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特別寄稿

アイコム製RoIPゲートウェイを用いたダイヤル電話による自作プライベート電話網への接続事例

VK3NOM/7M4MON 野村秀明

2026年3月2日掲載

  • ※本記事は、SIP/PBX技術に興味のあるアマチュア無線家、電話網・交換技術を楽しむ方、Raspberry Piを用いた通信システム構築に関心のある方を想定しています。


本記事で構築したPBXシステム


MikaNeTelへの発信テスト (クリックで動画再生します)

1. きっかけと参加の動機

アマチュア無線の世界では、「自ら設備を構築し、相互に接続することで通信を成立させる」というスタイルが、今も昔も変わらず楽しまれています。同じ発想を“電話網”に持ち込んだ取り組みが、有志によって運営されている「東京広域電話網」です。この電話網は、各自がSIP/PBXを用意し、局(電話局)同士を相互接続して構成する、実験的なプライベート電話網と言えるものです。

なかなか面白そうなことをしているなと、東京広域電話網の構築ガイドを読み進めると、「相互接続にはTailscale VPNが用いられており、地理的な制約を受けずに電話局を設置できる」ことが分かりました。

ちょうど、手元にアイコム製 RoIPゲートウェイ VE-PG3(海外版)があり、この装置はRoIP(Radio over IP)機能だけでなく、SIP電話のFXS(Foreign Exchange Subscriber)としても動作させることができるようでしたので、「VE-PG3を軸にして東京広域電話網“メルボルン局”を作ってみよう」と考え、実際に構築することにしました。
(筆者は現在、オーストラリア・メルボルンに長期滞在中です)

2. 電話機の選定と入手

東京広域電話網では(いわゆるベル式の)黒電話が約30台稼働しているとのことで、私も黒電話で接続したいと考えました。しかし、日本の実家に黒電話はあるものの、海外輸出には該非判定書・パラメータシートが必要となり、手続きが難しいようでした。そこで「せっかくならオーストラリアのダイヤル電話を使った方が面白い」と発想を切り替え、オーストラリアのダイヤル電話を調達することにしました。

オーストラリアでポピュラーな個人売買サイト「Facebook Marketplace」で探したところ、自宅から約10kmの場所でダイヤル電話とプッシュ電話を発見し、合わせて50AUD(約5,000円)で購入しました。


購入した電話 807型(プッシュ式)と802型(ダイヤル式)

オーストラリアの電話コネクターは600型モジュラーで、日本のRJ-12型とは異なります。ホームセンターで600型→RJ-12変換アダプターを、電器店でモジュラーケーブルを購入しました。


変換アダプターとモジュラーケーブル

3. PBX構築

PBXは小型・低消費電力が望ましいため、Raspberry Pi 5を採用しました。Tailscale VPNの導入は問題ありませんでしたが、導入手順書に示されているMikoPBXはRaspberry Pi OS用のパッケージが用意されていない事が判明しました。代替としてRasPBXを試しましたが、「start4.elf: is not compatible」と表示され、Pi 4/5の新しいハードウェアに対応していませんでした。そのため、公式イメージではなく、Playful Technology版 RasPBXを利用することにしました。


Playful Technology版RasPBXのGithubページ

インストール概要(既存OS利用時)
①インストールスクリプトをRaspberry PiにSFTP転送
②chmod +x install
③sudo ./installを実行
④設定上書きの質問はすべてNo

インストール完了後、無事にFreePBXが起動しました。各パラメーターの設定後、SIP内線での通話が可能となりました。

4. VE-PG3設定と着信確認

Icom VE-PG3はConverterモードで使用します。
・RasPBX側にPJSIP Extensionを追加
・VE-PG3側でSIP Server/内線番号などを設定
・PHONEポート設定はデフォルト(600Ω/-48V)で問題なし


SIPサーバー設定


PHONEポートに内線番号を設定


着信ルーティング設定


PHONEポート設定

これで着信と通話は可能になりましたが、「呼び出しベルが鳴らない」という問題が発生しました。電話機を分解して確認すると、前オーナーがベルを鳴らさない改造をしていた形跡があり、回路図上GS4-C1の配線が外されていました。正しい端子に接続し直すことで解決しました。


801/802型電話機の回路図と配線が外されていた箇所


着信ベルが鳴らない原因となっていた内部配線

次ページは「発信トラブルと対策」から

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