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熊野古道みちくさ記

第40回 自然学校で地方創生する新宮市

熱田親憙

猛暑が続くので「都会脱出」を期していたところ、新宮市高田地区で「自然学校・土と水と緑の学校」が6日間の日程で開催されていると聞き、1泊2日の予定で訪ねた。

この自然学校は新宮市教育委員会、公益社団法人アジア協会アジア友の会、一般財団法人新熊野体験研修協会が企画・主催し、今年で33回目を迎える「筋金入り」のプロジェクトである。

新宮市教委の森奈良好課長は「幸いなことに新宮市は、海、山、川の大自然に恵まれ、多様な自然学習ができる、日本でも数少ない地域の一つ。多くの子供たちに自然の中で学び、自然を楽しんでもらえるようなプログラムを関係者と考えている」と語っておられる。アジア協会アジア友の会の村上公彦局長は「飲料水不足のアジアに井戸を贈る運動を始めて37年。次世代の子供らは、自然の中で生活体験して、自然を大切にすることを学んで欲しい」と話し、学びとボランテイアが結びつくことを期待する。

早速、新宮市街から越路トンネルを通って国道168号を走ること約15分、左折して高田川に沿って約5km進むと高田地区・雲取温泉に着く。その裏を流れる高田川ではカヌーの授業が始まっていた。子供たちは転覆時の復帰方法、オールの返し方などの手ほどきを受け、櫂(かい)のバランスが取れるようになるとカヌーは直進し、漕ぐ心地よさにみんな大はしゃぎだ。最後に20mの一斉競争を終えて、岸辺で水分補給。宮城・名取市から参加した子供もいて、地方交流の場になっていた。

夕刻に高田川の支流沿いにテントで一夜を過ごすキャンプ村を訪ねると、丁度夕食タイム。カヌーでお腹ぺこになった子供らは、自分たちで作った食事をトレーに盛り、顔を埋めるようにしてほおばっていた。最年少の小学3年生の中には最初の2、3日、ホームシックにかかったり、高熱を出したりする子もいたという。

本部のある保育所を訪ねるとアジア協会アジア友の会のスタッフやボランティア関係者が炊事・調理班、食器洗い班、買い出し班、管理班に分かれ、全部で150食分が賄われていた。見事なチームプレーである。また食器洗い後の入念な煮沸消毒の工程には頭が下がった。

朝の散歩で青々とした高田川の田園風景を満喫した後、「土」を学ぶ授業のある里高田会館を訪ねた。近くの高倉神社境内で掘った腐葉土からミミズや昆虫、微生物、腐葉のサンプルを作り、子供たちは20倍の顕微鏡をのぞいていた。間もなく肉眼で見えない世界に驚きの声があちこちで上がった。未来の子供たちの姿を創造してほっとし、喜ばしいと思った。

スマホで自分の住む現実世界を舞台にして、大人も子供もポケモンごっこに興じる昨今、ジャングル・ブックのCG画面で作られた仮想社会を現実と錯覚したり、視覚と聴覚だけしか真実を認知できない生き物になりつつあるのではと心配している。一人でも多くの子供たちが自然学校や体験学習を通して五感の目覚めを取り戻すとともに、和歌山の自然を未来の子供たちのために大切にしなければと痛感した2日間だった。

スケッチ;自然学校「水」授業(新宮市高田)

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