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ジャンク堂

第3回 オペアンプ入門(3)

JH3NRV 松尾信一

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さて、オペアンプの3回目です。前回まででオペアンプをオーディオアンプとして使うための基本的な話をしてきました。今回からオペアンプで良く使われる直流アンプについて触れますが、その前に初回に説明をしなかった基本的な内容に戻りたいと思います。

唐突ですが、以下の回路の出力電圧(A)、(B)はそれぞれ何Vでしょうか?


2つの回路共にプラス入力もマイナス入力もグランドに接続されており、0Vです。2つの回路の違いは出力(A)の方は±5Vの両電源で、出力(B)の方は10Vの単電源です。出力(A)は0Vであることはすぐに分かるかと思います。では出力(B)は0Vでしょうか? 5Vでしょうか?

答えはどちらも0Vとなります。(但しオペアンプの特性が理想的であることが条件です) オペアンプを単電源で使う時に、プラス入力端子に電源電圧の1/2の電圧を加えると説明しました。そうすると入力信号がない時はオペアンプの出力も電源電圧の1/2となります。しかし、今回はプラス入力端子が0Vとなっています。従って出力も0Vとなります。

つまりオペアンプの入力と出力の関係は理屈の上では電源電圧とは関係がないのです。現実的にはオペアンプの入出力は電源電圧の範囲内に制約されるのですが、まずはこの前提を覚えておいてください。

さて、遅ればせですがオペアンプの教科書で必ず出て来る内容を説明したいと思います。既にご存じの方も多いかと思いますがオペアンプの入出力の電圧の関係を理解する上で大切な内容です。

まず反転増幅から始めましょう。


オペアンプはNFB(負帰還)を掛けることにより(この前提が重要です)、マイナス入力端子はプラス入力端子と同じ電圧になるように動きます。プラス入力端子とマイナス入力端子はショートしているかのように見えるので、これをイマジナリーショートといいます。

反転増幅の場合、Rsから信号Vinを入力しますがプラス入力端子は0Vなのでマイナス入力端子も0Vになります。入力信号VinによってRsに流れる電流Iは I = Vin R S   となります。オペアンプの入力インピーダンスは非常に高いのでこの電流Iはほぼ全てRfに流れて行きます。そのため、
Vout = I × Rf = Vin R S × Rf の関係となります。ゲインはVout/Vinですから G = Vout Vin   = Rf R S が導き出されます。(Vinの向きとVoutの向きが逆なのでGはマイナスとなります)

これをイメージした図が下になります。(テコのようになっていて青赤の両腕の長さはRsとRfそれぞれの抵抗値の大きさになります)


三角の支点の部分がマイナス入力端子の電圧で、プラス入力端子の電圧と同じになります。ここでは0Vですがプラス入力端子に5Vを加えると支点の位置は5Vになります。

冒頭の問題を反転増幅とみた場合、プラス入力端子が0Vのためにマイナス入力端子も0Vになります。また、Vinに相当するRsのVin側も0Vです。従って出力電圧も0Vでないとこの関係が保てません。上の図のテコが水平の状態です。

次に非反転アンプの場合です。


プラス入力端子に信号が入ると、マイナス入力端子の電圧はプラス入力端子の電圧に追随します。これをイメージした図は下になります。


今回は三角の位置はプラス入力端子の電圧Vinに追随して上下します。電圧が固定されているのはマイナス入力端子のRsのグランド側で、ここが支点となっています。反転増幅の時と同じようにIを求める式を立てると非反転増幅の場合のゲイン G = 1 + Rf R S が導き出されます。

第1回目でRsとRfが同じ値であっても反転アンプと非反転アンプのゲインでは1違うことを説明しました。その時は理由を置き去りにしてきましたが、ここで1の違いが出てきました。

