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ジャンク堂

第9回 オペアンプ入門(9)
実践編: Bird43のピークパワー計(もどき)化計画 その3

JH3NRV 松尾信一


さて、前回でBird43をピークパワー計にする回路ができました。今回は私のBird43にそれを実装した例を紹介したいと思います。はんだ付けが下手なので、基板をお見せするのは恥ずかしいのですが、、、。


基板

今回は片面のユニバーサル基板(通称ジャノメ基板)に回路を組みました。基板は取り付けの都合でカットが必要な部分があったので、Bird43の内部レイアウトを見ながら現物合わせでカットしました。

また、私ははんだ面(配線面)を上にして部品面と同じにしましたが、これは失敗でした。配線の際に部品が邪魔ではんだ付けがやりにくかったです。普通に部品の面の反対側で配線をするべきでした。また、メーター端子との接点に銅テープを貼り付けたのですが、見た目が良くありません。玉子型ラグなどを使うべきでした。

なお、オペアンプはICソケットを使用して取り付けています。色々なオペアンプに差し替えるのではなく、万一オペアンプを壊したときの交換を考えてのことです。ICソケットは足を外側に曲げて基板のランドにはんだ付けしています。


スイッチとLEDの取り付け

Bird43のケースに穴開けなどの加工をしないようにするため、スイッチとLEDは本体サイドの予備エレメント収納の部分から出るようにしました。今回の構造は何かあればBird43を簡単に元の状態に戻す事ができるようにしています。

スイッチとLEDをアルミLアングルに取り付けて、Lアングルをさらに基板に取り付けています。写真のように基板とLアングルを一体化して、この状態でBird43のメーター端子に固定します。基板の2箇所の穴がメーターの端子を通す穴です。


基板をメーターの端子で固定しているだけですが、思ったよりしっかりと固定されており、スイッチの操作のときにもグラグラするような感じはありません。アルミLアングルは30mm等辺のものがBird43の予備エレメントの収納穴に丁度良いサイズでした。

LEDは瞬間接着剤で直接アルミLアングルへ取り付けたのですが、これは失敗でした。Bird43を正面から見るとLEDが見えません。冒頭の写真をご覧頂くとわかりますが、LEDが奥まってしまっています。LEDの根元に筒などを取り付けて浮かせるべきでした。

電池の取り付け

電池ボックスは当初、ケース内部の一番下に配置するつもりでした。内部の写真の緑色の養生テープはそのために貼ったのですが、良く考えると電池交換が面倒です(良く考えなくてもわかることですが、、、)。そこで、裏蓋とケースの隙間から電池ボックスへの配線を引き出して、電池ボックスを裏蓋に両面テープで貼り付けました。この取り付け方法だと裏蓋と電池ボックスが一体となるので、電池ボックスからの線を長くしないと裏蓋を外せません。そのうちに3pinのコネクタ(ソケット)を入手して電池ボックス(裏蓋)と基板が外れるようにするつもりです。

また、今回は電池ボックスに2本直列用のものを使った(手持ちの都合です)ため、電池2本のセンターからグランドに接続する線を引き出す必要があります。電池ボックスは熱に弱そうなので端子に直接はんだ付けをせずに、外径がφ12mmの丸形圧着端子のカシメ部分をカットして電池ボックスのマイナス端子スプリングに挟み込みました。下の写真がその様子で、緑色の線が引き出したグランドの線です。右が使用した丸形圧着端子です。


この方法ではグランドラインは電池ボックスのスプリング端子と接触しているだけなので少々不安です。できれば1本用の電池ボックスを2個直列にしてグランドラインも電池ボックスの端子にはんだ付けをした方が良いと思います。

基板レイアウトと基板寸法

下の写真が大まかな基板上のレイアウトです。なお、一番上部の半固定抵抗には説明を付けていませんが、スルー時のレベル調整用で私のBird43のメーター振れすぎ対策です。検波器(エレメント)からの出力(同軸芯線)は基板に4mmのビスを取り付けて端子としています。


下図に基板の寸法とスイッチを取り付けるアルミLアングルの寸法を参考までに紹介します。ただ、これらの寸法は作った後に測ったため、誤差や寸法の測り間違いがあるかも知れません。参考にされる方は一度厚紙などを寸法に沿ってカットしたものでBird43との位置や寸法の確認をされるようにお願いします。


