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ジャンク堂

第11回 オペアンプとノイズ(後半)
オペアンプ入門(11)

JH3NRV 松尾信一


さて、オペアンプとノイズの後半です。

前回はオペアンプの雑音特性の表記方法がいろいろとあって、ややこしいと書きました。また、RIAAやJIS Aの特性の紹介など、少し横道にそれてしまった感があります。今回は軌道修正をして少し読み辛い内容になるかも知れませんが最後までお付き合いください。

オペアンプ回路の雑音源

オペアンプ回路は、主にオペアンプと抵抗から構成されます。従ってオペアンプ回路からは、抵抗から出るノイズとオペアンプから出るノイズがあります。抵抗からのノイズがでるのか? と思われる方がおられるかも知れませんが、低雑音回路では意外とこれが無視できません。

・抵抗から出る雑音: ジョンソンノイズ(熱雑音)の存在が大きく、電流性雑音もある。
・オペアンプから出る雑音: 電圧性ノイズと電流性ノイズの2つがある。

なお、ジョンソンノイズは発生要因からくる名前ですが、電圧/電流性ノイズという言葉はノイズの発生要因ではなく電圧や電流という形で現れるノイズのことを意味しますので、両者は同列の言葉ではありません。半導体から出るノイズはPN接合に由来するノイズなど、いくつかの要因があるので一括りにして電圧性や電流性ノイズとしています。

非常に大まかなイメージで見るとノイズ源は下のような図の形で存在します。オペアンプの雑音には電圧性ノイズNvと電流性ノイズNiが図のようなイメージで存在します。


抵抗のノイズ: 熱雑音(ジョンソンノイズ)

抵抗はノイズを出します。これは抵抗器の品質の問題とは別にある、本質的なことです。少し電子回路を知っているかたであれば、ご存じの熱雑音のことです。この雑音は受信機などの微少な信号を扱う場合に必ず問題視されます。オペアンプも例外ではありません。優秀な低雑音オペアンプは抵抗からの雑音が無視できないほどノイズが少ないのです。

熱雑音はジョンソンノイズやジョンソン・ナイキストノイズとも呼ばれます。近年の資料ではジョンソンノイズと書かれていることが多いようなので、ここでも以後はジョンソンノイズと呼びます。

ジョンソンノイズは自由電子の不規則な熱振動によって生じるために、絶対零度でない限り発生します。そのレベルは下記の式で表されます。


   Pn:雑音電力(W) k:ボルツマン定数(1.38x10-23J/K) T:絶対温度(K) B:帯域幅(Hz)

非常にシンプルな式ですね。この式から、ノイズの電力レベルは温度と帯域幅に比例することが分かります。また、ジョンソンノイズは典型的なホワイトノイズで非常に広い帯域に渡って一様に分布します。

電力として存在するジョンソンノイズですが、抵抗の存在によって抵抗の両端に電圧として現れます。この電圧は以下の式で求められます。


Vn:雑音電圧(Vrms) R:抵抗(Ω) k,T,Bは雑音電力と同じです。

例えば1kΩの雑音電圧Vnを求めてみましょう。雑音密度を求めるためにB=1(Hz)で計算します。また、温度は17℃(290K)とします(熱雑音レベルは17℃=290Kで語られることが多い)。


17℃の時の1kΩの抵抗は帯域幅1Hzあたりのノイズ電圧が4nVです。同様に計算すると10kΩで12.7nV、100kΩで40nVです。これらの値は電圧雑音密度に相当します。

低雑音オペアンプとなると大抵は電圧雑音密度が10nV/√Hz以下で、3nV/√Hz程度も珍しくありません。高性能な低雑音オペアンプでは1kΩの抵抗のノイズレベル4nV/√Hzが無視できません。

もう少し、計算をしてみましょう。1kΩの抵抗のジョンソンノイズのレベル(Nv)を20Hz~20kHz(Bw=19.98kHz)の帯域で求めてみます。


抵抗器が理想的であってもこのレベルのノイズが出ます。

実際の抵抗器の場合、材質に依存する電流性雑音も発生するとのことです。この雑音は1/fノイズのように周波数が低くなると増加しますが、抵抗器(あるいは素材)によって大きく異なるので、ここでは抵抗の電流性雑音は扱わないことにします。抵抗器にはカーボン抵抗や金属皮膜抵抗などがありますが、この雑音は金属皮膜抵抗のほうが少ないためにノイズレベルを気にする場合は金属皮膜抵抗を使う必要があります。