次になぜマイナス入力端子はプラス入力端子と同じ電圧(イマジナリーショート)になるのかを考えてみます

オペアンプは裸(負帰還を掛けていない時)のゲインが非常に高いと先に述べました。負帰還を掛けないと直流付近ではおおよそ100dB前後もの電圧ゲインがあります。仮に電圧ゲインが100dB(100,000倍)とすると1Vの出力を得るには入力は10uVで良いことになります。しかし、オペアンプは負帰還を掛けて使います。負帰還はアンプの出力の位相を反転して入力に戻します。オペアンプ内では入力された信号と戻ってきた出力信号の差分を増幅するようになっています。この動作は下図のように表せます。


プラス入力端子に入力信号Vsが入り、マイナス入力端子に出力から戻る電圧Vfが入ります。オペアンプでは左の図のように初段の差動増幅回路で両入力電圧の引き算が行われます。Viは引き算された信号でVi=Vs-Vfとなります。このViがゲイン(G)倍されて出力になります。出力が1Vになる時の具体的な値を入れた例を右の図に示します。

アンプの+G倍とはオペアンプの裸のゲインです。この例では100,000倍です。従って出力電圧Vo=1Vとなるのは、Viが1(V)/100,000=10(uV)の時です。ここで、右の図の定数の場合、Rs=Rf(10kΩ)なので、VfはVoの1/2となり、Vo=1Vの時のVfは0.5Vとなります。従って、VsはVfより10uVだけ高い電圧で良いのでVsが0.50001Vの時に出力が1Vになります。Vsの電圧が変化してもNFBによってこの関係が保たれます。このようにマイナス入力端子電圧(Vf)はプラス入力端子と(ほぼ)同じ電圧(Vs)になります。これがイマジナリーショートと言われる動きです。なお、入力Vsが0.50001Vの時に出力が1Vですので回路としてのゲインはほぼ2倍と言えます。

負帰還という技術/手法はアンプの出力信号から取り出した信号を入力に戻して入力信号から引き算をして増幅するため、仮にアンプのゲインが変動したり波形が変わったり(歪みを生じる)しても、それも含めて引き算するためにアンプで生じるゲイン変動や歪みを帳消しにするという魔法のような技術なのです。トランジスタなどの半導体素子は本質的に直線性が悪いために歪みを低減するには不可欠な技術/手法です。

以前はHi-Fiオーディオの世界で負帰還を否定するような風潮があったように思います。これはある意味技術や素子が未熟であったが故の風潮だったのではないかと思います。同時にどんな状況であっても安定した負帰還を掛けるには結構高度な技術が要求され、正しく負帰還が掛からないとかえって特性を悪化させることがあります。オーディオの世界に深入りすると色々な宗派の方にお叱りを受けるので止めましょう。オペアンプはICの発達によって安定に負帰還を掛けることができるようになっていますが、それでもアンプの出力に接続する負荷の状況について配慮をしないと発振などのトラブルに遭遇します。

さて、負帰還はアンプの出力を反転して入力信号と引き算(反転した信号を加算)する手法と述べました。もし、出力信号を反転せずに入力信号と加算すると正帰還(PFB: Positive Feedback)となり発振を引き起こします。正帰還はアンプのちょっとした変化を増大させてしまうので負帰還とは正反対の特性を持ちます。しかし負帰還と正帰還の違いは入力に戻す信号の位相だけなので、出力を入力に戻す経路(帰還経路)で意図しない位相変化があると負帰還のつもりが正帰還になり、不安定なアンプとなります。

以上からオペアンプはNFB(負帰還)を掛けて使うことが前提であって、両者は切っても切れない関係にあります。ここまでくると位相と発振についての話に行きたいところですが、話が煩雑になるので一旦棚上げして直流増幅回路の話に入りましょう。

さて、直流増幅ですが一例として下のような回路のRFレベル計を作る場合に遭遇すると思われるトラブル(?)を通じて考えてみます。高周波をダイオードで整流した後、オペアンプで直流増幅を行い、メーターを振らせる回路となっています。最近はメーターが希少なのでワンチップマイコンとAD変換器を使ってデジタル表示にすることが多いと思いますが、ここではメーターを振らせます。また、回路図ではオペアンプの電源は省略していますが取り敢えず±両電源とします。


