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Short Break

簡易風速計の試作


完成した簡易風速計の試作機

アマチュア無線家にとって強い風は天敵です。風が吹くと屋外に設置したアンテナが吹き飛ばされないか気になります。そんな風を定量的な数値で感じてみようと思い、手元にある材料で風速計を試作しました。市販されている風速計のように、指示値が気象庁の発表する風速と一致している訳ではないので計測器として使用できませんが、風の強さを数値で感じることができ、アマチュア無線や日常生活に応用できるかもしれません。

風速、風向計の製作を目指したが、

当初は、風速と風向の両方の機能を持った風速風向計の製作を計画しました。ところが、いざ実行に移すと風向を検知するセンサの製作が難しいことが分かりました。市販品の購入も計画しましたが、出力信号の扱いやセンサの物理的な取付け方法を考えると、かなりハードルの高いことが分かり、今回は風速だけとして風向計の機能は断念しました。

参考ですが風速を検知するセンサは、この製作ではプラモデル等に使用するブラシありの12V DCモータを使用しています。方向を検知するには、いわゆる「回転角度センサ」なるポテンショメータが必要です。回路や構造が複雑となることから今後の宿題としています。

簡易風速計の回路図

図1が今回製作した簡易風速計の回路図です。各部品の定数は決まっていますが、使用するモータの仕様にとって、出力される電圧が異なるため、それに応じた定数の変更が必要です。

製作のポイントは風速を電気信号に変換するセンサ部分です。通常、DCモータの端子に電圧を加えると、モータの軸(シャフト)が回転し、その回転を動力に変えています。今回は、逆にシャフトを回転させると、その回転に比例した電圧がモータの端子から出力される現象を用いています。

図1のIC1Aで構成された回路は、ある一定の風速となった場合に、それを知らせる「警告灯(赤色LED)」を点灯させる回路です。LEDを点灯させる信号を作ることができれば、この部分に例えばブザーを取り付けることもできます。

回路には電子工作でよく使用されるLM358Nのオペアンプを使っています。8ピンのICで1個のパッケージに2つのオペアンプが内蔵されています。回路ではそれをコンパレータとして動作させています。IC1Bは、モータで発生した電圧を増幅して、後段のメータを振らせるドライブ回路を構成しています。これで1mAの電流計をフルスケールまで振らせることができます。原理的には、モータの出力電圧だけで1mAの電流計を振らせることは可能ですが、モータに接続する回路のインピーダンスを高くして、他の回路の動作に影響を及ぼさないようにしています。


図1 簡易風速計の回路図

この回路に使用する電源は、もともとはACアダプタを使う予定であったため、D2にツェナーダイオードを使用し、IC1Aの2番ピンに加える基準電圧を安定化させましたが、今回のように回路の電源を電圧変動のないピュアなDC電源(電池)とする場合は、R2、D2で構成される定電圧回路は不要です。将来、AC電源で動作させることも考えてツェナーダイオードをそのままにしています。

風速計の製作

(1) DCモータの取り付け
風速を検知する部分には、ブラシ付きのDCモータを使用しました。数種類のDCモータの中から微風でもよく回り出力電圧の高いDCモータを選びました。今回使用したモータは、大阪日本橋の千石電子で1個\160でした。DCモータの仕様を下に記します。風を受けるプロペラは、ゴム動力で飛ぶ飛行機に使用されるものと同じです。モータのシャフトが回転すると端子に電圧を誘起します。この誘起した電圧で風速を数値で表示します(図2)。


図2 風速を電圧に変換するセンサにDCモータを使用

(2) モータの出力電圧の取り出し
風向きが変わり、風速計のブームが回転したときにもモータ端子に接続するリード線がねじれない工夫が必要です。これには同軸ケーブルを使いました。構造上、できるだけ太い同軸ケーブルが必要です。同軸ケーブルの芯線と編み線部にモータの出力端子に取付けた銅板のブラシを接触させて通電しています(図3)。この構造は、下記(3)風速計の内部構造で示します(図4)。


図3 モータの出力端子に接続したブラシ(左)とバランス用のネジ(右)

(3) 風速計の内部構造
今回の製作は試作としたため、風速計本体が防水構造になっていないことや、屋外に取り付ける際の取付け方も考慮されていません。また、風速計のブームの支えにも、同軸ケーブルをむき出しとしているため、強度も低いです。実際に屋外に取付けるには防水構造やある程度の風速にも耐えうる堅牢性も考える必要があります。


図4 簡易風速計の内部の構造

(4) 電子回路の工作
図1で示した回路を7cm×9cmのユニバーサル基板に組み込みました。できあがった基板は、ありあわせのアクリルのケースに入れ試作機完成としています(図5)。


図5 基板を組み込んだ表示ユニット

風速計の調整

(1) 風速計の校正
校正は、屋外で受ける風の強さを定量的に知る必要があります。そこで市販のレジャー用風速計で風速を知り、その風速を基準として製作した風速計のメータを校正する方法としました。屋外で吹く風も強くなったり弱くなったりするため、屋内にて家庭用の扇風機で風を作り、その風で校正しました。

扇風機には風の強さを切り替える[強]、[中]、[弱]の切り替えスイッチがついています。扇風機とレジャー用の風速計の距離を1mとして風速を測ると図6に示したようになりました。


図6 扇風機とレジャー用風速計で試作の風速計を校正する

扇風機の風速を「強」にセットし、レジャー用の風速計をネットに近づけても風速は4.5m/s以上にはなりませんでした。では、風速4.5m/sを超える5m/s、あるいはそれを超える風速とはどれくらいの風なのか、気象庁のホームページや関連のホームページの説明には次のように記されています。


家庭用の扇風機では4.5m/s以上の風を作り出すことはできなかったことから、今回製作した簡易風速計の目盛をそれよりやや強い6m/sとしました。モータの回転数と、その出力電圧は比例関係にあるので、1mAの電流計を6等分して目盛板を作成したものが図7です。


図7 風速計の校正と目盛板の作成

(2) 風速警告LEDの調整
気象庁の風速の解説では、風速5m/sを超えるあたりから、「少し風が強くなってきた」と感じることから、製作した簡易風速計が風速5m/sを超えると、赤色LED(D3)を点灯するようにします。正確に風速5m/sを作れないことから、屋内で作れる最大風速の4.5m/sの風を作り、そのときに回路図のR3を調整して警告LEDを点灯するようにします。

まとめ

風速計の製作は、強い風が吹き始めるとアラームが鳴り、クランクアップアンテナタワーを下げる機会にするはずでしたが、意外にも強い風を疑似的に作れず苦心しました。風速計を屋外に設置しようとすると防水対策も必要であるし、強い風が吹いても風速計そのものが飛んでいかないようにする必要もあり、製作のハードルの高さを感じました。

CL

<参考資料>
気象庁「風の強さと吹き方」の解説より

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