特別寄稿
2026年5月15日掲載
1)運用場所の選定
サハラ砂漠上空の静止衛星QO-100は、ほぼ真西の水平線近くに一定で、運用は昨年と同じ場所で決定です。
LEOでの多くの交信相手は、XUの東ないし北東に広がりますので、運用には東~北方面が見晴らせることが必要です。昨年の運用で屋上の建屋の配置が判っているので、事前に問題なさそうなことはわかっていましたが、現地で電源やテーブルの置き場所も含め、再確認しました。

左: 図08 ポンプ塔屋を北東側から見たところ
右: 図09タワー根本の既設の電源・同軸・LANケーブル
円筒形のタンクが並んでいるのが北側で建屋の向こう側にQO-100に適した、同じ形状の西向きの開口部があります。LEO局の設備は実習用を含めIC-9700が3セットあるので、JK2XXK局が交信に専念するセットをほぼ360度見渡せるポンプ塔屋屋上のタワー近くに設置しました。
2)ポンプ塔屋 屋上での運用
まずは見晴らしの良いポンプ塔屋屋上から、衛星がトラッキングソフト通りの北東から現れるか、興味津々で待機しています。強い日差しに、パラソルは必須です。

左: 図10 LEOの接近に間に合うようタワー直下に設営
中: 図11 機器設置
右: 図12 スマホにアンテナ方位を表示
3)メイン建屋の屋上
もう1か所は、屋上のポンプ室開口部の東側にテーブルを並べて設置し、運用のデモンストレーションやノウハウ伝授に使うこととしました。NPICで事前に製作・特性測定をすませた144MHz(3エレ)/430MHz(7エレ)2バンド八木も性能を発揮しました。

左: 図13 ポンプ室屋上から見た、建屋東北の見晴らし
右: 図14 NPIC製作の3エレx7エレ八木

左: 図15 NPIC製作の3エレx7エレ八木の準備作業
右: 図16 事前に行ったアンテナの測定結果の一部
4)追跡の自動化に備えて
LEOの場合、衛星追跡ソフトが必須なのですが、トライアル扱いとして、Rymansat Projectで開発されたRymansat Satellite Tracker(RST)を無償で提供させてもらうことが出来ました。使う上での要請事項をとりこみ、今もバージョンアップ中ですが、開発部隊と密に連携が取れているので、NPICからの質問などにも対応が可能と考えました。
パソコンにインストールして学生さんに使ってもらったのですが、最初に手持ちアンテナで追尾する際に、レーザーチャートがイメージ的に判りやすいと、好評でした。

図17 RST(Rymansat Satellite Tracker by Rymansat Project) 講義資料より
ローテータはJA1COU村田さんの設計・製作で、何台かJAMSATシンポジウムで頒布されたものです。小型・軽量(1kgほど)で、これでもLEO用のアンテナなら追尾させることができます。しかも、パソコンとはBluetooth接続で、ケーブルにわずらわされることがありません。カメラの三脚に固定して使えます。今回この1台は寄贈してきました。衛星の動きが見えると関心が盛り上がります。

左: 図18 JA1COU設計製作のBluetooth Rotator
右: 図19A 使用方法を伝授中その1

左: 図19B 使用方法を伝授中その2
右: 図19C 使用方法を伝授中その3
5)LEOの期待に応えて夜間も運用
とくに交信希望の多い日本とのウインドウを調べた結果、夜間~明け方に共通のウインドウの開くことがわかっています。理由を説明して、徹夜で運用しても良いという許可をもらいました。大学構内には、研究棟とともに学生寮もあるので深夜でも人通りがあります。
今回の運用に間に合うよう、HFアンテナのタワーに大きな「NPIC」の電飾が設置されました。東向きで、市内中心部の高級ホテルの高層階から見えるよう、アピールしているようでした。

左: 図20 LEO運用サイトは夜中も明々と(寮の窓から撮影)
右: 図21 市内へ向けた「NPIC」の電飾の下でLEO運用中
1)IC-9700+TRV #3+120cmシステムの運用
2回目なのでIC-9700+TRV #3+120cmシステムの設営はスピーディに進み、少し目を離したあいだに設営が完成していました。ビーコンの音とスペクトルのピークを見ながら、パラボラの架台部を押したり引いたりして、アンテナ方位を微調整します。