注) 抵抗器の電流性雑音は抵抗器メーカーのKOA(株)のWEBサイトに記載されています。

オペアンプのノイズ: 電圧性ノイズ

オペアンプの電圧性ノイズは幾つかの要因があり、ジョンソンノイズもその要因の一つです。ジョンソンノイズは抵抗器に限らず、抵抗成分があれば生じます。また、半導体であるが故に生じるノイズもあります。いずれにせよ、プラス入力端子とマイナス入力端子の間に電位差として生じるノイズを電圧性ノイズと呼びます。今まで紹介したオペアンプのデータシートのノイズは“入力換算雑音電圧”となっているので電圧性ノイズを表しています。実際は電圧性ノイズと次に紹介する電流性ノイズの両方を一括りにしているかも知れません。

オペアンプのノイズ: 電流性ノイズ

このノイズは、ショットノイズ(あるいはショットキーノイズ)と呼ばれるノイズが要因で、ショットノイズはPN接合に電流が流れることによって生じます。このノイズは普通、オペアンプの入力端子に流れるバイアス電流によって生じるためにプラス入力端子に生じるショットノイズとマイナス入力端子に生じるショットノイズは独立しています。

岡村廸夫氏の書籍「解析ノイズ・メカニズム」ではショットノイズを“豆の入ったザルを傾けてその縁から豆をあふれ出させたとき、その流れは一様とならず、ランダムなバラツキを生じます”と、豆の流れを電流の流れに例えて非常に分かりやすく紹介されています。

ショットノイズは電流の揺らぎなので、抵抗に揺らぎのある電流が流れるとノイズ電圧となります。オペアンプの場合、バイアス電流がこのノイズの主たる要因のためにプラスやマイナス入力端子に接続された抵抗の大きさでノイズの電圧レベルが変わります。

低雑音オペアンプのデータシートには大抵は電圧性ノイズとともに、電流性ノイズも記載されています。例えば、TI社のOPA2211のデータシートのノイズの項目です。


下の2行は今まで見てきたオペアンプのデータシートにはない項目で、“Input current noise density”(入力換算電流雑音密度)があります。単位は電圧と異なり、“pA/√Hz”となっています。

OPA2211の電流性ノイズ密度は1.7pA/√Hzとなっていることから、オペアンプの入力端子に1kΩを接続するとバイアス電流が流れ、1.7pA/√Hz×1kΩ=1.7nV/√Hzというノイズ電圧となって現れます。OPA2211の電圧性ノイズは1kHzで、1.1nV/√Hzと非常に低ノイズですから、1kΩを接続した場合は電流性ノイズの方が僅かですが大きいことになります。もっとも1kΩの抵抗のジョンソンノイズが4nV/√Hzですから、この場合は抵抗からのノイズがもっとも大きいですが、、。

このように近年の低雑音オペアンプは非常に優秀で、1kΩの抵抗よりもノイズレベルが低いことが分かります。

もう一つ、別のオペアンプを確認しましょう。やはりTI社のTL071C(TL07xシリーズ)のデータシートからの引用です。


電圧雑音密度は18nV/√Hzで、電流雑音密度が0.01pA/√Hzとなっています。電圧雑音密度はOPA2211に比べて16倍も大きくなっています。電流性ノイズを確認すると、TL071Cの場合は入力に1kΩの抵抗を接続しても、0.01pA/√Hz×1kΩ=0.01nV/√Hzと電流による雑音密度は格段に少なくなっています。

実はOPA2211は入力回路がバイポーラトランジスタで、TL071は入力がJ-FETという違いがあります。両者のバイアス電流は50nA(OPA2211)と65pA(TL071)と1000倍近い差があります。電流性ノイズの元であるショットノイズはバイアス電流が主要因のため、バイアス電流の大小が電流性ノイズの大小になります。

また、雑音電圧密度÷雑音電流密度で計算される抵抗値が電圧性ノイズと電流性ノイズの影響の分岐点となり、計算するとOPA2211の場合は約650Ω、TL071Cの場合は約1.8MΩになります。

上記の例のように一般的に電圧性ノイズはトランジスタ入力のオペアンプの方が少なく、電流性ノイズはJ-FET入力のオペアンプの方が少ないといわれます。そのため、入力インピーダンスを高くする場合にはJ-FET入力のオペアンプを、インピーダンスを高くする必要がない場合はトランジスタ入力のオペアンプを選択する方が有利になります。もっとも、電圧性ノイズも電流性ノイズもオペアンプによって大きく異なるのでデータシートによる確認は欠かせません。

抵抗が複数あるときのジョンソンノイズはどうなる?