寸法図の赤線が1辺30mmのアルミLアングルを長さ35mmにカットしたものです。基板をメーターの端子に固定するために、位置合わせでアルミLアングルを少し浮かせて取り付ける必要があります。幸い手持ちのスペーサーで高さ4mmのものを付けると丁度良かったので、この寸法になっています。また基板にはスイッチのための切り欠きが必要となります。下の図では具体的な取り付けがわかりにくいと思いますが、先の写真なども参考にしてください。

なお、調整と消費電流については前回で記載していますのでそちらをご覧下さい。

使用感など

組み立てについては記事中にも書きましたが、幾つか反省点があります。しかし、でき上がったものを使っていると、作って良かったと実感しています。メーターの振れは機敏ではないですが、それなりに気持ちよく振ってくれて十分に出力パワーのモニターに使えます。パワー計としての精度は当局の標準パワー計に合わせた部分は一致しますが、やはり途中の目盛は少しズレがあります。これは、元々の特性なので仕方ないでしょう。なによりBird4410に比べて電池が長持ちする事が助かります。またLEDが見にくいためかやはり電源の切り忘れをしてしまいますが、電池の持ちが良いので気になりません。

私は1900mAのニッケル水素電池を使用していますが、電池電圧の変化によるオフセット調整位置の変化も特に気になりません。

これで私のBird43も無事にジャンクから現用品へ格上げとなりました。ちなみに、最近のHF用Rigは50MHzまで送信できます。100Hのエレメントは30MHzまでですが、私のものは50MHzで10%ほど指示値が下がります。測定器としては誤差が大きすぎますが、出力のモニターとして私的には使える範囲なので日常のオンエア時には50MHzでも使用しています。

ボルテージフォロアの出力レベル調整回路の変更とメーターの駆動について

当初、出力レベル調整の配線を下図のようにしていました。この回路だと半固定抵抗で確実に“0”まで絞れるので、ボルテージフォロアの出力の抵抗の値はラフであっても調整ができます。


この回路でも当初は違和感無く使っていました。ところがCWの長点を一発だけ叩いたときに気が付いたのですが、最初の立ち上がりだけはスルーのときの方がメーターの応答が良いのです(良く振れます)。元々、Bird43のメーターはアタックの振れが遅いのですが、最初の立ち上がりがピーク検出回路を入れると、さらに遅くなったようです。理由はすぐに思い当たったので、まずは検波器(エレメント)の出力波形をオシロスコープで確認しました。

下はスルーの状態の検波器の出力波形です。検波器の出力は直接メーターに接続されています。


出力レベルは、メーターが安定すると約50mVになります(オシロスコープの縦軸1目盛程度)。しかし、アタックの時は150mV近くの電圧が出ています。この振れ始めに電圧が高いことがメーターのアタックを速めています。

アタック時の電圧上昇はメーターが電気回路的にはコイルであることから起こります。また、この電圧上昇はメーターを駆動する電圧源(ここでは検波器)の出力インピーダンスが高い方が上昇します。

下は検波器の出力をピーク検波回路に切り替えたときの波形です。


ピーク検波回路はメーターと違って検波器からみると抵抗負荷となるため、立ち上がりから電圧は安定しています。

次に、ピーク検出回路の出力の電圧を確認しました。下の図は出力レベル調整用の半固定抵抗の片側をアースに接続したときのものです。青線はオペアンプの出力電圧(回路のA点)で、黄色線はメーターの電圧(回路のB点)です。青線は100mV/divで黄色線は50mV/divでスケールは異なります。


この時の抵抗値は半固定抵抗が5kΩで、直列の抵抗が8.2kΩでした。B点の波形は立ち上がりで僅かに電圧が高くなっていますが、波形の形としてはオペアンプの出力(A点)に近くなっています。これは、半固定抵抗の位置などから、メーターへの駆動インピーダンスが低くなっているためです。

次は、半固定抵抗のグランドに接続する配線を外し、直列の抵抗8.2kΩに1.8kΩを追加して10kΩとしました。この回路では半固定抵抗による調整範囲が狭くなるので定数を正しく設定する必要があります。


同じく、青線がA点の電圧で、黄線がB点の波形です。メーターからみた駆動インピーダンスが高くなったので、B点の波形はスルー(メーターが負荷)のときに近くなりました。これで、アタック時のメーターの振れもスルーの時とほぼ同じになりました。

