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「愛知県・春日井市総合防災訓練」で春日井アマチュア無線クラブがD-STARを活用した通信訓練を実施

近年、D-STARシステムを趣味としての通信を楽しむだけではなく、デジタル通信という特長を活かし、防災に役立てようという動きが活発になっている。災害対策基本法に基づく地域防災計画の一環として、市民と自治体が一体となった通信のバックアップインフラとしてD-STARが注目されているのだ。それに伴い、自治体や病院、学校などにD-STARレピータが設置され、災害に備えた訓練も各地で行われるようになっている。

平成29年8月20日(日)、春日井市と愛知県との共催による総合防災訓練が、同市の朝宮公園で実施された。今回の訓練は「駿河湾から日向灘を震源域として大規模な地震が発生。東海地方から西日本の広い範囲で非常に激しく揺れ、春日井市では震度6弱を観測した。この地震により、市内では倒壊した家屋等の下敷きになった人がいるとの情報があるほか、火災の発生、道路等の損壊や、電気、通信、ガス、水道等のライフラインなど、各地で甚大な被害が発生している模様である」という想定で行われた。

以上のような状況の中、春日井アマチュア無線クラブは、主に次のような訓練を実施した。
(1)市内及び全国の情報収集
(2)写真の無線伝送
(3)インターネット回線無線接続 ほか

■広域ボランティア支援本部通信訓練 概要図


愛知県庁にアンテナを設置するスタッフ(写真左)とJA2RL/2運用の様子(写真右)


朝宮公園に設置された春日井市災害ボランティア局(JA2YDX/2)

情報収集の量と質を高めるD-STARシステム

(1)市内及び全国の情報収集
8:30地震発生。9:00には広域ボランティア支援本部(愛知県庁)の設営がスタート。9:25には145.5MHzにて訓練開始が宣言された。その後、中京アマチュア無線クラブ、千鳥ハムクラブ、田原アマチュア無線同好会、アマチュア無線クラブロクマルなど、各局から各地の被害状況、避難者に関する情報等の報告、通信状況や信号強度の確認が行われた。

今回の音声による通信訓練ではFMモードが使われていたが、D-STARのDV(デジタルボイス)モードを使えば、音声に加えてデータ通信も可能になる。誰(コールサイン)やメッセージ(所属等)、重要連絡事項をテキストで送ることができるため、音声のみのアナログのより情報伝達の精度は高まる。また、GPSデータ(位置情報)を送ることができるため、地図にプロットすれば各スタッフの場所を目で見て把握するも可能だ。

さらに、日本各地に広がるD-STARレピータ網を活用すれば、携帯機でも日本全国の自治体やボランティア団体と情報交換をすることができる。今後、DVモードを有効活用することで、情報の量と質のさらなる向上を期待することができる。


非常通信の訓練を行う春日井アマチュア無線クラブのメンバー


春日井市災害ボランティア局では、非常通信にID-5100が使用されていた

(2)写真の無線伝送
災害時に威力を発揮するのがD-STARのDV(デジタルボイス)モードによる画像の伝送だ。災害により公衆回線が断たれた場合でも、D-STARトランシーバーに携帯端末(スマートホンまたはタブレット)を接続することで、端末のカメラで撮影した写真を、電波を使って伝送することができる。被害状況や避難者の様子など、言葉だけでは正確に伝えることが難しい状況も、写真なら正確に伝えることが可能だ。また、携帯端末のキーボードでテキストを作成し、通話しながら送ることもできる。人数や物資の数など、正確に伝えたい場合に有効だ。

この日も、春日井アマチュア無線クラブのメンバーが、訓練会場の各所に移動し、画像を伝送するテストを繰り返していた。また、会場内のブースには転送されてきた写真を掲示し、来場者に無線通信の可能性と災害時の有用性をアピールしていた。


ID-51に携帯端末を接続し、画像を転送


携帯端末用のアプリケーションRS-MS1A。東日本大震災で救護活動を行った日赤職員の声を元に開発されたD-STARシステムを最大限活かせるアプリケーションだ


ID-51(+AndroidアプリのRS-MS1A)で受信し、アプリに保存した画像をプリンターで出力している様子


現場の写真があれば正確に状況を判断し、適切に指示を出すことが可能だ

今年4月に内閣府が発表した防災基本計画の「通信手段の確保」には「アマチュア無線等による移動通信系の活用体制について整備しておく」や「現場の状況を(中略)迅速かつ的確に災害対策本部等に伝送する画像伝送無線システムの構築に努めること」との記載がある。この点からも、D-STARシステムは、防災時の通信手段として最適なシステムの1つと言える。

※画像の転送には無償ソフトウェアRS-MS1A(Android用)またはRS-MS1I(iOS用)をインストールする必要があります。また、機種により、携帯端末との接続にはデータ通信ケーブル(OPC-2350LU)が必要です。

(3)インターネット回線無線接続
D-STARのDD(デジタルデータ)モードを使えば、D-STARのレピータ局を介してインターネットに接続することができる。被災現場でインターネットによる情報収集ができるのは、二次災害の防止、安全対策の面からも非常に有用だ。今回の訓練では朝宮公園からJP2YGE(名古屋市熱田区)レピータ経由で、インターネットに接続するデモンストレーションが行われた。


現地からはJP2YGE(名古屋市熱田区)レピータ経由でインターネットに接続していた。上記写真は気象庁のwebサイトにアクセスしている様子


非常通信用の144MHz GPとインターネット接続用の1200MHz八木アンテナ

30年以上、防災訓練に参加し続けている春日井アマチュア無線クラブ

朝宮公園で春日井市災害ボランティア局を開設したのは春日井アマチュア無線クラブ(JA2YDX/2)だ。今回の訓練には15人ほどが参加。無線機やアンテナの設置から非常通信の訓練、画像の転送、さらには来場者に対しアマチュア無線の有用性やD-STARのPRを行った。


春日井アマチュア無線クラブのブースでは、ポスターや実機を展示して来場者にアマチュア無線の魅力、D-STARの有用性等の説明を行った


訓練に参加した春日井アマチュア無線クラブの皆さん

今回の訓練は愛知県と春日井市が合同で行ったもので、約3000人が参加。来場者は巨大地震の揺れを体感したり、土砂に埋まった車両から怪我人を助け出したり、実際に消火する訓練に参加するなどし、防災に対する意識を高めていた。


総合防災訓練のメイン会場となった朝宮公園では、様々な訓練が行われていた

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次号は 12月 1日(木) に公開予定

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