さて、この回路では高周波を整流するダイオードの特性が重要ですが、高周波用のショットキーバリアダイオードなどを使うとまずまず弱い入力でもメーターが振れてくれそうです。しかし、使用するオペアンプや回路定数によっては入力がない時にもメーターが0の位置ではなく0点よりプラスかマイナスに僅かですが振れるという現象に遭遇することがあります。

入力がない、つまりプラス入力端子とマイナス入力端子の電圧が同じにもかかわらず、メーターが振れてしまう(オペアンプの出力が0Vにならない)もっとも大きな要因がオフセット電圧になります。

⑦オフセット電圧
オペアンプはプラス入力端子とマイナス入力端子の電圧差を増幅すると説明してきました。従ってプラス入力端子とマイナス入力端子が0Vの時、出力電圧も0Vとなります。単電源の時も考えるとプラス入力端子とマイナス入力端子の電圧が同じ時、出力電圧は両入力端子の電圧と同じになります。オペアンプが理想状態であるとこのようになります。

しかし、現実には出力端子が0Vになる時のプラス入力端子とマイナス入力端子の間には僅かな電圧差があります。これは逆にいうとプラス/マイナスの両入力端子の電圧が全く同じであっても出力電圧が0Vにならないということです。これが先のRFレベル計のような回路の場合、無入力の時でもメーターが僅かに振れてしまう要因となります。

オフセット電圧の要因ですが、オペアンプの入力回路は図のような差動増幅回路と呼ばれる2つのトランジスタ(あるいはFET)で構成されています。この2つのトランジスタの僅かなバラツキから先のような差異が生じます。(図は入力段だけを簡略化した回路です)


オフセット電圧とは出力端子の電圧が0Vとなる時のプラス入力端子とマイナス入力端子の電圧差を言います。(プラス入力端子、マイナス入力端子のどちらがプラスになるかは分からない)

例えばNJM4560のデータシートをみるとオフセット電圧は標準で0.5mV、最大で6mVとなっています。この値をみると僅かな電圧のように見えますが、実際はこの電圧に設定したゲインを掛けた電圧が出力に出てきます。例えば、オペアンプで組んだアンプのゲインを100倍(40dB)に設定した直流アンプがあるとします。これに使用するオペアンプのオフセット電圧が1mVとすると、プラス入力端子とマイナス入力端子が全く同じ電圧であったとしても出力には1mV×100倍=100mVの電圧が出ます。またこのオフセット電圧はオペアンプ個々によってバラつくので、どの程度の電圧が、プラス電圧として出てくるかマイナス電圧として出てくるかは異なります。

このようにオフセット電圧は意図しない入力電圧とも言えます。もし、10mVの直流電圧を増幅したいような場合にNJM4560の最大の6mVものオフセット電圧が別の入力電圧として存在すれば大きな影響となることがわかるかと思います。オフセット電圧が0V付近の出力電圧に与える影響を誇張して描くと下のようになります。オフセット+はオフセット電圧がプラス電圧となった場合で、オフセット-はマイナス電圧となった場合を表します。


本来は入力に対する出力は赤線のようになるべきですが、実際はその上下のどちらかの線のようになることが多いのです。オフセット電圧があると入力が0Vであっても出力が0Vにならないことがわかります。(図は入力電圧がプラス方向に増加した場合を表しています)オフセット電圧は直流電圧として出力されるために、ACアンプのようにコンデンサーで出力の直流成分をカットすれば問題にならないので交流アンプでは一般的に考慮されません。

オペアンプによってはオフセット電圧をキャンセルするための調整用端子を持つものがあります。第1回目でオペアンプのパッケージの話をしましたが、このような端子を持つオペアンプは8pin形状でも1個入りとなります。図はそのようなオペアンプの一つであるNJU7031の例です。


ピン1と5の間に10kΩの半固定抵抗を接続し、半固定抵抗のセンター端子をアース(マイナス電源側)に接続しています。この半固定抵抗を調整してオフセット電圧が最小になるようにします。なお、この回路では単電源で使用しているために負荷(出力端子に接続する回路)によってはオフセット調整をしても入力電圧が0Vの時には出力電圧が0Vにならないことがあります。理由は後ほど触れます。

