今更聞けない無線と回路設計の話
2026年2月2日掲載
このやっかいな問題を解消するための「これぞ先人の知恵」というべきしかけが電圧のデシベル表現[dBμV]には存在します。実は第3話の5章で解説済みなのですが、電圧をデシベルに変換するときは(式4-1)に示す通り20logで計算するというルールです。

(式4-1)
電圧のデシベル表現[dBμV]の場合は

(式4-2)
と計算します。デシベルのデシ(d)は1/10を示す補助単位の事でしたから、logの係数は10であるべきところを20とする、つまり電圧比は2乗して対数にすることで、仮想的に電力の次元に変換している事になり、電力と同じグラフ上にプロットしても辻褄が合うのです。もう少し平たく言うと「インピーダンスは不明なので実際の電力は判らないけれど、2乗して電力の次元にしてあるから、比率を読むだけなら電力と同列で扱えますよ」ということです。
第3話の5章では「線路のインピーダンスが同じ前提で、電力と電圧を同じグラフに混在させることができる」と解説しましたが、実は第4話の2章で解説したdBm→dBμV、dBμV→dBmの換算ポイントのみ実際の回路インピーダンスに応じて正しく換算出来ていれば、途中のdBμVで信号の大きさを扱っている区間・・・ つまり電圧振幅の増減比率だけを議論している区間では回路インピーダンスが変化しても実害は生じません。
2章でレベルダイヤグラムの横軸、3,4章で縦軸について整理できたので、いよいよレベルダイヤグラムの作成です。縦軸を信号レベル(dB)、横軸に伝送経路順にブロックを並べたチャート上に信号レベルと等価雑音レベルの折れ線をプロットしたものが図5です。
伝送信号が通過する回路や信号形態に合わせて信号レベルの表現方法が変化するため、レベルダイヤグラムは表2に示す5つの区間①~⑤に分割されます。図5では隣接するチャートが連続して追えるように、各チャートの縦軸の最大値・最小値を調整しています。各チャートの右側と左側の縦軸も同様です。隣接チャート間で連続している伝送信号と等価雑音は二点鎖線でつないで関係を示しています。さらに表2では区間A、区間Bという区分が存在し、図5では区間①と⑤の信号と等価雑音の各チャートが一点鎖線でつながれています。これはデジタル変調方式の特徴※2で、伝送信号(ここではAさんの発する音声)をCODECで符号化して伝送するため、AさんからBさんの間には、音声符号を伝送する「区間A」と音声信号を伝送する「区間B」が存在し、区間Aは区間Bの下位レイヤーのような位置づけになります。

表2 レベルダイヤグラムの区間分割
アナログ変調方式の通信では、伝送する音声の等価雑音に伝送路の全ての雑音が重畳されますが、デジタル変調方式ではB区間で生成された符号列をA区間を用いて伝送するので、図5のレベルダイヤグラム上は①と⑤のチャートが連続し、①が出力する音声符号を伝送する②~④は①・⑤とは別の伝送路としてチャートが連続します。デジタル方式の通信ではA区間の通信品質が一定以上(SNRが一定以上)確保されていれば、A区間で重畳される等価雑音はAさんの発する音声には重畳されません。この結果、Aさんの発した音声はCODEC入力におけるSNRを維持してBさんに届きます。デジタル方式が優れている理由の一つがここにあります。
第16話では通信路の劣化配分設計の基本であるレベルダイヤグラムについて、その定義と基本構成を解説しました。その上で、これから数回に分けてレベルダイヤグラムの作成方法の解説を行いながら等価雑音の求め方、信号形態が変わったときのレベルの受け渡し等について解説を行うため、モデルとなる無線通信伝送路を定義し、音声入力から出力まで(Aさんの発声からBさんの耳に届くまで)一気通貫のレベルダイヤグラムを準備しました。以下、第16話の要点をまとめます。
次回以降、図5に示したレベルダイヤグラムを用いて、信号レベルや等価雑音の考え方を詳しく見ていく事にします。
今回作成した一気通貫のレベルダイヤグラムのExcelシートをこちらからダウンロードできます。次回以降、このExcelシートを改訂しながら解説を進めていく予定ですので、興味のある方は、Excelシートから計算内容をご確認下さい※3。
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