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Short Break

10MHz基準信号発生器の考察と製作
その2 OCXO(Oven Controlled Xtal Oscillator)の製作


10MHz 基準信号発生器の内部

2月15日号(前号)からのつづき

5VとGNDを接続するだけで10MHzの信号が発生する便利な水晶発振器があります。クロックモジュールとも呼ばれている小さなユニットです。広範なカテゴリではSPXO(Simple Packaged Crystal Oscillator)に分類されます。本号では水晶発振器と呼ぶことにします。内部には、水晶振動子とその発振回路が小さなCANに組み込まれています。サイズは前号の図1を参考にしてください。このモジュールを使い10MHz基準信号発生器を製作しようという試みです。

もともとこの水晶発振器はロジック回路のクロック信号の発生に用いるものです。したがって出力はロジックのHとLです。その出力を、コンデンサを通して高周波として取り出します。

前号から検討した個所

前号で示した回路を実験しているうちにいろいろな不具合が見つかり再検討しました。細かい部分の修正も含め最終回路を図1に示します。
(1) 電源スイッチSW1の追加
(2) 電源スイッチをオンにした時に点灯するLED D1(青色)の追加
(3) OCXO内に取付けたヒーターが、オンしたことを知らせるLED D2(赤色)を追加
(4) ヒーターの取付け位置をQ1のソース側からドレイン側に変更
(5) 出力波形の整形回路の追加


図1 全回路図

電気回路ではありませんが、本回路の動作中はOCXO内の温度が40℃近くまで上昇します。そのためOCXO内部に使用する基板の材質をベークからガラスエポキシに変更しました(図2右)。


図2 OCXOの内部に使用したガラスエポキシの基板

製作

OCXOの製作は前号を参照願います。製作および組み立ては、基本的には前号に記載したことと同様ですが、温度センサーLM35の取付け位置を図2のように少し変更しました。変更は、LM35をヒーターの表面に接触させるのではなく、水晶発振器の表面に接触させるようにしました。

OCXOならびにその他のパーツは、70×100mmのガラスエポキシの片面基板に組み込みます。OCXOユニットが基板の大半のスペースを占有しますので、他のパーツの組み込む余裕はそれほどありません。パーツのレイアウトには時間をかけて格好よく仕上げるようにします(冒頭の内部写真参照)。

OCXOユニットは、メイン基板に載せます。メイン基板はケースから取り外しできるようにケースに取付けられた入出力のコネクタやジャックとはコネクタ用ハウジングとヘッダーピンを経由して接続します。


図3 内部基板をケースから外した状態

ケースは、タカチのTDシリーズのアルミダイキャストボックスを使用しました。ケースのレイアウトは図4のようにしました。


図4 完成した10MHz基準発振器

完成した10MHz基準発振器の調整

前号の実験では水晶発振器の温度が35℃のときに水晶発振器の発振周波数が10.00000MHzであったことから、下に示す2箇所の調整を行います。
(1) OCXO内部の温度を外部から監視する回路の調整と温度計の校正
(2) OCXO内部の温度を一定に保つ制御回路の調整と動作確認

(1) OCXO内部の温度を外部から監視する回路の調整と温度計の校正
OCXO内部には温度を検出するセンサーLM35DZ-N(以下LM35)を取り付けています。このセンサーの出力電圧はNational Semiconductorのデータシートには図5のように0mV+10mV/℃と記載されています。


図5 LM35の代表的なアプリケーション

つまり0℃のときの出力電圧は0Vであり、温度が1℃上昇する毎に出力電圧は10mV上昇するとの意味です。この電圧を外部から監視することでOCXO内部の温度を知ることができます。一般的に水晶発振子の発振周波数は外部の温度に大きく影響を受けることから、この温度を制御して、安定した周波数の信号を取り出すようにします。

図6はLM35の出力電圧を計算値と測定値の両方で比較したものです。6.5℃の低温では計算値と誤差は2℃もありますが常温近くになると誤差はそれほどないことが分かります。前号の記事にも記載しましたように、今回使用する水晶発振器の発振周波数は、35℃のときに10.00000MHzが出力されることが分かっています。35℃のときの出力電圧の測定値はありませんが、それほど誤差はないものと期待して設計を進めます。


図6 LM35の出力電圧

LM35の出力端子にはIC4で構成した電圧増幅率10倍の増幅回路が接続されています。その出力をIC3(b)のバッファを通してTemperature outputとして外部にOCXO内部の温度を温度の1/10の電圧で表示します。OCXO内部の温度が30℃であれば、Temperature output端子には温度の1/10である3Vの電圧が出力されることになり、反対に電圧計で表示された値を10倍するとOCXO内部の温度となります。温度表示の校正は、測定時の温度を1/10とした値となるようにR7を調整して合わせます。校正はできるだけ35℃近くで行うことが望ましいです。


