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特別寄稿

カンボジア・アマチュア無線便り
NPICクラブ局XU7AMOからQO-100とLEOへQRV

JA3GEP 毛利幹生

2026年5月15日掲載


図01 Bun学長と学科生一同

月刊FB NEWSに「特別寄稿」として、JA3ULS/XU7AKJ木村OMによるカンボジアのアマチュア無線の再興活動が連載されていました(*1)。その記事に導かれて、昨年3月にアマチュア無線静止衛星(QO-100)による通信トレーニングをNPIC(National Polytechnic Institute of Cambodia: カンボジア国立工業科学大学)で実施し、XU初の2.4GHzでのQRVを実現することができました(月刊FB NEWS 2025年6月号)。今回は、その続報です。

(*1)
月刊FB NEWS 2023年8月号
月刊FB NEWS 2024年5月号
月刊FB NEWS 2024年8月号

1. 昨年のQO-100運用と、トレーニング第2回の希望

昨年の3月中旬、木曜から月曜の週末をはさんだ丸5日間、F5VMJ Pauloさんと、NPIC(National Polytechnic Institute of Technology)のクラブ局XU7AMOを用いたQO-100による衛星通信トレーニングを行いました。セットアップ・調整からSSBでのパイルアップまで、大いに盛り上がりました。交信範囲はヨーロッパからアフリカ、中近東、南米、南極まで広がりました。学生さんたちは「フランスや日本から機器を担いでこなくても、いつも運用できればよいのに」という話になりました。地上局を常時運用できるように設置したい、という希望です。

話をしている中でさらに、「動かない衛星だけでなく、動く衛星も追ってみたい」という話題になりました。AO-10/-13/-40といったDXのできる長楕円軌道の衛星は現在ありませんが、低軌道衛星(LEO, Low Earth Orbit satellite)であってもアジアの国々、なにより日本がウインドウに入ります。それならJA国内でも話題にしてもらえる! と考えました(QO-100だけだと、正直なところ相手にしてもらえないのです)。終了早々、第2回目を2026年の同時期に実施しよう、という話がまとまりました。

私は普段LEOを運用していませんし、PauloさんもQO-100専門とのことです。ただ昨年日程の調整がつかずにXU行きを断念されたJA1COU村田さんが、今年は得意のLEO運用に自作のBluetoothローテータとRymansat Satellite Tracker(RST)を組み合わせて参加していただけることになりました。さらに、衛星VUCCを追っておられるJK2XXK戸根さんからも参加したいとの申し出を頂き、大歓迎しました(ご本人にはEntity/Grid Locatorが増えませんよ、と心配したのですが)。

2. トレーニング内容の計画

「トレーニング」という以上、「機材を持ち込んでの運用デモ」だけでは不十分で、それなりのLEOの技術的背景の「講義」と、実際に運用してみる「実習」が欠かせません。ただLEOのウインドウは短く、QO-100のように「つぎつぎオペレータがマイクを手渡して~」という、時間がありません。どのように運用するか、悩むところです。

今回の衛星通信トレーニングの目標として昨年の内容を見直し、LEOも加えて、以下のような講義を考えました。

  • ①低軌道衛星は上空を通過する衛星を確実に捕捉する必要があるため、軌道と、軌道上の衛星の位置を指定する方法として理解が望まれるNASAのTLE(Two Line Element)のパラメータを解説する。
  • ②運用が日照によって制限されているFO-29を例に衛星の運用管理を解説する。
  • ③衛星の位置・方位を教えてくれるトラッキングソフトウエアRSTをインストールし、使用方法を伝える。
  • ④希望の方向に手で動かしてアンテナを向ける、または小型のBluetoothローテータを渡し、自動追尾の方法を伝える。
  • ⑤QO-100については、SSBでパイルアップ対応を含めた正しい運用のノウハウを伝える。
  • ⑥NPICで継続運用できるQO-100地上局を設営する。

