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台湾のアマチュア無線事情

その3(最終回) 台湾のアマチュア無線の将来

JI1GYO 王新華

アマチュア無線の発展は、2000年を境に鈍化する傾向にあります。その大きな理由のひとつは、IT(インフォメーション・テクノロジー)が人々の関心の中心を占め、生活に便利さをもたらし、ほとんどの人がスマートフォンを所有していることです。最近では、さらに進化した高速の5G技術により、海を越えた即時通信が簡単にできるようになりました。魅了的な画像や高音質な動画で、娯楽として便利なコミュニケーションデバイスとなっています。スマートフォンが従来の電話に取って代わったことも、アマチュア無線の普及を妨げた大きな要因のひとつです。これは、世界的なアマチュア無線通信システムの開発においての共通の課題です。

アマチュア無線家の多くは趣味で運用を楽しんでいるため、余暇にアマチュア無線を楽しみ、関連する活動に参加しています。台湾では、中華台北アマチュア無線連盟(CTARL)が、国際的に認められている唯一の組織であり、国際活動に参加してきました。リソースの制限は、発展のための障害の1つでもあります。CTARLは決してあきらめず、アマチュア無線を普及させるためのさまざまな活動を計画しています。なぜなら、技術や科学の知識を広めるためには、教育が最善かつ唯一の方法だからです。


台北市の風景 (JI1GYO撮影)

一般市民や若い世代にアマチュア無線の良さを伝えるための活動やイベントを実施

CTARLでは定期的にイベントを開催しており、QSOコンテストは少なくとも月2回、主要都市で行われています。また、若い世代のモチベーションを高めるために、楽しくて社交的なイベントも数多く開催されています。

若い学生達が台湾の誇りに
CTARLと国立台北科技大学(National Taipei University of Technology(Taipei Tech))は、宜蘭県にある地元の小中学校が、アメリカのARRL、AMSAT、NASAに申請した、宇宙飛行士との直接交信の機会を支援しました。申請から許可が下りるまで1年を要しましたが、2010年1月11日の午後、国際宇宙ステーション(ISS)が台湾の上空約400kmを通過しました。ISSのジェフ宇宙飛行士は、学生たちとの質疑応答に参加しました。このイベントは、台湾における航空宇宙科学の画期的な出来事となりました。若い学生たちにとって、衛星通信という新しい体験をしたのは初めてだったからです。学生たちは、無線通信に対する高い好奇心と興味を示し、科学的知識を吸収しようとしました。


学生がISSのジェフ宇宙飛行士と交流するイベント
(画像はNCCニュース 中華民國105年5月号(May 2016)より)

競技会・ゲーム
ARDF(Amateur Radio Direction Finding)は、各周波数の送信特性を利用し、異なるアンテナを組み合わせて「フォックス」(送信機の愛称)の方向を探すゲームの一つです。参加チームは、DIYで作った機器を使って、隠された送信機を見つけ出すことで、楽しさと同時に自作機器の信頼性を確認することができます。このイベントは、すでに6年間継続しています。


ARDFイベント
(画像はNCCニュース 中華民國105年5月号(May 2016)より)

アマチュア無線の科学技術の教育と普及
無線通信は社会の日常生活を支える一般的な手段となっていますが、関連する技術や科学的知識を広めるためには、教育を通じてより多くの努力が必要です。CTARLと国立台北科技大学は、コンピュータと通信科学の普及のための教育プログラムを実施しています。このコースは、小学生から大学生、社会人まで、誰でも参加することができます。

特別イベントで中国本土、香港とマカオとつながる
CTARLと国立台北科技大学は、中国初のアマチュア衛星HO-68を通信の架け橋として、中国本土、香港、マカオと交信するイベントをドラゴン・フェスティバル・デーに定期的に開催しています。衛星通信を通じて、学生たちはこの世界的な中国の伝統的な祝日に、海を越えてお互いに挨拶を送り合います。総勢約300名の若者が参加し、アマチュア無線や衛星通信に感銘を受けていました。