ここでもう一度、抵抗のジョンソンノイズの話に戻ります。例えば1kΩの抵抗が2本直列になっている場合のノイズレベルが2kΩと同じになることは直感的にわかると思います。

2kΩのジョンソンノイズを計算すると5.74nV/√Hzになります。1kΩのジョンソンノイズは4nV/√Hzですから、これを2本直列にしてノイズを合算すると以下のように計算できます。


1kΩを2本直列にすると、2kΩの抵抗と同じジョンソンノイズのレベルになります。

注) 式中では“√Hz”を略して、4nV/√Hzを4nVと記しています。

では、並列のときはどうでしょう? この場合、下図のような関係になります。R1のジョンソンノイズ(Nj1)はR1とR2で分圧されます。R2のジョンソンノイズ(Nj2)も同様にR2とR1で分圧されます。並列接続した抵抗のジョンソンノイズは、各々の分圧されたノイズ電圧の加算となります。これは重ね合わせの理による計算になります。


例えば、R1、R2ともに1kΩ(4nV/√Hz)だと、R1のジョンソンノイズはR2で分圧されて1/2の2nV/√Hzに、R2のジョンソンノイズも同様に1/2の2nV/√Hzになります。従って、両方の抵抗を並列接続した場合のジョンソンノイズは以下のように計算できます。


この2.83nV/√Hzは500Ωのときのジョンソンノイズのレベルになります。つまり、複数の抵抗を直並列接続しても合成抵抗値のジョンソンノイズのレベルになります。

また、並列接続するR1とR2の抵抗値が大きく異なる場合を考えます。例えば、R1を1kΩ、R2を100kΩとします。R1のノイズレベルは4nV/√Hzで、R2のノイズレベルは40nV/√Hzとなります。両者を並列接続した場合の各々の分圧されたノイズレベルは、3.96nV/√Hzと0.4nV/√Hzになり、おおむね1kΩの抵抗のノイズレベルが支配的になります。このように並列接続する抵抗値に大きな差がある場合は大きい方の抵抗からのノイズはほぼ無視できます。逆に直列接続する場合は抵抗値が大きい方からのノイズが支配的になります。

オペアンプ回路における抵抗のノイズの影響

例えば、下のような回路を考えます。なお、ここではオペアンプからのノイズはないものとします。


信号源のインピーダンスを1kΩとすると、信号源をつないだ時(回路図のSWがON)はオペアンプの入力には1kΩと47kΩを並列接続した抵抗値に相当するノイズが入力されます。しかし、信号源を取り外す(SWがOFF)と抵抗からのノイズは47kΩの抵抗値のノイズレベルになります。なお、ここでは結合コンデンサの容量は十分に大きく低周波まで通過することを前提としています。また、マイナス入力端子の抵抗からのノイズは無視しています。

当たり前のことですが、ノイズレベルは信号源インピーダンス(抵抗)によって変化するので、オペアンプ回路だけではノイズレベルが決まりません。データシートのノイズレベルの値を見るときは信号源インピーダンスも併せて確認する必要があります。

注) 今まで、この連載ではマイナス入力端子に接続する抵抗をRs, Rfとしてきましたが、スペックシートなどではRsは信号源の抵抗値を表しているので、以後はRa, Rbと表記します。

次にマイナス入力端子の抵抗の影響を考えます。マイナス入力端子にはRaとRbの2つの抵抗が接続され、Raからのノイズはマイナス入力端子からの入力信号となるために、反転増幅回路の時のゲイン(Rb/Ra)倍されて出力されます。Rbのノイズはマイナス入力端子側が仮想グラウンドとなり、ゲイン設定に関係なく抵抗のノイズレベルがOUT端子に出力されます。

例えば下のような抵抗を入れたゲイン1倍のボルテージフォロアを考えると、出力には9kΩのジョンソンノイズである12nV/√Hzが出力されます。(ここでもオペアンプのノイズはないものとします。また、オペアンプの周波数特性も無視しています。)


次に下の回路の場合を考えてみます。


この場合、Ra(1kΩ)からのノイズ(4nV/√Hz)は反転増幅のゲイン倍(9倍)されて36nV/√HzがOUT端子に現れます。Rb(9kΩ)のノイズ(12nV/√Hz)はそのまま出力されるので、OUT端子に現れるマイナス入力端子の抵抗からのノイズは両ノイズが加算されて38nV/√Hzとなります。