図7 10MHz基準信号発生器の内部

(2) OCXO内部の温度を一定に保つ制御回路の調整と動作確認
完成した基準信号発生器の電源をオンにします。R4あるいはR5を回すと、Heaterの動作を表すLED(赤色)が点灯あるいは消灯するポイントがあります。この点灯したときがOCXO内部のヒーターがオンになったことを表しています。

これまでの予備実験では35℃のときが10MHzちょうどの発振周波数であることから、出力電圧は計算では0.35V(=10mV×35)となります。R4とR5の可変抵抗器を調整してIC3(a)の3番ピンの電圧をLM35の出力電圧の10倍の3.5Vに調整します。LM35がOCXO内部で35℃以下の場合、IC3(a)の2番ピンの電圧は3.5Vには至らず、IC3(a)3番ピンの基準電圧の方が高いことからIC3(a)の1番ピンがHになります。Q1のゲートにそのHが印加されNチャネルMOSFETがオンになり、それに伴いヒーターに電圧が印加され熱を発します。LM35がヒーターで熱せられ、2番ピンの電圧が3.5V以上となるとIC3(a)の1番ピンはLとなり、OCXO内部のヒーターがオフとなります。これの繰り返しです。

動作の確認

完成した10MHz基準信号発生器を冷蔵庫にしばらく入れておき、筐体を十分冷やします。取り出したのち、素早く電源と電圧計を本体に接続します(図8)。出力端子には周波数カウンターをゲートタイム10sec.に設定して接続します。今回の実験で使用した水晶発振器では、筐体が冷えている状態では出力周波数は、10MHzに対して100Hz以上高い周波数が出力されました。これは使用する水晶発振器によって異なります。

電源をオンにするとヒーターに通電されていることを表す赤色のLEDが点灯します。このとき、電圧計をTemperature outputに接続しておくとOCXO内部の温度を確認することができます。赤色のLEDがしばらく連続で点灯しますが、OCXO内部の温度が35℃になるとLEDは消灯します。この間、約5分ぐらいです。5分を経過するとOCXO内部も温められ、2~3分毎にヒーターがオンオフします。7~8分経過すると出力周波数も徐々に10MHzに近づき安定してきます。


図8 測定時の結線図

実働試験

出力波形は歪んだままですが10MHzの信号をアッテネーターで適切なレベルに抑えIC-9700の外部信号入力端子[REF IN 10MHz]コネクタに入力し、IC-9700を外部基準信号で動作させる実験を行いました。特に1200MHzでどのような効果があるのかSSBの信号を聞きながら周波数の安定度を確認しました。耳感では時間に応じて周波数が大きくずれていくような感じは受けませんでした。正確な測定器で確認できていませんがOCXOはそれなりに動作していることが分かりました。
※実験は自己責任でお願いします。

課題の克服

水晶発振器に電源とGNDを接続しその波形をオシロスコープで観測すると図9の黄色のラインで示された波形となることは先に説明したとおりです。もともとはロジック回路のクロック用ですので、この波形をダイオードでクリップさせ波形整形回路を通すとロジック回路に最適な矩形波を得ることができます。今回は10MHzの基準信号ですから、出力波形は正弦波としたいところです。

そこで、図1の左下に記載したLPFを通すことで、下のように水色のラインで示した正弦波に限りなく近い正弦波を得ることができます。LPFの調整は出力波形をオシロスコープで観測しながら可変トリマーコンデンサを回して正弦波に近づけます。


図9 出力信号にLPFを通したときの信号波(水色のライン)

負荷による出力波形への影響

出力端子に接続する負荷の具合によっては出力波形の正弦波は崩れます。負荷に接続したインダクタンスやキャパシタンスが水晶発振器内部の回路に影響しており、きれいな正弦波とするには、その都度出力端子に接続するLPF等の設計が必要です。

まとめ

温度変化による周波数変動を軽減することを目的としてOCXOを搭載した10MHzの基準信号発生器を製作しました。出来上がった基準信号発生器を屋外に1時間程度放置します。十分冷したのち、素早くシャックに取り込み、時間の経過とその時の周波数カウンターの表示を記録します。図10がそのグラフです。

屋外からシャックに取り込んだ状態では本体は約6℃で、発振周波数は約60Hz上の方にズレていました。OXCO内部のヒーターがオンオフを繰り返しながら約13分後には、10MHzちょうどの周波数に落ち着いています。ただデジタル表示の最終桁は誤差があることと、手持ちの周波数カウンターでは1Hz台の桁が読めませんが、(約)10.000.000MHzで落ち着いていることが分かります。

CL


図10 電源投球後の時間帯発振周波数(外気温: 6℃)

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次号は 10月 3日(月) に公開予定

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