JOTA キャンピング イベント
台湾では、ボーイスカウト組織が毎年10月に開催する「Jamboree On The Air(JOTA)」というイベントに参加しています。これは無線通信を使ったイベントで、世界中のボーイスカウトが無線で交流し、友情を深め、国際的な視野を広げることを目的としています。CTARLとNCC(国家通信委員会)は、6年連続でこのイベントをサポートしており、これにはボーイスカウトと1万人以上のボランティアが参加しています。主催者は、このイベントのために用意されたHF帯およびVHF/UHF帯の通信機器を設置しました。アマチュア無線のオペレーターたちが、スカウトに実際の無線通信を体験させ、アマチュア無線のブースでは、無線の規則や技術を紹介しています。


JOTAイベント
(画像はNCCニュース 中華民國105年5月号(May 2016)より)

衛星通信
アマチュア無線愛好家の技術知識やスキルを向上させるために、NCCとCTARLは、国立台北科技大学と共同で、毎年アマチュア衛星通信とデジタル通信の国際ワークショップを開催しています。このワークショップでは、通信機器の基礎知識や、衛星を使った国際通信の容易さ、APRS自動位置通報システムの使い方などを学ぶことができます。今回は、全国から70名の参加者がありました。


衛星通信ワークショップ
(画像はNCCニュース 中華民國105年5月号(May 2016)より)

アンテナをDIY
この活動は、民間人を招待し、アマチュア無線の通信モードについて知ってもらい、スキルを養ってもらうためのものです。参加者は様々な衛星通信やデジタル通信のソフトウェアを学ぶことができ、DIYしたアンテナを試すこともできる。まさに多目的な交流イベントです。直近のイベントでは60名の参加者がありました。技術に関する講義と実際のDIYセッションでは、ヘリカルアンテナのセットを製作し、DIYアンテナの仕様やインピーダンスを分析・測定したチャートと比較しました。このイベントの目玉である人工衛星を使った通信では大変盛り上がりました。


アンテナを製作中の参加者
(画像はNCCニュース 中華民國105年5月号(May 2016)より)

ショートインタビュー CTARL 高大成氏(BV2FP)

高氏はアマチュア無線を始めて38年になります。小学校4年生の修学旅行の時、おもちゃのようなアマチュア無線機を持ってきたクラスメイトに触発されたのがきっかけでした。それ以来、彼の夢はアマチュア無線機を手に入れて運用することでした。初めて手にしたアマチュア無線機は、私の人生を変え、世界を広げてくれた」と語りました。彼は、また「人生のすべてがハムラジオにつながっている」、「ハムラジオを通じて世界中で多くの人々と出会い、面白い体験をしてきた」と語りました。

中央放送局RTI(Radio Taiwan International)の番組を通じて、高氏は一連の動画でアマチュア無線の技術的知識に関する情熱を伝え、それらはその後、さまざまなソーシャルメディアで共有され、アマチュア無線愛好家のための情報の普及や交換が行われています。https://www.facebook.com/watch/106888630794748/2846926602225114/


突破口となるその他の要素

アマチュア無線免許の取得には、それなりの努力が必要です。それは、自動車運転免許の取得と同様に一定の費用と時間がかかるだけでなく、個人的な興味と情熱も必要です。このように、アマチュア無線は、社会に安心・安全をもたらし、人々の生活に便利さをもたらすコミュニケーションツールであり、普及させるべき重要なテーマです。

すこし改善すべきポイントは、アマチュア無線の免許資格を得るための手続きを簡素化することです。現在の免許資格の分類は多すぎて、重複している部分もあります。すべてのアマチュア無線運用免許を統合して、認可までの手続きを簡素化し、経済的負担を軽減することが必要です。使用可能な周波数は、地域や国家の安全保障上の規制によりまだ制限されています。CTARL規制委員会の会長欧錦昌氏がNCCニュース10505に「CTARLは、少なくとも他のリージョン3に属する国々と同じように、より広い周波数を徐々に開放することを求めている」とコメントしました。


アマチュア無線は世界の先進国家では重要な科学技術資源として扱われています。それらは、伝統的な教育の他、アマチュア無線家の間での継続的な研究及び情報交換にも関係しています。

(完)

【参考文献】
(1) NCC ニュース 中華民國105年5月号
(2) CTARL official website

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次号は 12月 1日(木) に公開予定

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