更に下図のゲイン10倍の非反転アンプ回路の抵抗からのノイズを考えてみます。やはりオペアンプのノイズはないものとします。


まず、マイナス入力端子からのノイズを考えます。この場合、マイナス入力端子に接続された抵抗からのノイズレベルは先に紹介したように38nV/√Hzが出力されます。

次にプラス入力端子に接続された抵抗Rsからのノイズは1kΩの4nV/√Hzが10倍されて、40nV/√Hzが出力されます。

したがって、両方のノイズが加算されたノイズレベルは以下のように計算できます。


ここまではオペアンプのノイズがないものとしてきましたが、オペアンプのノイズも考える場合はオペアンプの入力換算雑音レベルをプラス入力端子、マイナス入力端子の各抵抗からのノイズと同様に加算すれば良いことが分かります。

例えば、上記回路で使用するオペアンプの入力換算ノイズが3nV/√Hzとするとゲイン倍(10倍)されて30nV/√HzがOUT端子に出てきます。したがって、各抵抗からのノイズと加算すると以下のように63nV/√Hzになります。


S/Nを考える

ここまで、オペアンプのデータシートに記載されているスペックと、抵抗を含むオペアンプ回路のノイズの計算について説明をしてきました。データシートに記載されている数字が何なのかはお分かり頂けたかと思います。

しかし、データシートの意味は分かったけれど、結局どの程度の性能のオペアンプを使えば良いのかは判断が付きにくいと思います。

オペアンプのノイズを考えることは、結局は回路のS/N比を考えることになります。どの程度の信号を基準に、どの程度のS/N比であれば良いのか? という問題は意外と難しいです。これは技術的な難しさというより、そもそも扱う信号がどの程度のレベルなのかが明確になっていないことが多いためです。マイクアンプを作ろうとするとき、そもそもマイクからの信号はどの程度なのか? がはっきりしないといったようなことです。

またどの程度のS/N比が確保できれば良いのか? の問題もあります。S/N比については、例えば無線機の感度はS/N 10dBで規定されることが多いようですが、S/N 10dBでは目的信号の内容は了解できても、快適に目的信号を聞くには厳しいです。人にもよると思いますが、ノイズの存在を意識せずに目的信号を聞くには40dB以上のS/N比が必要といわれます。ここで扱っているS/N比は電圧比で、S/N=40dBは目的の信号レベルに対してノイズの成分は1/100になります。HiFiオーディオでなければ、S/N=40dBが一つの基準ではないかと思います。

実際に回路を考えるときのアプローチ例

プロであれば、色々なデータを実際に測定したり、部品メーカーなどから情報を得たりすることができるので、それに基づいた設計目標値を設定できますが、アマチュアは中々そのような情報が得られません。そこで、アマチュア的な設計の際のアプローチを少し考えてみました。

この連載で良く出てくるLM358で考えます。LM358の電圧雑音密度は1kHzで40nV/√Hzが標準値です。無線機で使うことを考え、帯域幅を300Hz~3000Hzの2700Hzに設定します。この場合のノイズレベルは 40nV×√(2700)=2µVになります。このノイズレベルでS/N比40dBを確保するには、信号レベルが100倍の0.2mV以上必要です。従って、作ろうとするアンプの入力レベルが0.2mVより大きいと想定できればOKです。

もし、オペアンプにNJM4565を使う場合は、データシートのグラフに載っている雑音密度を参考に計算します。グラフを見ると、だいたい10nV/√Hz程度です。先のLM358と同じような計算をすると、ノイズレベルはおおよそ0.52µVになります。S/N比40dBを確保するには信号レベルは52µV以上で済みます。なお、これくらいになるとオペアンプ周辺の抵抗のノイズも考慮する必要がありそうです。

つまり、取り敢えずめぼしいオペアンプを選定してノイズレベルから必要な信号レベルを想定します。これだと、アバウトなので取り敢えず判断できます。また、オペアンプをソケットで実装しておけば、後でオペアンプを差し替えて比較もできます。もっとも抵抗からのノイズは予め配慮しておく必要はありますが。

ところで最近の無線機で使われているECM(エレクトレットコンデンサーマイク)のレベルはどの程度の出力電圧があるのでしょう? 秋月電子通商では、1個\50で販売されているECMユニットのデータシートを確認してみました。品名はXCM6035でWM-61A相当品らしいです。