ただ残念ながらこのような端子を持つオペアンプは種類が少ないので通常のオペアンプに回路を付加して調整をする方法もあります。下の回路がその一例です。


先にも触れましたがオフセット電圧は意図しない入力電圧と同じなので、これらの回路はそれを打ち消す方向の電圧を入力に加えるようになっています。ここでRxはRcやRsに比べて十分に大きく(100倍程度と言われる)とって、元々の回路へ影響を与えないようにすると共に、調整用の半固定抵抗の温度や経時変化による影響を少なくします。

⑧入力バイアス電流/オフセット電流
入力バイアス電流の存在も回路設計によってはオフセット電圧を発生させる要因となります。これは特に入力回路がトランジスタのバイポーラタイプオペアンプで問題となります。なお、オフセット電流はプラス入力端子とマイナス入力端子の入力バイアス電流の差を意味します。

バイポーラトランジスタの場合、ベース・エミッタ間に電流が流れることで動作するので微少ではありますが必ずベース電流(バイアス電流)が流れます。


トランジスタ入力オペアンプのほとんどは入力段がPNPトランジスタなのでPNPトランジスタの例で示しています。PNPトランジスタではベース電流はベースからグランドに向かって流れます。図のIb+はプラス入力端子のベース電流、Ib-はマイナス入力端子のベース電流を表しており、これらを入力バイアス電流と呼びます。

また、オペアンプのプラス入力端子とマイナス入力端子は基本的に全く同じとなるように設計されていますが素子のバラツキなどで僅かな差が出ます。それがオフセット電圧と同様にオフセット電流という両入力端子のバイアス電流の差となります。

この入力バイアス電流と各入力端子に接続された抵抗によって電位差Vb+およびVb-が生じます。この抵抗とはプラス入力端子ではRcが、マイナス入力端子ではRs//Rf(RsとRfを並列接続した値という意味)がそれに相当します。

このVb+とVb-が異なるとその差がオフセット電圧と同じような存在になります。両電位差に差が出る要因にはオフセット電流がありますが、もう一つは両入力端子に接続された抵抗値が異なると同じバイアス電流でも電圧差が生じます。しかし抵抗値が低ければバイアス電流による電位差も小さいために影響が少なくなります。同様に同じ抵抗値であってもバイアス電流が小さいほど影響が少なくなります。

注) ここでは、電圧差と電位差の両方の言葉が出てきます。電流の流れによって抵抗の両端に生じる電圧を電位差、二つの異なる場所の電圧の違いを電圧差として書いています。

FET入力やCMOSタイプのオペアンプではバイアス電流がほとんどない(pAレベル)ために通常はバイアス電流やオフセット電流は無視できます。その意味ではトランジスタ入力のバイポーラタイプのオペアンプは不利ですが、逆にオフセット電圧は一般的にバイポーラタイプのオペアンプの方が少ない傾向にあります。

データシートの値ではバイポーラタイプであるLM358Bでオフセット電圧は最大3mVでNJM4560が6mVに対して、CMOS型のNJU7031などは10mVとなっています。(これらの値は測定条件の違いもあるので一概に単純比較はできない場合もあります)またバイアス電流はLM358Bが最大35nA、NJM4560が500nAに対してCMOSのNJU7031系は1pA(最大値の記載はないので標準値)となっています。

注) LM358にはオリジナル(LM358)以外に後ろにAやBが付くバージョン(LM358A,LM358B)があり、オフセット電圧などのスペックが若干異なります。何も付かないLM358に比べてA、Bになると特性が良くなっています。ここではTi社のデータシートより、最も特性が良いBバージョンの値を引用しています。

LM358Bの例で少し計算をしてみます。LM358Bのバイアス電流を最大の35nAの場合を仮定します。Rs=1kΩ、Rf=10kΩとすると非反転アンプでのゲインは11倍です。マイナス入力端子に流れるバイアス電流Ib-はRsとRfの両方に流れるので、バイアス電流と抵抗の電位差Vb-を求めるにはRs//Rf(RsとRfを並列接続した抵抗値)を求めます。ここでは0.9kΩとなります。バイアス電流によるこの抵抗による電位差は0.9kΩ×35nA=31.5uVとなります。

