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Short Break

QRPパワー計の製作


IC-705を使い出してからQRP運用に目覚めました。これまで、100Wあるいは200Wの出力で運用することが多かったため、1W以下のパワーを測定するパワー計の持ち合わせがなく、今回100mWを最大とする簡易QRPパワー計を製作しました。市販の測定器ほど精度はよくありませんが、それでもだいたい何mWのパワーが出ているといった目安にはなると思います。

パワー計の概要

原理は簡単です。入力信号を全波整流し、その信号を汎用のLM386(低電圧オーディオ・パワー・アンプ)で増幅して、その信号をメーターで振らせるだけです。一応測定器ですから、使用する前にしっかりした測定器で校正する必要があります。

今回製作するパワー計のフルスケールは、50Ω負荷で1mW(0dBm)とします。1mWのRF信号を入力すると、メーターは0dBmを示すという意味です。例えば0.1mWのパワーを入力すると、メーターは-10dBmを示します。また1mWの10倍のRF信号、10mWを入力すると、過大入力となりメーターは右に振り切れますから、予め10dBのアッテネーターをオンします。10dBのアッテネーターをオンするとメーターは、0dBmを示します。


RF入力コネクタのすぐあとには1dB、2dB、4dB、8dB、10dB、20dBの6種類のアッテネーターを付加します。今回、アッテネーターに使用した抵抗は1/4Wの金属皮膜抵抗です。1/4W以上のパワーを入力すると抵抗が焼け切れてしまいますので注意が必要です。

アッテネーターの減衰量は、必要に応じて挿入してください。参考ですが1dB、2dB、4dB、8dBとしているのは、BCD(Binary Coded Decimal)と同じ考えで、この4つの数字の組み合わせで1~9までの数字を作ることができるからです。例えば3dBのアッテネーターとする場合は、1dBと2dBのアッテネーターをオンするといったイメージです。最大で45dBの減衰量が得られる計算です。

アッテネーターの製作は、本誌FB NEWSのバックナンバーで「楽しいエレクトロニクス工作 第67回 可変アッテネーター その2」の記事で紹介されているものをそのまま使いました。

QRPパワー計の回路図


図1 QRPパワー計の回路図

QRPパワー計の回路構成

(1) QRPパワー計の感度
十分な感度を得るためにD1、D2、D3は、順方向電圧(VF)の低いショットキーバリアダイオードを使います。今回使用したショットキーバリアダイオードのVFは0.17Vでした。一般的なスイッチングに使用するシリコンダイオードのVFは約0.7Vであることを考えるとかなり低いです。回路に使用したメーターは、フルスケールが1mAの電流計です。内部抵抗等の詳しい電気スペックは分かりません。1mW入力時、この1mAの電流計でメーターを右端まで振らせることができます。

(2) ゼロ点調整
回路の構成上、入力信号がない場合LM386のピン5には電源電圧の約1/2の電圧が出力されます。入力信号がない場合でもメーターが振れてしまいますので、少し工夫が必要です。メーターのマイナス側を直接GNDに接続するのではなく、マイナス側の電圧を持ち上げピン5の電圧とバランスを取りゼロ点調整を行うことで回避できます。それが、R24、R25、R26で構成した回路です。

(3) 省電力化
D4は電源をオンしたときに点灯するLEDです。このパワー計は電池で動作しますので、使用中はできるだけ消費電流を減らしたいことから、微小電流でも明るく輝くLEDを選びました。LEDには通常10mA程度の電流を流して使用しますが、今回は単4電池4本(6V)の電源に3.3kΩの抵抗を接続して、1.8mAで点灯させています。

(4) アッテネーターの製作
アッテネーターは、前述したように以前FB NEWSに掲載された記事の情報をそのまま使いました。アッテネーターの減衰量はできるだけ正確なものとするため、抵抗器は金属皮膜抵抗を1本1本選別しながら、減衰量をオシロスコープで観測してカットアンドトライで製作しました。10WのRF入力に耐える外付けの30dBのアッテネーターがあれば、0.1mW~10Wまで測定範囲が広がります。

(5) メーター
メーターは、フルスケールが1mAの電流計です。メーターの目盛板を慎重に外し、パソコンで作ったdBm表示の目盛板に貼り替えます。メーターは、100x80mmと少々大きめですが見やすいです。使用したメーターは可動コイル型で精度は1.5級です。


