HW Lab
2026年8月3日掲載

IC-9700やIC-905の登場によって、1200MHz帯はもはや「未開拓のバンド」という印象は完全になくなりました。430MHz帯や144MHz帯と比べるとアクティビティはまだ控えめですが、CQを出せば数回に一度は応答があり、高台での移動運用も徐々に楽しめるようになっています。
そこで今回は、1200MHz帯でのポータブル運用に適した10エレメント(以下10エレ)八木アンテナを製作します。10エレとした理由は、十分なゲインを確保しつつ、携行性を損なわないサイズに収めることを重視したためです。
1200MHzの波長(λ)は約23cmです。エレメント間隔を0.25λ(約6cm)とすると、10エレではブーム長はおよそ50~60cmになります。さらに、このブームを中央付近で分割できる構造にすれば、収納時の全長を半分にでき、より小型で扱いやすくなります。ここまでコンパクトであれば携行性は十分で、移動運用にも適したサイズといえます。
エレメントやブームには、ホームセンターで入手できる材料を使用します。またアンテナ設計には「アンテナ解析ソフト MMANA」を活用し、効率よく形状を決めます。
MMANAには、あらかじめいくつかのアンテナモデルがサンプルデータとして用意されています。今回はその中から「15EL23CM.MAA」のデータを使用します。ファイル名のとおり、1200MHz帯の15エレ八木アンテナを想定したモデルです。本製作では、アンテナの小型化を優先するため、導波器を5本削除し10エレ構成としています。
(1) 仕様の決定
基本的には軽量・小型化を図るために材料の多くはアルミニウムを使用しています。仕様は次の通りです。
・エレメント数: 10
・放射器: ループアンテナの構造
・ブームの長さ: 約60cm(中間部で2つに分けられる構造)
・給電部: Uバランを使用したインピーダンス変換+平衡・不平衡変換
・同軸ケーブル: 3D-2V
・取付け: アンテナはカメラ用三脚に取付けられるようにする
「15EL23CM.MAA」をもとに必要なデータに修正したものが図1です。MMANA上ではアンテナの全体像が垂直偏波で表示されますが、図1で示したデータは見やすいように水平偏波として設定しています。完成後のアンテナは、取り付け方向を水平・垂直に90度回転させることで、偏波面を物理的に変更できます。
給電部は、インピーダンス変換と平衡・不平衡変換が必要になるため、放射器としては給電点インピーダンスが比較的高い折り返しダイポールまたはループアンテナを候補にしました。MMANAで各条件を計算した結果、最終的にループアンテナを採用しています。
そのため、MMANAでの設計では給電部インピーダンスを200Ωに設定し、1:4のUバランを用いて50Ω系統へ整合させることとします。
(2) MMANAによる10エレ八木アンテナの設計
MMANAに含まれる「15EL23CM.MAA」のデータをもとに設計した10エレ八木アンテナの各エレメント定義を図1に示します。今回設計したアンテナは10エレ構成ですが、図1の左上には「Wire 13本」と表示されています。
これは、放射器としてループアンテナを採用しているためです。MMANAでは各エレメントを「ワイヤー」として扱うため、ループアンテナは縦2本+横2本の計4本のワイヤーで構成されることになります。さらに、反射器1本、導波器8本を加えることで、合計13本のワイヤーとなります。

図1. MMANAによる1200MHz帯10エレ八木アンテナの設計
図1のデータでアンテナの全体像を表示したものが図2です。そして図1の寸法データの数値を丸めてアンテナの全体像に落とし込んだものが図3です。

図2. MMANAで設計した1200MHz帯10エレ八木アンテナの全体像

図3. 図1で示した各データを図2に示したアンテナに落とし込んだ寸法図
MMANAで設計したエレメント長やエレメント間隔の単位はメートルで、小数点以下5桁まで計算された非常に細かい寸法として表示されます。しかし、実際の製作でこれらの数値をそのまま再現することは困難です。
そのため、製作時には図1に示したデータを基準にしつつ、現実的な加工精度に合わせて寸法を適宜丸めて使用します。
したがって、図3に示した各寸法データを逆にMMANAへ入力して再計算した場合でも、FB比やSWR、あるいはインピーダンスがもとの仕様通りになるとは限りません。この点についてはご理解ください。
(1) 放射器の製作
一般的にループアンテナの4辺の長さの合計は約1λです。ところがこのMMANAで計算したところ1λの23cmより長く29cmと表示されました。何回か再計算を行いましたが同じような結果でしたのでそのまま進めることにしました。放射器には直径5mmの銅パイプを使用しています。4辺のパイプをハンダ付けして一体化し、矩形ループアンテナとして構成しています(図4)。

図4. 放射器の製作
(2) 放射器のマッチングセクションの製作
給電は同軸ケーブルで行うため平衡・不平衡変換を行う必要があります。また、給電部のインピーダンスも可能な限り50Ωに近づけたいこともあり、製作が比較的簡単なUバランで行います。そのため、給電点のインピーダンスを200ΩとしてMMANAで設計しています。図5は、MMANAを使った今回の計算の結果です。

図5. 給電部のインピーダンス(Z)は200Ωと計算では出ています
図6は、書籍などでよく紹介されているUバランの製作図です。図7は、実際に3D-2Vケーブルを用いて製作した放射器とUバランの回路を示しています。

図7. 取付け前のUバランと完成した放射器
(3)各エレメントの取付け
図3で示した寸法に従い、まず9本のエレメント を準備します。エレメントには直径5mmのアルミ棒を使用しました。MMANAでの計算では直径1mmのエレメントを前提としていますが、実際の製作では強度確保を優先させるため太い材料を採用しています(図8、図9)。

図8. アルミのアングル材にエレメントの取付け方法 (左):裏側 (右):表側

図9. アルミの角材をブームに導波器と反射器を取付けた全体像。放射器はまだ取付けされていない
(4)ブームの分割
携帯性を向上させるため、ブームを2分割できるようにします。ブームのほぼ中心辺りを金ノコで切断し、2分割したブームをブームの裏側にアルミ板を当て、両ブームをネジ留めします(図10)。

図10. ブームを2分割して携帯性を向上させる
2分割した一方のブームのネジ留めは、図11(右)に示したように指でも留めることができるネジを使用します。こうすることで、現地での組み立てを容易にします。
参考ですが、2分割した一方のブームと裏側に当てるアルミの板はタッピングビスで留めていますが、指で回して留めるビスの穴は3mmのタップを切っています。

図11. ブームの2分割
(5)放射器の取付け
放射器は図7で製作したマッチングセクションも含め、図11に示すように樹脂ケースに組み込みます。樹脂ケースはアルミ材のブームにネジ留めします(図12)。

図12. 放射器にマッチングセクションを接続し、樹脂ケースに組み込んだ後、ブームに取付ける
(5) 完成した1200MHz 10エレ八木アンテナ

図13. 完成した1200MHz 10エレ八木アンテナ
次ページは「アンテナのテスト」から
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