次にプラス入力端子はRcにバイアス電流が流れます。Rc=1kΩとすると、Rcによる電位差は1kΩ×35nA=35uVとなります。

プラス入力端子とマイナス入力端子の間には35uV-31.5uV=3.5uVの電圧差が生じることになり、これがオフセット電圧として作用します。ゲインが11倍なので、これによる出力電圧は38.5uVと極小です。しかし、Rcだけを100倍の100kΩとするとVb+=3.5mVとなります。マイナス入力端子側のRs、Rfの値が先ほどと同じままであれば両入力端子の電圧差は約3.47mVとなります。この値はLM358のオフセット電圧の最大値の3mVより大きな値となってしまいます。また、この電圧は11倍されて(約38mVになる)出力に現れます。この例ではゲインが11倍程度でまだ影響は少ないですが、100倍(40dB)もゲインを取るとかなり大きな電圧が出力に現れます。

オフセット電圧とバイアス電流から生じるオフセットはお互いに打ち消す場合もあれば加算される場合もあり、どうなるかは個々のオペアンプによって変わります。最悪は両方のオフセット電圧が加算され、設定したゲイン倍されて出力に現れます。

以上から、バイアス電流の影響を考えた場合はオペアンプの入力端子に接続する抵抗値を大きくしすぎない、またできるだけRCとRs//Rfの抵抗値をそろえると良いことがわかります。なお、バイアス電流によるオフセットは抵抗値の大小が要因ですからあらかじめプラス側になるのかマイナス側になるのかは予測が付きます。

LM358(B)の例を示しましたが、NJM4560はLM358Bよりもオフセット電圧もバイアス電流も大きいために更に不利な状況となることは容易に理解頂けると思います。こうやって比べると同じバイポーラ型のオペアンプでも交流アンプとしての性能が上であったNJM4560は直流増幅に関してはLM358Bに比べて見劣りすることがわかります。

以上からオフセット電圧が問題となる直流増幅器を考える場合、以下の注意が必要となります。
・なるべくオフセット電圧が小さいオペアンプを選ぶ。
・なるべく入力バイアス電流の小さいオペアンプを選ぶ。
・トランジスタ入力のオペアンプでは入力端子の抵抗を極端に大きな値にしない。
・できる限りプラス入力端子の抵抗値(Rc)とマイナス入力端子の合成抵抗値(Rs//Rf)の値を同じにする。

もっとも、このようなシビアな設計が必要になるのは数mVという微少電圧も正確に増幅を行う必要がある場合で、入力電圧が数百mV以上を前提とするのであればmVオーダーのオフセット電圧の影響は多くの場合は無視できます。メーターなど、無入力時にゼロ点のズレが見える場合は気になりますが、ADコンバータで読み込む場合はオフセット電圧の部分をプログラム上で処理するのは簡単にできます。

⑨出力残り電圧
最初にお断りしないといけませんが、出力残り電圧という言葉はここで勝手に名付けた言葉でオペアンプのデータシートにはそのような項目の記載はありません。従って一般に通じる言葉ではないことをご了承願います。

下の表はLM358Bのデータシートから引用しています。


データシートのOUTPUTの項目の一つに“Voltage output swing from rail”という項目があります。railとは電源電圧のことで、出力電流によってスペックが変わりますが出力のプラス電圧側はプラス電源電圧より1.35Vから1.61V程度低いところまでしか出ないとなっています。また出力のマイナス側はマイナス電源電圧から100mVから1V以上の電圧までしか下がらないとなっています。

これをみると、LM358を3V単電源で使用した場合の出力電圧の最大値は1.6V程度で頭打ちになります。対して出力が0Vになるような条件でも0.1V程度は電圧が出てしまいます。この電圧(特にマイナス電源電圧側)をここでは残り電圧と呼ぶことにしています