(6) ケース
メーターの大きさに合わせてケースを選びました。ケースの大きさは150×100×65mmで、材質はアルミです。ケースの内側にはアルマイト加工が施されているので、ケースアースを取る場合は、そのアルマイト加工をサンドペーパー等で取り除きます。

製作

電子回路は、ガラスエポキシの両面スルーホール加工のユニバーサル基板に図3のように組み込みました。基板上のBNCコネクタからD1、D2、D3を通過してIC1に至る回路にはRF信号が流れますので、可能な限り結線は短くします。アッテネーター部は、基板に金属皮膜抵抗をはんだ付けしただけですが、各段間をシールドケースに収めるとアイソレーションが取れ、大きな減衰量も正しく得ることができます。


図3 完成したQRPパワー計の内部と入力部

調整と校正

測定器を持っていないので測定器を製作するのですが、実際のところ測定器がなければ測定器は製作できません。今回のパワー計も同じです。友人から標準信号発生器(Standard Signal Generator)、通称SGを借りてメーターの校正をしました。

調整箇所は下記の2か所です。
・電源スイッチをオンした時のメーター指針のゼロ点調整
・0dBmの信号を入力した時のフルスケール調整

(1)ゼロ点調整
・すべてのアッテネーターのスイッチをオフにします。
・メーター指針のゼロ点の位置を記録しておきます。
・QRPパワー計の電源を入れます。
・RF入力信号レベルはゼロ。(入力信号なし)
・メーターを見ながらR25を回し、メーターの指針を左端のゼロ点の目盛に合わせます。

(2)フルスケール調整
・全てのアッテネーターのスイッチをオフにします。
・SGの出力を0dBm(1mW)にセットします。
・SGの信号を、同軸ケーブルを経由してQRPパワー計に入力します。
・QRPパワー計の電源をオンにします。
・R23を回しながらメーターの指針を右端フルスケールの0dBmにセットします。
・(確認)SGの信号を-10dBmにセットします。
・その時のメーターの振れが-10dBmになっていることを確認します。


図4 内部の基板

QRPパワー計の実使用

市販されているような正確なパワー計ではありませんが、パワーが2倍になったとか、1/10になった程度のことは分かります。ここで、IC-705を使ってパワーの測定を行ってみます。IC-705のパワー調整は、スクリーン右側のマルチファンクションダイヤル[MULTI]で行います。

<ご注意>100mW以上のパワーを直接入力しないでください。内部のアッテネーターが焼損します。

(1) IC-705最小パワーの確認
IC-705は、出荷時の最小パワーはおよそ50mWにセットされています。これを確認してみます。IC-705を下の条件にセットします。
・周波数:7MHz
・モード:RTTY
・パワー:最小(0%)

上記をセットし、IC-705のアンテナコネクタと本パワー計のコネクタを同軸ケーブルで接続します。マイクのPTTボタンを押し送信状態にします。本メーターは、1mWの入力信号で0dBmを指します。したがって50mWの出力をそのままこのパワー計に入力するとメーターは振り切れてしまいます。先に計算で示しますが、17dB分、つまり10dB、4dB、2dB、1dBのアッテネーターをオンすることで、メーターは、0dBmを示すはずです。


(2) IC-705の100mWの確認
IC-705を下のようにセットします。
・周波数:7MHz
・モード:RTTY
・パワー:約100mW(2%)

100mWとはdBm表記では20dBmです。上記(1)同様に100mWの信号を本パワー計に入力すると振り切れますので、予め本体の20dBのアッテネーターをオンしておきます。マイクのPTTを押し、送信状態にするとメーターは0dBmを指すはずです。

(3) 任意のパワー測定
100mW以上のパワーを測定する場合は、外付けのアッテネーターを準備してください。予め外付けアッテネーターで100mW(20dBm)まで減衰させることで、図5のdBm=mW変換表を見ながらパワーを測定することができます。


図5 dBm=mW変換表

CL

<参考>
パワー計本体の製作にあたっては、「Radio Project for the Amateur Volume 3」(Drew Diamond/VK3XU)の記事を参考にしました。

アッテネーターの製作に関しては、本誌FB NEWSのバックナンバー「楽しいエレクトロニクス工作 第67回 可変アッテネーター その2」の記事を参考にしました。

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次号は 12月 1日(水) に公開予定

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