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ものづくりやろう!

第九回 3.5MHzホイップアンテナの製作

JH3RGD 葭谷安正

はじめに

今の時期、HF帯は夜になるとノイズが押し寄せてきて、信号はほとんど聞こえない状態が続きます。あとひと月もすればこのような状態から脱却できるかもしれません。冬の夜中の3.5MHz帯は、私の自作アンテナではノイズが多いですが、7MHz帯に比べると良く聞こえています。4年ほど前に冬の夜長にも無線で遊べるようにとアンテナを製作しましたが、昨年末にアンテナを倒したはずみでローディングコイル部分が破損したので使えなくなってしまいました。3.5MHz帯のアンテナは3.3メートルの物干し竿と5.2メートルのグラスファイバー製釣り竿をU字ボルトで連結し、物干し竿でベランダへの固定と高さを稼ぎ、グラスファイバー製釣り竿がベースローディングのホイップアンテナとして機能するようにつくりました。その当時私はLCRメーター以外計測器に相当するものをほとんどもっていませんでした。このため、共振周波数を確認する術もなく、かろうじてSWRをIC-7300のSWR計測機能と自分の感を頼りに製作しました。このため共振周波数がずれていたと思うのですが、他局がなかなか私の信号を拾ってくれませんでした。

今年に入り少し時間ができたので3.5MHzホイップアンテナの改良版を製作することにしました。厳密にいうと改修になるのかもしれませんが。改良点としては、①給電点が我が家の屋根を超えるように4メートルの物干し竿に変更し、②アンテナ性能アップ(?)のためセンターローディングのホイップアンテナに変更する、という2点です。この4年の間に安価なアンテナアナライザNanoVNAも入手しましたので共振周波数も確認できるようになりました。ですから前のアンテナより性能アップは確実にできそうです。

アンテナ設計

製作するアンテナの設置イメージを示します。


図1 アンテナ設置位置

図のように、給電点の地上高は高いのですが、アンテナのすぐ横が屋根になっており、給電点はかろうじて屋根のてっぺんを超える程度です。ですから給電点を地上高0メートルとしてアンテナを設計しました。

アンテナの設計はアンテナ解析ソフト、MMANAを使用して設計しました(MMANA作者のJE3HHT森さんに、このソフトを製作していただいて感謝、感謝です)。設計と言っても既にネット等で公表されているアンテナデータを入手して、私の運営形態に合致するように長さや給電点の位置を変更しただけです。MMANA細部の説明は省略しますが、今回私が行ったMMANAによるアンテナ設計の手順を記載しておきます。

アンテナの設定手順
手順1. アンテナの定義を行う。
手順2. コイル定数やエレメント長を最適化により求める。

MMANA上での「アンテナ定義」、「アンテナ形状」など、解析の結果を図に示しました。


図2 アンテナ定義


図3 アンテナ形状


図4 アンテナ計算

ローディングコイルの巻数等のデータもMMANAのオプションから計算しました。

コイルは500mlサイズのペットボトルに巻いて製作するので、ペットボトルの直径(6.5cm)を入力しました。また、コイルの線材は手持ちのAWG24規格線が100メートルほどありましたので、それをコイルの線材並びにカウンターポイズとして使用することにしました。もう少し太いワイヤーを使用したかったのですが、長いものはこれしかありませんでした。安全のため高出力は出さないようにしようと思います。ペットボトルに69回巻く必要がありますので、用心のため80回巻くことにします。


図5 コイルの巻数

予想されるアンテナの「電流振幅」、「放射パターン」のシミュレーション結果も示します。


図6 電流振幅のシミュレーション結果(antenna05)


図7 放射パターンのシミュレーション結果

アンテナ組み立て

コイルやエレメント長などが決まりましたのでそれに基づいてアンテナを組み立てていきます。

・物干し竿とグラスファイバー釣り竿の連結
4メートルの物干し竿と5.2メートルのグラスファイバー製釣り竿をつなぎます。
U字ボルトを使用して連結しました。連結部分の長さは70cmとしました。


図8 U字ボルトと固定用プレート


図9 物干し竿とグラスファイバー釣り竿の連結部


図10 設置イメージ
(すぐ横が屋根のため、風が吹くとインピーダンスやSWRが変動する可能性があります。)

