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ものづくりやろう!

第十回 人工グランドを試してみる

JH3RGD 葭谷安正

はじめに

前回の記事(3.5MHzホイップアンテナの製作)で3.5MHzの垂直アンテナを作成したことを報告させていただきました。このアンテナをひと月ほど使っていますが(ワッチがほとんどでしたが)、使うときだけアンテナを立てる、使い終わったらひっこめる、を繰り返しおこなっています。しかし、いつも立てるときに、カウンターポイズが気になって仕方がありません。なにせ、20mほどのものが3本も、“えいやー”とばかりに乱雑にベランダに投げましたので、ぐちゃぐちゃ状態です(とても恥ずかしくて写真をお見せすることができません)。3本が絡み合って、ほどくのも大変。皆さんどうしておられるのかお聞きしたいところですが、ベランダを毎日見るたびに、見た目の悪さに辟易(へきえき)し、短くしたいな、何とかしたいと思っていました(このままではアンテナのSWRが下がっても、これを見たXYLのSWRは上がるどころかヒートアップすること間違いありません)。

以前カウンターポイズについて調べていた時、「人工RFグランド」や「人工RFグランドアース」(以下、この記事では「人工グランド」と記載します)という製品に出会いました。また、もう少し調べると、過去のCQ誌上や個人のブログなどで人工グランド自作記事が見受けられました。いままで人工グランドを使ったことがありませんので、人工グランドを使うことで短いカウンターポイズで本当にマッチングがとれるのか、アンテナの性能は維持できるのかなど関心があったのですが、今回ようやくその効果を試してみることにしました。

製品の回路図を見ると、人工グランドの材料はコンデンサとコイルの直列回路、あとは高周波電流のピックアップ回路(トランス、検波用ダイオード、コンデンサ、可変抵抗、ラジケータ)ですので、ピックアップ部以外は手持ちの部品がそろっていました。ビップアップ回路は実装しませんでした。

実験の目標は、「人工グランドを使うことで、アンテナの性能を最大限に引き出すことができ、カウンターポイズを短くできるのであれば、できるだけ短くしてベランダの見栄えを改善したい。」ということを狙って、人工グランドの効果確認のための実験装置を作り、効果を確認することにしました。

さて、我が家のカウンターポイズですが、狭いベランダにカウンターポイズをぐじゃぐじゃと這わせています。今使っているアンテナの中でカウンターポイズが必要な垂直系のアンテナは3つです。

1本は、再開局時に購入した7MHzから28MHzをカバーするマルチバンドホイップアンテナです。十分な長さのカウンターポイズが張れませんので、7mほどの導線を這わせて、あとはアンテナチューナーでごまかしています。

2本目は自作の14MHzのホイップですが、カウンターポーズの長さは5m程度ですので見栄えが悪くならない程度にベランダに這わせることができました。

3本目の古い3.5MHzアンテナは、今ある3.5MHzの前に作成したものです。マルチバンドホイップアンテナで使用していた7mほどの導線をカウンターポイズとして使用するとともに、やはりアンテナチューナーでごまかしていました。このアンテナのSWR値はというと、1.2くらいまで落ちました。しかし、アンテナのカウンターポイズの同調点がずれていることやカウンターポイズの長さが短いことはわかっていましたし、同軸ケーブルの長さも2分の1波長より短い20mほどしかありませんでした。ですからいくらアンテナチューナーでSWRが1近くに調整できても、無線機への反射がすくなくなるだけで、アンテナ自体の調整がうまくいっているわけではありませんでした。この古い3.5MHzのアンテナでは、受信レポートを599で返せるほど明瞭に受信できる国内局に対して応答しても「QRZ?」と返信があったり、まったく返信が無いことが多くあり、共振周波数やカウンターポイズ、ケーブル長をちゃんとしないとだめだなと感じていました。そのため今ある3.5MHzのアンテナではカウンターポイズの長さをほぼ理論値の長さをとり、あとはオートチューナーで同調できる程度の調整を行いましたが、ベランダに散らかる線は見栄えが悪いです(私の責任かもしれませんが・・・)。そこで、「見栄えが良くて、性能そのまま」を狙い、人工グランドの実験をすることにしました。

