2016年3月号

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JE2HAU 岩井保彦さん

愛知県知多市から電信を主にオンエアしている昭和10年生まれの岩井さん。もともと電子機器いじりが好きだった岩井さんは、中学、高校時代はラジオ作りに熱中していた。その頃にたまたま読んだ本に影響を受け、これからの時代は海運だと思い、通信士を目指して電信の習得を志す。そして電信の練習用に自作した低周波発振器に自宅近所のアマチュア無線局の電波が飛び込んできたのが、岩井さんとアマチュア無線との出会いだった。さっそく岩井さんは、針金アンテナを展開していたそのアマチュア無線家を訪ねていき、色々と教えてもらった。

高校卒業後は専門学校に進み、ご近所のラジオの修理などをボランティアで引き受けるまでになった。腕試しに受験した通商産業省のラジオ受信機修理技術者の試験にも合格した。その頃、第一級アマチュア無線技士のライセンスも取得したものの開局は行わず、その後すぐに取得した第二級無線通信士(現在の第二級総合通信士)の免許を元に岩井さんは船舶通信士の道を選んだ。

当時は就職難の時代で船舶通信士になる道も険しかったが、幸いにも神戸の船会社の就職試験に合格し、夢が叶って3等通信士となり、主に東南アジア航路で通信業務を行った。なによりまずは一生懸命に仕事を覚えたという。通信士の業務は主に無線通信と無線機器の保守メンテナンスだったが、航海士や機関士からは電子機器や電気機器、時には発電機の修理まで依頼されたという。

その後岩井さんは第一級無線通信士(現在の第一級総合通信士)を取得、2等通信士となったが、28歳のときに船を下りて教師に転職した。名古屋市にある名古屋高等無線電信学校(現在の名古屋工学院専門学校)で通信工学や電気通信術を教えることになった。教師時代には、適当な教科書がない科目もあり、自ら教科書まで執筆したという。

教師時代のある日、岩井さんはアマチュア無線技士養成課程講習会の講師をしていた先輩から、忙しいから講師を代わってほしいと頼まれ、引き受けることになった。講習会の休み時間になると、受講生からアマチュア無線に関していろいろと質問されたが、アマチュア無線を行っていなかった岩井さんには理解不可能な質問もあった。それまでアマチュア無線にはあまり興味がなかったが、アマチュア無線家が多いということは、きっと何か面白いことがあるのだろうと考えた。そして学生時代に1アマのライセンスを取得してから約20年経過後、ついにアマチュア無線局の開局申請を行った。

開局当初は144MHz FMの機器を購入したが、ラグチューにはすぐに飽きてしまい、HFの電信に出るようなった。HFの電信なら少ない電力で外国ともQSOでき、岩井さんはアマチュア無線の面白さに惹かれた。中でも交信した成果で得られるアワードの取得に熱中していった。そして岩井さんは国内、国外を問わず交信を重ね、その結果100枚を超えるアワードを取得した。


取得したQSLカードを眺める岩井さん

岩井さんはオールバンドにオンエアしたが、狙っていたアワード取得のために必要な高い周波数、特に2400MHzの運用のために車で山に行って運用も行った。しかし2400MHzの電信は相手がほとんどおらず、電話に出ていた局を呼んで電信に出て欲しいと頼んだが、多くの場合は断られたという。アワードのためにサテライト通信にも挑戦して成果を得た。岩井さんは電信の魅力について、「相手と声を出してしゃべらなくても、相手の打ち方や、交信を通じて相手の性格がわかることです」と話す。

アマチュア無線をやってきて良かったことは、「外国を旅行するときに、事前に現地に知り合いができることが一番です」と話す。台湾、韓国、ハワイ、香港、シンガポールなど、過去に交信した局に渡航前に手紙を出しておき、QSLカードを持参して出かけていった。そしてチャンスがあれば、現地でアイボールQSOを行った。


岩井さんの現在のシャック

岩井さんは、10年間ほど諸事情で一時的にアクティビティが下がったが、今年の1月から再び運用を始め、その間に拡張した7MHz帯を中心に、和文CWでオンエアしている。「まずは、昔の腕の取り戻し、かつての交信仲間との再会を楽しんでいます。今後も細く長く楽しんでいきたいです」、と話す。

写真説明
平成27年度"電波の日・情報通信月間"記念式典にて、「長年にわたり専門学校の教師として卓越した指導力を以て電気通信術の技術指導に当たり、上級の無線通信士の資格取得に尽力するなど、通信分野の人材育成に多大な貢献をした」功績により、東海総合通信局長表彰を受賞した岩井さん(赤色バラの胸章)。となりは、JR2NFL大村秀章 愛知県知事(黄色バラの胸章)

このコーナーでは、アマチュア無線の様々な楽しみ方に挑戦するハム(アマチュア無線家)を紹介します。
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