この残り電圧はRail to Railのオペアンプであっても僅かですが存在します。例えばRail to Rail特性を持つCMOSオペアンプのNJU7031の場合、データシートに“最大出力電圧振幅”という項目があり、最小9.8V、標準9.98Voutと書かれています。この特性値の条件は電源電圧が10V(単電源)の時なので、出力は20mVから200mV程度は電源電圧より少ないことになります。LM358のデータシートのようにプラス電源側とマイナス電源側でそれぞれ書かれていないので、出力電圧が電源電圧より少ないのか、0V出力付近に少し電圧が出てしまうのかはここからは分かりませんがCMOS型の場合は概ね両方が同じ程度になります。

先のRFレベル計の場合、オペアンプを単電源で使用するとこの影響でメーターがゼロ点からプラス方向へ僅かに触れる恐れや、0V付近で僅かに直線性が崩れている可能性が考えられます。もっとも、残り電圧による影響はオフセット電圧と異なり、ゲイン設定には関係が無く、0V付近では必ずプラス方向に出ます。

出力電圧を0Vから使用する場合に単電源で回路を組むと0Vであるべき時に僅かですが0V以上の電圧が出てしまう時にはこの影響も考えられます。下の図は0V付近を誇張して描いていますが、点線マル部分がその影響を表しています。


実際はRFレベル計のように出力端子を抵抗でグランドに接続するような場合、電流は流れ出る方向だけなので残り電圧はデータシートよりも少なく、オペアンプによってはほとんど出ない場合もあります。これは実際に回路を組んでみないと分かりません。

しかし0Vから微少な電圧も正確に出力したい場合はRail to Railのオペアンプであっても±両電源とし、オフセット電圧のキャンセルも行うように設計をするべきです。もっともこのような場合、マイナス電源は1V以下で良く最小は残り電圧の影響を受けない程度の電圧があれば残り電圧の問題は回避できます。

ここまでRFレベル計を例にして、しきりに入力がない時にもメーターが振ると脅してきました。先にも述べましたがオフセットや残り電圧による出力は数mV~数十mVという小さなレベルのために、特にアンプのゲインを10倍程度に抑えている場合は気にしなくてよい場合が多いと思います。(オペアンプの選択には配慮すべきですが)メーターの場合、乱暴な話ですが僅かなゼロ点ズレはメーターのゼロ調整を少し回してごまかすのもありかも知れません。

以上が直流増幅を行う場合に注意すべき内容になります。今回はオフセット電流について触れませんでしたが多くの場合はオフセット電流よりもオフセット電圧や両入力端子に接続する抵抗値の選定の影響の方が大きいので割愛しました。また今まで説明してきた内容が分かっていればオフセット電流の影響も理解して頂けると思います。

また、先ほどCMOSタイプのNJU7031を引き合いに出しました。流石CMOSタイプのオペアンプでバイポーラ型に比べるとほぼ電源電圧まで出力してくれますが、データシートを良くみると出力電流は1mA程度までしか出ません。メーターが数十~数百uAの感度であれば良いのですが1mAのメーターを振らせるには力不足です。CMOSタイプのオペアンプでももっと多くの電流を流せるものがありますので出力電流の最大値も確認すべき一つと思います。

さて、オペアンプの3回目はここまでです。何かオペアンプのデータシートの解説ばかりのように思われるかも知れませんが、オペアンプに限らず部品のデータシートにはその部品を使用する上で重要な情報が満載されています。面倒なようでも部品を使う前にその部品のデータシートに目を通されることをお勧めします。そうすると、色々なところで紹介されている電子回路の製作記事などへの理解も深まると思います。(中にはこの回路でこの部品は大丈夫か?? となるような記事に出会うかも知れませんが)

次回はオペアンプの単体に関する内容ではなく、実際に回路を組む場合の注意点に触れていく予定です。解りやすさを心掛けて書いているつもりですが、私の技量の問題で読み辛いところが多々あったかも知れません。ところどころでも拾い読みして頂いて少しでも電子回路工作や回路設計の参考になる部分があれば幸いです。

それでは 73&88

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