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今更聞けない無線と回路設計の話

【テーマ2】デシベルと無線工学
第25話 変調器出力振幅と信号劣化(5)

濱田 倫一

2026年11月2日掲載

第24話では、周波数変換回路において、入力信号とLO信号それぞれに重畳する雑音がどのように出力に伝達されるのかについて解説しました。第25話は変調器出力振幅と信号劣化の総括として、話をレベルダイヤグラムに戻して変調器と周波数変換回路の雑音の推移を確認します。

1. 実際のレベルダイヤグラムを見る

暫く離れていましたが、改めて第16話から使用しているAさんからBさんまでの一気通貫で作成したレベルダイヤグラムにおいて、第21話~第24話で扱ってきた変調回路から無線周波数(RF)の信号を生成するU/C(アップコンバータ)までが何処に書かれているかを確認しましょう。


図1 一気通貫で作成したレベルダイヤグラム

(第19話の図6から改訂※1。下方は省略)

第21話~第24話で解説した部分は図1に示した「一気通貫で作成したレベルダイヤグラム」※1において「②変調」「③無線区間」の黄色と青の太線で囲った区間です。このうち黄色の太線で囲った区間はデジタル処理による波形生成からDACでアナログの電圧信号に変換されるまでの区間で、第22話でレベルダイヤグラム上での劣化配分内容を総括説明しています。DACでI-Qそれぞれのアナログ電圧信号に変換後、直交変調器で1つの信号に合成し、U/Cで無線周波の高周波信号に変換されるまでの区間が青の太線で囲った区間です。今回は青の太線で囲った区間について解説します。この区間は、第23話と第24話で解説した周波数変換処理を経ること、ならびに伝送信号の取り扱いが電圧から電力に変化することがポイントになります。

  • ※1 今回、第19話で配布した解説用のレベルダイヤグラムに改定を加えました。最新のExcelシートはこちらからからダウンロード可能ですので、必要に応じてExcelシートから計算内容等をご確認下さい。第19話からの改定箇所は以下の通りです。
  • ① 位相雑音のdBc表記がSNR表記(分母/分子が逆)になっていました。これに伴い位相雑音配分値(72行目)の極性が反転しています。

なお、ダウンロードされたExcelシートに関するご質問についてはご容赦ください。Excelシートの内容に関する知的財産権その他一切の権利は筆者濱田倫一に帰属します。月刊FB NEWS編集部は筆者濱田倫一の許可を得て本件記事を掲載しております。また筆者、ならびに月刊FB NEWS編集部は、これらExcelシートの二次使用に伴う一切の責任を負いませんので、あらかじめご了承ください。なおExcelは米国マイクロソフト社の商標です。

2. I-Q MODとU/Cの構成概要

ではレベルダイヤグラムの詳細に話を進めます。図2に変調部DACを始点としてU/C出力までの想定回路とレベルダイヤグラムの対応図、図3に当該区間のSNRを決定する要因(劣化要因)のツリー図(劣化配分)を示します。


図2 I-Q MOD~U/Cの想定回路とレベルダイヤグラムの対応


図3 RF信号(U/C出力)のSNRを決定する要因(劣化配分)

これまで明示的に解説しませんでしたが、デジタル変調信号は通常I/Qの2相の信号で構成されるのに対してレベルダイヤグラム上ではIまたはQの片相のみの信号レベルと雑音レベルを取り扱います。これはI/Qどちらの信号も同一の平均振幅・SNRで構成するのが通常だからです。I-Q MOD部ではI/Q各相を直交変調器で合成しますが、信号電力、等価雑音電力ともに3dB増加なのでSNRは変化しません。従って、この3dBのレベル変化は直交変調器の通過利得の中に含めるのが一般的です。

第22話までの解説の通り、DAC出力端子においては平均電圧108dBµV、SNR=42.2dBのI/Q 2相のQPSK信号が出力されます。当該区間では、I-Q MOD部のNyquist Filter(LPF)でI、Q各相の信号に含まれるDACのイメージ成分を抑圧した後、直交ミキサで1stLO信号と乗算して一つの信号(IF信号)に合成、さらに後段のU/C部の入力BPFで帯域外の雑音成分を除去した後、DBM(Double Balanced Mixer)を用いて2ndLO信号と乗算し、出力のBPFでRF信号成分を抽出します。

I-Q MOD部はベースバンドLPFと直交ミキサが集積されたRF-ICミキサ(C-MOSベースのモノリシックIC)を適用、U/C部はパッシブBPF(入力: LC Filter、出力: SAW Filter)とダイオードミキサ(DBM)で構成する想定です。

この区間で発生する劣化の内訳は図3に整理したとおりです。どちらもミキサ回路を用いた周波数変換回路と見なすことが出来るので、劣化要因としては①増幅器の等価熱雑音、②LO信号の位相雑音、③回路の非線形歪みに分類されます。なお厳密に言うとどちらの回路にもフィルタ回路が挿入されておりフィルタによる線形歪みも劣化要因になりますが、通常は通過帯域内の位相平坦を担保する設計を行うので、よほど狭帯域のフィルタを挿入することがない限り無視できる劣化量に収まる想定です。(狭帯域フィルタが必須で波形が歪む場合は、復調器側に等化器を挿入するなどして線形歪みの補正を行います)

3. 電圧レベルダイヤグラム→電力レベルダイヤグラムへの切り替え

図1の③無線区間のDACとI-Q MODの間に紫と緑の線を重ねて引いています。第22話までは、デジタル信号処理部とDAC部、すなわち入出力インピーダンスを厳密に規定しない回路ブロックであった為、信号の大きさを電圧で表現する必要がありました。I-Q MODの出力端子以降は回路の入出力インピーダンスが50Ωに統一された区間となるため、信号の劣化を表現する上で直接的な取り扱いが可能な「電力」で信号の大きさを扱います。電圧→電力への換算は回路の負荷インピーダンスが50Ωの前提で、第4話の表1の関係を用いて行っています。(Excelシートの59行目と61行目、および62行目と64行目)

次ページは「劣化配分状況」から

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