ちなみに、Bird43のメーターを定電圧駆動(低いインピーダンスで駆動)すると、メーターが0からフルスケールになるまでのアタックの時間は2秒以上掛かります。メーターはコイルに流れる電流で生じた磁界によって振れるもので、コイルは定電圧駆動では電圧の立ち上がりの瞬間は電流が流れにくくアタックが遅くなります。

Bird43のメーターのようにアタックの振れが鈍いメーターの場合はメーターと直列に入れる抵抗を大きめにし、駆動電圧を高くして、定電流駆動に近くするとアタックの鈍さが改善されます。なお、メーターはどのようなものでも定電流駆動しなければならないと言っているのではありません。今回の特性のようなメーターを使う時のノウハウ(?) として理解して頂ければと思います。

応用について

今回はBird43用に作成しましたが、ほかのパワー計/SWR計にも応用可能です。普通のSWR計などではメーター感度がBird43のように30μAというような高感度ではなく、100μAから200μA程度だと思います。手元のV/UHF用のSWR計(ダイヤモンドのSX400)のメーターを確認してみたところ、フルスケールが200μAで内部抵抗値は約750オームでした。そこから計算するとメーターフルスケール時の電圧はおおむね150mVになります。

このダイヤモンドのSWR計はピーク指示ができるようになっているので、わざわざオペアンプでピーク検出回路を付ける必要はないと思いますが、このメーターを使った場合を例にしてアレンジしてみます。

なお、元になるBird43用の回路図は以下の通りです。


①ピーク検出回路のゲインを下げる。
今回の回路は設計段階で述べたように、単三電池2本仕様のためにピーク検出回路のオペアンプの出力端子が最大で1V程度になるようにゲインを設定します。前回説明しましたが、このピーク検出回路のゲインはピーク検出回路のダイオードの出力(カソード)側の電圧のゲインなので、ピーク検出回路のオペアンプの出力は“入力電圧×ゲイン+ダイオードの接合電圧”になります。

Bird43では入力レベルが40mV程度でピークホールド回路のゲインを11倍としましたが、入力レベルを150mVとした場合はピークホールド回路のゲインを3倍程度に設定します。この場合、ディケイタイムを決めるRfに相当するR8(680kΩ)は値を変えずにRsに相当するR5を68kΩから330kΩに変更します。これでゲインは約3倍になります。

②入力レベル調整用抵抗の変更
メーターの内部抵抗値がBird43の約1.4kΩから750Ωとなるので、R3を1.2kΩから470Ωに変更して、調整範囲を470~1.47kΩとします。なお、200μA程度のメーター感度であれば、デジタルテスターなどの抵抗レンジでメーターの抵抗値を計ってもメーターが振り切れてダメージを与えることはないと思います。もしメーターの抵抗値がある程度の精度で測定できれば、入力レベル調整用の抵抗(今回の回路のR3+RV2)をメーターの抵抗値と同じ値の固定抵抗にすることで、この部分の調整が省けます。

③出力レベル調整の変更
今回の設計ではボルテージフォロアの最大出力電圧は500mV前後となります。入力レベルが変わっても、①で述べた内容でゲイン設定をするとこの程度の電圧になります。

そうすると、最大出力電圧の時にメーター感度の電流を流す抵抗値が求まります。例えば、メーター感度が200μAでボルテージフォロアの出力を500mVとすると、抵抗値は2.5kΩになります。その抵抗値の中にメーターの抵抗値(750Ω)が含まれるので、メーターと直列の抵抗値は1.75kΩとなります。従って調整範囲を考えて半固定抵抗を1kΩ、直列抵抗は1.2kΩ程度にすれば良いと思います。この場合、メーターの駆動インピーダンスが低いために立ち上がりが鈍くなるかも知れませんが、一般的な200μA程度のメーターであればメーター自身の立ち上がりはBirdほど遅くないと思います。

以上の例からわかるように、メーターの感度と抵抗値をもとに基本回路図の下記の3箇所の定数を見直すことで、他のSWR/パワー計へのアレンジが可能となります。


さて、3回にわたって実践編と称してしてピークパワー計の実例を紹介致しました。皆様に少しでも参考になれば幸いです。

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