左: 図22 ビーコンを聴き/見ながらアンテナ方位の微調整
右: 図23 早速SSB交信を開始
昨年はSSBのみの運用だったので、今回はCWとFT8運用のリクエストが多数届いていました。

左: 図24 SSBはヨーロッパで人気です
中: 図25 CWでヨーロッパを捌く戸根さん
右: 図26 FT8は今回も立ち上がりました
2)F5VMJ Pauloさん設計・製作のSDRシステムも運用
Pauloさんは前回同様、自作のSDRシステムを持参されました。アンテナ直近のSDR本体から運用を行う無線室まで、既設の30mほどのLANケーブルで結べば、リモート運用が簡単にスタートします。やはり室内の方が空調も効き、周囲で大勢の人が動くノイズもなく、落ち着いた環境でQSOできます。F4ANS XYL Sopheakとの会話は、このシステムで実施しました。私は「ダイアルぐるぐる」派ですが、若い人はマウス/キーボードでの運用に全く抵抗がないようです。

図26 SDRシステムでの運用
このSDRシステムは、Pauloさんがヨーロッパ中のGrid LocatorをRover(移動運用)されるときに使用されているもので、バッテリー駆動です。
1)機器選定
いままでのQO-100地上局は、持ち込んで、立ち合いで設営し、確認し、運用を開始する、という形でした。いくら「学生さんに任せる」といっても、最終的には確認しますので、独力で、とは言えない状況でした。また電源と、自作のSDR本体あるいはトランシーバ親機と自作のトランスバータそしてLNBをつなぎ合わせる構成で、全体の取り扱い説明書もなく、間違いも起こりやすい状態でした。
今後NPICが独力で運用を継続するには、最初の設備構成としてはターンキーに近い一式を含んだ既製品が良いと考えました。LNAやPA、アップコンバータといったユニットは各社から出ていますが、QO-100用の装置としてまとまっているのは、ドイツHilberling社の“UDL-16”、ポルトガルのDXPatrol社の“QO-100 Groundstation FD(Full Duplex)”くらいしかありません。いずれも広い範囲の親機に対応できるよう、送信の入力、受信の出力を組み合わせて設定できるようになっており、NPICのように、L/U/VHFのオールモード機が限られている環境でも扱いやすくなっています。
両機種をPauloさんと比較しながら相談した結果、
・スペック的には支障なく、両者に大差はない。
・ただし価格差が2倍もある。
・DXPatrol社のCT1FFU, Antonio Matiasさんが、Pauloさんの友人!
ということで、DXPatrol社に決定しました。

写真27 DXPatrol社 QO-100 Ground Station FS 前面(左)と背面(右)
輸入規制品である無線機なので心配したのですが、NPICで必要性を示す正式申請書類を用意し、運送会社もカンボジアでの通関に慣れた会社を用いることで、1か月ほどでNPICに到着しました。
2)DXPatrolでの構成
現地に到着したときには、すでに打ち合わせ通りアンテナ受け台とDXPatrol架台が、壁の高い位置に取り付けられており、冷却用に扇風機も用意されていました。風雨から機器を守る「鳥の巣(Bird Nest)」と呼んでいました。

左: 図28 親機にはIC-911
中: 図29 DXPatrolはアンテナ直近に
右:図30ディッシュを梁に固定
3)速報! DXPatrol設営完了 4月24日
アンテナ直下でのセットアップで動作確認後、ポンプ室開口部と、5階の無線室を同軸ケーブル(30mほど)で結んでの運用となります。3月初旬の帰国時には「最終調整/無線室での動作確認待ち」となっていましたが、卒業試験も終わった4月24日に、再度セットして動作を確認した、との速報が届きました。これによりIC-911+DXPatrol GS-FD+DXPatrol LNB+70cm Square DishでのQRVがまもなく始まります。

左: 図31 屋上での試験
中: 図32 ダウンリンク信号の確認
右: 図33 無線室での信号確認
XUを、59/59のレポート交換だけの「レアカントリー」から、「ラグチューして友人のできるカントリーへ」が目標です。
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