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第33回 【余った部材の有効活用】オリジナル外部スピーカーの製作

JP3DOI 正木潤一


手持ちの余剰部品を少しでも整理するため、今年(2022年)の3月号では電子キットを製作しました(関西アマチュア無線フェスティバルにて販売済み) 。 使う見込みのない部材はまだまだあるので、それらを活かしてなにか作ろうと考えました。

まず、プラスチックケースがたくさんあります。こんなにケースが溜まる理由は、「これくらいのサイズに回路を収めたい」というアイデア(というかイメージ)が膨らむとつい買ってしまうからだと思います。回路をケースに収める工程は製作の最後の段階ですが、苦労する回路設計やトライ&エラーの過程をすっ飛ばして完成形を想像するのは心地よいのです。このことがついつい買い集めてしまう理由だと自己分析しています。


箱が閉まり切らないほど有り余るプラスチックケース。

あと、ラジオや受信機を作る予定もないのにスピーカーもたくさんあります。分解したジャンクのスピーカーマイクから取り外した物が多いのですが、大阪日本橋のパーツ屋『デジット』の移転に伴うセールにて買い込んで増えてしまいました。


スピーカーは嵩張る。使う機会もほとんどない。

というわけで、今回は余剰品を活かして無線機用『外部スピーカー』を製作することにしました

余談: 本当はBluetoothスピーカーにしたかった

実はBluetoothモジュールを使ったワイヤレススピーカーにしようと思っていました。ところが半導体不足の影響か、オーディオ伝送に対応したBluetoothモジュールが手に入りません。以前、大阪日本橋の『シリコンハウス』で買ったモジュールも、プロファイルがIC-705やID-52に対応していません・・・


『シリコンハウス』で入手したオーディオ伝送Bluetoothモジュール。リグには使えないがスマホでは使用可能。

ちなみに、百円ショップでも手に入るBluetoothスピーカーからモジュールを取り出して流用することはできません。モジュール単体で技適が取得されている場合とは異なり、製品の筐体込みで技適を取得している場合、分解して中のモジュールを流用することは電波法に抵触する恐れが非常に高いためです。

ミリタリースピーカーをモデルにする

私のコレクションであるミリタリースピーカーを参考にします。もっとも、これらは無駄に大きく、鉄製で0.5kg~1kgほどあるのでアマチュア無線用途には向いていません。


軍用無線機や野戦電話に使われるスピーカー(ラウドスピーカー)。アンプ無し(中)、アンプ内蔵(左、右)。

上に付いている蝶ネジはクランプで、無線卓や棚に挟んでスピーカー本体を固定するためのものです。棚やテーブル上に置くよりもスペースを広く使えます。この仕組みが面白いので今回のスピーカーに取り入れることにしました。


蝶ネジのクランプによって3cmまでの厚さの板に挟んで設置できる。

無線機との接続

ケーブルは背面から尻尾のように引き出します。引き出し箇所には『ケーブルグランド』を使って気密性を保ちます。2017年6月号の『ハンディー機用アンテナ』でまとめ買いしました。手持ちが沢山あり、使い道に困っていたところです。


いろんなサイズのケーブルグランド。ハンディー機用アンテナを作ったときにいろんな種類を買い込んだ。

ケーブルは3芯の3.5mmステレオプラグ付きケーブルを使います。これもまた沢山余っています。


部材箱に沢山あるステレオケーブル。

製作

スピーカーのハウジング(エンクロージャ)として使用するケースは、2018年3月号の『簡易アンテナローテータ—』で使った物です。当時、加工に失敗した場合に備えて2つ買っていました。防水仕様でしっかりした作りです。付属のM4ネジは敢えて使わず、六角穴付きボルトを使ってアウトドア感を出してみました。


タカチ製の高耐候性プラスチックケース。IC-7200に使われているような黒い六角穴付きボルトにすると、ちょっと雰囲気が良くなる。

また、小さい三脚を取り付けられるように、底面と背面にインチネジ穴を設けます。スピーカーは、65mm径、8Ω、1.5Wを使います。手持ちのスピーカーの中で一番ケースにフィットするものを選びました。