・コイル製作
コイル製作は、ペットボトルに被覆電線を巻いていきます。ペットボトルの中心を釣り竿が貫通するように底部に釣り竿の該当部の直径よりも少し大きな穴を開けておきました。また雨が降った時もペットボトル内に入った水分が内部に残らないように同心円状に5箇所穴をあけました。そして周りに被覆電線を巻いていきます。


図11 ペットボトル底部

ペットボトルに巻いたコイルです(図12)。巻きすぎました。


図12 コイルとインダクタンス値

・アンテナ配線
コイルを釣り竿に入れて固定し、コイルの上部に1.9メートルの銅線、コイル下部に2.5メートルの銅線-給電ボックスと接続しました。また21.4メートルのカウンターポイズを2本接続しました。調整の段階で共振周波数を目標近辺に追い込んでからカウンターポイズの本数を増やしたり長さを調整します。これで仮組みがおわりました。つぎは調整に入ります。

・アンテナ調整
アンテナの調整はアンテナアナライザを用いて共振周波数を希望の位置に動かします。コイルの巻数を減らしていくと徐々に周波数が上がっていきます。計測時には本来は同軸ケーブルの長さをλ/2(またはその整数倍)にしておかないとだめなのですが、同軸のストックがないので古い同軸をそのまま使いました。この同軸ケーブルの長さはλ/2ではありませんでしたので計測値は少し違ってきます。波長に対してかなり短い同軸で計測しようにも短い同軸もありませんでしたので不正確なことを承知で調整していくことにします。後日時間が取れれば同軸の長さも考慮に入れて製作していくつもりです。

組み立て直後、nanoVNAをアンテナアナライザとして使用して共振周波数、SWRを計測しました(図13)。共振周波数が1.97MHzあたりにありました。目標が3.5MHzですからかなり外れています。コイルの巻数を少しずつ減らしていきます。10巻ほどいた結果、共振周波数が2.97MHzまで上がりました(図14)。


図13 アンテナ組み立て直後の共振周波数他の計測結果


図14 アンテナ調整(巻数を初期より10回減らした結果)

さらにコイルの巻数を減らし、巻数を52回までに減らしたところ、共振周波数が3.49MHzになりました。この段階で少し風が吹いてアンテナが屋根と逆方向や屋根側に動くと共振周波数が微妙に3.5MHzに入ったり、3.48MHzに動いたりと揺れるのでこれ以上巻数を減らすことをやめました。またカウンターポイズを2本から3本にしたところSWRが少しさがりました(図15)。


図15 調整を繰り返し目標周波数に近づける

上記調整後の諸特性値は、コイルの巻数52回、その時のインダクタンス値116μHでした。MMANAで設計したときの最適値が、巻数68回、コイルのインダクタンス値が139μHでしたので、インダクタンス値が一割程度異なっているようです。


図16 調整後のコイルインダクタンス値

計測後コイルがほどけないようにテープを張って固定しました。またコイル両端にギボシ端子を接続して着脱可能なようにしました。


図17 コイル固定化

運用試験

このアンテナを用いて試験をおこないます。IC-7300のSWR計を使用してバンド内の複数の周波数でのSWRを表示しました(図18)。このときたまたま聞こえてきた2局とCWで交信しました。当方の所在地は大阪ですが、相手局は香川県高松市と愛知県一宮市でした。いずれも599レポートをいただき、こちらからは579、599を返信しました。


図18 IC7300でのSWR測定

最後に

今回製作したアンテナの性能についてですが、以前使用していたアンテナは既に壊れてしまっていますので比較のしようがありませんが、少なくともアンテナチューナを使用しなくても安心して電波が発射できるということだけでも古いアンテナよりは性能アップしているといえます。(よく飛んでいるかは不明ですが)

ところで、先日IC-7300の電池交換をするために内部をのぞきましたが、もはや私が触れる余地などありません。余地がないのに半田ごてを振り回してさわってしまったのでパターンをこわしてしまいました。最近のリグは高度化しており製作はできませんね。また真空管やトランジスタというディスクリート部品で回路を組んでリグを製作したとしても、スプリアス規制などのため高額な計測器を準備できなければ、自作したとしても電波を飛ばし自作した機器の性能を実地に試すことはできません。

しかしアンテナは別です。まだまだ自作してそのアンテナを実際に使って性能を確認することができますから。私はアンテナの製作が好きです。皆さんはいかがですか?

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