3. LEOウインドウとトレーニングのスケジュール

静止衛星であるQO-100では一定方向から動きませんから、運用のタイミングは、主たる交信相手の都合の良い時刻に合わせればOKです。しかし、LEOでは次から次へと現れ、しかもウインドウの関係で相手局は限られ、日本とQSOできる日時は? と探すのは、結構大変です。

村田さんと戸根さんが現地に入れるのは2月27日金曜の午後、離れるのは3月2日月曜の午後、ということで、衛星をリストアップしてみました(表1)。


表1 プノンペンでの衛星ウインドウと主な交信相手地域

使用できるLEOは、ISS, FO-29, RS-44, SO-50, AO-123, SO-125と結構な数があります。しかし多くのウインドウは短く、CWないしFT4で素早くこなさないと、待ち構えていた局、とくにJA局にうらまれそうです。幸い夜間の運用も認めてもらっていますので、LEOチームは金曜・土曜は徹夜覚悟でのスケジュールとなりました。

LEOの中では軌道が高くウインドウが広いものの、打ち上げ後30年近いJAS-2(FO-29)の状況が心配です。JARL発表の運用計画(図02A)によると日照がコンディションの良い全日照へ移行する直前の微妙な時期です。


左: 図02A FO-29の2月の運用予定
右: 図02B 3月の日照の推移予測

2月末~3月の日照推移(図02B)を確認したところ、現地日曜(3月1日)の朝のごく短時間なら、トランスポンダーがオンになりそうと想定できました。滞在中にそのタイミングしかJAとの交信の可能性は無く、これは外すわけにいきません。

というわけで、衛星の通過スケジュールに合わせ、講義や外出を調整しなおしたのが、表2です。


表2 NPIC衛星通信トレーニングスケジュール案

4. 移動開始 各地からNPICへ

Pauloさんは、パリ(CDG空港)からシンガポール(SIN)経由で、村田さん・戸根さんは、東京(NRT空港)から香港(HKG)経由で、カンボジアに向かいます。


左: 図03A  中: 03B JA3GEP 6分割ディッシュ入り段ボール箱
右: 図03C JA1COU IC-9700が3台

私は年初に、関西空港から最も時間的に楽なタイ国際航空のバンコク経由便を手配していたのですが、2月に入りタイ・カンボジア国境での紛争が激化し、陸上の国境が封鎖されました。「バンコク乗り継ぎでのカンボジア行き便で、手続きに時間を取られる例がある」とのアラートがフランスから耳に入りました。万一でも荷物の乗り継ぎに問題があると困るので、キャンセル料をはらってシンガポール経由に変更しました。1時間以上行き過ぎて、また引き返すルートになり、時間も費用もかさみました。

機内のフライトマップで、面白い発見をしました。マップに表示されたVK9C Cocos(Keeling)諸島(West Island)やVK9X Christmas島(Flying Fish Cove)とシンガポールとの距離が、プノンペンまでとの距離と変わりません! なお、シンガポール~パース間のフライトでは、これらの島は表示されていませんでした。

プノンペンの空港が新しくなっています(空港コードKTI: Techo International Airport)。以前よりNPICとの距離は遠くなりましたが、到着が夜だったためか道は混んでおらず、45分ほどでNPICに到着しました。


左: 図04 さすが仏教国。巨大な仏像が迎えてくれます
右: 図05 大きな荷物もあっという間にバスへ

5. NPICでのサテライトトレーニング(講義)

ヨーロッパの深夜・未明に相当する午前は講義を中心とし、午後からQO-100地上局の設営・試験・運用を開始するという、大まかな時間割をしています。2人掛けの机が30台ほどありますが、みなさん熱心で席は前から詰まっていて、自信のない説明をしていると(?!)、即質問が飛んできます。


図06 講義室の様子 みなさん熱心です


図07 講義の様子 左から F5VMJ Paulo, JA3GEP Mikio, JA1COU Yutaka, JK2XXK Taka

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