1. ケースにたくさんの穴(スピーカーグリル)を開ける
2.3mm径のドリルを使って大量の穴を開けます。穴が規則正しくなるように、テンプレートとして蛇の目基板を使います。ケースに蛇の目基板を当てがい、ネジで対角をしっかり固定します。基板のホールを拡げるように開けていきます。基板のホール1つ飛ばしで開け、その分穴の大きさを大きくした方がよいです。


ネジで蛇の目基板をケースにしっかりと固定し、上からドリルの刃を当てて穴を開ける。トルクの小さなお手軽ハンディー電動ドリルが向いている。


ドリルを使うとはいえ、大量に穴を開けるのはしんどい。ラジオでも聞きながら気長に作業する。

2. スピーカーを取り付ける
スピーカーにケーブルをハンダ付けします。そして、スピーカーグリルとスピーカーが一体化するように、外周にしっかりとスーパーXを塗ります。


ケースに収まりやすいスピーカーを選び、外周をスーパーXで満たす。

3. ケーブルを引き出してケーブルグランドで固定する


ケーブルを背面から取り出して、ケーブルグランドでしっかりと固定する。

4. 小型三脚に取り付けられるようにインチネジ穴を開ける
カメラの三脚に付いている1/4インチネジに対応したタップでネジ穴を開けます。5mm径の下穴を開け、タップでネジ溝を刻みます。


底面と背面に1/4インチのネジ穴を開ける


2017年2月号でノンラジアルアンテナを作った際に部材として買いこんだポケット三脚。

5. ネジ式クランプを付ける
ケースにM6のネジ穴を開け、M6の菊座金を介してM6のボルトを固定します。蝶ネジに釣られてボルトが回らないように、菊座金でケースに喰い込ませるようにしっかりと固定します。


クランプの“押さえ”は、手すりの取り付け具に穴を開けたもの。


ケースの上部にM6のネジ穴を開け、M6ボルトで菊座金を介して固定する。

使用感

実のところ、無線のロケーションが最悪の我が家にはシャックがありません。D-STARを運用するときだけ作業台を臨時シャックにします。棚板に取り付けてみたところ、大きさがそこそこあるスピーカーなので音も大きく、座る位置に合わせて向きを変えられるのでとても聴き取りやすいです。


クランプで棚に取り付けたところ。写真のように向きを変えられる。

実際には移動運用でこのように使うことになります。


フィールド運用時に使う折り畳みテーブルに付けてみた様子。上に置かず端に付けることでテーブルを広く使える。

手持ちの小さいプラスチックケースを使って小さなスピーカーも作ってみました。内蔵のスピーカーには、2022年6月号でHM-186LSから取り外したものを利用しました。ケースが小さいぶん音も小さいですが、カッチリしたハウジングに収めているからでしょうか、しっかりした音に聴こえます。


ポケット三脚に取り付けたところ。

地面に置く際には、三脚を背面に付けて上を向けたほうが良く聞こえます。


背面に開けたネジ穴に三脚を付けるとスピーカー面を上に向けられる。

最後に

今回の記事は余剰品の活用をテーマにした製作例なので、技術的に面白い要素はありません。本当はBluetoothモジュールを使って今風のワイヤレススピーカーにしたかったのですが、モジュールが手に入らない以上、仕方がありません。出来合いの物を利用すれば高度なことを簡単に実現できますが、そもそも入手できなければ何も始まりません。

電化製品のコンセプトと同様、自作品にも2種類のアプローチがあると思います。すなわち、高度で付加価値のあるモノを作るチャレンジか、シンプルなモノを簡単に作るのを楽しむかという2択です。今回はBluetoothモジュールが入手できなかったため後者となりました。Bluetoothモジュールを使う場合は、バッテリーとそれを充電する仕組みも必要になります。さらに、せっかく電源を使うならアンプも内蔵させたくなります。そこまでやるのならば音量調整もできるように・・・ と、余剰品の活用というテーマから外れてしまうかもしれません。

今回製作したスピーカーは電源を使わないぶん簡単に作れ、丈夫で実用的です。Bluetooth通信を使わないので、2022年10月号のIC-705リモコンと一緒に使えます。

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