感度(Sensitivity)は-35dBと記載されています。これは1V/Paを0dBとしています。マイクの感度はマイクに1Pa(パスカル)の音圧を加えた時の出力電圧で規定されています。このマイクの場合、1Paのときに-35dB(V)の出力が出てくるようです。1Vを0dBとすると、-35dBは17.8mVになります。ところで1Paの音圧はどのくらいなのでしょう? 今ひとつ、ピンときません。どうもマイクにかぶり付いて喋ったくらいのレベルのようです。



音の大きさを表す方法としてPaとdBがあります。dBは無線機屋には比を表す単位ですが、音圧の単位としても使われます。音圧の場合、正確にはdBsplのことになります。また、1Pa=94dBという関係になります。良く出てくる例として94dBは地下鉄車内の騒音レベルといわれます。地下鉄の車内にさきほどのマイクを持ち込むと約17.8mVの電圧が出てくることになります。もっとも、最近の地下鉄の車内は静かになっているようなので、もっと音圧が低いと思いますが、、。

地下鉄の例で1Pa(94dB)のイメージができても、そんなに大声でマイクに向かって喋らないよ! と思うかも知れません。しかし音圧は距離が倍になると6dB下がります。仮にマイク前10cmで喋る音圧は1m離れると20dBも低下します。普通の会話は60dB程度といわれています。1mの距離で60dBとすると、10cmでは80dBになります。マイクにかぶり付いて“ジャパ~ン・・”と叫ぶと94dB以上になりそうです。



そこで、少し視点を移します。データシートの一番下にS/N比が62dB以上と記載されています。これから考えると、このマイクのノイズレベルは1Vに対して、-35dB-62dB=-97dB以下と考えられそうです。1Vに対して-97dBは約14µVです。14µVのノイズに対して40dBのS/N比が得られるのは1.4mVと計算できます。

このマイクエレメントを使う場合のマイクアンプを考えると、入力換算のノイズレベルで14µV以下、仮に10dBのマージンを取ると4.4µV程度のノイズレベルを確保すれば良いと考えられます。

また、雑音密度で考えると、マイクの周波数範囲が50Hz~16kHzですから、おおむね16kHzの帯域幅と考えてみます。ノイズ成分がホワイトノイズと仮定すると雑音密度が約111nV/√Hzと計算できます。

マイク雑音密度が111nV/√Hzとして、10dBのマージンを取るとマイクアンプの入力換算雑音密度は35nV/√Hz以上あれば十分です。入力換算で考えているので、その後のゲインがいくらであってもS/N比としては確保できます。

なお、上記の計算で雑音密度をマイクの周波数特性から算出しましたが、実際のマイクユニットのS/N測定方法が不明なので誤差があると思います。しかしマイクアンプを考える場合、実際には背景音なども拾うために音声に対するS/N比は以外と背景音が支配することが多いようです。

この視点ではLM358をマイクアンプに使うには少々ノイズレベルが高いように思います。NJM4565のほうであれば問題なく使えそうです。このようなざっくりとした見方でオペアンプを選択するのも一つの方法だと思います。

また、今回の話でオペアンプの選択と同時に抵抗や信号源インピーダンスの影響も考慮が必要であることもご理解頂けたと思います。オペアンプのゲインは抵抗の比だけで決まりますが、S/Nの良いアンプを作る場合には抵抗の比だけで考えては駄目なことが分かります。

さて、オペアンプのノイズの後半として書いてきましたが、今回も少々読み辛い内容/説明になってしまったかも知れません。また、結局RIAAやJIS Aの特性で示されたオペアンプのノイズレベルはどのように見れば良いのかを説明できませんでした。ノイズの件は今回で一区切りの予定で後半とタイトルに付けましたが、“おまけ”編として次回もノイズの件で引っ張ります(苦笑)。RIAAやJIS Aの特性とノイズの関係に少し触れたいと思います。

それでは Best 73 & 88 !

参考文献/資料
・「OPアンプ大全」(pdf版) アナログ・デバイセズ著
・「解析ノイズ・メカニズム」 岡村廸夫著 CQ出版社
・LM358、NJM4565、OPA2211、TL07xシリーズ 各データシート
・XCM6035(ECM) データシート
・KOA株式会社のWEBサイト https://www.koaglobal.com/product/purpose/h_acc_rel

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