできるのは国内のDVレピータのみです。ただし一部モニターできない国内のDVレピータもあります。

Q: 長時間連続してモニターできますか?
A: DVレピータモニター機能は接続時間に制限があります。初期値は10分ですが、10分/20分/30分の中から設定を変更できます。

Q: なぜ接続時間に制限があるのですか?
A: 接続先レピータのゲートウェイサーバの負荷を軽減するため、時間制限を設けています。各レピータは管理団体の方々がボランティアで維持して下さっており、従量制の回線を利用しているケースもあるようです。そのため負荷軽減に配慮して制限時間が設けられています。

Q: 制限時間なしでモニターを続けたい。
A: 制限時間を気にせずモニターしたい場合は、D-STAR委員会が提供しているdmonitorをご利用下さい。

Q: dmonitorのように接続先レピータから別のレピータへ送信することはできますか?
A: 接続先のレピータと異なるレピータに送信する場合は、[TO]に送信したいレピータを再設定して送信してください。

Q: レピータモニター機能は、VFOで使えますか?
A: ターミナルモード(内蔵GW)を含むDR機能で使えます。

Q: 接続先レピータをモニター中、[FROM]で設定した最寄りレピータで受信した時は?
A: 最寄りレピータからのダウンリンクを優先するので、受信中は接続先レピータのモニター音はミュートされます。

Q: 接続先レピータの交信をミュートさせずにモニターしたい。
A: [FROM]にアクセスできない(受信できない)レピータを設定しておくと、接続先レピータのモニター音はミュートされません。

Q: dmonitorのように接続可能なレピータを一覧で確認する方法はありませんか?
A: D-STAR管理サーバ「運用ログ表示システム」の「レピータ一覧」で確認することができます。


Q: D-STARレピータを管理していますが、DVレピータモニター機能で接続局が増えた時のサーバ負荷が心配です。
A: 回線速度が低い場合はパケットロスが出ることもありますが、接続局数・接続時間を制限できるようmulti_forwardが改修されています。詳しくはJARL D-STAR委員会のD-STAR NEWSなどを参照してください。

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