人工グランドとして市販されている製品としては、今はM社製とC社製の物しか広告で見受けません。マニュアルで調べてみましたが、どちらの製品も大きな機能としては、「カウンターポイズが必要なアンテナに対し、高周波アースの長さが短くても運用周波数に同調させることができる。」と記載されています。短いカウンターポイズをLCの直列回路で同調をとって長く見せようということです。

人工グランド実験装置

実験装置というほどのものではありませんが、コイルとコンデンサの直列回路を作成しました。

人工グランドの回路図は、コンデンサとコイルの直列回路です。図4の人工グランド接続図の赤枠で囲んだ中の回路です。部品はすべて持ち合わせの物をつかいました。コンデンサは3連可変コンデンサです。どのくらいの容量が必要なのかがわからないため1連で400pFのものを使いました。コイルは以前作成したものをジャンク箱から取り出してきて、プラスチック板上に固定しました(図1 コイル)。

コイルに巻いている銅線は、エナメル被覆の無いもので表面に接触させることで導通します。コイルの切替は、圧着端子を加工して洗濯はさみに瞬間接着剤で固定し、この洗濯はさみをコイルのクリップ位置を変えることでインダクタンスを変化させました(図2 コイル切替用クリップ)。このコイルのインダクタンス値は最大16μH程度でした。


図1 コイル


クリップ接続部


クリップ接続部(拡大図)

図2 コイル切替用クリップ

コイルとコンデンサを使って組み立てたのが図3です。


図3 人工グランド実験装置

実験

人工グランドの接続と計測結果の傾向
人工グランドの市販製品のマニュアルによると、「人工グランドの接続位置は、①アンテナチューナーのグランドに人工グランドの一つの端子を接続し、②もう一つの端子をカウンターポイズに接続する。」ようにと記載されていました。

この実験装置でも同様に次のように接続してみました。
・アンテナ給電点のグランド端子側には2mほどの導線を接続しました。
・アンテナからアンテナチューナー経由で無線機に同軸ケーブルを接続しました(アンテナチューナーを接続していますが、アンテナチューナーはOFF状態にしておきました)。
・人工グランド端子の一つの端子はアンテナチューナーのグランド端子に接続し、もう一端には5mのカウンターポイズを接続しました。

上記のように配線した状態で信号を加えてコンデンサとコイルを変化させますが、市販製品の場合、高周波電流を計測してその値が最大になるように調整するようですが、この実験装置では高周波電流を計測する回路を構成していません。そのため、高周波電流の最大値を計測する代わりに、無線機のオートチューナーをOFFにした状態でSWR値が最小になるようにコンデンサとコイルを変化させました。計測対象としたアンテナ(FB NEWS 2月号記事参照)の共振周波数は3.5MHz未満の値で、カウンターポイズも最良点ではなく、さらに同軸ケーブル長も2分の1波長以下の10mしかありません。これだけ整合の条件を逸脱していればアンテナがマッチング状態にあるかをSWR値で云々することはできませんが傾向はつかめると思います。

無線機とアンテナを接続し、そのアンテナに人工グランドを上記の条件で接続し、無線機を周波数3.51MHz、出力10WのCWモードで送信状態にし、人工グランドのコンデンサを調整しました。送信機上のSWR計を見ながら人工グランドのコンデンサを調整し、またコイルも調整しましたが、SWR値が高いまま変化せず、人工グランドの効果を実感できませんでした。

そこでアンテナチューナーのグランド端子に接続していた人工グランドの端子を外し、アンテナ給電点のグランド端子側から出ている2mほどの導線の先端に3mの導線を接続し、この線を人工グランド端子に接続し、もう一つの端子に5mのグランド線を接続しました(図4)。


図4 人工グランド接続図

人工グランドを無視すればカウンターポイズとして10mの導線がつながっている状態です。ここに3.51MHz、出力10WのCWモードで送信して人工グランドのコンデンサを調整しました。その結果、人工グランドを接続する前のSWR値が3以上であったのがコンデンサの調整によってSWR値が1.7程度まで低下しました。

またコイルの変化に対するSWRの変化については、コイルの接続位置を変えてみましたがSWR値が大きい時でも小さい時でもSWR値の変化はわずかに変化する程度(変化値0.1未満)でした。私のアンテナの接続条件ではコイルの効果がほぼみられませんでした。

グランド環境を変えたときの計測結果

2月号の記事では3.5MHzのホイップアンテナに21mのカウンターポイズを3本つなぎ、その時のSWR値を計測しました。送信周波数3.517MHzの時のSWR値は2.2程度の値でしたがカウンターポイズの長さ調整をまだ完了していませんでした。

カウンターポイズの状態によってコンデンサやコイルの変化量がどのように変わるのかを確認することにしました。カウンターポイズとして、「ベランダ手すり」、「5mのアース線」、「鉄製の網」を接続してSWR値を測定しました。測定条件を明記するとアンテナのグランド側から順番に次のように接続しています。
(1) アンテナ(グランド側) ― 5mの導線 ― 人工グランド ― ベランダ手すり
(2) アンテナ(グランド側) ― 5mの導線 ― 人工グランド ― 5mのアース線
(3) アンテナ(グランド側) ― 5mの導線 ― 人工グランド ― 鉄製の網

鉄製の網は友人からいただいたものです。


図5 鉄製の網

カウンターポイズが異なる場合の測定結果を図6に示します。いずれも周波数3.51MHz、出力10W、CWで送信し、SWR値が最低になるようにコンデンサを調整しました。いずれの場合もコイルの位置を変えてもSWR値はほとんど変化しませんでした。


(a)「ベランダ手すり」の場合


(b)「5mのアース線」の場合



(c)「鉄製の網」の場合
図6 異なるカウンターポイズに対するSWR値測定結果

それぞれのSWR値は3.51MHzでほぼ同じでした(いずれのときにも風が吹いており、変動していました)。SWR値最小値でのコンデンサの容量は次のような値でした。
(a) 「ベランダ手すり」の場合 ・・・ 27pF
(b) 「5mのアース線」の場合 ・・・ 180pF
(c) 「鉄製の網」の場合 ・・・ 32pF

結果を見ると、(b)の「5mのアース線」は、本来必要な20mほどのカウンターポイズに比較して1/4の長さであり、明らかに高周波グランド間静電容量が足りていないようです。

また、ベランダの柵は、アルミ製で高さは90cm、全長を測ったところ10mほどありましたがSWR値最小になるコンデンサ容量が27pFでした。一方、鉄製の網は幅70cm、全長2mですがベランダより少しですが少ない32pFの容量で最小値となっています。我が家の状態だけで簡単に言える事ではありませんが、カウンターポイズを使う場合、3mくらいの鉄製の網がベランダ柵と同じくらいの性能を持つのかもしれません。

さらに言えば、短い導線をカウンターポイズとして接続し、それを人工グランドで調整してSWR値が下がったからと言って、正規の長さのカウンターポイズの接続した時に持っているアンテナの性能が人工グランドで保持されているのかどうかはわたしにはまだわかりません。今後いろいろ試してみたいと思います。

最後に、今回むき出しの状態で回路をつくり、そのままで実験をおこないましたが、アンテナ給電部が目の前ですぐ手に触れる状態にありました。無線機の画面を見ながらコンデンサを調整していて、送信中に危うくコンデンサに手を触れそうになりました。危険です。アンテナ等高周波出力にかかわる調整の時にはくれぐれも感電等が無いよう安全に。またTVI、BCIを起こさないようご注意ください。

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